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古代叙事詩  作者: 猫田33
深緑の女
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5.砂漠の生活

ジャオは、頃合いを見て納屋に食事を持っていくと男たちはみんな起きており目をぎらつかせて見てきた。


「俺達の処遇が決まったのか」


「違うわ、食事を持って来たの。これを食べて大人しくしててね」


「ありがたいことです」


ジャオは、男達全員にスープを渡していく。中には反抗的な態度を見せる人物もいたが、ファムの睨みでおとなしくなった。よほど腹が減っていたのか器まで食べる勢いで平らげていく。


「俺達にも食い物をくれるのか」


「飢えていなければ貴方方のような人はむやみに暴れません。それと上がきちんと面倒をみれれば自然と下も見習うものです。だからこれは、ここで大人しくしてもらうための対価ですよ」


「対価ね…。こういう温かい料理を久々にもらったな」


ファムがスープを見つめて言う。その瞳には、食に対する喜びよりもその奥にある自らの闇に話しかけているようだった。


「すまないね、私の継承権の序列が低いからあまりいいものを食べさせられなくて」


「アミン!俺はお前だからここまでついてきたんだ。それにお前が主人になっていなかったらとっくに餓死して死んでる」


「そうですぜアミンの若旦那。俺は女房の弔いが出来た」


「俺はたまに酒が飲めりゃ充分さ。そりゃあ、序列が高い人らについていけば沢山のまんまが食えるだろうが同じ仲間じゃなくて家畜扱いされらぁ」


アミンの言葉にフェイが反論すると他の男達も次々反論していく。アミンは、申し訳無さそうな顔をしているがどこか嬉しそうな顔を浮かべていた。


「先ほどから出ている序列とはなんですか」


「あぁ、ここらへんにはない考え方かもしれませんね。お聞きになりたいですか」


この男達の処分がどうなるのかわからないが聞いたこともない話をできるものなら聞いてみたいとジャオは思いました。


「はい」


「わかりました。まず私たちの住む砂漠は、ここのように柔らかく命育む大地ではありません。岩と砂の大地が広がり、昼間は焼けるような熱い光が差し、夜は心まで冷やすような寒さに包まれます。当然作物は育つはずがなく、作物を育てられる場所から略奪してきたのが我々です」


「商売や交換ということはできなかったのですか」


ジャオはアミンの話を不思議に思います。村人は村にない物を商人と物々交換を行うことで得ていました。例えば森に囲まれたこの村ではどうしても塩を得ることができません。塩は、海で作られたり死の泉と呼ばれる特殊な場所にしかない。だから村人は、森の薬草や猟で得られる角や骨を交換し塩を得ていました。森の近い村ならではのものですが砂漠といえど本当に何もないとは思えませんでした。


「そうですね。交易や物々交換などを行えばよかったかもしれません。元に我々の女達が織る織物は独特の柄と破れにくさから人気のある品物になっています。でも簡単に物を得ることが出来る略奪をするのが普通になっています」


「生活が楽でないというのはよくわかりました」


「はい、わかっていただけたなら結構です。話は戻ります。この略奪という行為は、我々に潤いをもたらすものですが一時的ものです。水も食料も飲み食いすれば減ります。だから集落に貢献した度合いで食料を渡す順序。先ほどの序列の制度が出来たのです。現在は、族長一族の後継者誰かに付きその後継者の序列で食べ物や水などの配給が行われています」


「役にたつものが富むというわけですね。ですがそれでは役にたたないとされるような人物。病人やご老体を捨てるということになりませんか」


少なくともジャオにはそうとしか思えない。生きるためとはいえ弱者には生きづらい方法だ。


「そこで若旦那の登場よぉ!はみ出しもんやさっきみたいな理由で使えないからと追い出された連中をみんな引き受けちまうんだ。おかげで序列が低くなっちまってるが若旦那ほど立派な人はいないさ」


「そうなのですか。ところで序列が低いと言っていますがどれくらいなんですか」


「アミンは、最下位だ」


不機嫌かつ嫌そうな顔でフェイが言った。多分この最下位というのが不服なのだろうか?


「最下位なのですか。ならこれ以上ないほど低いのですね」


「だからかこいつ面倒事ばかり族長から受けることになるんだ。今回もそうだ。いくら俺がいるっていってもエルフを捕まえてこいなんて…」


「なぜエルフを?私たちは、精霊と語らい森を育む種族。何を思って捕まえようなんて」


「族長は、砂漠を緑に変えたいと言っていました。エルフは森の人と言われる種族。砂漠であろうときっと緑に変える方法を持っているに違いないといっていました」


「さすがに砂漠を緑に変えてしまうようなものはもっていません。エルフというのは、もともとある木をあらゆることから守る術をもつだけなのです。ですから砂漠を緑にするというのはとてもではないですが無理でしょう」


ジャオの言葉に男達は、ため息を吐いたきっと変える方法があると信じていたのだろう。ジャオも村を襲撃されて怒りがないわけではないが、作物が育たない砂漠の辛い生活に同情も感じてきていた。


「そうですか…。そもそも捕まっている身ですからその方法があっても駄目でしょうねぇ…」


「まぁ、こいつらが何人かやっちまってるからなぁ。はぁ…、本当に何やってんだよ」


「エルフの場所を吐けって言っても言わなかったんで見せしめにしようと思いやして」


顔中に怪我がある大男が苦笑いを浮かべて言う。


「我々は、お願いする側なのですよ。それにナフいま君が所属しているのは僕だ。ガジャス兄さんじゃない。力ですべてが解決できるわけじゃないって君が一番知っているでしょう」


「わかってはいるんですがね。どうも長年の癖みたいなもので治らんのですよ」


「ナフ…」


「アミンこの馬鹿が暴れたのは俺の責任だ。俺が腕でお前が頭なんだろ?腕がうまく動かなかったんだ。腕が悪い」


アミンのつぶやきにファムが答える。二人の間には主従以上の何かがあるのだろうと強い絆が感じられた。それがなぜかジャオには眩しく映った。なぜなのかと思うとジャオは考える。でもすぐには答えが出そうになかった。


「皆さん食べ終わったようですから持っていきますね」


ジャオは、普通に出て行ったつもりであったが見るものが見たらそれは問題から逃げていると指摘したであろう。だがそれを指摘するほどの仲を持った者はこの場にいない。そもそも存在すらしないのだが当事者というものは気が付きにくいものなのだった。

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