第12話:神の代弁者を名乗る男たちが、私の愛する人を侮辱しました
穏やかな昼下がりを切り裂くように、白装束に身を包んだ集団が帝都に現れた。
サクリファイス教国の特使一行だ。彼らは精霊の光に満ちた街並みを「邪教の魔力に汚染されている」と忌々しげに睨みつけながら、王城へと乗り込んできた。
「ガラルド皇帝アルカードよ。そして、迷える子エルナよ」
謁見の間。教国の使者は跪くこともせず、傲慢に言い放った。
「エルナ、貴女が持つ力は神から授けられた聖なるもの。それをこのような呪われた男、そして野蛮な帝国の私欲のために使うのは大罪である。今すぐ我らと共に教国へ来なさい。清めの儀式の後、貴女を『神の道具』として正しく使ってあげよう」
隣に座るアルカード様の拳が、ミシリと鳴った。
謁見の間全体が、凍てつくような殺気に支配される。だが、使者はそれに気づかず、私に冷たい視線を向けた。
「安心しなさい。貴女をたぶらかしたこの皇帝の罪は、貴女が一生、我が教国で祈りを捧げることで許してあげよう。さあ、その汚らわしい男の手を離しなさい」
――汚らわしい?
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中で何かが「プチン」と切れた。
「……陛下の手が、汚らわしいとおっしゃいましたか?」
私はゆっくりと立ち上がった。
私の足元から、これまで見たこともないほど澄み渡り、かつ激しい黄金の炎のような魔力が吹き上がる。
「この方は、呪いに苦しみながらも、たった一人でこの国を、民を守り抜いてきた高潔な方です。精霊たちが誰よりも愛し、そして……私が誰よりも愛している、私の夫です」
私の怒りに呼応して、城中の精霊たちが実体化し始めた。
使者たちの周りを、数千、数万の光の粒が取り囲み、彼らが持つ「聖なる杖」を次々と粉砕していく。
「な、何だ!? 精霊たちが暴走しているのか!? 静まれ、この汚らわしい……ギャッ!」
使者の言葉は最後まで続かなかった。
アルカード様の影が、使者の喉元に鋭い刃となって突きつけられたからだ。
「エルナ、下がる必要はない。……貴様ら、よく聞け。この女性は私の妃であり、この国の魂だ。神だか教皇だか知らんが、私の宝に触れようとするならば――その『神』ごと、この世から消し去ってやろう」
アルカード様の瞳が紅く輝く。それは、かつて「呪われた皇帝」と恐れられた頃よりも、ずっと深く、恐ろしい破壊の衝動だった。
「命が惜しければ、貴様らの主(教皇)に伝えろ。……次にエルナの名を口にした瞬間、帝国軍は教国の聖都を更地にするとな」
腰を抜かした使者たちは、自分たちが撒き散らした聖水を浴びながら、無様に逃げ出していった。




