家で見守っています。
おやおや、フォートさんの付き添い兵士くんがどっかにいってしまったぞ? それに創と愁はべったりで、いまだにキスし合ってる。一方的に愁がやってるだけだけどね。んで、肝心のマスルは頭を抱えて彼女らのラブラブを見ております。いやぁ、自分の美学と利害が不一致だったのかな? まぁ美しいなんてものは人それぞれだからね。なんていう様子をトランク型モニターで見ている大天才ロゼでございます。
「ねぇねぇ、創たち大丈夫そ?」
「京子さんよぉ、君も一応戦えるだろ?
なんで応援よりパーティーの準備なんだよぉ。」
愁の屋敷でパーティーの準備をしているであろう京子さん。
なぜだか私の作ったポテサラをつまみ食いしてるんですけど。
【「わたし…実は…メロンが好きなの!秘密だよ?」】
「なぁそれは戦いに行くからメロンよこせっていう要求か?
それともクリスマスだからメロン食わせろっていう欲望?」
「どっちも~!」
テンション高く腕をあげてる京子さん。
「おっけーおっけー、メロン準備しとくから行ってこい。」
「やったー!! それじゃよろしく~!
あ、あとわたし、アップルパイも好きなんだ~!」
「……へいへい、知恵の実つかったパイ作っとくよ。」
私がそういった時には京子の声は聞こえず、
かわりにバタンと、扉の音がした。
「……ついでに、ブルーベリーパイでも作るかねっと……。」
料理は一時中断。ケーキとかは作り立てがいいからね。
あとは創たちがちゃーんと帰ってこれるようにしないと。
アロディルデ王国の騎士団じゃぁ奴らは対処できまい。
なにせ奴らは私が作ったであろうシステムを使っているからな……。
手元にあった最新型スマホを手に取り、仲間に連絡する。
「あーもしもし? 銀河の警察官の方?」
〈……俺ウルト〇マンじゃねぇんだって。〉
電話の向こうにいるのはタロウ。
アロディルデ上空にある衛星基地にいる私と同じく研究員である。
「さっき衛星に来た鉄人兵の分解おわった?」
〈ああ、終わったよ、ブレイン部分だけ生かしてる。
やっぱり、ロゼの思った通りブッ刺さってたよ。例の絵の具。
それも、その絵の具はロゼの作ったやつと似てるが、
機構自体は模倣品、一週間前に見つかったやつと同じだ。
脳波コントロール用の機能が備わってるから、操られてるんだろう。〉
「わざわざ洗脳までして自分の手は汚さないって? しかも、
世界の基盤の破壊をするためにクリスマスの破壊を装うんだなんてねぇ?」
〈それでどうするつもりだ?〉
「決まってるだろ? オペレーション・モディフィーだ。」
〈……あ、修正な。愁が言ってるやつね。〉
……『修正』ってのは、愁の好きな作品に出てくる単語で、
奪われて利用されたり、神に与えられた能力を剥奪することを意味する。
チート転生者の誤った能力の使い道を止めるための行動だ。
だが、この世界は作品の中じゃぁない。現実の世界だ。
どんな嘘みたいな出来事でも、ありえてしまうのがこの世界なんだ。
「というわけで、他の仲間にも連絡よろしくぅ~。」
〈あ、ちょっとま___〉
ぶつりと通話を切り、創たちの様子を見守る。
いまだにマスルは愁と創のラブラブを眺めているが……。
なぁ愁、国家公認の変態英雄とか呼ばれる原因ソレだからな……?
……おや、なんか青い壁が迫ってきているが?
「……なるほどね。フォートさんの新兵器か。」
さっき兵士くんに伝えたのは、この壁の起動かもしれない。
あの壁はマスルを閉じ込めるための檻らしい。
迫ってきている壁は5つ。東西南北、そして上空。
視覚的には見えないが、おそらく地面もすり抜ける壁があるだろう。
壁々は民間人、創たちをすり抜け、マスルを囲むように集まった。
彼は青い箱の中に閉じ込められる。
「ほー、これでマッチョは檻の中。
美しさは、箱の中に閉じ込めちゃおうねーって?」
先ほどまで異常なほどの運動神経をみせていた彼は、
動揺も見せずにその場でうずくまり、頭を抱えているだけだった。
うーん、奥の手とか持ってなければいいけど……。
次回の投稿は5月14日の22:00です。