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白世界  作者: 白龍閣下
白世界
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第二十九話 三輪車に君は何を思ふ

「待ってくれ、ここは……なんだ、ええと兄貴が出る幕じゃねえだろ」

「いんや、悪いが、ええと、とりあえず適当に俺自ら頑張るぞ」

 何だか物凄ものすごく不自然な絡み方をしてきた不良……かどうか分からない人たち。

 とりあえず、ここは一つ鎌をかけておくか。

「あー、とりあえず訊きたい事があるんだが」

「おうよ、冷蔵庫の上手な収納法から玉子を片手で割るコツまで何でも答えてやろうじゃねえのウンコビッチ」

 ……いや、そんなお得な家庭情報はいらない。というかやっぱりこいつら全然不良じゃないだろ。


董城とうじょう高校の、大曽根おおぞねさんと一宮いちのみやさんって、知ってます?」


『…………』

 おや? やっぱり黙った。

「ん? どうしてそんな事を訊くんだ晴希は?」

嘉光よしあきのアホめ。ドクターペッパーの飲みすぎで脳が溶けたか? 少しは自分で考える力を持て」

 私がそう言うと嘉光が落ち込んでしまった。そんな嘉光に邦崎は「大丈夫?」と声を掛けている。

 そして例の不良達といえば。

「そ、そんな誠文まさふみさんなんて聞いた事すらないなあ! はっはっは、そうだよな!」

「と、当然だ兄貴! 俺たちゃその敦次あつしさんなんて人も知らないんだなああばばばばばばばば!」

 ……図星だ。完璧かんぺきに図星だ。てか私はあの二人の下の名前を言った覚えはない。

 それであの御二方、私達にどういうリアクションを取れと? さっぱり意図いとが分からないぞ。

 仕方ない。こういう困った場合の選択肢は──。

「とりあえず私は帰──」

 と、ここで視界の隅には火を噴いて暴走する無人の三輪車。

「ろうと思ったが歩きで疲れて足が棒になってしまったな。さあ逃げられないどうするか」

 それが似非えせ不良君達の仕業でないことはすぐに把握はあくした。だってあいつら顔が真っ青なんだもん。

 口は災いの元。下手なことを言うと大曽根さんにあの三輪車みたいにされるかもしれない。

「そ、そうだ! おい貴様!」

 こちらにふるえる指を向けて声をしぼり出す不良君(の振りをした奴)。何だかあわれに思えてくるので、とりあえず応じておいた。というか私もよくもまあこういう自体にもかかわらずこんな冷静に分析できるものだ。

「どうした」

「お、お前じゃねえよ! 女の方だ!」

 なんだ、邦崎のことか。あいつに用があるのか? というか──

「私も女だよ!」

「……ああん!? てめえ何だその口の利き方は」

 なんて理不尽な怒り方なんだそれは。とりあえず悔しいから難癖なんくせつけたって所か。

「俺らにそんな口の利き方していいとでも思ってんのか?」

「いやそりゃ……思ってません、はい」

 迷った末に謝罪。大きく出すぎる必要はない。何せこちらはコイキングより弱いのだ。

「まあいいけどさ……こっちもごめんなさい」

 結局いいのかよ。そして素直に謝ったし。おい、完璧にが出てるぞ、なんて言ってやりたい。

「……と、とりあえずあんたを呼んだんじゃないんだあねさん。おいそこの娘!」

 そう言って邦崎を手招きする不良君(の振りをした奴)。ところで自分でも知らない間に姐さんにまで昇格してしまったんだがどういう事だ。

「私を……どうする気……?」

 声を絞り出す邦崎。やはり火炎三輪車に驚いたのか……いや、思い込みが激しいこいつの事だからまだ本物の不良だと思っているのかもしれないし、単にこいつらに怯えているのか?

 そして、そんな邦崎の様子に威勢を取り戻す不良君達(の振りをした奴ら)

「ふっ、話はこっちに来てからだ」

「痛いようにはしねえからよ」

 まだ迷う邦崎。似非えせ不良と似非親友の対面だ。いや、それで私はどうすると?

「姐さんは向こうに行ってろ!……いえ、行って下さい!」

 そんな私の思考を読んだかのように呼びかけてくる。……って、おい。

「だからなぜいきなりそんな扱いなんだ!?」

 まずいな。邦崎にまたあらぬ誤解を受けてしまったかもしれない。あいつ自身は本気のつもりだからこっちとしては非常に辛い。

 ──と。

「俺がいつドクターペッパー好きキャラになったんだよ!」

 嘉光が叫んでいた。

「……馬鹿が目覚めたか」

「いつも思うんだが晴希は最近俺に対する態度が酷すぎると思うんだ!」

「気のせいだ気のせい」

 それはきっと杭瀬くせの言う、光の屈折というものだろう。

「いやこの前晴希俺からの電話舌打ちして切ったよな!?」

「それは多分電波が悪かったんだ。きっと平行世界にいたからだろうな」

「晴希、ひょっとして怒ってるのか?」

 さあ、どうだろうかね。私は何も答えやしない。

 とりあえずさっさと似非不良君達の言いなりになって嘉光を邦崎から離そう。さっさとデートを終わらせればそこでおさらばだ。

「行くぞ内藤ないとう。どこへかは知らんが」

 場から立ち去りながらそう言う。これに対し嘉光は。

「それはここから俺のエスコートという解釈でいいのか?」

 違う。

「……内藤、脳の健康のためにも炭酸飲料の少しくらいは控えろよ」

「だから俺はそんなキャラじゃないし炭酸飲料で脳は溶けないから!」

 なんて奴だ。折角の人のアドバイスを跳ね除けるなんて、こいつの体に人の血がかよっているとは思えない。

 ところで、邦崎は何をしているんだろうか。悪い人達に絡まれた後果たしてどうなったんだか。

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