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第11話:新婚生活は、精霊たちの猛烈なサービスから始まりました

 結婚式から数日が経ち、私は「皇妃」としての初仕事を始めた。

 ……と言っても、私の仕事はアルカード様の隣で微笑み、庭に集まる精霊たちの相談に乗ることくらいだ。


「エルナ、あまり根を詰めるなよ。君が少し眉を寄せただけで、城中の精霊たちが『陛下がエルナをいじめた!』と怒って、私の執務室の書類をバラ撒きに来るんだ」


 苦笑いしながら、アルカード様が私の腰に腕を回して引き寄せる。

 皇帝としての威厳はどこへやら、二人きりになると彼は驚くほど甘い。


「ふふ、ごめんなさい。精霊さんたちが、お祝いにって帝国の南側に『癒やしの温泉』を湧かせちゃったみたいで……その管理をどうしようか考えていたんです」

「……またか。昨日も北の荒野を勝手に果樹園に変えていたな」


 私が幸せを感じるたびに、帝国の土地は豊かになっていく。

 今やガラルド帝国は「死の国」どころか、世界中の商人が喉から手が出るほど欲しがる「精霊の宝物庫」と化していた。

 だが、その豊かさは、遠く離れた大国たちの野心を刺激していた。


 ◇◇◇


 大陸の西側に位置する宗教国家・サクリファイス教国。

 そこでは、自称「神の声を聞く」とされる教皇が、届けられた報告書を握りつぶしていた。


「……ガラルド帝国の呪いが解け、真の聖女が現れただと?」

「はい。彼女が微笑むだけで、枯れた大地に精霊が戻り、万病を治す泉が湧くとのことです」


 教皇の目が、どす黒い欲望に濁る。

 彼らにとって、聖女とは「神(教団)の管理下」に置かれるべき道具。勝手に隣国を豊かにするなど、許しがたい越権行為だった。


「その女……エルナと言ったか。彼女こそ、我が教国が長年探し求めていた『失われた神子』に違いない」

「はっ……。では?」

「ガラルドの野蛮な皇帝に、神子を奪還する旨の親書を送れ。拒むのであれば、聖戦(戦争)も辞さない」


 平和な新婚生活の裏で、世界最大の宗教組織が動き出す。

 彼らはまだ知らない。

 エルナを奪おうとすることは、あの「親バカならぬ妃バカ」の皇帝アルカードの、最も触れてはいけない逆鱗に触れることだということを。

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