お前達のクリスマスって、醜くないか?
……あけましておめでとうございます。
人類は、一日一日を思いながら生きていました。
喜ばしい思い出や、頭に血が上るような怒りの思い出、
胸がキュッと締まる哀しい思い出、おかしくて楽しい思い出。
感情豊かに一日を刻んで、刻み続けて、
知識を得ながら前に進んで、事ある毎に悩み、
気づけば同じような日々が続いて、毎日がツマラナクなる。
『何か面白いものはあるだろうか?』
そうやって自然に目に付いた物に執着し、
自分の思い通りになるよう、自分色に染め始めます。
執着した理由は人それぞれで、色彩豊か。
己の正義や思念を胸に、彼らは今日も染め続ける。
……こうして、人類が刻む一日ができあがるのです。
そうして、歴史がこれまで続いてきたのです。
誰か一人が動くだけで、世界は大きく動くのです。
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さて。カイング繁華街です。
クリスマスを破壊するという犯行予告ですので、この辺りで一番クリスマスの装飾が施されているかつ、誰の目にも付きやすい繁華街に来ています。スペルさんと愉快な仲間達と共に。
そして、目の前に私の大好きな創さんと、
明らかな不審者5人組が繁華街の真ん中に立っていました。
「お待たせしましたね! 斉藤 創、ここに現界ですっ!!」
「……創さん、今日も可愛いです。」
「戦闘中に【推しが可愛すぎて死にそうです。どうしたらいいんですかあ?】なんて言わないでね愁さん。見る限り、なかなかコミカルな物になりそうだからね。」
私の側に近づきながらそう言う、猫耳モフモフ服のスペルさん。
推しが可愛すぎる……というのも、コミカルな物になりそうなのも事実のようです。目の前に居る5人組は、いかにも変な行動をしかねない印象がありますからね。
そう思いながら彼らを観察していると、
ボロボロのサラリーマンが前に出て言葉を喋り始めた。
「おやおや、やはり私の計算通り防衛隊がきましたよ?」
次に、トナカイ服のロボットがノイズ混じりに声を出す。
「なに、これぐらいの事は想定内だ。
想定外なのは、良い燃料が周りに揃っていることだがな。」
「え? また燃料にしちゃうの?
普通に食べるほうがいいとおもうんだけどなぁ……」
角を生やしたピンク髪の彼女が、残念そうにそう言う。
……明らかに人を殺しかねない包丁を片手に持ってますね。
「そうだぞ。口に入れて食べた方がよっぽど力になる!
そう! 俺の筋肉がその証拠! 見たまえこの肉肉しい___」
「黙りたまえ、君の暑苦しい圧は耐えることが出来ない。」
パンツ一丁のゴリマッチョは、
ロボットに自分の筋肉をグリグリと押しつけている……。
もう、見るからにおかしな人達なんですよね。
創さんも苦い顔してリアクションに戸惑っています。
まさかとは思いますが、この人達がクリスマスを破壊するのですか?
「……愁さん、油断は禁物ですよ。
まだ真ん中の人が何も喋っていませんからね。」
スペルさんの言う真ん中の人物を見るに、いかにもリーダー核のような存在感があります。
『クリスマスの主役は私です』と言わんとばかりサンタクロースの服装を着て、渋くかっこよさそうな顔して私達を見つめてくる謎の男。
「え、えっとぅ、あなた達は、ど、どう、何者で、す……?」
創さんは片言になりながら、5人組に呼びかける。
すると、見つめていたリーダー核の存在が口を開く。
「何者か? なら聞かせてあげよう。」
そういって彼が指パッチンをすると、
5人はボウリングのピンのように並び立ち、なにか言い始めた。
「ハイパーマッチョ! 俺の筋肉にお前が泣いたっ!
白銀ナイト降り立つ男! 性癖デストロイ! 『マスル』!」
「現実主義者。頭脳というのが全てなのです。
あなたの理想をぶち壊す。幻想デストロイ、『小倉』。」
「イェェェーーイ!! とにかく楽しむばってん!
楽しそうだから急遽参戦! デストロイ魔王! 『クリム』!」
「遙かなる未来、この時代の食料は全てエネルギーになるのだ。
そんなわけでエネルギーにさせてもらおう、この世界の諸君。
エゴデストロイ。製造名は省略。通り名は『オオクラ』である。」
「全ての幸せを根絶やしにする。
リア充デストロイ。『クリス・マスオ』」
「「「「「5人揃って! Xデストロイヤー!!」」」」」
……帰っていいですかね?
戦隊ヒーローみたいな口上をして、決めポーズをする彼ら。
いろいろと言いたいことはありますが、まず私は頭を抱えました。
こんなのが、クリスマスという物を破壊しようとするんですか……?
「……あのぅ、なんでもいいんですけど、
なんでクリスマスを破壊しようと、するんですか……?」
創さんは混乱しながら彼らに話しかける。
すると、リーダーらしき『クリス』さんが話し始める。
「それは、異世界にクリスマスなど必要ない物だからだ。なぜ異世界に来てまでも、クリスマスを浸透させる? クリスマスは元より別の国の文化。私達がいた世界の日本では、同じ地球、同じ世界であるからこそ存在していた物であるが、この世界のクリスマス文化は、ただのパクりではないか。だからこそ我らは破壊する。クリスマスという物に囚われた世界を。」
「……えーっと、つまり……しゅ、愁ちゃん!? どういう事です!?」
「別の世界までクリスマスを引っ張るなってことです。
それと創さん、いろんな意味で気をつけてくださいね!」
創さんにそう呼びかけた瞬間、クリスが言葉を出す。
「さて、口上は終わった。皆の者、各地で作戦を開始だ。」
そしてクリムさん以外、瞬間移動をしたかのように消えました!?
いや、瞬間移動をしたのでしょうけれど、どこに行ったんですか!?
「分散したか!」
スペルさんはすぐにトランシーバーで連絡を取り始めました。
「あのっ! クリム……さん!?
作戦って、なにするつもりなんですか!?」
「ふっふっふっ。教えなーい。でも、
【魔王クリム最高】と言ってくれたら……? なのかな?」
……なんでしょう、あのキュート力&狂気は。
包丁を持ちながら、可愛らしく振る舞っています……。
創さん、いいですか。見ず知らずの人にそんな簡単に__
「わぁー魔王クリム最高ぉー! ン我がマオウッ!」
創さんッ! 無理にポーズまで決めて言わなくていいですから!
「ありがとう! それじゃぁ貴方は私の手下だけんね!」
「て、手下?」
「手下には計画を教えてあげましょう! あの人達は、この世界の中心であるこの国の基盤を壊すつもりだそうで。じゃけんしたらクリスマスが存在するこの世界が、消えるらしいんだよね。」
「……! この世界が……!?」
その話を遠くから聞いていた私は、創さんに近づき会話に参加する。
「クリムさん、どうして教えてくれるんですか?」
「いやぁ、クリスマスは楽しいからね。
破壊するなんてとんでもないですから。」
「つまり、あの人達と破壊するつもりはないと?」
「もちろん。手下を探して外を出ていたら、楽しそうな事をやろうとしていたから、参加してみただけですね。」
「そんなボランティアみたいに参加をしたんですか……?」
「というより、枠が空いていたから……かな?」
枠? さっきの茶番を考えるに、5人が上限と?あのリーダーの方が、『クリスマス破壊しませんか?』って募集していたということですか!?
「というわけで、
私はクリスマスを破壊するつもりはありませんッ!!
それどころか、そうはさせないと協力したいぐらいです!」
そう言ってクリムさんは、
包丁をキラつかせながら決めポーズをしていました。
「……ど、どうします愁ちゃん?」
「……大丈夫でしょう。なんか、安心します。」
「なんか安心します!? ほ、包丁持ってますよ!?」
「私を信じてください。もし何かあれば、切腹でもします。」
「いや切腹されたら困るんですけど___」
なんて会話をしていると、スペルさんが近づいてくる。
「創! 愁! 分散した奴らを発見した!
七騎士も各地に移動しているから、応援に行ってくれ!」
「「了解です!」」
「私も行きますよ!」
……と、こんな感じでクリスマスを守る戦いが始まりました。
基盤とかなんなのかは分かりませんが、なんであれ、
創さんとのクリスマスは、壊させませんよ……?
次回投稿予定は未定! 執筆完了次第投稿します。