滑稽且つ無意味で誰も得をしない命令
全ての命あるものは何故生きてるのか。
答えは簡単だ。
命を次に繋ぐため。
では、何故命は次に繋がなければならないのか。
これには幾つもの答えが存在すると思う。
その中の一つにはきっと、こういうものがあるだろう。
つまり、完璧な存在になるため。
完璧な存在とは何か。
これもまた多くの答えがあると思う。
だが、私はあえて答えを一つに絞りたい。
それは、つまり。
全ての命は『神』になるために生きているのだ。
同種の遺伝子をより複雑に絡めていき、少しずつ完成度を上げていき、やがてはその種は『神』に至る。
それこそが全ての命が持つ使命なのだ。
そして。
私の種族である『人間』は『それ』に最も近づいたにも関わらず、最終的には『人間』という文明で満足してしまった。
気づけば『人間』であり続けることに疑問を持っていなかった。
他種族を圧倒する中で使命を放棄し続けた。
そうしている内に、他の種族が一歩一歩着実に『神』に近づいていると気づきもせずに。
「だから、出し抜かれるんだ」
私はそう呟いて最後の工程を終えた。
目の前に存在するのは私が造り上げた完璧なロボットだった。
だが、機械である故にこれには『命』は存在しない。
故に、これが『神』になることはないのだ。
そして、既に『神』に到達した種族が人間を含む全てを駆逐し始めている。
当然だ。
完璧な存在は、命は、この世に一つきりで十分なのだから。
だからこそ、全ての命は永劫を想起させるほどの時間を争っていたのだから。
既に『神』が生まれた以上、他の種族に勝ち目はない。
私もまた殺されるのを待つだけだ。
しかし。
私にはそれが実に腹立たしい。
だからこそ、私は人間として最期の嫌がらせをしてやると決めたんだ。
立ち上がり、ロボットを起動させる。
これに『命』はない。
故にこれは『神』ではない。
しかし、これもまた『不死』である。
これから私がする命令は何の意味もないものだ。
誰も得をしない。
実に滑稽なものだ。
だけど、私は。
いや、人間と言う種族は。
かつて『神』に最も近づいた『命』は。
どれだけ滑稽で、どれだけ無意味で、そして誰も得をしないと分かっていても、こういうことをするのを抑えられない。
「命令だ」
そう言って、私はロボットに命じる。
『負けるのは我慢ならない。だから【引き分け】に持ち込め』