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白世界  作者: 白龍閣下
白世界
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第三十話 一時終点

 イレギュラー分子であった邦崎綾女くにさきあやめは偽の不良から内藤ないとうの写真を渡すことで処理した。なお、その写真の例を挙げると「風呂上がりの内藤嘉光よしあき」「寝起きの内藤嘉光」「寝起きの内藤嘉光その2」など。おそらくは嬉々(きき)として帰っていったであろう。

「しっかしあいつら、めちゃくちゃはるにばれてんじゃねえか。あれならまだ大根の方がマシだぜ」

 そして先の対邦崎綾女用部隊の無能さに誠文まさふみは呆れていた。

「あれは大曽根おおぞね先輩が途中で変に脅かしたのも問題だったと思います」

 朱鷺羽ときわはそう反論を述べる。結局こいつもはやる気持ちを抑えて忍耐強くここまで来ていた。無駄な根性にしてはよくやったものだ。

「何言ってんだ、あのままじゃ晴も家に帰ってた。こんな面白……先輩としての義務を果たすためなら木の一本や二本、チャリの一台や二台の犠牲ぎせいはあっても仕方ねえだろ。むしろあれよ」

「本当に大曽根先輩は……どう思いますか? 参謀さんぼう先輩」

「だから参謀ではないと言っている……」

 思えばこんな呼び名がついたのも些細ささいなきっかけだった。人の噂も七十五日。たかが二ヵ月半なら上等だが、しかしこちらがわずかながらだが弱みをにぎられているというのは厄介だ。

「んで敦次あつし、この後なんか考えでもあんのか?」

 誠文があるだろというように聞いてくるが、実際ない。

「ん? 考えてなかったのか?」

「馬鹿言え。俺はあえて何も仕掛けないことにしただけだ」

 何も考えてなかったから、あえてだ。



あねさん、小娘の説得、完了しましたb


 こんなメールが来ていた。さっきのあの似非えせ不良からなんだろうが、如何いかんせん私は他人にメアドを教えた記憶がない。どうせ嘉光よしあきの時と同じなんだろうな。プライバシーとかそう言ったものをことごとく跳ね除ける一宮いちのみやさんの所業なんだろう。

「そうだ、京都に行こう」

 馬鹿嘉光の提案。だがそんなものに釣られる気はさらさらない。

「黙れ、お前一人で地獄じごくへ行け」

 こんな感じで返しておけば万事オッケーだ。基本、対嘉光用コミュニケーションは罵倒ばとうに始まり罵倒に終わる。ソースはこれまでの経験論だ。ベーコンさんは偉大いだいだな。

「いや、冗談無しで尻切れ蜻蛉とんぼってのはちょっとな……」

「尻切れ蜻蛉、良いんじゃないか? 一部の価値観のかたよってる人なら多分風情ふぜいがあるとでも言ってくれるさ」

「じゃあ晴希はるき、お前の行きたがってた──」

葬儀場そうぎじょうか? 別に行きたくなどないが」

「じゃあどこへ行けばいいんだよ!」

 まあ確かに嘉光の言う通りか。終わらせるならきっちり終わらせないとな。区切りのよさは大事だ。

「なら、学校でも行くか」

 文芸部室にでも行ってみるか。そこでも適当にゴールにしてしまえばいい。

「保健室か? 誰かが偶然にも鍵持ってたりしないだろうか……なんてな。っておい、そこはすぐ突っ込んでくれって!」

 すまない。お前の勘の鋭さについ呆れてしまった。

 しかし冗談じゃない。確かに私は貧弱だが保健室で休む必要もないし、ましてやデート以上の事をする気などまっさらだ。

「とりあえず、行くぞ」

「そんじゃ、保健室へレッツラゴー!」

「もういいお前は帰れ」

「ええ!? ちょっと待……だから無視するなよ!」

 こうして、私達は文芸部室におもむいた。



 文芸部室は、なぜか鍵が開いていた。また一宮さんが事態を想定しての事かもしれない。

 ちなみに扉は先に嘉光に開けさせた。その時黒板消しが嘉光の頭に直撃してくれればありがたかったが、やはり今日も黒板消しはなかった。

「……というわけでこれが大まかなあらすじです、仁科にしなさん」

 机に座って空調でくつろいでいる新聞部部長にカメラを渡す。

「おう由宇ゆうさん由宇さん──っていつの間にいた!?」

 嘉光は驚愕きょうがくしていた。いやしかし、それを私にかれてもだな……。

「仁科さん、なぜここに?」

 嘉光の疑問をそのまま仁科さんに伝える。普通新聞部が勝手に文芸部室に入るなんて事はしたくても出来やしないはずなんだがどうした事か。

 その質問に仁科さんはあははと笑い、それからゴホンと咳払せきばらいをし、改まって説明をした。

「この方が案内してくれたのですよ」

 と、上からいきなり女生徒が降ってきた。そいつは誰かって? そんな登場のしかたをするのは、私は二人しか知らない。ちなみにそのもう一人は新聞部の扉を蹴破けやぶ召喚獣しょうかんじゅうなのだが、まあその話は良いだろう。

「や、ハルちゃんに嘉光よしあきくん、お疲れさん!」

 それは、三年の天森小枝あまもりこのえさんだった。

 となりで嘉光があまりの意味不明な展開に困惑しているようだが、そんなことは知った事じゃない。

 結局の所、私達は今日一日先輩方の手の平でおどらされていただけなのかもしれない。唯一抵抗できたと言えるのは映画館での邦崎との邂逅かいこうくらいだ。

 ああくそ、だるい。さっさと私は寝たい。

 そう言えば保健室の鍵があったんだったな。折角だからベッドでも拝借はいしゃくしていくか?

「ん? 晴希、もう帰るのか?」

「……ああ」

 やっぱり帰ろう。せめて嘉光のいない世界で眠ろう。

 私は、そう思った。

 えー、ちょっと聞いてくださいよ奥さん。

 デートとか実際どんなのか俺知らんとですよ。

 あと最近の俺は妄想力に欠けてる気がしてならんとですよ。

 んでぶっちゃけ微妙なんですよ。

 ってか会話部分だけやけにはっきり書ける自分はもうあれなんですよあれ。

 つーわけで(どんなわけかなどと言う苦情は一切受け付けておりません。あしからず)、地球の皆、おらにネタを分けてくれ。後生だから。俺はその間保健室のベッドで寝てるから。うん。

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