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第3話 銀髪少女

「ルナリアさんごめんなさいこれは違うんです」 


「いやです! 変態! 下衆!」


 俺が頬に赤い紅葉をつけて謝っているのには訳がある。

 それは二十分ほど前の話——



---



「えっと〜……ごめんなさい。広いには広いけど、それは一人だった場合の話でしたね」


 ルナリアについて行き宿屋に着いた。

 ここは部屋料金さえ払えば一部屋に何人入ってもいいらしい。


 手続きなどを済ませてから部屋に案内されたのだが、そこにはベットが一つ、ソファーやその(たぐい)のものは全くなく、あるといえばあとはテーブルくらいだ。


「いやでも、外よりかは寝やすそうだよ。ありがとう」

 俺はそういい、奥の方まで進んで床に荷物を置き、そこに座った。


 それを見ていたルナリアは、戸惑ったような表情をしていて、考え事でもしているのか動きが止まった。


「あの、今日はほんとに迷惑をかけてしまったので、ベッド使ってください。私が床で寝ますので……」


 ルナリアは申し訳なさそうに手を差し出し、ベッドを譲ろうとしてきた。


「そんな! そこまで気にしなくていいよ。屋根があるだけでもありがたいから」


「で、でも〜……あ、では交互に使いましょう!それだと公平でいいと思います! 」


 なるほどたしかにそうすると公平な気がする。

 けどここを手に入れたのはルナリアだし申し訳ないから大丈夫だ、と言おうとしたが、もうそれしかない! と意気込んでいたのでそうすることにした。


「お風呂! ここの宿屋には個々の部屋に整備されているんですよ! 先、使いますね!」


 軽く荷解き的なのを終わらせると、ルナリアは着替えを持って出入り口の隣にある扉の中に入って行った。



 それにしても、最初はあんなにおどおど話していたのに、今じゃ普通に話すようになったな。

 あの時は精神的にも身体的にも不安定だったのが原因で、元々は活発的な人なのだろうか。

 

 てか、普通に同年代の人と会話をするのは久々だな。

 実家にいた時にはみんな俺のことを蔑んだ目で見てたし、実際下に見られていたけど、ルナリアはそうじゃない。

 ちゃんと平等な人間として会話をしてくれる。


 今までずっと孤独感に覆われていたからか、こうやって話せる人がいることって幸せなんだなと感じた。





 一人部屋に残された俺は、ぼーっと、考えに耽っていた。

 ベッド付近——ルナリアの荷物が()()()()()()()辺りをなんとなく見ていたら、ふと目に止まるものがあった。


「あれ? なんでルナリア "も" 剣をもってるんだろう」


 ムーンラルクの学校では武術と勉学がメインのはず。一応剣術科はあるけど、内容は最底辺のことしかやらないのに……。装飾が派手すぎず、素朴すぎずついている銀色の鞘に収まったその剣を持ち上げると、俺は驚愕した。

 なぜ驚愕したかというと、重すぎたからだ。軽く俺の剣の倍以上の質量を持つその剣は、到底振り回して扱えるとは思えない代物だった。しかし、他にも沢山荷物を持っていたのに、重そうな顔一つしていなかった。


「あんな華奢な身体でどうなってんだよ」


 俺よりもルナリアの方が強いことは確信できた。それは、王都にいた頃を思い出させる。

 自分よりも小さい女の子に負ける——それは王都の人間にだけだと思っていた。まさか地方の人間よりも劣るとは……。


 と、そんなことを考えてもキリがないな。上には上がいるものだ。


 俺は悲観的な考えを辞め、人の剣を勝手に触るものではないな、と思ったので、元の場所に戻した。

 その時だ。近くに何か白い布らしき()()が落ちていてそちらに目がいった。なんだろう? と思い拾い上げると、穴が三つ開いていて、すぐに何かわかったが、思考が追いつきはしていない。だって、ルナリアは ”男” だろう……?


「これって、どこからどう見ても女の人用の下着だよな……」


 ごくり。と生唾を飲んだところにちょうどルナリアが戻ってきたのだった。


 ---


「それで? 落ちてたから拾っただけ? 今まで私を男の子だと思っていたの?」


 こうなった経緯をちゃんと説明したら、ぷくーっと頬を膨らませながらも、「今回はその言葉信じるけど、次勝手に漁ったら許しませんよ!」と言われた。


 シャワーの前まではフード付きの服を着ていてあまり女子だとは思わなかったが、今は見間違うことはない。

 白銀の長い髪を下ろしていて、ものすごく整った顔立ちをしている。これで同い年とは到底思えないな。


「そういえば、ルナリアさんはなんでここの学校を受けようとしたの?」

「んー、なんで、ですか。どこでもよかったんですけど、剣以外のことも学べる所だって聞いたもので」

「なるほどな。剣以外を学びたいって事は、学科は他いくの?」

「ううん、ちゃんと剣術科受けるよ! じゃないと大会(・・)に出られないですしね!」


「なるほど」


 俺は風呂から上がったばかりで色艶の良い顔をしているルナリアと座って話している。

 なんか、異性だと思ったら居心地が悪くなって来た。

 その証拠に、俺正座してるもん。


「私、思ったんですよね。幅広く色々やれば、色んな角度から物事を見れるようになるし、剣だけやってる人より、臨機応変に対応できるようになると思うの!」


「なるほどな。型にはまったことしかできない奴よりも確かにそっちの方がいいと思う」


 俺はこの時、ルナリアと一緒にいたら何か変わる気がするし、剣気を(まと)えないこともどうにかできるかもしれない――そう思った。


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