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第13話:聖戦ですか? では、どちらが本物の『奇跡』か教えましょう

 特使が逃げ帰った数日後、サクリファイス教国は案の定、声明を出した。


『ガラルド帝国は邪悪な魔女に支配された。神の正義を執行するため、聖戦を宣言する!』


 魔女。私のことだろうか。

 アルカード様は「今すぐあの大聖堂を影で叩き潰してくる」と、かつてないほど殺気立っていたが、私はそれを笑顔で止めた。


「陛下、暴力では彼らは納得しません。……彼らが拠り所にしている『偽りの神話』を、精霊さんたちと一緒に壊してあげればいいんです」


 私は帝国の高い塔に登り、空に向かって両手を広げた。

 私の呼びかけに、帝国の精霊だけでなく、教国の圧政に苦しんでいた隣国の精霊たちまでもが共鳴する。


(みんな、力を貸して。嘘で塗り固められた光を、消してあげて!)


 ◇◇◇


 教国の聖都では、教皇が何万人もの信徒を前に、演説を行っていた。


「見よ! この聖なる噴水こそが神の恵み! 我らこそが正義なのだ!」


 教皇が杖を振ると、仕掛けられた魔導具によってキラキラと輝く水が噴き上がる。信徒たちが「おおお!」と跪いた、その瞬間。

 空から、虹色の光の雨が降り注いだ。


「な、なんだ!? この光は……!」


 光の雨が教皇に触れた瞬間、彼の豪華な法衣に隠されていた「民から奪った私財」がバラバラと露呈し、噴水の水はドロドロとした汚水に変わる。


 精霊たちが、教皇が隠していた「インチキ」の種明かしを一斉に始めたのだ。


「偽物だ!」「神の声なんて聞こえていないじゃないか!」


 信徒たちの悲鳴が上がる中、空に私の巨大な幻影が浮かび上がる。


『私はエルナ・ガラルド。……精霊を愛し、愛される者です。神の名を騙り、誰かを傷つけるのはおやめなさい。精霊たちは、あなたたちを拒絶しています』


 その声と共に、教国中の魔導具が沈黙した。

 「奇跡」を失った教皇は、怒り狂った民衆たちに取り囲まれ、聖戦を始める前に、自分の国で「自業自得」の終わりを迎えることになった。


 ◇◇◇


 帝国に戻ると、アルカード様が塔の下で私を待っていた。

 彼は少しだけ寂しそうな、それでいて誇らしげな顔で私を見上げる。


「……エルナ。君は本当に、私の手に収まるような女性ではなかったな。もはや、世界の女神だ」

「そんなことありません。私はただ、陛下に『おかえりなさい』と言ってほしかっただけですから」


 私が塔を降りて駆け寄ると、アルカード様は私を折れるほど強く抱きしめた。


「もう十分だ。これ以上、君を誰の目にも触れさせたくない……。しばらく、二人きりで休もう」


 こうして、世界最大の脅威だった教国は、戦うことなくエルナの「真実の光」によって自壊したのである。

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