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白世界  作者: 白龍閣下
白世界
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第七話 新聞部室のスイートタイム

「で、話とは?」

 私は結局差し出された水を飲み干し、新聞部部長である仁科さんに本題の提示を求めた。しかしその返事はと言うと、

「まあ水でも飲んで落ち着いてください」

 といってにやけながら新たに水の入ったコップを差し出すだけだった。

「いえ、水はいいですから本題を」

「冷静になってください」

「もういいですから」

「水を飲んで話し合おうではありませんか。話せば分かります」


 ……………………。


 切れた。

 千切れた。

 プッツンした。


「だからこれが何杯目かってんだ! そんなデジャヴいらねえよ!

 第一何なんだなんだてめえら人をコケにしやがって! 人を縄で縛ってきて何が落ち着けだよクソが! ジョークだとしても誰も笑わねえよ!

 挙句の果てにやらせる事はただひたすら水を飲ませるだけと来た! 見事なまでにふてえ接客だ! 私をこの秋津晴希と知っての狼藉か!…………はい、ごめんなさい。冷静になりますから」

 思わず我を見失ってしまった。危うくキャラがぶれてしまう所だった。これは開き直って嘉光のせいにするしかないか。そうだそうだ、あの変態がストレスを蓄積させたに違いない。

 とはいえ今こうやってコップを投げ捨て、暴言を吐いたのは私なのだ。いや、本当に八つ当たりしてすみませんでした。

「そうですか……まあ、落ち着いて水でも飲んでください」

 仁科さんの言うことは至って冷静だった。その眼鏡の向こうがあんな感じでなければだが。涙目は行きすぎだろう。どんだけ豆腐メンタルなんだよ。なにしろこっちはコイキングより弱いってのに。

「で、では本題に移りましょう」

 仁科さんは表情を隠すように慌てて眼鏡を押し上げ、話を始めた。

「簡潔に言うと、あなたに文芸部から新聞部に移って貰いたいといった話なんですよ」

 予想通り、ストライクゾーンど真ん中の話だった。さっきも新聞部はどうかとか話していたし。

「それで、何故私が? 普通に一年生でも攫ってくればいいじゃないですか」

「それは本気で言っているのですか?」

 無論本気で言っているわけではない。確かに私が新聞部側ならば今の私のような位置の奴を攫うか、あるいは誰も攫ってこない。まあ普通に考えて誘拐という発想には至らない。よってどっちにしろこの人達の行動にはさっぱり理解ができないという事だ。

 そんなさっぱり理解のいかない仁科さんは再び話を続けた。

「理由は四つありますよ」

 この人の言う四つの理由。それを要約すると。

 まず、私と言う人間のカリスマ性。これは自分で言うのもなんだが。まあ悲しくも事実なのだから仕方がない。

 私が一般人であるかと問われれば是非ともイエスと答えたい所だが、残念ながらそうではない。女が改造学ランに身を包んでいる時点で私のキャラは確定してしまっているのだ。

 それで、何故だか人気がある。去年度のバレンタインの事とかは思い出したくもない。

 とにかく、私が入る事で一種の新聞部の宣伝効果になると言う事だろう。

 次に、内藤嘉光と言う変態との関係。

 嘉光は常に私に付いて回る。ここで私を説得して新聞部に入れれば、いずれ嘉光も関わってくる。その時が新聞部にとっての好機だ。そして嘉光を組み込めば嘉光のカリスマ(これも納得いかないが事実である)に釣られて大量とは言えなくもまた人が来る。

 そして、こうやって攫うことの容易さだ。

 時々誤解される事があるが、知っての通り私の身体能力はそりゃ酷いもんだ。それは実の兄に「コイキングより弱い」と評されたほど。だから実際は下手な一年よりずっと攫いやすいはずだ。

 最後に、文芸部における私の立ち位置。

 私の居場所が狭いという事だ。確かにその通りであり、嘉光然り杭瀬然り、あそこは私を悩ませる原因が多い。

 実際に私はあの部に好きで入ったわけではない。他社にとっては一見どうでもいいような理由があって、その上であの部にずっといる。

 これらの理由から、私はまさしく恰好のターゲットだったと言うわけだ。なんて絶妙な位置にいるんだろうか私は。自分の身を呪う他ない。

 と、ここで聞き慣れた電子音が流れた。私の携帯電話だ。

「MGSとはまた女子高生らしくないチョイスですね」

「……放っておいて下さい」

 ポケットから取り出して外側のディスプレイに目を向けると、そこにはこんな文字列。

『内藤嘉光』

 そうか、嘉光か……


 あいつはいつの間に私の携帯にこんなのを登録したんだらうな。私は携帯電話を人に貸した事すらないし、ましてやあいつとの番号交換もきちんと懇切丁寧に断り続けてきていた筈なんだが。

 えー、一つ思うこと。

 何で皆こう執筆が早いんでしょうか。リズムですかね? リズムの問題?

 とりあえず近頃この話の一話一話が短くなっているのをどうにかしなければ。明日から本気だします。

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