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白世界  作者: 白龍閣下
白世界
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第十一話 神出鬼没の邪心礼賛

「総員、あの人を抑えなさい!」

『了解!』

 突然の闖入者、神城羅央を取り囲む新聞部。

「おっもしれえ! かかってきな! 全員俺がこのこの創始の力(フォース・オブ・ジェネシス)でぶっ飛ばしてやるよ!」

 何だそのやけに厨二病臭い単語は。ここに来て変な異能力出すのか? やっちゃうのか!?

「さて秋津さん」

 新聞部一同が神城と交戦しているのを見やりながら、仁科さんが話し掛けてくる。ああ、あれは抑えられないな。キャラ的に。

「何ですか? 新聞部に入る気ならさらさらありませんが」

「いえ、そうではなく──さっきの水の事ですよ」

 さっきの水? つい勢いで飲んでしまったが、やはり罠にかかったのか?

 なんて事だ。という事はさっきの行動は油断させるために……してやられた。囲碁で初心者相手に「取った」と思って油断してたら目を離しているうちに石を取られたような気分だ。そんなの、とんだ道化じゃないか。全く以って私のキャラじゃない。腹立たしいな。

「さっきの水──ただの水道水なんですよね」

「…………」

 やっぱり駄目だろう、この新聞部。

「ところで仁科さん」

「はい」

「あの一年、異次元的な力を使ってるように見えるんですが」

「安心してください。彼が手から波動を飛ばしているように見えるのはあなただけじゃありません」

「ですよね」

 溜息をつく事しか出来なかった。本当にここに来て異能モノか。並行世界って怖いな。

「あの一年は何やってんでしょうかねえ」

「困った侵入者さんですよね、本当に」

「ほんと、凄いわよね! 私も出来るけど!」

「出来るんですか! というか──」

 声をかけてきたその人の方を向き、はっきりとその疑問を言葉として飛ばす。

「なんで天森さんは当然の如くここにいて、会話に割り込んでいるんですか!?」

「あら、神出鬼没とハーモニカの演奏が私のアイデンティティだったと思うけど!」

「どさくさに紛れて変な特技を付け加えないで下さい!」

「そう──ツンデレがハルちゃんのアイデンティティであるように!」

「うるさいだまれ」

 嫌な方向にまとめられたものだ。思わずため口で突っ込んでしまった。いかん、焦りなのかついさっきの仁科さんへの接し方を引きずってしまったな。キャラ的にはどっちも同じようなものだとは思うが。

「誰と誰が同じようなものって?」

 ほら、こうやって焦っているからこの人も読心術が使えたっていう事実を忘れてしまったりするんだ。

 本当に……私は馬鹿だ。とんだ道化だ。他に言い様のない弱者だ。

「さてハルちゃん、あちらでちょっと話をしようかしら?」

「えっと、それは──そうです、仁科さんが暇じゃないですか」

 みんなが手から出た波動に吹き飛ばされている間ずっと、この人は水道水を飲んでいなきゃいけないのか。そんなのは残酷すぎる。私も泣く。といってもこれから待ち受ける天森さんの処刑タイムにだが。ははは、全然暑くないのに汗が止まらないや。

「それは問題ないわよ!」

「……と、それはどういう」

「では、俺と話をしましょうか。由宇さん」

「……内藤」

 今度は内藤嘉光。度重なる神出鬼没にもうかけてやれる言葉がない。

 その嘉光が首だけ回してこちらを見ながら、こう言った。

「言っただろ晴希? お前がどの世界にいようが俺は必ずお前の所に行くって」

「だからそういう並行世界じゃないからな」

「何……ですって?」

 今度は仁科さんが驚愕してしまっていた。敵同士の割に息合ってるなお前ら。増えたのは仲間じゃなくて敵なんじゃなかろうか? 仲間を増やして次の町に行く某ポケモントレーナーとは大違いだ。少なくともコイキングより弱い女子高生が進むべき道じゃあないと思うんだ。

「今まで並行世界だなんだと私を騙して、嘲笑っていたのですか……」

 まだ信じ込んでたのかよ。あんたはもういいよ仁科さん。ただ一つだけ違うのは、笑えもしなかったって事だけど。ならばどうする? こうするまでだ。

「内藤、後は任せた」

 こいつに頼むしかない。一対三よりは明らかに一対一の方がましだ。

「すまん晴希、ちょっと調子が悪いもんで」

 こいつ……見事なまでに棒読みじゃないか。言っておくがこんな私でもお前の口からいつものアホのような発言がスラスラと流れ出る事くらいは知ってるんだぞ。

「何が目的だ内藤!」

「いや、つまらない事なんだが──」

 嘉光は私の目を見据えて続けた。

「『嘉光』って呼んでくれ」

 こいつ、まだそんなことを気にしてたのか。懲りない奴だ。ばーかばーか。

「ああ、分かったよ嘉光!」

「急に力が湧いてきた! 新聞部を皆殺しだ!」

「いや、そこまでやらなくてもいいだろ! というかやめろ!」

「半殺しだな!?」

「ああもうそれでいいよ!」

 嘉光がいつもの十割増し(実質二倍)邪な気を纏っていた気がした。……私のいない間こいつに何があったんだ?

「さてハルちゃん、こっちに来てくれるかしら?」

 そして私の戦いも始まる。

バトルはこの後すぐってところか。超展開にも程があるだろ。

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