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SNSで紡ぐカオスノベル / クリスマス・プロテクションスクランブル!!  作者: アイティ
クリスマス・プロテクションスクランブル!!
2/48

お久しぶりです。非日常という名の日常さん。


※募集したワード表示→【   】


ここは、とある異世界。かつて全てを歪ませた大災厄があったり、全ての異世界が混ざり合いそうになったりした世界。だが、それはもう過去のこと。今となっては事は過ぎ去り、世界を救った者達は平穏に暮らし、平穏に世界の楽しさに触れていた。


だが、時はクリスマス。楽しさを妬む者達が、平穏を壊しにやってくる。ここ、アロディルデ王国にて巻き起こる事件、そして、かつて世界を救った彼女達は、再び”日常”に巻き込まれることになる……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



異世界時刻 12/23日 8時頃 新立アロディルデ学園前にて。


「うぉぉぉ! どいてくださーい!」


歩く生徒達を避けさせ続け、廊下を全力疾走、

教室にたどり着いた私は扉を開けて、声を出す。


「おはようございます!!」


「おはよう(はじめ)、今日も元気だな!」


「おっは〜!」


騒がしい教室の中、親しい友達は、

私の元気な挨拶に反応し、返事を返してくれた。


「あれ、今日は(しゅう)と一緒じゃないのか?」


「え? 愁ちゃんまだ来てないんですか?

 ……むぅ、ライス先生と何を話してるんでしょうか……?」


「まさか愁ちゃん、ライス先生のことが【好きとか】!?」


「いや、そういうのじゃないですよ……。」


そう言いながら私は頭の隅っこで、ライス先生と愁とでイチャイチャしている想像をしてしまう。いや、そんな変な事は絶対に愁ちゃんがすることはない。ライス先生は確かにイケメン教師と名高いが、まず愁は顔だけでなく心も見るし、ほぼ私以外に眼中にない。きっと学校内で何か変な事でもあったのだろう。それで生徒会長としての勤めを果たすために、ライス先生に変な事についての報告なりなんなりをしてるのだろう。いや、だけどそれは普段ホームルームが終わった後にすることだ。今日に関しては朝、私から離れてまでライス先生に____


「お待たせしました創さん……。」


「あっ、愁ちゃん!」


私の後ろで、愁は息を切らしながら教室に入ってきました。


「おーっす! 愁ちゃんおはよう!」


「おはよう愁、珍しいな、創と一緒に来ないなんて。」


「ああ、はい……いろいろな事案の報告とか、

 ……クリスマスのことで色々ありまして……。」


「ライス先生とデートの約束とか?」


……京子(きょうこ)がそう言うと、

私の方を一瞬だけ見て、すぐに返答をしました。


「実は、犯行予告が来たんです。」


「犯行予告……!?」


「それで、もしもの事があれば力を貸してくれと言われましてね……しかも、創さんにも力を貸して欲しいとのことです。」


「私もですか!? ……でもなんで……?」


「スペルさんがそう推薦していたそうです。

 七騎士の一人であるあの人が言うということは……というわけです。」


「うわぁ……。」


私は頭を抱え、今後起こるであろう大事へ向けて心の準備を始めました。


「……な、なぁ、京子。

 俺、この世界についてあんまり詳しくないんだけど……。」


「はいはーい! 転生したてのアルトくんに説明しよう! アロディルデ王国には、アロディルデ騎士団という現代で言う警察機関がありまして、その中の上位存在が『七騎士』と呼ばれているのだ! この学校の教師の一人、スペルさんもそのうちの一人なんだけど、イタズラのような犯行予告で七騎士は動かないはずなんだよねぇ……っと、ここまで言えば、ヤバさが分かるかな?」


「つまり、警視総監みたいな人達に力を貸してくれって言われたのか……?」


「そういうことになるね〜♪」


「そういうとになるねーじゃないでしょ!?

 えっ!? ど、何!? 何が起こるの!? 国家犯罪!?」


と、見るからに動揺した素振りをするアルトくん。

そういえばどんな予告が来たのだろう。まだ内容を聞いていなかった。


「愁ちゃん、どんな予告が来たんですか?」


「えーっと、ですね……それが……、

 『クリスマスに関連する全てを破壊し尽くす』だそうです……。」


……それを聞いて、その場にいた私を含めた3人は一斉に愁の顔を見ました。


「なんでクリスマスを狙うんですか……。

 破壊するなら(ねん)がら年中いつでもできるじゃないですか……。」


「待って、クリスマスに関連する全てって、

 つまり……ケーキとかツリーとかも破壊されるのか?」


「だとしたら、クリスマスデコの街とか全部壊されそうだね。それか装飾だけ剥ぎ取ってそれだけ燃やすってだけのコミカル集団だったりしてね! だけど、その予告だけで七騎士が動いているとは思えないなぁ。もしかして、既に前例があるのかな?」


「あとの話は分からないから詳しいことはスペルに聞いてくれと、投げやりにライス先生に言われまして。それですぐに話を終わらせて、こっちに来たわけです。」


「へぇ〜! さっすが愁ちゃん! 無駄な話はすぐ切り捨てとは!

 と、こ、ろ、で、明日のパーティーは……どう、なるのかなぁ……?」


京子はすこし焦りながら愁に寄り添うように聞く。


「……スペルさんの話にもよりますが、今日やってもいいでしょうか。クリスマスイブイブ会になってしまいますがね……。」


「いぃよっしゃぁ!!! それじゃぁ、私の友達にも伝えておくね!」


そう京子がテンション高く言ったタイミングで、

もうすぐホームルームが始まりますよー、と言う合図の音楽が流れる。いつもはクラシックっぽい音楽だが、今日はクリスマスソングのようで。 ……うぃーうぃっしゅあめりくりすます。


「それじゃ、また! 終業式の後で!」


「おう、また後で。」


扉の前で手を振り、2−4の教室に向かう京子。

彼女を見送った私達はお互いに向き合い静かに頷いた後、それぞれ自分の席に座りました。

今日と明日あさってと、色々と忙しくなりそうだ。

というか、京子さんはどういう説明でパーティーの日程が変わったって言うつもりなんでしょう? そもそも明日の予定の物を今日決行するって、メンバーは集まるのでしょうか……?

そう思いながらカバンから荷物を取り出していると、

愁ちゃんがペッチャンコになったパンを持って、茫然としている姿が目に映る。

なんでパンを持っているのか不思議に思った直後、

クラスの一人の男子(名前わかんない)が遠くから声を掛ける。


【「そのコッペパン、一週間前から君の机の中に押し込まれていたよ。クリスマスプレゼントにどうお?」】 


半笑いで愁の様子を見つめる男子。

私は苦笑いをしながら、事の顛末を見守ることにしました。


「……机に荷物を置きっぱなしにするのが私の悪いクセですからね。机の奥にパンがあるなんて思いもしませんでしたよ。」


「生徒会長さぁん、しっかりしてくださいぉ〜、

 俺たちを指導する奴が、そんな荷物の整理もできな____は?」


「おいしいですねこれ。さすが購買部のパン職人。」


愁は持っていたパンをそのまま口に入れていました。

クラスの一部の人達も、その姿を見て『うわぁ……』と、引く反応をする。

大丈夫なんですか!? 一週間前のパンって言ってますけど!?

私は体調面の方を気にしながら、イタズラを仕掛けた男子の反応を見る。


「おまっ、なんでそんなっ……」


「はい? これは私のプレゼントなんですよね? ありがたく受け取るのが礼儀じゃないんですか?」


「……いやっ、それにしてもお前……狂ってるぞ。」


「……狂っている、ですか。そう言われても仕方がありませんね。それはそうと、私にも貴方にクリスマスプレゼントがあるんです。」


「は、はぁ……?」


愁は制服のポケットに入れていたロケットランチャーを取り出す。

伸縮自在、イマジネーションで全てが決まるロゼさん特製のチート武器。

どうやら愁は、終業式でも制裁を喰らわせるつもりのようです。


「ちょ、ちょ!? おまっ、ヤメっ____」


「食べ物で遊ばない! ブレッドサンクションブラスト!!!」


トリガーが引かれ、ランチャーからは高出力エネルギーと、フランスパンの幻影が出てきました。フランスパンはイタズラした生徒めがけて一直線。口の中にパンが刺さる。


「もはっ……ぐぁ……!!」


「どうぞ召し上がれ。私がいちばん美味しいとおもったフランスパンです。」


「……もがっ、ぐっ、うめぇ!!!」


パンを喰らわされた生徒は、美味しそうにパンを食べ始めました。

いや、パンをショットするだけじゃ終わらないんです。

私がいろんな”前例”を思い浮かべていると、すぐに事は起きました。


「うまい! うん! よもやよもっ……うん?」


彼はフランスパンの中に入っていた筒状の物を取り出す。

はい。あれは導線の無いタイプのダイナマイトです。

遠くからみるかぎり、『はじけるうまさ』と書かれています。合掌。


【「爆発オチなんてサイテー!!」】


彼は事の全てを受け入れ、笑い泣きしながら吹っ切れる。

そして数秒後、爆発の中心である彼は真っ黒焦げに。

それ以外のクラスメイト達は、みなアフロになりました。


「……あはは……、最後までブレないですね、愁ちゃん……。」



<>


いろいろあって終業式のその後、

私と愁はスペル先生に会うため、職員室に向かいましたが……。


「ああ、愁と創か、スペル先生から手紙を受け取ってるぞ。」


そこで待っていた先生に、手紙を渡されました。

スチームパンク柄のカッコいい封筒を開け、中の文を読む。

『仲良しな愁と創へ。いろいろと困惑しているだろうけどごめんね。創はすでに愁から聞いているかもしれないけど、騎士団本部に犯行予告が届いたんだ。内容を見る限りはどうにもイタズラにしか見えない。だが巫狐(みこ)がそれを見てヤケにソワソワしているんだ。神である彼女が何かを感じたのなら、おそらく予告を送った人物は本気でクリスマスを壊すつもりだろう。それに伴って協力して欲しいことがある。アロディルデの繁華街のどこかに居る”にゃんでもや”を探して犯行実行時刻と犯人の名前を聞いてきて欲しい。案内をしてくれる人はすでに職員室に来るように言っておいてある。そしてこの手紙の内容はくれぐれも内密に頼む。後の事はよろしく頼んだ。


PS みんながアフロにされてるの見たかったんだけど。』


手紙を読み終わり、顔を見合わせる私と愁。

いろいろと口に出して言いたいことが沢山ありますが、

まず私達は一番気になる事を声に出しました。


「「にゃんでもや……?」」


「って、なんですかね?」


「私も初耳です。犯行について何か知ってるんでしょうか……?

 二ワンス的には”なんでも屋”という事でしょうけど、にゃん……?」

 

「スペルさんみたく、猫耳っ子なんですかね……?」


なんて、どんな存在なのか想像していると、後ろから袖を引っ張られる感覚がしました。すぐさま振り向くと、そこには眼鏡を掛けた青髪の男子生徒がいました。


「あ、え、ど、どうしました……?」


私がそう言うと、その人は無言のままポケットから折りたたまれた紙を取り出す。

ゆっくりと紙を広げ、両手でその紙を持って私達に見せびらかしてきました。


『 にゃんでもや 行き 創ご一行様 』


「……あ、あなたが、案内してくれるんですね……?」


愁の言葉に生徒はこっくりと頷く。

爽やか静かな人なのかなぁ……なんて思っていると、

後ろから聞き覚えるある、テンション高い声が響く。


「わぁぁ〜!!! さーすーけーくーん〜!!」


振り向くと京子さんが廊下を走ってこちらに来ていました。

私と愁はとっさに横に避け、京子さんの道を譲る。

彼女が私の目の前を通る頃には、急減速してピタッと止まる。


「ねぇねぇ! サスケくん! 一緒に買い物しない?」


「……(無言で頷く)」


「いよっし! じゃぁ行こう! すぐに行こう! ってあれ!? 創に愁ちゃん! 奇遇だね! これから買い物に行くつもりなんだけど一緒についていくよね! あ、場所はカイング繁華街だよ! せっかくパーティーするんだし、準備で買い物とか必要だからねぇ〜! それじゃぁ校門前で待ってるからぁ! あとでねぇー!!!」


……はっ、としたときには、

遠くでサスケくん? が京子さんに引っ張られていました。


「さすが京子さん、どんな空気も自分の物に……。」


「関心してる場合じゃないですよ愁ちゃん。

 いつの間にかサスケさん連れてかれてますよ!」


「……そうみたいですね。というか、あの方、手招きしてません?」


そう言われてサスケさんを見れば、

平然とした顔で『こっちこっち』と手招いていた。


「……ホントだ。あ、あのっ! サスケさん!

 教室で荷物を取ってから向かいます! 待っててください!」


そしたらサスケさんは、親指をグッと上げてサムズアップをしてくれました。雰囲気によらず、意外とコミカルな人かもしれませんね。ロゼさんみたいに。

私達は急いで教室で帰る支度をして、校門前まで走ってきました。

そこには京子さんとサスケさん、それと……。


「あら? 創と愁様、ごきげんよう。」


2−2組の学級委員長、サンノ・ビュータンクさん。

愁のライバル的存在が、ニヤニヤ顔で待っていました。


「ごきげんよろしくてよサンノさん。

 どうかいたしまして? また勝負を挑むおつもりで?」


「いえいえ、聞くところによればあなた方、パーティーをするおつもりのようですわね。でしたら、高貴なる私の手を借りるのが妥当なのではないかしら?」


「手を借してくれるのであればありがたいです。

 妥当なのかはさておき、人手が足りませんから。」」


「……!! お、おほほほほ! それほどでもないですわ!」


見るからに嬉しそうなサンノさん。

その姿を面白そうな笑みを浮かべて見守る京子さん。

私は京子さんにこっそり近づき、コソコソと喋りかける。


「あの、もしかしてサノンさんも買い物に行くんですか?」


「いやぁ、なんだか寂しそうに窓の外のを見ていたからね。

 せっかくサスケくんもいるんだし、思い切って誘ったぜよ。」


「だ、大丈夫なんですよね……?

 下手したらデパートとか壊しかねませんよ……?」


「大丈夫よ、そのためのサスケくんだからぁ。」


ねっとりと言いながらサスケくんの肩を触る彼女。

サスケくんが居ることで何が大丈夫なのだろうか……?

そう思いながら私達は、繁華街へ向かいました。



<>



繁華街は、フランスのような洋風の街並みと、東京の都市部が融合したような光景になっている。元々は洋風オンリーで構成された通りだったのだが、世界が融合しかけたときの爪痕で、現代チックになっているのだ。京子さんの買い物に付き合う中、私達はサスケさんが一人になるタイミングを見計らおうとする。が、しかし……


【「あ、あの画面に映っているのVRアイドルのにゃ~の♪さんだわ! 私あの方のファンですの。」】


「……(ビルの液晶ビジョンを指さし、首をかしげる)」


「あら? あの服、カッコいいですわね!

 あの渋い色、サスケさんに似合うと思いますわ!」


「……(自分の服とショーウィンドウに飾られた服を交互に見る)」


「なるほど、確かに大丈夫そうですね……」


サンノさんは、ひたすらにサスケさんの目に付いた物に対して『自分も興味ありますわよ』アピールをしていた。おそらくというか、十中八九サスケさんの事が好きだから故の行動でしょうけど。トゲトゲ口調おてんば娘のサンノさんはどこへ行ったのか。

おかげでサスケさんに場所を聞くタイミングがありません。


「いやぁ、てぇてぇ、サスサノはてぇてぇねぇ。」


「京子さん……ところでソレ、何買ったんですか。」


「コレ? ああ、【ちくわ大明神】の埴輪!

 私、こういう可愛い物には目がなくてね〜えへへ。」


「……かわ、いい……? と、とにかくですよ。

 パーティーに必要な物って、あと何がありますかね……?」


「必要な物は、ほとんど揃ってると思います、

 あそこのお二方の分も、ちゃんとありますし。」


「あ、ケーキとか料理とかはどうすんの?」


「家に帰った後、すぐにこちらで調理しておきます。」


ちゃくちゃくと今日の夜のパーティーの準備が出来てきましたが、

肝心の『にゃんでもや』探しはいつになったらできるんでしょう……?

見る限り、サンノさんはサスケさんにベッタリです。

サスケさんの案内が無いと、目的にたどり付けないのですが……。


「あっ、トイレ……ですわね! 

 サスケさん、私、ここで待っていますわ!」


「……(こっくりと頷き、公園のトイレに向かう)」


「さすがにトイレには付いていかないんですね。」


「な、なんですの愁!? 私に、男子トイレに入れとでも!?」


「いえいえ、気品なるお嬢様は場所を選ばずお花を摘むかと思いまして。アレなんですよね? 確かドレスって、こっそりその場でお花を摘むためのものなんですよね?」


「どうして女子トイレなるものがあるのに男子トイレでお花を摘まなければならないのかしらぁ!? 【そもそも、その行為自体……ありえないですわ!】その場でお花を摘むためにあるのなら、常にノーパンツですわよ!? ノーパンツで外に出歩き街中でこっそりとするなど、どうかしてますわ!!」


「……どうか、してたんでしょうね……。」


なんて、愁は空を仰ぎ見ながらそう言いました。

え、ドレスの話って実話なんですか? 本当にこっそり花を摘むんですか? ノーパンツなんですか!?

そうだったのかと衝撃を受けていると、サスケさんが帰ってくる。


「あらサスケさん! お帰りなさい!」


「……。」


「? ど、どうかしましたの??」


サスケさんが、私の目の前まで近づいてきました。

すぐにポケットから複数枚の紙と千円札を三枚を取り出し、

私の手のひらに乗せ、無言で頷かれる。


「……え、えっと? これを、ど、どうすれば……?」


するとサスケさんは、サンノさんと自分自身を指さし、

繁華街の奥の方へ人差し指を向けました。


「私とサスケさんで、あっちに行きたいと?」


「……(静かに頷く)」


「おお、積極的だねサスケくん。 カップル成立?」


「……(首をかしげる)」


「私はサスケさんとあちら側へ行って参りますの! またパーティーでお会いしましょう! おーほっほっほっほ!」


そうしてサンノさんはサスケさんを引っ張り、

猛ダッシュで繁華街の奥の方に行ってしましました。


「ちょっと待ってくださぁ……行っちゃいましたか……。」


「創さん、それは……?」


私は渡された紙を確認する。

紙の右上には、『にゃんでもや ルート』の文字。

全体を見るに、公園の付近を描いた地図のようでした。


「なになに? サスケから何貰ったの!?」


「ああ、京子さん。すみませんが、先に私の家でパーティーの準備をしておいてください。ちょっとクリスマスを救わねばなりませんので。」


「オッケ〜♪ それじゃぁロゼとやっとくね〜♪」


京子さんは何やら嬉しそうにしながら、私達の家がある場所へと走り去って行きました。……飲み込みが早くて助かるのだが、大丈夫なんですかね……? 


「用事を済ませてパーティーして、

 明日に備えてゆっくり休みましょう。」


「そうですね、行きましょう!」


私と愁は渡された地図をたどり、

あまり人目に付かなさそうな路地へ入りました。



<>



……人目に付かない……ってなんでしたっけ。

路地の奥で私達が目にしたのは、派手な赤いカーテンの前に並ぶ沢山の人々。


「……なんですか、ここ。」


「サスケさんの地図によれば……ここが『にゃんでもや』らしいです。」


「どうみても怪しい占い屋の雰囲気なのですが……?」


……愁の言うとおり、怪しさ満点である。

いかにも、闇っぽい何かが行われていそうな場所ですし、

そこで並んでいる人も、不気味な笑みを浮かべていますし……。

しばらく場所を観察していると、赤いカーテンが開く。

そこから紳士のような格好をした男が、いかにも納得したような顔をして出てきた。その様子を見ていた愁は、彼に接触を試みる。


「あの、すみません。ここは一体___」


「【聞いてくれよ。溝川(ドブガワ)って住みごごちがいいんだぜ、住めば都ってのは本当らしい。】最初は信じられなかったが、いざ住んでみると何もかも解放された気分になるんだ! おかげで悩んでいたことやイライラしていた事が吹き飛んだんだ! あっはっはっ!」


「……あの、ここはどういう場所なんですか?」


「ここは『にゃんでもや』迷える者達の救いの場さ。それじゃ私は失礼させて貰う。川でマグロを釣らねばならないんでね! あーっはっはっは!!!」


そう言って彼は、この場所から去って行きました……。溝川でマグロが釣れる? 『いや、川でマグロが釣れるわけないですよ。』……という私が口に出したことのある言葉が、頭の中で駆け巡る。みんな川でマグロを釣っているって言うんですよね。なにをごく普通に川でマグロを釣ってるんです? あろうことかなんでカジキも釣れるんです? なんで誰もツッコまないんです?

なんて頭を抱えていると、カーテンの奥で声が聞こえた。


「【スラム街でワサビ食べてたら 温泉掘り当てたって本当!?!?!?!!ネコチャン!?!?!?!?!】」


ちょっと何言ってるか分からないんですが。 

お寿司のワサビで辛すぎて涙を流して作業をしていたら温泉が沸いてきたって、そういうことなんですかね? 考えれば考えるほど訳が分からなくなってくるんですけど。


「創さん、覚悟はいいですか。私はできてます。」


「……ええ、並びましょう。すこし寒いですが……。」


そう言いながら愁にカイロを渡して、路地の更に奥の方の最後尾に並ぼうと歩き始めると、後ろから声が聞こえた。


「創様と愁様はいらっしゃいますでしょうか〜!」


「ん、は、はい! はい!?」


振り向いて声の主を探すと、赤いカーテンから顔を出すピエロ仮面の人物が目にとまりました。その人はこっちに来てくださいと言わんとばかりに手招きしている。


「……あのぅ、な、なんでしょうか?」


(あるじ)がお呼びです! さぁさ、どうぞ中へ!」


カーテンを開き、中へ入るように言われて、

私達は顔を見合わせ不思議そうにしながら、ゆっくりと中に入る。中にも二重にカーテンがあり、入り口の幕が閉じると、すぐに目の前のカーテンが開く。愁の言うとおり、中はいかにも怪しい占い屋の雰囲気。部屋の両サイドには、私達を招いたピエロ仮面の人間が均等に配置されていた。


「待っていたぞ、創と愁よ。」


目の前にある立てかけられた壁の向こうから、すこし鈍ったような男の声が聞こえてきた。なんだか怖くなってきて、私はカイロを握りしめながら、愁の後ろに隠れる。


「……待っていた? どういう事ですか。」


「君たちが来ることは分かっていた。七棋士のスペルからの依頼で吾輩を探していたというのも、先程まで買い物をしていたことも。」


「……ずっと、私達を見ていたということでも?」


「いいや? 正確には”見た”のだ。この王国には危機が迫っているので、救ってくれる誰かがいないかと探していたら、君たちが映ったのだ。」


「……貴方は何者なのですか。」


「【吾輩は猫である。名前はぽち。】ただのおかしな相談屋である。君たちが聞きたいのは、犯行時刻とその実行犯でよろしいかな? 犯行開始は今日の17時からで、犯人は……自分自身の耳で聞くといい。」


「な、なんですかそれ!? ていうか、17時って……!?」


すぐさま自分の腕時計を見る。

ただいまの時刻、なんと15時52分! これはヤバい!


「クリスマス、クリスマス・イブを迎えさせないためだ。といっても、吾輩が言うまでも無く犯人は目的を口走るだろうがな。さ、話は終わりだ。次のお客様が待っている。」


「えっ!? そ、それだけですか!? 場所とかは___」


「特別優遇で君たちを招いているからね。相談時間は3分だ。」


ぽち……? がそう言うと、両サイドにいた仮面のスタッフが、私達を後ろに下がらせようと距離を詰めてくる。愁は彼らを警戒しつつ、壁の向こう側にいるであろう”猫”を睨むように見つめていました。


「……ああそれと、ここは一応、お金が必要なのだが、今回は初回特別緊急事態でタダでいい。サスケから貰った料金は、大事に取っておくといいさ……。」


そう聞こえた頃には、入り口から一歩前の所まで詰められていました。


「ささ、またのお越しを……」


カーテンを開き、仮面スタッフは私達を外に追い出す。そして、何事も無く次のお客様を中にいれ始めた。そのときにはまだ、奥のカーテンは閉まっておらず、ぽちさんが居るであろう部屋が見える。


「君が【『刺身の上に乗ったタンポポ殺人事件』】を解決したんだって?」


「ああ、いらっしゃい、そうだね、あれは大変美味な____」


……いや、今はぽちさんに構っている暇はなさそうです。17時に事が起こる前に、早く行動しなければ……!


「愁ちゃん! ……どうすればいいでしょうか!」


「すぐに騎士団本部に……いえ、創さん、別行動です。

 私は騎士団本部で緊急事態であることをしらせてきます。

 創さんは家に帰って、ロゼに協力を求めてきてください。」


「分かりました!」


私は愁と一緒に頷いて、すぐに行動に移しました。路地から出た後、ウォーミングアップ無しに全力疾走し始める。異世界関係なく元々の強みであった『足』を生かし、私は私達の家に向かう。日が暮れ始め、空に淡い夕焼けが見え始める頃、白い息を出し続けながら家にたどり着いた。


「ただいまっ! ロゼさん! 大変で……え?」


「んにゃー、創ぇ、おかえりぃ。どしたそんな急いで?

 京子ならアルトとか呼びに行ってどっか行っちゃったけど。」


パーティーの装飾が飾られた大きなリビングの中心で、

ロゼはコタツの中に入り込んで、寝転んでいました。寒いからといって、コタツでその近未来衣装は……蒸し暑くないのだろうか? 


「ロゼさん、クリスマスがピンチなんです! 助けてください!」


「だが断りゅ〜。」


「な、なんでですか!?」


「【え? 断るに決まってるだろう面倒臭い。何故かって? 逆に聞くがこのクソ寒いのにコタツから出て外に仕事しに行きたいやつがいるか?】クリスマスはそもそも別の国の物だろうが。なんで国境超えるどころか世界越えてまで文化続いてんのさ。いつまで経ってもハロウィンだのクリスマスだの言ってちゃ新しい文化も作れやしない。ということで今日はコターツの日だ。私は寝させて貰う、グがぁぁぁぁぁー。」


「変なこと言ってないで助けてください!

 巫狐ちゃんもヤバいって言ってるんですから!」


「ああ、知ってるよ。こっちにも手紙は届いてある。」


そう言ってロゼは、コタツの中から封筒を取り出す。そしてそれはスチームパンク柄であり、私はそれがスペルの手紙であると分かる。


「もちろん、私が何もしない訳じゃぁ無い。だが、今日は絶対に家に居させて貰う。こっちもこっちで緊急事態っていうのもあるからね。やることがある中でもキチンとやろうとするべきことはやるって気持ちを褒めて欲しいよ。」


「……それなら、テレパシーとかで伝えてください!

 みんなに、今日の17時から外が危なくなるって!!」


「17時ぃ? 今日の? まぁ、そうか。クリスマスが始まる前にとっと破壊するつもりって訳か。」


ロゼコタツの近くにあったパソコンを起動し、しばらくキーボードを入力。そしてまばたきを数回したあと、パソコンの画面を私に見せてきた。

そこに映っているのはアロディルデ繁華街の監視カメラ映像。その場所では、まるでパレードみたく騎士達の行進が行われていた。強そうな騎士の一番前には、いかにも魔術師と言える杖と服装、我らが猫耳っこスペルが立っており、その横には愁が付き添っていた。


「……愁ちゃん、間に合ったんですね……。」


パソコンの左隅に配置されている時刻を見ると、『16:37』となっている。残り23分で、なにが起こってしまうのだろうか……? にゃんでもやに、どこでどんな事件が起きてしまうのか追い出される前に聞けばよかった。


「それと創、こっちの視点も見て欲しい。」


そう言ってロゼさんがキーボードをパチッと鳴らすと、

別視点の繁華街の映像が映りだす。そこには道の真ん中に並び立つ5人の変質者の姿が映っていた。黒パン一枚のゴリマッチョの方、トナカイの服を着たロボットの方、丸眼鏡を掛けているボロボロ服のサラリーマンの方、ピンク髪で角を生やして包丁を持つ方、そして、その4人の中心にいるサンタの服を着たリーダーらしき存在。


「…...まさかとは思いますが、この人達が……。」


「それじゃ、行ってこーい!!!」


ロゼは私の手を掴んで、パソコンの画面に触れさせました。

するとパソコンに私の手が吸い込まれ、途端に体が全て吸収されてしまいました。そして私はサーキットボード柄のトンネルを抜け、繁華街のカメラから3Dプリンターのように登場。ざわつく騎士達の声が聞こえ、すぐさま彼らと、スペルと愁に向けてサムズアップをした。


「……お待たせしましたね! 斉藤 創、ここに現界ですっ!!」


さて、私は久しぶりに本気を出すことになります。

すこし鈍っているかもしれないですが、頑張りますよ!!



次回! 更新未定ですが年内には投稿予定です! お楽しみに!

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