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第18話:愛の重さを知らない貴様に、私は倒せない

 北の居城。ゼノスが放つ数千の呪いの矢が、アルカード様の体を貫こうと迫る。

 魔力の半分をエルナの守護に回した今の彼に、それらすべてを跳ね返す盾はない。


「くははは! 英雄気取りで妻に力を分け与えたのが運の尽きよ。ここで死ね、皇帝!」


 だが、アルカード様は避けない。血を吐きながらも、その足取りは止まらない。

 影の刃がゼノスの結界を激しく削り取る。


「……私の愛の重さを、貴様ごときが測れると思うな。エルナが生きている限り、私は何度でも地獄から這い上がる」


 一方その頃、黄金の繭に包まれていた私は、内側から溢れ出す圧倒的な「意志」を感じていた。

 それは、私の命を繋ぐために消えていった精霊たちの願い。そして、お腹の中で私を守ろうとする、小さな命の鼓動。


(……待っていて、アルカード様。今、助けに行きます)


 私が目を開けた瞬間、繭が弾け飛んだ。

 私の背後には、かつてないほど巨大な、透明な精霊の翼が広がっている。

 「聖女」という枠を超え、精霊たちそのものを統べる「精霊妃」としての覚醒だった。


 ◇◇◇


 戦場に、突如として温かな光が降り注ぐ。

 ゼノスが放った呪いの霧が、その光に触れただけでキラキラとした雪のように浄化されていく。


「なっ……!? なぜだ、なぜ呪いが効かん! この光はまさか……」


 虚空に光の道が現れ、そこから私が静かに降り立つ。

 アルカード様の背中にそっと手を添えると、彼が私に分け与えた魔力が、精霊たちの祝福を伴って倍以上の輝きで彼へと還っていった。


「エルナ……。眠っていろと言っただろう」

「……お一人で格好をつけすぎです、陛下。私たちは、二人で一つでしょう?」


 私たちが手を取り合った瞬間、世界から色が消えた。

 黒い影と黄金の光が螺旋を描き、一つの巨大な「断罪の剣」へと姿を変える。


「……あり得ん、人間が精霊とこれほどまでに……ぐあぁぁぁぁ!」


 ゼノスの絶叫が響き渡る。

 彼が積み上げてきた数百年の悪意も、禁忌の魔術も、愛し合う二人の前では無意味だった。

 光の奔流がゼノスの魂を焼き切り、その存在を歴史の塵へと変えていった。


「……終わったな、エルナ」


 崩れ落ちる城の中で、アルカード様が私を強く抱きしめる。


「はい。……お家に帰りましょう、私たちの子供が待つ帝国へ」

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