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保護

 目を開くと白いベッドの上だった。


「え」


 周りを見渡せば白いカーテンが見える。服も赤い綺麗な服から肌ざわりがいい寝巻きになっていた。右手を見れば重たい手枷はついていない。寝ていたベッドも、ふかふかの布団が気持ちいい。さらさらした生地の軽い布団は、家の布団よりも高価なものな気がした。夢でも見ているのだろうか。


「おや、目が覚めましたか」

「あ」


 喉がひゅっと鳴る。肩にも手にも力が入ってうまく抜けない。カーテンの外から背の高い男の人が入ってきた。服は着物で、石のついた杖は持っていないけれど、鉄格子越しにみた、あの男の人だった。買われたんだ。そう気づく。すると、男の人は少し慌てて声を出した。


「ああ、私としたことが。違いますよ。そんな品のないことをすれば濁り澱んでしまいます。怯えさせたようですね。別の者を呼んできましょう」


 男の人が外に出て行く。怖い。いやだ。綺麗なベッドとふかふかの掛け布団。体温を奪う手枷はついてないし、服だってあの牢で着ていたものより分厚いのに。なぜか座敷牢で一人耳を塞いで眠る時よりも、ずっとずっと寒く感じた。別の男の人が入ってくる。男の人は入ってきてすぐしゃがんで、私と目を合わせて口を開いた。


「申し訳ない。こちらの配慮が足りなかったばかりに、怖がらせてしまった。私のことも怖いかな」


 男の人の言葉を、首を縦に振って肯定して、そのままうつむいて目を閉じる。この人たちの所有物になった事実がすごく、怖い。目の前の男の人は穏やかにゆっくりと私に声をかける。目を合わせて、少し遠くから、私を怖がらせたことについて謝罪する。優しそうに見えるこの人が、私を買って、これからどんな風に私を扱うのか想像ができなくて、余計に恐ろしかった。


「わかった。では、必要最低限のことだけ話すことにしよう。私たちは君をあの奴隷商から購入していない。ここは国が運営する保護施設で、君は人身売買の被害者としてこの施設に保護された。君の体は今、とても弱っている状態だ。だからどうか、少なくとも体が健康を取り戻すまでは、この部屋でゆっくり休んでほしい」


 失礼するよ。最後にそう言った男の人は、カーテンの外に出ていった。硬くなっていたからだが溶けていく。怖くて寒くて、男の人が言った言葉がうまくわからなかった。認識しているのに、内容がうまく理解できなかった。買われていない。休んでほしい。という言葉だけはわかった。体から力が抜けて、ぼすりとベッドに倒れ込む。大きく息を吸い込めば、枕からお日様と洗剤のにおいがした。休めと言われたから休んでもいいのだろう。ふわふわでほかほかで。弟と一緒にお昼寝した縁側にいる気がした。


 よく日の当たる縁側は、ねころがると暖かくて、よく日を浴びた、い草の香りが心地よくて。私がそこにころがれば、弟が。弟がそこにころがれば、私が。二人いっしょに暖かい陽ざしに誘われていつの間にか眠ってしまう。起きれば日が暮れていて、「夕ご飯のお手伝い!」なんて言って慌てて起きだす。陽ざしがなくなっても、誰かがかけてくれたお布団のおかげで、縁側はいつでも暖かかった。


「おやすみ。ねえちゃん」

 あの子の笑顔は春の日差しより暖かくて、優しかった






「寝ちゃった?」

「ええ、ぐっすりと」

「お話しできるのはいつになるかしら」

「きっと、すぐですよ」


「姫様、手習いのお時間です」


「分かったわ。行きましょう」

「はい、姫様」

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