9話 星《ポイント》を与えることに興味がない王子は冷静さをかいた
この作品は空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』参加作品です。
他にも多数素敵な企画参加作品がありますのでよければお読みください。
あとがき下に空野様の活動報告へとべるリンクがあります。
「なに? 今、何と言った?」
グラトは、目の前にいる大臣が言った言葉が理解できなかった。
「は。ですから……この国の【光を紡ぐ者】がおよそ百人、国を出ました」
【光を紡ぐ者】は言霊を生み出す存在。
言霊は、戦闘、政治、生活、また、魔力、身体や心、全てを支えてくれる。
つまり、ライタがいなくなることはそのまま国力の低下につながる。
「な、何故だ?」
「その、恐らく、グラト王子があのヨミを追い出したことが原因では、と」
「馬鹿な! アレは星を与えるだけしか出来ない女だぞ!」
「その星を与えることが重要なのではないでしょうか」
「誰だって出来ることだ! そもそも星を与える意味なんてどこにある!? 星なんて与える必要ないだろ! 言霊など消耗品だ!」
「しかし、何割かのライタはヨミの元へ行くと公言しており、王もグラト王子を問い質せと」
グラトは焦った。
グラトは、勿論、ヨミとの婚約を破棄したことは伝えた。
伝説級の恋愛の言霊によって導かれた縁をきったことに対し、王は苦い顔を見せたが、グラトがオマージェと共に、その運命を超えてみせると宣言したのだ。
一時その恋物語のような光景に城が沸いていた。が、もう今はグラトに対しては冷え切った視線を送ってくる者ばかりだ。
オマージェは相変わらず素晴らしい言霊を生み出してはいるが、その言霊は一時的に強く光り輝くが、すぐに落ち着いてしまう。
そして、その後言霊に他の者の言葉が書き込まれる。多くが、名作の模倣、盗作ではないかという苦言だ。時には悪意の塊のような言葉もあった。
神域に入れる言霊さえも、いや、だからこそ、人々に注目され、色々と言葉をぶつけられることはある。
しかし、その比ではない。
そして、オマージェは最近ではその攻撃と戦い始め、毎日荒れ狂っている。
グラトの恋人となり有名になってしまったことが原因だとオマージェはグラトを責め立てた。そして、グラトはオマージェのどこかで見たことがあるような言霊に問題があると言い返し、そこからは泥沼の争いである。
全てが狂ってしまった。
グラトは、読み違えたのだ。
そして、狂ってしまった物語は止まらない。
「そして、グラト王子、重大な話はここからです」
「は?」
今までもかなり大変な話だったはずなのに、それよりも?
グラトは戦慄した。まだ聞いてもいないのに体が震え、寒さを感じ始めた。
大臣も少し震えているように見える。
「三賢人が去りました」
「は?」
グラトから正真正銘の抜けた声が出た。
「なんだ……クエスのことか。それならもう知っている。というか、報告したはずだ。驚かすな……」
「全員です」
「は?」
間の抜けた声が出た。
「三賢人全員が去りました。先見の賢者クエスだけでなく、博雅の賢者アティファ様もです」
「は?」
博雅の賢者アティファ。古代文明から最新の研究までありとあらゆる知識をどん欲に集め誰よりも『知る』エルフだ。
そして、先々代の王から知恵を授け続けてくれた国の恩人である。
「アティファ様は『巫女を追う』と書き残して去られたそうです。その巫女というのがヨミではないかと」
「は?」
「王はこのことに関してひどくお怒りです。場合によっては、王位継承権の取り消しもあり得ます」
「は?」
「あと、グラト王子宛にアティファ様からのお手紙があります。恐らく苦言の塊でしょう」
「は?」
「そうそう、三賢人の最後の一人美食の賢者ゴッツァンも去りました」
「それは別にいい」
ゴッツァンは、東においしいものがあれば旅に出て、西に珍味があれば遠征に向かう、とにかく大きな男だ。アティファに言われ賢人に選ばれたそうだが、話すことは食事の質や量に関する文句ばかりで正直役に立っているとは思えなかった。
「あと、大貴族ジョワブル家のシジェラ様、王国騎士団副団長スクリム様……」
名だたる人物が次々に挙げられていく。
(何故だ?! 何故皆あの女を追う! あの女は星を与えるしか出来ない女なんだぞ!)
「それと」
「まだあるのか!?」
「王子の恋愛の言霊を読みましたが、ちょっと読みづらかったです。星1をつけさせていただきました」
「それは今じゃない! と、とにかく、少しでも事態を収めねば、国の【光を紡ぐ者】に命じて、出来るだけ多くの言霊を生み出させろ! 質は問わぬ! 質より量で国力を上げる!」
「星を与えるのではなく、ですか? ヨミが去ったのが原因であるならば……」
「何度も言わせるな! 星を与えるのに意味などない! ……そうだ! 王にばれぬよう部下を城下に送り、星を与える暇があるなら言霊を読めるだけ読めと平民共に命じさせろ! ざっと見れば、言霊の恩恵は得られるだろ! 深く読むことも、いくつ星を与えるかを悩むのも時間の無駄だ! 量だ量! とにかく! 量で補うのだ! それで盛り返せば王もお許しになるはず!」
悲劇か喜劇か、王子の物語は加速していく。
名作か駄作か、作り手の想像を超える物語へと。
【恋愛】の言霊
『例えすべてを失ってもボクはキミを愛するに違いないしキミもボクを愛するに違いないとボクは青い空の下で思ったんだ』
☆1つ。
【グラト】作。主人公の青年はある国の王子だが、身分違いの女を愛してしまう。そして、二人の間に恐ろしい黒髪の魔女が現れ二人の仲を引き裂こうとする。という話。
魔女も王子も女もみんな台詞が長すぎて最終的に何が言いたいのか分からなくなりました。
あと、王子と女が完璧超人すぎて感情移入しにくかったです。けれど、色んな意味で頑張って欲しいので星一つはつけておきます。がんばってください。By中間管理職
お読みくださりありがとうございます。
毎回言霊の名前を考える時にかぶったらどうしようとドキドキしながら検索をかけています。
機械音痴なりにしっかり検索しているつもりですが、もし被ってたらすみません……。
少しでも楽しんでいただければ何よりです。
また、☆評価やブックマークをしていただけるとありがたいです。
よければ、今後ともお付き合いください。
そして、空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』には他にも様々なジャンルでポイントの大切さを訴えた素敵な作品がありますので、下のリンクから企画内容をお読みいただき、是非他の作品も読んでみて下さい!