表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古代叙事詩  作者: 猫田33
深緑の女
2/15

2.日常

女が森を歩きしばらく経つと木が拓けた場所に出てきた。そこには、家がありたくさんのものたちが暮らし村をつくっている。その村に住むものは、さまざまな姿をしており人間がいれば、亜人に分類される獣人や人間に似ているが耳が長いもの大人の顔立ちをしているのに女の腰辺りまでしかないものまでいた。


「ジャオ!今日はいいのが獲れたのか!?」


ガタイのいい男が女にそう言ってくる。女は、ジャオという名なのだろう。呼ばれたことに気がつくと緋色の頭巾をとる。そこから現れたのは、輝くばかりの笑顔を浮かべたこげ茶色の髪に枯れ草色瞳の女だった。よくみると目の前の人間よりも耳が少しとがっているようにも見える。


「ばっちりいいのが獲れたよ!ツガイの時期が近いからたっぷり肥っていい感じ。だから籠を持ってくるから野菜と交換して」


「あたぼうよ!でもなぁ、いちいち家に戻んのめんどくさいだろ?籠貸してやるから野菜持ってけよ」


「本当!?ありがとう」


男は、大きな籠を持ち出すとその中に野菜を入れていく。家庭の事情で通常よりも野菜の消費が多いジャオの家としては非常に嬉しいことだった。


「いつもありがとうね!」


「いいってことよ!長老によろしくな」


「うん」


籠を両手に持って村の少し外れにある我が家に向かって行くがそこまで行くのにもずいぶんと声をかけられた。それのだいたいが父である長老に関するものである。家につくころには、村を外れるのでそういったことは少なくなる。


「ただいま」


「ジャオおかえり。あぁ、とても元気そうな野菜だね。シャイルのところのかな?」


26、7歳くらいの人物がジャオに話かけてくる。その人物は、とても見目麗しく中性的な見た目をしていた。翡翠の長い髪に枯れ草色の瞳をしている。


「そうだよ。ギギが父さんによろしくだって」


「フフ、僕はまだまだ現役の歳なんだけどな。ギギも心配性だねぇ」


「まぁ、父さんは生粋のエルフだから平均的な寿命でいえば400年あるよね」


男は、ジャオの父で長老のフェイであった。ジャオの住んでいる村には、フェイより年上がいないため見た目が非常に若いにもかかわらず長老となっている。


「この村の人々が心優しい証拠ですよ」


「そういうものかな?それより父さん、これから料理をするから一旦外に出て。たしか傷薬が切れてたし、出来たら呼ぶからやってきなよ」


「ありがとうジャオ。傷薬は大事だからしっかり作りますね」


微笑みを浮かべてフェイは家から出る。エルフであるフェイは、血が苦手でこれから作ろうとしている料理が出来ないのだ。野菜ならば問題ないが生き物の血は、どうしても駄目で近くにあると真っ青になる。


「さてと、久々に魚料理をしようかな」


鍋に切った芋とアスパとキャロそれにハーブを入れて煮る。その間に獲ってきた魚を取り出し、中身を取り頭も落とす。取った中身と頭は、後で使うのでとっておく。残った身と骨は、包丁で切りながら砕く。そこに薬草と行商と物々交換した塩を入れて練る。


「煮えたな」


煮えたスープ一人分を器に盛ってから残ったスープに魚の肉の塊を入れて煮た。


「できた」


「あぁ、予想通りでしたね」


「もう父さん、呼びに行くって言ったでしょう?」


「クスクス、150年同じ生活を続けていたらわかるようになりますよ。この器が僕の分ですか?」


そういって魚の肉なしのスープを手に取る。肉と濃い味をフェイが好まないための特別料理だ。ジャオは、ハーフエルフなので肉であろうと食べられる。


「うん、席に座って食べて」


「そうですね」


二人は、席に座り手を組み祈る。


「この世を創りし我らが母よ。今日の糧が得られるのも貴方様のおかげです。いただきます」


祈りを終えるとスープを食べる。スープは、塩と魚の出汁が効いていて非常においしい。この味が嫌いなエルフは、不幸だとすら思う。


「ジャオは、本当においしそうに食べますね」


「命を対価として食すならおいしい方がいいでしょう?」


「ふふっ、そうですね」


二人で食事をとっていると村の方角が騒がしくなった。この時間は、村の方も夕食をとっており風向きによっては、にぎやかに笑う声が聞こえる。しかし聞こえてくる声は、そんな声ではなく怒りと警戒を含んだものだった。


「様子を見に行った方がいいかな」


「木々が騒いでいます。僕も行きますが充分気をつけてください」


フェイは、壁に立てかけていた木の杖を掴む。それを見てジャオは、驚き手にした剣を落としてしまった。


「父さんは、血が苦手なのに連れて行けるわけがないでしょう」


「いくら血がいやでも娘だけを危険にさらすわけにはいかない。シューチンに怒られてしまう」


シューチンは、ジャオの亡くなった母で人間だった。ジャオが60歳のとき流行り病で亡くなってしまっている。


「私が母さんの名前を出されると弱いのを知ってていうんだから酷いわ。でも、私も父さんを心配してるのよ」


「僕の娘は、心配性だね。エルフは、好戦的でないだけで強いのですよ。さぁ、ドラフィリアが起きる前に終わらせよう」


「はい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ