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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

英雄になりたい俺、異世界で大魔王になる

作者: 三茄子
掲載日:2023/12/25

 英雄になりたい。



 それが俺の長年の夢だ。

 いわゆる英雄願望というやつだろうか。



 とは言え、突然そんなことを言われても……と困惑する人が大多数だろう。

 俺の十七年もの経験上、確実に変人扱いされることは間違いないと思われる。



 だが構わない。

 周囲にどう思われようが、俺は英雄になりたいのだ。

 十七歳になった今でもなお。



 それではまず英雄とは何なのだろうか。

 辞書で調べるならば、すぐれた才知・実力を持ち、非凡な事をなしとげる人……とでもなるのだろうが、生憎そんなことはどうでもいい。



 俺の目指す英雄像はと言うと……



「今日もありがとね~」


「いえいえ、これも俺が好きでやってることですから」



 俺の名前は神山ミツル。普通の男子高校生だ。

 勉学も普通、運動神経も普通、芸術のセンスも普通。勿論顔面偏差値も普通であり、言わばパッとしない系男子なのである。



 ……とはいえ、俺の名前はこの町では結構広く知られているのだ。

 毎日困っている人の元へ駆けつけ、颯爽とその問題を解決する。

 ついさっきも階段前で重い荷物を抱え、困っていた御婆さんを助けたばっかりだ。



 ここは東京とは三百六十度……とまではいかないが、それでもかなり田舎の町であるため、噂はそれなりに早く、それなりに広まるものだ。

 そして俺の功績(?)もそれなりの噂となって広まり、そしてこの町ではそれなりに知られる人物となっているのだった。



「けっ……見ろよアイツ、馬鹿みてぇだな」


「ハハッ!!違いねぇ」



 それ故に各方面、様々な妬みや嫉みを貰うことも多い。むろん感謝される割合の方が極めて高いのだが、それもやはり仕方のないことだろう。



 かの有名なナポレオンでさえフランス国内からは英雄視されたが、他のヨーロッパ諸国からは恨まれていたのだ。

 最後毒殺されたという説があるのも、そういった妬みや嫉みが原因だったと言えなくもない。



 それでも俺はこの生活をやめるつもりはなく、小学校の卒業文集で書いた将来の夢を実現しようと日々努力しているのだ。

 ……そう、『英雄になる』という夢を。



「でも、なんか違うんだよなぁ」



 その後も何件か人助けをしていると、気が付けばもう辺りは真っ暗。

 そこそこな田舎町であるため街灯は少なく、民家から漏れ出る光が主に辺りを照らす。



 俺は好みの微糖缶コーヒーを買うためコンビニに立ち寄ろうと寄り道をしながら、そう呟く。

 ポケットから財布を取り出すと、それを右手にギュッと握りしめる。お金は大事だからだ。



「英雄ってのはもっとこう、派手に登場して派手に敵をやっつけて……いや、熱い言葉で敵を説教して改心させるやつっていうか……とりあえず今の俺は何か違う!!」



 俺の目指す英雄像はそんな感じだ。

 ボランティア精神あふれるただのお人好しって奴じゃなく、悪の組織を華麗に制圧し、敵の親玉を熱いセリフで改心させる。



 そんな物語の主人公のような英雄になりたいのだ。



「俺につけられたあだ名、『稀代のお人好し』だぞ?泣くって流石に……」



 重い荷物を持ってあげて、捨て猫を拾ってあげて、落とし物を一緒に探して、小さい子供の遊び相手をして……

 結局それらは俺の目指す英雄像とは少し違う気がするのだ。



「でもアニメみたいに都合よく路地裏でいじめが起きてる訳じゃないし、スリがそこらをウロウロしてる訳じゃないからなぁ……日本治安良すぎだろぉ」



 なんと日本は世界で三番目に治安がいい国だそうだ。

 あれ?殺人事件が少ない国……だっけ?

 うろ覚えだがそんなことはどうでもよく、実際に日本の治安が良すぎて俺のような英雄願望を持つ一般庶民がどうこう出来る隙がないのだ。



 なら警察官とか自衛隊とかに入ればいいじゃんって思うでしょ?

 でもそれも何か少し違う気がして……

 とにかく俺は自分で言うのもなんだが、こだわりが強くて面倒くさい男なのである。



「コンビニついたっと。はぁ、平和だ」



 コンビニには金出せ強盗がいる代わりに、一般客が五人いた。

 持っていた腕時計で時間を確認すると、午後七時。

 この辺での娯楽がコンビニでの漫画の立ち読みだけだと考えると、案外少なすぎる人数なのかもしれない。



 そんなことを思いつつ、俺はいつものように微糖缶コーヒーを手に取り、レジまで行った。

 すれ違いざまに一人の少女——外見からおそらく中学生だと思われる——が店から出ていく。手には俺と同じ微糖の缶コーヒーが握られていた。



「今日も買ってくれるのかい」


「はい、これがないと俺もダメみたいで」



 手に持った缶コーヒーをレジ前の机に置くと、俺は店員のお婆さんに話しかけられた。

 毎度のことだ。俺の名前が広まる中で話しかけられることも多くなったが、それでもこのお婆さんは最古参(?)なのである。



 お婆さんは老眼なのか、缶コーヒーのバーコードの場所を手探りで探している。

 こんな田舎でも少子高齢化は進んでいるらしい。……いや、田舎だからこそなのかもしれない。



 俺がその場所を教えてあげると、お婆さんはありがとうと言って話を続ける。

 曰く、俺のお陰でこの店の微糖缶コーヒーの売り上げが少しばかり伸びたのだとか。



「あんたみたいな人は馬鹿だ、何やってんだって思われることも多いだろうさ。でもそんなあんたのみたいな男に憧れる人もそれなりにいるんだよ。だから今の心、絶対忘れたらいかんよ」



 そう言って俺に缶コーヒーを手渡してくる。

 俺は百二十円をしっかりと払い、それを受け取った。

 財布をポケットに突っ込み、蓋を開けてコーヒーを胃に流し込む。缶コーヒーならではの独特の香りと味を堪能しつつ俺は店を出た。



 するとその光景が俺の目に飛び込んできた。

 先程の女子中学生が不良……というより、太ったおっさんに絡まれていた。

 どうやらナンパ(?)を受けているようだ。



 俺は手に持った缶コーヒーを投げようとして……踏みとどまった。

 中にはまだ冷めていない熱々のコーヒーが入っている。もし少女の方にかかってしまっては危ないと思い、それを乱雑に地面に放り投げると、忍び足で俺は二人の元へと向かう。



「やめて下さ……」


「へへへ、大声を出したらダメだよぉ~?どうなるか分からないからねぇ」



 二人にこっそり近づこうとして電柱の裏に身を隠すと、そんな二人の会話が聞こえてきた。

 こっそりとその陰から状況を見ると、男の手には包丁らしきものが握られていた。先程まで暗がりで良く見えなかったが、刃物を持っているらしい。



 だからむやみに声を上げられなかったのだ。もし大声を出せば、男の言った通りどうなるか分からないから。



(幸いあのおっさんはあの子に夢中で俺に気が付いてない。後ろから全力で殴れば……いけるか?)

 俺は右手の拳を握りしめながら、そんなことを考える。

 俺は喧嘩の経験などないし、どうすれば人が気絶するかなんて知らないが、普段からこういった状況に備えて訓練はしてきた。



 たぶん大丈夫だろう。

 もし気絶させることが出来なかったとしても、あの男は見るからに小物そうな感じなので俺に注意が向くはず。

 その隙に逃げてもらえば、最悪オッケーなのだ。



 俺は緊張と恐怖、そして高揚感を抱きながら、男の元へ忍び足で近づく。

 少女は近づく俺に気が付いたのか目を剥き驚いた表情を見せるも、俺が唇に人差し指を当てると全てを察したようで、大声を出すこともなく、先程までのように怯えたフリを続けた。



 俺はそれに感心しつつも、俺に背を向けるその男の元へゆっくりと近づく。

 握られた拳の中は、汗でびっちょりと濡れていた。



「おらッ!!」


「ぐあっ……」



 そして俺が思いっきり右拳を男の脳天に直撃させると、その衝撃で男が吹っ飛んだ。

 少女はギュッと握りしめていた缶コーヒーを、急に指に力が入らなくなったかのようにポトッと地面に落とすと、瞳をうるうるとさせて俺に抱きついてきた。



「ご、怖かっだぁぁぁぁ!!」


「よしよし、もう大丈夫だ。怖かったな」



 抱きついてきたその体は華奢で、とても頼りなく感じる。

 少女の体は小刻みに震えており、抱きつかれた胸元は涙と鼻水でぐしょぐしょになっていた。

 これが普通の反応で、この状況でも堂々としているミツルの精神が化け物なのであるが……



「今日は家まで送ってあげ、っつ……!!離れて!!」


「ふぇ……?」



 俺は抱きつく少女の体を強引に引き剥がすと、自身の後ろにやった。

 少女は困惑しながらも、俺が苦そうな表情をしていることに気が付くと、その視線を追う。

 するとそこには、先程殴った男が刃物を持って立っていた。



 男は口の端から出ていた涎を服の袖でふき取ってこう言う。



「このクソガキ!!おみゃえ、よくもやったな!?」


「くっ……」



 俺は少女をまた数歩下がらせる。

 いやいや、と俺の胴に抱きついてくる少女を少し強い口調で離れるように言うと、流石に彼女も引き下がってくれた。



 そのやり取りを見て男は盛大な舌打ちをかます。



「おみゃえ!!僕のシズネちゃんに何をするッ!!」


「お前のじゃねぇだろうが!!」



 俺は男の手に握られた刃物に見向きもせず、男の方へと突っ込んだ。

 男は流石に刃物を持っている自分の方へと馬鹿正直に突っ込んでくることを想定していなかったのか、そのことに激しく動揺する。

 俺は男がもたもたしている隙に、顎にアッパーをきめた。



 男は一メートル程吹っ飛ぶと、少し痙攣し、そのまま気絶した。

 振り返ると、そこにはペタンと座り込んだ少女——シズネがまた泣きそうな顔になっていた。

 瞼はバンバンに赤く腫れ、鼻水も垂れそうになっているのかズンズンと鼻を啜っている。



 少し怖がらせすぎたかな、と反省しつつ無事か聞こうと近寄ったその瞬間、またもや俺の目にあってはならない光景が飛び込んできた。



 暴走した一台のトラックがシズネの元へと突っ走ってくる。



 俺は必死に逃げろと叫ぶが、シズネは腰がぬけているのか動こうとしない。

 お互いの距離は、もう十メートルもない。



「間に合えッ!!」



 俺は走ってシズネの元まで駆けつけると、そのままシズネを庇って……



 ——トラックに撥ねられた。



 ◇◇◇



 目が覚めると、そこは一面森で覆われていた。

 眩しい日の光が俺を……いや、俺達を照らしていた。

 トラックに撥ねられてしまった俺と、シズネをだ。



「どこだよ、ここ……」



 呟いてみるが、当然帰ってくるはずもない。

 とぼけてはみたが、これはアレだ。いわゆる、異世界転生ってやつだ。



 死後別の世界——つまり異世界に飛ばされる現象。最近見たラノベもこんな感じにトラックに撥ねられて……ってやつだったように思う。

 だから俺はそんなに動揺していないのだ。



 逆に異世界に来ることが出来たことを俺は素直に喜びたいとも思う。

 なぜなら異世界あるあるで、主人公チートなるものが存在するからだ。

 もしそんなものを手に入れることが出来さえすれば、俺は一気に英雄の道へと近づくことが出来る。

 そうすれば、前世では絶対に叶わなかった英雄願望を叶えることが出来るかもしれない。



「とりあえず、シズネを起こすとするか……」



 とりあえず俺は、俺の膝の上でスヤスヤと眠るシズネを起こすことにした。

 いつまでもいられては移動する事が出来ないし、何より俺の理性が不味いことになる。



 一歩間違ってしまえば俺は一気に転落人生だ。

 間違わずともこの状況……誰かに見られでもすれば即犯罪者扱いは間違いない。

 どこぞの盾の勇者じゃないんだからそんなノリは勘弁して欲しいものだ。



「おーい、起きてくれ~」


「う、う~ん……ん?ん!?」


「起きたか、大丈夫か?ケガはない?」



 目を半開きにして後五分と呟いた瞬間、シズネは何かに憑りつかれたかのようなスピードで素早く膝の上から頭を上げた。

 あまりのスピードで俺の前髪がファサッとなった程だ。



(そんなに嫌だったのか、俺の膝の上……)

 流石にそれは心にくるものがある。

 いくら英雄願望があるとはいえ俺も立派な雄である訳で、流石に女の子に嫌われたくはないのだ。



 完全に目を覚ましたシズネは、顔を真っ赤にしてこちらをうるうるとした瞳で睨みつけてきた。

 よほど嫌で憤慨しているのだろうか。それは流石に傷つくのだが……



「……ごめん、俺の膝の上嫌だったな。それに、結局助けてあげることが出来なかったから……」


「いっ、いえいえ!!そんなことは!!……あれ?そう言えばここって……」



 辺りを見渡して気が付いたのか、シズネは疑問を顔に浮かべる。

 そして全てに気が付いたように先程まで赤かった顔をサァーっと青くすると、わなわなと全身を震わせた。



「わ、私のせいで……私があの時動けなかったから、ミツルさんが死んだ?ハ、ハハッ!!死ぬしかない、私がもう一度死ぬしかッ!!」


「ちょっ!!待って、待って!!死ぬって何のこと!?」



 どこからともなく出現させた剣によって自殺しようとするシズネの腕を必死に掴んで止めようとするが、想像以上に力が強くて自分の腕が持っていかれそうになる。



 俺は歯を食いしばって腕を引っ張るも、そんなのお構いなしに剣を自らの首筋に持っていくシズネ。

 一体この華奢な体のどこからこんな力が出ているのか。



「あ、アハハッ!!私が死ねばそれで解決……いやただ死ぬだけじゃ生ぬるいから、まずは目玉をくりぬいてそれから……」


「ちょっと待てって!!」


「ああそうだ、一回死んだだけじゃ罪は全く償えないから蘇生魔法をかけておかなきゃ……三億回は死なないとッ!!」


「さ、三億回!?」



 一体彼女はどうしてしまったと言うのか。

 俺が勝手に助けたのだからそこまで気負わなくてもいいのに。何故彼女はここまで思い詰めているのだろうか。

 本当は守り切れなかった俺が責められるべきなのに。



 ついに俺の筋力に限界がきて、力を緩めてしまう。

 すると即座に彼女の腕に俺が引っ張られて、そのまま彼女の唇に俺の唇が重なってしまった。



 ……偶然である。本当に偶然なのだ。偶然なのだ!!



 するとシズネはピタッと動きを止めた。

 そしてみるみるうちに顔が赤く沸騰していく。



「ご、ごめッ……わざとじゃないんだ、だからッ!!」


「ひゃあ、わわぁ……」



 まさか彼女の唇が思ったよりも柔らかくて、思ったよりも甘かったとか……ましてやその感覚を忘れたくなくて反応が遅れてしまったとか、そんなことは決してないのだ。



 シズネは顔を真っ赤にしながら、言語ではない別の何かをぶつぶつと唱えていた。

 まさか俺を呪殺するつもりではないだろうな……とヒヤヒヤするも、数分後再び気を失ってしまった。



 俺は何とか一命を取り留めたようだ。



 ◇◇◇



 どうしてこうなってしまったのか。



 俺の眼前には六人の美女と美少女がそれぞれ膝をついてこちらに首を垂れている。

 俺はそれを一際高い椅子から眺めながら、この状況をどうしようかと冷や汗をかいていた。



 俺に魔王……ではなく『大魔王』の振る舞いなんてものは分からないし、第一これからどうするのか等といった計画はない。

 俺が何を言おうか必死に頭を回していると、一人が勝手に話を始めた。



「結局主様は誰が好みなんですかぁ?そこは勿論!!私ですよねぇ!!」



 長い黒髪を背まで伸ばし、透き通るような碧い瞳を持っている悪魔族の少女——リーラはそう言った。

 勿論、絶世の美少女。



 彼女はロリ巨乳……とまではいかないが、体型と比較すればそれなりにメリハリのある体をしている。



 そしていつも俺を誘惑してベッドに連れ込もうとしてくる。

 ……ありとあらゆる手段を用いて。



「まさか、あんたみたいなお子様が好きな訳ないでしょうが。いつも誘惑してるだけのビッチ野郎じゃない」



 そう言ったのは赤い髪をショートカットにして、燃えるような赤い瞳を兼ね備えている人間族の美女。

 名前はリュウレン。



 元々は俺を殺すために魔王城までやって来た人物なのだ。



 俺のことが好きであるというオーラを前面に押し出してはいるのだが、気恥ずかしいのか未だに俺のことを名前で呼べないどころか『アイツ』呼ばわりなのである。

 さらに言うとかなりの乙女で、リーラの誘惑に対して余りいい感情を抱いていない。



 ちなみに胸が小さいのがかなりのコンプレックスらしく、そこはかなり気にしている。



「なんですかぁ?お子様って言う割には、私より胸小さいじゃないですかぁ。もしかしてそれ、自分に向けて言ってましたぁ?」


「なッ!!あ、アイツは別に胸に貴賤はないってこの前言ってたし!!」


「それぇ、大きい方がいいけど小さくてもまあ妥協って意味じゃないんですかぁ?」


「ぐ、ぐぬぬ……」



 二人はいつもこうやって言い争っている。

 俺はそんな争いは止めて欲しいので色々と二人をフォローしているのだが、これがいつも逆効果になってしまう。

 ……胃が痛い。



「何を言い争っているのですか、二人とも。ミツル様の御前ですよ?」



 そうやって仲裁してくれたのは銀髪ショートの美女エルフ——エリザベート。

 実は元エルフ国の第二皇女である。



 とりあえずこの一言は……というか毎回エリザの言葉は火に油を注ぐのだ。



「どの口がぁ!!言っているのですかぁ!!」


「そうよ!!胸にしか栄養の行ってない自称姫様のポンコツ駄エルフの癖に!!」


「む、胸以外にも栄養は行ってるもん!!そ、それに駄エルフ!?」



(あー、ダメだこれ。いつもと同じ流れじゃん……)

 エリザはこう言ってはなんだが物凄く残念なエルフだ。

 普段は完璧な姫エルフなのだが、言い合いになってしまうとすぐにポンコツになる。



 ちなみに彼女は物凄く大食いで食費がえらいことになっているし、段差がない所ですぐこけるし、掃除をさせたら逆に部屋が汚くなるしといったオマケ付き。

 ポンコツ駄エルフと言われても、まあ……仕方がないのかもしれない。



 ちなみに先程も言った通り、姫と言うのは本当なので自称姫様ではないのだが……まあここでわざわざ訂正する必要もないだろう。



「いい加減にせい、主が困っておるぞ。全く、これではいつもと同じ流れではないか」



 そう言ったのは金髪の髪をお団子に結び、チャイナ服に身を包んだ美女。

 竜人族の長で、元魔王のソフィア。

 純粋な戦闘能力で言うならば俺の部下で一、二を争う実力の持ち主だ。



 彼女はかなりの苦労人で、いつも他の人の尻ぬぐい——主に駄エルフ——をしている。

 文句ひとつ言わず何でも卒なくこなす彼女は本当の意味で完璧超人なのだが、実は弱点も存在する。



 それは辛い物が超が付く程の苦手であるということだ。

 ちなみに彼女は極度の甘党なので基本甘い物を与えておけば何でもやってくれる。

 それが周りをダメにしていくのだが……



「アハハ〜、やっぱりこの職場は何かこうほんわかしてて良いね!」



 そう言う彼女の名前はミーシャ。

 金髪を肩口まで伸ばした人間族の美少女。

 元勇者で、これまた俺を殺そうと魔王城までやって来た経緯があるのだが、何やかんやあって結局俺の部下になっている。



 彼女は天真爛漫という言葉がよく似合い、いつもニコニコしている優しい子なのだが、ダメなことはしっかりダメと言える性格なのである。

 俺の部下の中で唯一自分の意見をハッキリ言うことの出来る人物として名高いし、俺がもし血迷ったことをした時には容赦なく斬ってくれとも言っている。



 ちなみに彼女も前世持ちなため、魔王城で俺の部下をやることを勤務と言うのだ。

 さらには魔王城は職場らしく、前世で社畜をやっていたミーシャ曰くここは天国らしい。



 精神年齢は三十代とのことだが、今は体の方に精神年齢が引っ張られる様で、等身大の十五歳を垣間見ることが出来る。



「本当じゃ。妾が魔王をしていた頃など、会合など事務的なものであったというに……」


「私もミツル様に救われましたから。もしあの時あのままだったら、私は政略結婚の餌食となり一生日の目を浴びることはなかったでしょう……」



 ソフィアとエリザが感慨深そうに言う。

 ……とは言えそれは全くの勘違いで、実際は俺がチキンなだけだ。



 少しでも傲慢な態度をとってしまうと、直ぐに彼女らが離れていってしまうのではないか、と日々怯えているからである。



 俺はゴブリンにすら勝てないので、ここで放り出されると俺は確実に野垂れ死ぬと分かっている。

 英雄になりたいとは言え破滅願望がある訳でもないし、ダークヒーローもわりかしアリかな?と思っている今日この頃なので、案外苦痛ではない……のだが。



 ……ともかく彼女らはかなりの誤解をしている。

 俺が強いと勘違いしてるし、何故か上手くいった事柄全部俺の手柄みたいに讃えてくるしでもう色々重たいのだ。

 いつ俺の本当の実力がバレるのか、今もヒヤヒヤしているのだ。



「ミツルさんの御心は海よりも深く、山よりも高いですから。これも当然のことでしょう」



 そう言ったのは、最早説明など不要。

 俺と一緒にこの世界に召喚された、シズネである。



 彼女はそんな北条政子みたいなセリフを吐きながら、こちらを敬愛(?)の瞳で見つめてくる。

 俺は全身がブルブルっと震えた。



 シズネは召喚直後の言動から分かるだろうが、かなり重度のヤンデレだ。

 自分が失敗したらすぐに自殺しようとするし、俺の服を少し汚しただけで罰を与えろとか言ってくるしでもう散々なのだ。



 ……とは言え、シズネ程の美少女に尽くされるのもあながち悪い気分はしないので、俺の中で良いバランスを保っている。

 召喚直後もかなりお世話になったので罰を与えるつもりも、ましてや自殺させるつもりも全くと言っていい程ないのだが……



「確かにぃ、主様の御心はとぉっても広いですからねぇ!!ご自分の命を狙って来たどこぞの馬鹿赤髪すら虜にしてしまいましたからぁ」


「だ、誰が馬鹿赤髪よ!!あ、あの時は本当に血迷ってただけで……もう反省してるからっ!!」


「そのセリフはボクにも刺さるんだよね……」



 言い合うリーラとリュウ。

 そしてその横でしょんぼりとするミーシャ。

 それをやれやれと呆れるソフィア。

 何故か勝ち誇った顔をしているエリザ。

 そしてまたもや何故かうっとりした顔でこちらを見てくるシズネ。



 そんなカオスな状況に俺は内心ため息をつきながらも、気を引き締める。

 今日もまたボロを出さないように、ダークヒーロームーブをしなければないないのである。



「よし、それじゃあ始めようか。俺達のセカンド・ライフを」



 セカンド・ライフ。



 俺達全員に最も相応しい名前。



 この世界に生まれた初めての大魔王は、口癖のようにそう言ったのであった。

ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!

作者の三茄子でございます。


さて、書いて読み返してみたら何だこれは!?

あまりにも属性が多すぎて頭おかしくなりそうですが、私個人の趣味がかなり含まれております。


個人的にはリュウレンとエリザベートがお好みです。(えっ!?そんなこと聞いてない!?まぁまぁ、そんなこと言わずに……)


それではザッと簡単にキャラの解説でも。


リーラ……誘い受け悪魔っ子。モデルは某魔術と科学が交差するやつに出てくるあの子。

ちなみに裏設定として、もし主人公が本当に手を出そうとすると、アワアワなって『やっぱり心の準備がぁ……』って言うタイプ。


リュウレン(愛称リュウ)……ザ・ツンデレ。明確なモデルは特にいないけど、とにかく色んな作品のツンデレ要素を限界までモリモリに盛りまくった。

『体は言うこと聞いても心まで従うつもりはないんだからねっ!!』って言わせたい。(もしも連載版作るとしたら)


エリザベート(愛称エリザ)……ポンコツ駄エルフ。モデルは皆様お分かりでしょうが一応、某あの陰の実力者になりたいんだぁー!!って作品に出てくるあの人です。

個人的にめっさ好きなので入れました。元ネタ(?)の方でももっと活躍してくれぇ!!


ソフィア……甘党チャイナドレス美女。なんつー属性だコラ。混ぜすぎて逆にあんまり親近感湧かなくなっちゃったよ。モデルは特になし!!妾って喋らせたかった。以上!!


ミーシャ……金髪って言ったらミーシャだろって思って名づけました。名前のモデルで言うと某魔術と科学が交差するやつ+某殺しただけで死ぬと思ったかに出てくるツンデレヒロイン。

性格にモデルはありません。ボクっ子良いなぁ〜って思って作りました。強いて言うなら某無職が転生するやつに出てくるエルフでしょうか?

私自身もよく分かってません。


シズネ……一番狂ってる。重度のヤンデレ。元ネタは名前は忘れたけどなろうの作品です。あんまり有名じゃなかったけど、個人的にブッ刺さったので入れました。

ヤンデレって一周回って良いよね!!


そんな感じですかね。

基本的には雑魚主人公が何やかんや敵を改心させて、仲間に加えて、部下の美女、美少女達にチヤホヤされるだけの馬鹿作品です。

本当に馬鹿で、特に伏線とかもありませんし、強大な敵なんかも出て来ませんが、とりあえずラブコメです(だよな?そうだよな?)


面白かったと言う方は是非!!

広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして下さい!!お願いします!!

作者のモチベアップに繋がります!!

貴方のその一票が、作品の継続に繋がるのです!!(なんか選挙っぽくなっちまった……)


ブックマーク、感想、誤字報告も受け付けておりますので、是非この機会に!!


それではまた連載版の方でお会い出来ることを心から願いつつ、ここらで締めさせて頂きたいと思います!!



追記:来年の春アニメ熱いね!!無職、転スラ、ロシデレその他諸々。これはインドア化が加速しちまう!!

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