7、親父の罠
.....。
まあとは言え。
実際に殴るとなっても傷害罪などで捕まれば意味無い。
なので殴りはしないが土下座はさせる。
絶対にさせる。
そんな固い意志で嫁子は話す。
俺はその姿を見ながら、そうか、と話した。
それから嫁子を見てみる。
「でも先ずは反省.....としか言いようが無いんだ。.....君を大きく傷付けたりした事は反省しか無い」
「.....だな」
「だから私は大いに反省してから初めから出直すつもり」
「そうか。.....まあ頑張れよ」
俺は嫁子を見る。
そして目の前のスープを見る。
鶏ガラ出汁のスープ。
ちょうど.....ほうれん草が入っている。
温かいスープだ。
「.....まあそれはそうとして。お前に悪い事をしたのは優だけか?」
「分からないね。優さんは兄妹って聞いたけど。それは?」
「まあそうだな。優は兄妹って聞いた事はあるが。ドクズだから嘘を吐いている可能性はあるな。信用ならない」
「私は.....妹はこんな事をしているとは思いたく無いけどね」
「そうだな.....うん。俺も思いたくはないがもう信用出来ないだろ」
そんな感じで俺はスープを飲んでみる。
これは温かいな、と思う。
そして嫁子を見る。
嫁子もスープを飲んだ。
美味しい、と呟く。
「お母さんは.....水商売なのか?聞き方が悪いけど」
「水商売だね。.....でもそんな商売じゃ無いけど。.....例えば売春婦とかじゃない」
「ああ。まあ分かっているけど。お前と唯子ちゃんを守る為なら何でもするだろうしな」
「まあそうだね」
そう返事をしながら居ると横になって寝ている唯子ちゃんが、うーん。お姉ちゃん.....お母さん.....、と寝言を言った。
俺はその姿を見ながら嫁子を見る。
嫁子は複雑な顔をしていた。
そして、そんな感じだから。何時も、と言葉を発する。
「かなり深刻度は増していると思うから」
「.....そうなんだな」
「でも私のせいだよ。全部。だから申し訳ないなって思うから本当に」
「まあそうだが取り敢えずこうなっている以上はどうにかしないといけないだろうな。一時的にも。信子さんの体調も気になるから」
「そうだね有難う。心配してくれて」
「というか無理矢理なんだよな?本当に。疑って申し訳ないけど」
「そう。何度でも聞いて。私は無理矢理の契約だった。.....というか仕方が無かったから」
苦笑する嫁子。
俺はその姿を見ながら唇を噛む。
それから頬を掻く。
どうしたものかなここから先は。
そう考えてしまう。
「借金取りはソフト闇金で来ないのか」
「今は来てない。めっちゃ苦しいけど払えているから。.....でも利息が凄すぎて話にならないけどね」
「そうだな。確かに」
「だからその利息をどうにかしたいんだけどどうにもならないから」
よく分からないがやはり警察に訴えれば良いのでは、と思って言ったが。
嫁子は首を振ってから、それに 訴えてその後が怖いしね、と否定する。
俺はその言葉に、そうか.....、と返事をする。
それから俺は、うーん、と悩んだ。
「.....それで家族が危険な目に遭うならもうやってられないしね」
「そうだけどだがそれでも訴えれば何か変わるんじゃないか?」
「まあそうだけどね。でも私は今の生活が危険に晒されるのとかが怖いから」
「そう.....か」
「住所とか免許証とか全部分かるから」
「母親の住所って事か?」
「.....親父が提示したんだ。自らが逃げる為にね」
そう言いながら睨みながら目の前を見る嫁子。
そんな姿を見ながら、本当に憎いんだな、と思ってしまう。
すると嫁子はハッとした様に、あ。スープが冷えちゃうね、と言い始める。
それからスープを慌てて飲み始める嫁子。
そして、アツッ、と言いながら小さな舌を出す。
「.....熱かった。馬鹿だね」
「まあそう言うな。仕方が無い」
「そうだね。.....あ。美味しい?」
「ああ。美味いよ。有難うな」
言いながら俺はスープを味わう。
何か言い忘れていたかもだが嫁子は一応、料理が得意だ。
それは母親が居ない代わりに良く作っているから、である。
俺はその事には尊敬するし、凄いなって思う。
「何か出来る事があったら言ってくれよ?嫁子」
「.....そうだね。でも私は1人で大丈夫だから。それに私が半分悪いしね」
「まあそうだが。でも今は反省しているしな」
そして俺はスープを飲んでから嫁子を見る。
そうしてから暫く雑談をしてから。
俺は帰宅の準備を始める。
取り敢えず今日は話を聞けたのが良かった、と。
そう思いながら。
☆
「今日は有難うね」
「俺は何もしてない。真実を知りに来ただけだ」
「うん。でもそれが嬉しかった。私なんかの真実を知りに来てくれて有難う」
「お兄ちゃん。またね」
「ああ」
そして俺は嫁子を見ていると。
背後から、あ、と声がした。
その言葉に背後を見ると.....そこに結菜が立っている。
食材を持っている。
スーパーの袋に入っている物だ。
「結菜。どうしたんだ?」
「.....昨日の件があったから。だからちょっと買ってきたの」
「わざわざ良いのに。結菜」
「.....でも私も反省しないとなって思ったから。.....あんな態度を取ったのは良く無いって思ったからね」
結菜は神妙な面持ちで俺達を見る。
俺は、結菜。手伝おうか?、と聞く.....が。
首を振ってから結菜は反応した。
大丈夫だよ、と。
それから、時間も時間だし直ぐに帰るから。私も、と笑みを浮かべる。
「取り敢えずは家を開けてくれる?よーちゃん」
「あ、うん」
「.....うん。有難う」
嫁子は申し訳無さそうな顔をしながら家を開ける。
それから中に嫁子と結菜が入って行った。
俺はその姿を見ながら居ると。
結菜が振り返って来る。
そして、先に帰ってて。ゆうちゃん、と笑顔になる。
「いや。良いけど大丈夫か?お前ら喧嘩とかしないよな?」
「もう大丈夫。私はよーちゃんの状況を知ったからね。もう喧嘩しない。話し合いをする」
「そうか。なら良いが.....」
そして俺は3人を見ながら。
そのまま見送られてからそのまま嫁子の家を後にする。
それからゆっくり帰宅しながら空を見上げる。
今日も晴れているな一応。
そう思いながら。
.....。