私の推しは私の片割れ
暑いので、初めてのホラー? です。
意味が分かると怖い話? かな??
「ねえねえ、先輩に推しっているんですか?」
会社の飲み会。同じ部署の後輩に訪ねられ、私はスマホのスクショを見せる。
「あー、この子、最近流行りのVチューバ―ですよね? 先輩って意外と流行追うタイプなんだー!! そういえばこの子、うちの会社のソシャゲやってくれてるって話でしたっけー、それでチェックしているうちにハマっちゃったかんじですか?」
曖昧に笑う。
私の推しは流行りだしたVチューバ―。
前世の推しは心理描写が巧みなホラー作家。
前前世の推しは色使いが魅力な陶芸家。
前前前世の推しは誰もが足を止める琵琶法師。
そして初めての私の推しは、共に生まれた妹だ。
魔女は特別な存在である。
双子は特別な存在である。
魔女であり双子である私たちは、特別の中の特別だった。
共に生まれ、共に育ち、共に学び、共に生きた。
そして共に火あぶりにされた。あの忌々しい魔女狩りで。
燃え盛る炎の中、私と妹は共に願った。
再会を。
来世での幸せを。
必ず共に生きようと。
魔女の願いは届くはずだった。
私と妹を妬むあの子がいなければ。
あの子は願った。
私と妹が二度と会えないことを。
相反する願いは混じりあい、打ち消しあい、増長した。
そして私と妹は、1000年の間、会えないこととなった。
同じ国に生まれるのに、同じ時代を生きるのに。
私たちは顔を合わせることができなかった。
それでも私たちは互いを求めあい、叫び続けた。
「私はここにいるよ」
私たちは互いの声を聞いた。
琵琶法師の絵姿に妹の面影を見た。
陶芸の色遣いに妹の瞳を見た。
ベストセラーで引き裂かれた恋人たちは私たちのことだった。
Vチューバ―が歌うこの歌は、私への愛だ。
私も妹に叫び続ける。
「私はここにいるよ」
前前前世では妹を主人公にした物語を綴った。
前前世では妹を思った曲を作った。
前世では舞台で妹に愛を叫んだ。
今は妹を思ってゲームを作っている。好きなキャラクターの新規イラスト、喜んでくれるだろうか。
私と妹が再び出会うまで、あと500年ほど必要だ。
できることなら時計の針を捻じ曲げてしまいたい。
空間の扉をこじ開けてでも妹に会いたい。
転生して魔力を失った私にそれはできない。
でも構わない。
私達は、再び出会うことを望んでいるのだから。
私は妹の為ならば1000年だって待てるのだ。
ところで、私は、時々思う。
こんなにも強くお互いを想いあう私達に嫉妬していた、「あの子」は一体だれなのだろうか? と。
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