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第21話:愛の結晶は、お父様を困らせる天才です

「御子」の誕生から、早いもので三年が経った。

 帝都は今や、世界中から「奇跡の都」と呼ばれている。エルナが歩けば花が咲き、幼い王子・アルエルが笑えば空に虹がかかる。


「……アルエル。その辺にしておけと言ったはずだ」


 執務室で、アルカード様が眉間を押さえていた。

 彼の目の前では、三歳のアルエルが楽しそうに宙に浮き、重要な書類を精霊たちに運ばせて「ひこうき!」と遊んでいる。


「だって、お父さまがお仕事ばっかりで、お母さまと遊んでくれないんだもん!」


 アルエルの魔力と精霊への親和性は、すでに大人を凌駕していた。

 かつて「呪われた皇帝」として恐れられたアルカード様も、自分にそっくりな顔でエルナと同じ瞳を持つ息子には、全く形無しである。


「……エルナ、助けてくれ。この子、私が厳しく言おうとすると、すぐ君に泣きつくんだ」


 私が部屋に入ると、アルカード様が情けない声を出す。

 私はクスクスと笑いながら、アルエルを優しく抱きしめた。


「あら、アルエル。お父様は世界で一番お仕事が忙しい方なのよ。でも、一番アルエルとお母様を愛してくださっているのも、お父様なの」

「……ホント? お父さま、ぼくのこと、すき?」


 アルエルが首を傾げると、アルカード様は大きな溜息をついた後、不器用ながらも息子を私の腕ごと抱き寄せた。


「……好きに決まっているだろう。お前は、私とエルナがこの世で最も望んで手に入れた宝物なのだから」


 家族三人の温かな時間が流れる。

 かつて孤独だったアルカード様。捨てられた聖女だった私。

 私たちの愛は、今や一つの国を、そして次の世代を照らす太陽となっていた。


 しかし、その平和な情景とは裏腹に、没落した母国・ロセリア王国の跡地では、かつての「家族」たちの最後の欠片が風に舞っていた。

 リリアは完全に正気を失い、鏡に向かって「私は聖女、お姉様より愛されているの」と一日中語りかけ、公爵は借金取りに追われて姿を消した。


 私たちが彼らを許すことはない。

 だが、もはや憎むことすら忘れるほど、今の私たちは幸せに満ちていた。

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