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古代叙事詩  作者: 猫田33
深緑の女
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1.はじまり

時は過ぎ去るもの


かつて我らが先祖は神の言葉を聞き、精霊と語らい、さまざまな種族と生活していた


これは過ぎ去りしトキを語ったものなり


                                吟遊詩人の唄






鬱蒼とした森の中一人の女が、足取りも軽く歩いていた。女は緋色の頭巾を被り、その下には茶色の使い古したローブを纏っている。


「今日の収穫物は何かな?」


女の周りには、不自然な揺らぎがあり時折小さな笑い声さえ聞こえている。揺らぎに気がつかなければ女が一人で話しているように見え不気味であった。


「今日は雨が降った後の良い天気だから機嫌がいいね」


周りの木や草には、水滴がつき清涼な空気に溢れている。水滴は、陽の光を通し辺りが輝いていた。女は、話を続けながら歩くがあるところで足を止める。そこは、とても大きな川だった。女は川辺に寄ると慣れた手つきで近くの木に結わえていた紐を引っ張る。紐の先は、川の中にあり引き上げると籠がついていた。


「んっ、しょっ」


籠は、穴の開いた箱のようになっているらしく開けると魚が入っている。あまり大きな籠ではないので入っている魚は、3匹だが脂がのっているようでなかなか肥えていた。他にも何ヵ所か仕掛けていたらしく合計で15匹となっている。


「ふむふむ、これなら野菜を2,3…それとちょっと酒と交換出来そうだね」


女は、そういうと腰から下げたベルトから鋭い石を取り出した。それを持つと採った魚の前で手を合わせる。


「川の民と知りていただき申す。我、森の民に連なるものなり。汝らの命を我が糧とし生きながらえることを許したまえ」


魚のエラに石を滑りこませると背骨を折る。背骨を折られた魚は、身を震わせるとエラから血を流し絶命した。絶命し血を流している魚をさらに川の水で洗う。一匹を終えると次々に同じことをしていき全ての魚の血抜きを終わらせた。


「やっぱり命をとるのは嫌?」


辺りにはすすり泣きの声が響いた。女は、困ったように眉を下げ答える。


「ごめんなさい、私は命をとらなければ生きていけないの」


見えないものが光を発したそれは、ほのかに明るく暗くなり明滅する。


「ありがとう」


女は、そういうと魚を棒に結わい吊り下げる。そして元来た方向へと足を向けた。

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