表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SNSで紡ぐカオスノベル / クリスマス・プロテクションスクランブル!!  作者: アイティ
クリスマス・プロテクションスクランブル!!
6/48

美しいものには目を奪われるものだ。

「あなたがた、よくも俺の華麗な泳ぎを邪魔したわね。」


マッスルポーズを決める、性癖の破壊者(?)マスル。

私たちは彼を細目で見ていました。……クリムさんを除いては。


「ほぅ、なかなか粋なことをしてくれるようだねぇ?

 創ちゃん、今なら私の全力、見せられそうだよ……?」


 どうやら、我が魔王クリムはマッスルをお気に召さなかったようです。しかもかなりのお怒りのご様子。いかにも魔王的覇気のオーラをかもしだしています……。それにしても、さっきの投げナイフ、ロアさんの狙撃の様子から察するに、見た目と素振りとは裏腹にとんでもない力を持っているようですが……?


「……ふむ、俺のチョモランマに見とれているようだな。」


「チョ、チョモランマ…?」


「ふふふ、ならば存分に見とれなさい。

 私はこの美しい星空の中で、すばらしい美を得たのよ。」


そう言って彼はマッスルポーズをやめ、

湖の上を、さもスケートリングかのように滑り始めました。

そのスピードはかなり速く、そしてまた優雅なものでした。


「……な、なにをみせられてるんでしょう?」


湖の上を彼が飛び跳ねる。なんの技かは分からなかったが、

まるで宙を舞うような動きはとても美しく、

湖に移る月明りがまるで彼にスポットライトを当てているかのような錯覚さえ覚えます。

何がしたいのかはわかりませんが、敵ながら見事なものです。

そうしてしばらく眺めているうちに、彼の体がだんだん光を帯びていき、

そのまま消えてしまいそうなほど幻想的な光景となっていまし____


「愁ちゃん! しっかりしてください!」


「……はっ!? は、創さん……!?」


創さんが肩を揺すってくれたおかげで我にかえることが出来ました。

すぐに湖の方を見ると、湖の上にはマスルはいない。

彼が浴びていた光は徐々に消え、元の静かな湖に戻り始める……。


「創さん、い、いったい何が……!?」


「そ、それが……私にも、なにがなにやら……」


「……ふふふ、無理もないですよ。私もなにがなにやらと言いたいぐらいですから。」


……創さんとの会話で気持ちを落ち着かせつつ、あらためて今の周囲の状況を見る。

さっきの光は完全に消え、私たちがここに来た時と同じような風景に戻りました。

あのマスルはなにがしたかったのかと考えていると、先ほどのマスルの言葉を思い出す。


”私はこの美しい星空の中で、すばらしい美を得たのよ”


美しい星空の中……というのはおそらく、

夜空の星々の光が反射しているこの湖のことを指すはず。

つまり、この湖にある世界の基盤から何かしらの力を……?

そもそも、世界の基盤は無事なんでしょうか……!?


「ちょ、クリムさん! クリムさん!? しっかりしてください!?」


「創さん? なっ……!?」


「ふぁー、すてきだったけんすきになってしもたわー……

 はじめちゃんもお、いっしょにすきなろやぁー……なぁー……」


クリムさんの様子がどうもおかしい。

まるで酔っぱらったかのようにふにゃふにゃしている。

それどころか、なぜか急に上着を脱ぎ始めたんですけど!?

そしてあろうことか、創さんの体をまさぐり始めたんですけど!??


「や、やめてくださいクリムさん! いまはそんなことをしている暇は……ぁぅ……。」


私は衝動的にクリムさんと創さんの間に入り無理やりクリムさんを引き離した。


「だぅ、なにするんだシュウチャン!! せっかくいいところだったのうぃ……」


「残念でしたね。あいにく創さんは私だけのものですので好きにはさせられないんですよ。」


「あはは、愁ちゃん……いろんな意味で恥ずかしいです……。」


あそこまで激情していたクリムさんがここまでおかしくなるとは……。

まさか先ほどの光でこうなっているのでしょうか……? あれ? つまりロアさんは……?


「ロアさん! 大丈夫ですか!?」


クリムさんの奥にいるロアさんを呼びかけるも、手遅れのようです。


「ああ、俺のかわいいリョウジュちゃん……ちゃーんと手入れしてあげるからね……!」


銃そのものが好きなロアさんは、猟銃を頬にあててスリスリしていました。

手入れするならスリスリするのは頬じゃなくて布のはずなんですけどねぇ……?


「愁ちゃん、これはいったい……?」


「おそらく、さきほどの光のせいかと思われます。

 それより問題は、あのマスルとかいうやつがどこにいったかですよ創さん!」


「うーん……なんか、光と一緒に消えてましたし、どこにいったかは……。」


と、そのとき、私の持っていたトランシーバーに着信が入る。

発信者は……なぜか家にいるロゼのようで、すぐに応答に出る。


「ロゼ、どうかしましたか?」


〈どうもこうもないよ。湖の世界の基盤に異常なほどの力を検知したから、だいじょうぶかな~って思ってさ。〉


「心配してくれてるようでありがたいです。それよりロゼ、その湖でクリスマスの破壊者の一人が光を出したあとに消えてしまったんです。そちらで騒ぎなどは起きてませんか?」


〈何があったかは知らないが、テレポートした可能性があるんだな。

 ちょいと待ってね、こっちもこっちでいろいろごちゃついててさ……〉


トランシーバーを通じて、なにやらカンカンと金属音が鳴る。

それと、マグマが煮えたぎるかのようなグツグツという音も聞こえる。


「ところでロゼはなにやっているんですか?」


〈パーティーを開くそうなので料理を作っておりまーす。

 ああ、そうだ愁、ついさっき助手から連絡があってね。

 やーっと異世界で、スマホが使えるようになるんだとさ。〉


「そうなんですね。それで、そっちはどうですか?」


〈わお、まったく興味ないように言わないでくれ。

 こっちはこっちで……っと、問題アリアリのようだ。

 謎の黒マッスルが、街でピカーンしているようだな。〉


「マッスルがピカーンって……まさか、さっきの?!」


横で話を聞いていた創さんは、

クリムさんの頭を膝に置いて頭をなでていました。


〈ああ、それと、シャケかチキンがどっちが___〉


ロゼの通話を切り、すぐに創さんの手を引っ張る。


「急ぎましょう創さん!

 はやくしないと、みんなロアさんやクリムさんみたいに__!」


「わかりました! クリムさん! ちょっと待ててください!」


「……わーん、まってはじめぇー!!」


泣きじゃくるクリムさんを後にし、

私たちは山を急いでおりはじめました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ