最終話 星《ポイント》を与えることしか出来ない令嬢はずっとキラキラした物語をよんでいる
この作品は空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』参加作品です。
他にも多数素敵な企画参加作品がありますのでよければお読みください。
あとがき下に空野様の活動報告へとべるリンクがあります。
ヨミは【ライタ=ニ=ナロウ】の中に立っていた。
【ライト=ヲ=ヨモウ】の中心に大きく聳え立つ柱【知恵の若樹】の前に。
周りには虚言霊に奪われていた言霊だろうか幾千の言霊が本来の光を放ちながら浮かんでいた。
そして、地面には人々が寝転がっていた。
こちらは、ライタファザルの人々だろう。
ヨミが婚約を交わす際に出会った王もいた。
元の姿に戻っていた。
恐らく、闇の夢が終わり、その効力が消えたのだろう。
きっと、今頃ラファ達も……
ヨミは微笑みながら遠くを見つめる。
「せ、先生……わたし、これは……」
「ラファ……お前のその肌……文字もなくなっておる……」
「あ、ああ……なんでしょう、うれ、嬉しいのですが、半身を失ったような……」
「……うむ、少しずつでいい。しっかりお別れをしておくんじゃ。前を向けるように」
「ヨミ様は無事でしょうか……」
本来の茶色い色の瞳を取り戻したエシルが不安そうに【ライタ=ニ=ナロウ】の方角を見つめる。
「無事です。きっと、だって、こうして皆さんが救われていますもの」
「いえ……なんだか、空が青すぎて怖いのです」
「じゃあさ! ボクたちがヨミの傍にいてあげよう! 何があっても」
「そう、ですね……はい!」
「流石のあなたも不安ですか?」
クエスが、小さく笑いながらハインリヒに問いかける。
「不安はない。あいつに限ってな。いや、あいつの不安は、全部俺が全権限を使って取り除いてみせる」
「は、はは……」
「それより不安なのは、アイツだよ……」
「義姉さん! 義姉さーん!」
「ばっか! ひとまず、治療させろ! それからでも遅くねえだろ!」
「何があっても前に進む。俺達には星の導きがあるから、な……」
ハインリヒの言葉を切るように、エシルやラファから離れた言霊達が空を舞い始める。
そして、それらは【ライタ=ニ=ナロウ】の空に集まり、
「すごいな……まるで、星の成る木だ」
大樹に輝く実がなったかのように、言霊が空を自由に泳いでいた。
ヨミは見上げていた。
空を悲しいほどに青い空を。
そして、
「よ」
彼女の母親、ツムギ=フェアリテイルと向き合った。
「行くの?」
「ああ、うん」
予感はあった。
彼女は言っていた。
遥か昔の虚言霊を見て来たかのように。
「そっか」
「うん、ごめんな」
彼女は魔導書から言霊を出さなかった。
まるでもう出ているかのように。
「なんで謝るの?」
「あー、うん、いや、なんとなく」
彼女は呪文を必要とせず、恩恵を得ようとする様子がなかった。
恩恵を得る側ではないかのように。
「ありがとね」
「なんで礼言う?」
彼女は年を取らなかった。
人間ではないかのように。
「なんとなく。スクリムには会わなくていいの?」
「アイツにはあんたがいれば十分でしょ」
彼女は人々を救ってみせた。
まるで
「お母さんは、あたしにとって、なんであれ、お母さんだから」
「……あれ、不思議だなあ。あたしみたいなのでも、涙は、なみ、なみだ、流れるんだ……!」
彼女は輝いていた。
まるで
「ずっとずっとあたしの心にきざまれ、きざ、きざまれてる、からあっ……!」
「うん、あたしが言うのがおかしいのかもしれないけどさ、ヨミ、あんた最高の娘だよ。星五つだ!」
「……ゔんっ!!」
そして、彼女は光となり、空へ舞い上がった。
ヨミは落ちていた魔導書を拾うと愛おしそうに撫で、空を見上げた。
星のように輝く彼女をヨミは輝く黒い瞳でずっと見つめていた。
「素敵な魔法をありがとう、おかあさん」
その女の子は、泣いていた。
自分の言霊が馬鹿にされたのだ。
『星の女神』
昔、よんだ星の勇者の物語に憧れて作り上げた物語だった。
体質的に少ない魔力で一生懸命に作り上げた物語だった。
けれど、『星の女神様はもっと素敵なのよ』とリイダの女の子に言われてしまった。
(優秀なリイダだからって偉そうに!)
この街では、星の女神様に憧れ、彼女のように立派なリイダになりたい人たちがいっぱいいた。
けれど、彼女はどちらかというと……。
また、あのリイダの女の子の顔が過る。
悔しくて、腹が立って、苛々した。
ふよふよと呑気そうに浮かぶ自分の言霊さえも嫌いになりそうだった。
女の子はぎゅっと目を閉じ、手で隠し寝転がった。
目をつぶっているから真っ暗闇だ。
何も見えない世界は安心するような気がした。
けれど、どこかさみしかった。
その時、瞼の裏で、いや、向こう側で何かが輝いた気がした。
女の子はその光に導かれるように目を開く。
そこには、濡羽色の綺麗な髪が地面につくのも構わずに言霊を読む美しい女性がいた。
真っ黒で輝く瞳をせわしなく動かし言霊を見つめる。
そして、目を閉じ、上を向き、小さく息を吐くと、言霊に手をかざした。
キラキラと輝く星が……ひとつ。
女の子は肩を落とした。
その時、その黒髪の女性を目が合った。
「これ、あなたの?」
「はい……あの! なにがダメなんですか?」
「何がダメ?」
「はい! だって、星ひとつじゃないですか?」
「あー、うん、ダメな所はいっぱいあるけど、聞く?」
「……いや、いいです。なんだか長くなりそうだから」
「じゃあ、ひとつだけ言わせて」
女の子はぎっと女性を睨みつけ言葉を待つ。
「なんか夢のある話で好きだったわ」
「へ?」
「ん?」
濡羽色の髪を垂らしながら女性が首を傾げる。
「褒められました?」
「うん」
「星ひとつなのに」
「星ひとつ分輝いてるところがあったから」
女の人はキラキラと笑った。
そこに自分の求めるものがあった気がした。
もしかしたら、彼女がくれた星もそういう意味だったのかもしれない。
急に女の子は自分が恥ずかしくなって俯いた。
「どこかに行きたいんじゃないの?」
「あ……はい」
「いってらっしゃい」
女性は、女の子の手を握り、星を贈ってくれた。
それには何の意味もないのに。
女の子の手は輝き、それを見る瞳もまたキラキラと輝いていた。
「はい! いってきます!」
女の子は慌てて駆け出していく。
が、途中で足を止め、振り返り
「あの! ありがとうございました!」
キラキラとした笑顔で手を振った。
女はそれを見て真っ黒で輝く目を見開き、
「どういたしまして」
と、手を振り見送った。
そして、彼女が去った後、改めて手元の言霊に目を走らせる。
『星の女神』【恋愛】の言霊
星の女神さまは、キラキラの星を人々に贈りました。
人々はキラキラと輝き、女神さまを助けました。
キラキラ輝く人たちに囲まれて、キラキラ輝く世界で、一番輝く女神さまになりました。
「うーん、女神様、凄すぎてなんか怖い……やっぱり星ひとつね」
「ここにいたか」
「げ」
「げとか言うな。嫌な顔するな」
「私にはしてもかまいませんよ! さあ!」
「最近、俺コイツの治療ばかりしてる気がする。あ、そういえばお前、最近健康診断さぼってるだろ、どうせ言霊見てて忘れたんだろうけど!」
「シジェラ様、元気を出してくださいませ。そして、濃厚なシジェクエを出し……ふふ」
「良し! 飲みに行くか! 先生も連れて! お前もどうだ! この前の感想会の続きといこう!」
「うむならば行こう! ああ、そうじゃ! あの、の……今度発掘デートに行かぬか! スコップはこっちで用意するから!」
「発掘デートって何さ! それより空の散歩行こうよ! 言霊もいいけどさ!」
「ひとまず。着替えてください、あと、髪にはっぱついてます。また、よんでいたんでしょう。あと、髪ももう勝手に切らないでください。あと、義弟君に髪を盗むのをやめさせてください」
「義姉さん! ダメなの!? なんで!? あ、義姉さん、あの魔本、僕、百冊は買うからね」
「ええい! うるさい! 話が進まない! とりあえず、準備しろ! 今日の魔本化記念パーティーでのライタファザルの使いがアイツらだからって嫌がるな。確かに毎度キラキラした目で慕ってくるのは怖いものがあるだろうが……今日の主役はある意味、お前なんだからな。ぶーたれた顔せずにしゃっきっとしろ! お前らも早く準備しろ! 行くぞ!」
女は笑う。
きらきら輝く彼らを見ながら、手を伸ばす。
星を贈る。
彼らの物語に。
ひとつ
ふたつ
みっつ
よっつ
いつつ
そして、自分の胸に手を当て
ひとつ
ふたつ
みっつ
よっつ
いつつ
彼女自身の物語に、胸を張って輝きを贈った。
『「星を与えることしか出来ない無能が!」と言われてキレた令嬢は婚約破棄からの貧民ですが、ポイントブルジョワなので隣国で言霊の神に。帰って来いと言われてももう遅い。』
星贈りの女神制作実行委員会、作
☆1 歴史エッセイとしては主観が入りすぎてあまりよくないが、物語として読めば、書き手の情熱は伝わってくる。というか、登場人物が☆贈っていいのだろうか。あと、タイトルが長い。あと、
ごくごく一部の需要に応えて魔本化するのやめてほしいbyヨミ
お読みくださりありがとうございました! 終わりました!
色々とありますが、詳しくは割烹で語りたいと思います!
読んでくださった皆様に感謝いたします。
また、少しでも、私の読者の皆様へのリスペクトと感謝が届いていれば何よりです。
完結に伴い、止まっていた連載等も再開しようと思いますので、興味持ってくださった心優しきリイダ様がいらっしゃれば、底辺ライタの言霊に今後もお付き合いいただけると幸いです。
改めて、ありがとうございました。





