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じょいふる! Music♪  作者: 一奏懸命
第02章 風向き、変わる
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第041話 後輩たちの本音



「あーあ……どないなるんやろ」

 不意に優花が練習部屋へ戻るときに呟いた。

「どないなるって、何が?」

 周平が聞き返す。

「今年のコンクール。ヤバくない?」

「そうかぁ? なんとかなりそうなもんやけど」

「超楽観的……。あたしが言うてんのは技術面じゃなくって、メンタル面。3年があんなグダグダで、1・2年がついてきてくれると思う?」

「あぁ、そういうことね」

「そういうことねって……。まぁ、今まで割とノケ者にされてた森田くんはちょっとそういうのんに巻き込まれるん、かわいそうやけど」

「お前、わりとハッキリ物言うなぁ」

 周平はククッと笑った。優花は言ってから言葉に優しさがないことに気づき、謝った。

「ご、ごめん」

「いやぁ、別に謝ることちゃうやん。事実やし」

「うん……」

「今まではどうやったん? オレ、学年の話し合いとかまともに参加したことなかったし。よぉそんなんで部活やっとったなって話やけど」

「今まで……ねぇ。今まではあれやわ、愛美と竹中くんあたりが仕切って、なんとなく流れで決まってた。後はでも、やっぱり部長と副部長、顧問が決めてたから、まぁなんていうんかなぁ……あれ。腐ってるっていうか、陳腐じゃなくてえーっと……」

「言いたいことわかる。アレやろ? あってないようなもんやろ? オレら後輩の決め事なんて」

「そう! それ! 言葉が出てけぇへんけど」

 二人はクスクス笑いながら廊下を歩いていく。

「今の子らはどう思ってるんやろ?」

「山口さんとか、猛とか?」

「そう」

「うーん……。また揃いも揃っておとなしい子らばっかりやし」

「先輩の指示に従っていきます、って感じかなぁ」

「そうちゃうか? そんな気がする」

「その先輩のあたしらがあんなグダグダじゃあ……」

「ねぇ……」

 二人は苦笑いしながら練習部屋の戸を開けた。

「あ」

 戸を開けるなり、華名と猛が同時に声を上げた。

「どうしたの?」

「あ、いえ」

 周平と顔を見合わせる優花。ふと気づくと、光晃がいないことに気づいた。

「あれ? みっちゃんは?」

「アカンわ~。先生に当たってみたけど、先生もそこらへん全然知らんって……あ」

 シーッ!とでも言いたげにしている猛と華名の様子を見て、光晃も口を両手で覆った。

「どこ行ってたん? 先生に用事やったん?」

「あぁ、えっと、まぁ、そうです……」

 言葉を濁す光晃。周平はやや不満げに言った。

「もー。正直に言うてぇや。別に怒りはせぇへんから」

「あぁ、えっと……まぁ、大したことやないんですよ。俺たちね、先輩らの誕生日とか、血液型とか、そういうのん先生に教えてもらおうと思って」

 周平と優花が顔を合わせる。

「なんで?」

 優花が聞く。

「いや……意外とそういうのん知らんと、仲良くなられへんかなぁって思って」

 猛がへへへ、と笑った。その笑顔に優花と周平もつられて笑ってしまう。

「そういえば、そうかもしれへんね。あたし、タケも華名ちゃんもみっちゃんも血液型とか知らんわぁ」

「オレなんか大西のんも知らん」

「えー! 何よそれアンタ! 3年間も一緒やって信じられへん!」

 大笑いする5人。ひとしきり笑ったところで、周平が言った。

「そういやぁそうやなぁ。オレも全然、同期の男子の血液型とかも全然知らんわぁ」

「じゃあ、どう? 今から臨時の会議と称してみんなの自己紹介あえてするとか!」

「それえぇなぁ!」

「でも、先生そんなん許可してくれますかね?」

「あ……それもそうかぁ」

 苦虫を潰したような顔をする周平。すると、入口の扉がコンコン、と音を立てた。

「それくらい、任せときなさいよ」

 5人が振り返ると、愛美がそこに立っていた。

「金木」

 周平が慌てて駆け寄る。

「大丈夫なんか?」

「大丈夫。私、そんなにヤワちゃうからね」

 そう言って愛美は大地の宿泊室へと走って行った。

 それから間もなくして、館内アナウンスが掛かった。もちろん、声の主は愛美だ。

「私立浜唯高等学校吹奏楽部の全部員は、合奏部屋の講堂に集まってください。繰り返します。私立浜唯高等学校吹奏楽部の全部員は、講堂に集まってください」

「早っ」

 周平と優花が笑う。

「ほな、行こうか」

 廊下へ出る5人。出ると、ホルンパートにすぐ出くわした。

「先輩。あの……佐藤先輩、戻ってきてないんですけど」

 良輔が心配そうに周平に尋ねる。

「あぁ、アイツ先に行ってるねん。大丈夫やで」

「あ、そうなんすか? っていうか、これから何の話し合いですか?」

「や、そんな堅いもんちゃうからさ。とりあえず行こうや」

「はぁ……」

 講堂に入ると、既に大半の部員が集まっていた。大地と愛美もいる。朋子と未樹は部屋の隅のほうに座っている。

「ほれ、提案者が先にやらんかい」

「や、その前に先生がお願いします」

「え!? 俺か!?」

 周平がニコニコ笑いながらうなずく。大地はまいったな、という顔をしつつその場に立った。

「え~、では、ただいまより浜唯高校吹奏楽部2010年度部員の、『自己紹会』を始めます」

 大地の言葉にサックスパートと愛美を除く全員が呆けている。それに構わず、大地は自己紹介を始めた。




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