第十六話 デジャヴ──闇夜のワルツ──
今回は新キャラ一人だけしか出てきません。それもアホの子です。
……それにしても、相変わらずサブタイトルと内容が噛み合わんのはたまげたなぁ。
「あーもう、暗い。可哀相なわたし」
暗い暗い廊下をわたし、葛原水月は歩いていた。ちなみに幽霊とかはものすごく苦手だから出来れば行きたくなかったんだけど……。
それでも、備えあれば嬉しいなって言葉が世の中にはある。これはわたしの好きな言葉。
「ジャジャーン。携帯のライトで懐中電灯の代用が出来るのよねー」
やっぱりなんだかんだ言ってわたしは賢い。皆わたしのことを三年生なのに実力試験で五教化合計114点だったってバカにするけど、世の中は学力だけじゃないってことがありありと分かる。
だからそう、人間の価値は点数なんかじゃ決まらないのよ!……ごめん、失礼したかしら。
とにかく、この明かりがあれば地面から生えた手とかが足首をつかもうとしてもたったって逃げ切れるんじゃないかしら?
「うん、そこらへんの動きは何度も脳内シュミレーションしたから大丈夫よ」
携帯を手放さないようにしながら階段を上る。ここは、前から突き落とされないように用心しなきゃいけない。
「そもそもこういう事態になったのは……」
状況を振り返る。独り言が五月蝿い?……静かだと怖いから仕方ないじゃない。
確か……そう、教室に大事な参考書を忘れていたのよ。
あれがないと、わたしは枕を高くして寝られない。世界史と物理の組み合わせが結構快適なのよ。高さ的に。
「色々試行錯誤してたけど、やっぱり世界史と物理! この二つばっかり。おかげでもう参考書もボロボロよ」
まるで受験生みたい。実際に受験生なんだけどね。
無事階段を上り、そのまま廊下を歩く。
「目的地は教室なんだけど、鍵って必要かしら。運がよければそのまま開いてるかもしれないけど」
先生がおっちょこちょいだったりとか、泥棒が侵入した後だったりしないかしら。あ、泥棒が来てても参考書が盗まれてたら残念ね。
けど、開いてなかった時の対策も賢明な私は考えてある。
「ジャジャーン。伸ばしたクリップがあるのよねー」
テレビとかでこれを鍵穴に入れて適当にカチャカチャしてると扉が開いた気がする。実際にやった事は無いけど、なせばなるでしょ。
階段を降りる。万が一お化けに後ろから突き落とされたりとかしないように用心しなきゃいけない。とりあえずクリップはしまっておく。
当然、賢明な私なので無事に降り終わった。そのまま廊下を進む。
そこもやはり、闇に包まれ怪しさを出しているものの見慣れた場所だった。っていうか……
「何度同じ場所に来ればいいのよ!」
実はこの景色、何度も見てるのよね……。これで四回目くらいかしら?
これはまずい。わたしが同じところをループしているだけのような気がする。
しかしここでようやく、確実な変化が訪れたことになる。
──ガシャン、ガシャン
そんな足音を響かせ、その悪魔は現れた。わたしはあまりに恐ろしくて声を出せなかったし、タッタッと逃げる事も出来なかった。
そして目の前に、無機物的な体が現れた。手にはアニメとかでよく見る光る剣が。
……機動戦士ガン○ム。
「きゃーーーーーーーーーーー!」
しかし、わたしの中ではおかしさよりも恐ろしさの方が上回っていた。あんなビームサーベルの攻撃を喰らって、痛いはずがないんだから。このシュールさによって出来るようになったのはせいぜい悲鳴をあげることぐらいで。
そのまま近づいてくる。足はまだ震えたまま動かない。
射程範囲に入って、そうして攻撃が振り下ろされ──
「きゃーー! きゃーーーーーー!」
──ザクッ
見事に刺さった。ただし──そのモビルスーツの腕に、それも──煮干しが!?
…………。
「きゃーーーーーーーーー!」
怖い。この目で見ている状況がシュールすぎて逆に怖い。
と、そのままわたしは誰かに抱えられて、連れ去られるはめになった。
もうやだ、これ……。