「個」の強さ
「個」の強さ
昨日、午前中からあれこれと出歩いて、夕方には疲れの極致に至った九藤がおりました。しかし夜は外食の予定、待ち合わせをしている九藤。
心の中で。
「ごはんいらないからおうち帰りたいよう」
何度もそうめそめそぼやきながら、とある本屋さんのただで座れる(※ここがポイント)椅子コーナーでへばっておりました。
段々と、時が経つにつれエネルギーが回復されて来る九藤。
まだ半分はゾンビみたいなまま、退屈を感じ始めておりました。
近くには「妖怪ウォッチ」の絵本。
それを手に取る気にはなれず、九藤は人間ウォッチを始めました。
人間って千差万別。
洋服の季節感もばらばらだし。初夏ゆえにハーフパンツの男性もちらほら。
アロハ柄のハーフパンツを穿く人って九藤にはだいぶ「押してる」人に見えました。
中には、はらはらさせられるお嬢さんもおりました。
ミニスカ、ハイヒール、全体の服の色柄使いも何と言うか。扇情的?
大丈夫かな~と要らん心配。
九藤が彼女のおじいさんかおばあさんであれば、風呂敷を腰に巻いてやりたい、と思いました。腰も冷えない、扇情も控えられる、一石二鳥!
そんなビッグなお世話なことをつらつら考えながら、九藤の印象に残った人が約三名、いらっしゃいました。
それは。
着物を着慣れた風、知的はんなりお姉さん。
唇のルージュが印象的、しゃきしゃきした細身のおばあさん。
革ジャンを、腕を袖には通さずに、肩に颯爽と引っ掛けていたお嬢さん。
雰囲気も年代もまちまち。共通しているのは女性であることと。
恐らく、「個」の強さだと思い至ったのです。
我の強さではありません。この混迷したぐるぐるな時代に、ちゃんと自分を確立して、すっくと立っていらっしゃる人というのは、自ずと周囲にも知られるのではないでしょうか。硬さと柔軟さを上手い具合に配合してらっしゃるような。
全員が女性であった、というのも現代を反映しているような気がしなくもない。
残念ながら男性で、九藤の感覚の網にキャッチングされた方はおりませんでした。
以上のようなことを確認した九藤は腕時計を見て自分も椅子から立ち上がり、観察する側からされる側に戻って行ったのでありましたとさ。
 




