人は大地に眠る
遠く空を眺めながら、僕は『仮定』について考えていた。
“もし”という言葉は現状に不満があるから考えるのではなかろうと。
そうだとするれば、僕にはそぐわない。いまの僕にあるのは不安だけだ。
もし空を飛べたら、と人が考え時は、空は自由そのものだ。
でも僕がいつも見る空はビルと電線に切り取られ、まるで不自由の象徴みたいだった。
それでも人は空を飛ぶことについて考える。きっと僕の知らないもっともっと高いところに“自由”があるのだ。
だが空を自由に飛び回ることができたとしても、やがて人は地に足を着ける。
人が眠る処は大地にあるのだから。