1、絶望の彼方
.....。
彼女が寝取られるとはどういう事を意味しているのだろうか。
恐らくだがそれは、今、というその事実を知った。
俺は用事があると先に帰った目の前の友人の長門優を見る。
黒髪の感じで眼鏡を掛けている少年。
褐色な肌をしている格好良かった友人だった奴だ。
次に幼馴染の遠山嫁子を見てみる。
顔立ちは完璧な美少女。
大人びているが.....笑顔の絶えない良い女の子だった。
そんな2人がまさか浮気をしているとは。
学校帰りに違和感を感じて良かった。
嫁子が俺に対して、友人と一緒に居る、と文章を送って来たのだが。
トイレの裏の暗くなっているベンチでキスまでしていては最早浮気だろう。
思いながら俺は目の前の2人を瞬時に嫌悪する。
そして踵を返してその場を去る。
学校の規則で学校に隠して恋愛しているのが仇になったな。
それから周りに知らせてないのも。
因みにこの場所だが公園だ。
不埒だなアイツら。
思いながら俺は額に手を添える。
それから歩いていたが。
憎悪が消えない。
「こういう時は家に早く帰るべし、だな」
そんなくだらない事を呟きながら青空を見る。
全くな、すっかり騙された。
思いながら俺はまた青天井を見る。
彼方の方に何か黒い影が見える。
雨が降りそうだが。
「はぁ」
溜息を盛大に吐きながら俺は重苦しい足を動かして何とか家に帰った。
それから、お兄ちゃん、と寄って来る俺の妹を払い除ける。
今はすまん。用事がある、と言いながら。
そして自室に入ると丁度浄化する感じで雨が降り出してきた。
アイツら濡れてしまえば良いのに、と思うが。
「.....」
ベッドに、枕に頭を埋めながら顔を上げてゆっくりと空を見上げる。
外はそれなりに暗い感じであった。
制服も洗濯物も全く乾かなさそうな感じだ。
まあ天気に左右されなくても干さないが。
俺の心は干したい気分だが。
「干した所で重苦しい空気は晴れないだろうけどな」
そんな自嘲した言葉を吐きながら俺は制服のネクタイを取る。
床に置いた。
というか殴り捨てる感じだ。
そして、ったく、と思いながら天井を見上げる。
しかし恋愛禁止、か。
俺が周りに浮気の事を話してしまえば何もかもが解決するだろうけど。
学校を俺も退学になるだろうな。
俺も校則違反していたし。
「クソッタレだな。どうしたものか」
そんな感じで呟きながら居るとメッセージが入った。
それを見るとそこには嫁子からその。
メッセージが入っていた。
大丈夫?、と聞いてきている。
俺は流石にその文章にキレそうになった。
制服のブレザーを荒っぽく脱いでから床に叩きつける。
「何が大丈夫だ。大丈夫じゃねぇよ」
俺はイライラしながら文字盤をタップする。
それからそのままエンターキーで送信した。
取り敢えず、大丈夫じゃない、と。
すると、え?何が?、と来た。
コイツという奴は.....、と思いながらベッドから起き上がる。
(お前には何も分からない)
(何も分からないの?.....え?本当にどうしちゃったの?)
(さあな。俺のイライラを当ててみろ)
(え?、え?)
本当に意味が分からない様なすっとぼけた感じ。
俺はまたモヤモヤしてイラッとした。
そして今度は椅子を蹴っ飛ばす。
このイライラはどうしたら良いのだ、と思う。
(分からないよ.....何でイライラしているのか)
(そうか。分からないか。もう良いけどな。お前とは別れる)
そして俺は断言した。
お前とは幼馴染の縁も切る、と。
すると何が起こっているのか分からない、という感じで慌て始める嫁子。
俺は、お前が何をしたか心に手を添えて考えろ、と送る。
(私.....ま、まさか)
(それだな。お前のハッとしたの。それがビンゴだ。お前もそうだが優もクズという事だ)
(待って.....あれは誤解なの!本当に誤解なの!)
(誤解ね。それは裁判にかけて無実が証明されるかな?)
俺はそんな言葉を読み上げながら送信する。
それから連絡帳もろとも消した。
もう関わり合いを持ちたくない。
思いながら俺は頭を抱えていると。
インターフォンが鳴った。
まさかと思うが、と思いながら玄関に向かう。
すると傘を折り畳んでから穏やかな顔の.....ボブヘアーの。
失礼かもしれないがお婆ちゃんの様なイメージの滝宮結菜が立っていた。
もう1人の幼馴染であり嫁子にとっても幼馴染である。
一纏めにすると穏やかな感じの黒髪の少女。
「結菜?どうしたんだ」
「お菓子作りすぎちゃった。だからまあ持って来たんだけど。まあ雨だからねぇ」
「そうか」
その言葉に結菜は、?、を浮かべて俺の顔を覗いてくる。
無駄に美少女だから赤くなってしまう。
何をしているんだ、と聞く。
すると、何か不安げな顔をしてる、と俺に困惑の顔を浮かべる結菜。
「お姉ちゃんに話してみなさい」
「何もないって。まあその。お菓子有難うな」
そんな会話をしながら俺は抉れた心を癒す。
結菜は、そう?なら良いけど、と悩む様な感じを見せた。
俺はその姿に、ああ、と苦笑する。
結菜まで巻き添えにする訳にはいかないな。
さてどうするか.....。
.....。