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43話 星《ポイント》を与えることしか出来ない令嬢は自分を追放させた女をよんでみる

この作品は空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』参加作品です。


他にも多数素敵な企画参加作品がありますのでよければお読みください。


あとがき下に空野様の活動報告へとべるリンクがあります。

「オマージェ、なの……?」

「はい、お久しぶりです。ヨミ様」


卒業パーティでグラト王子に婚約破棄を告げられ、代わりに婚約を結ぶと宣言されたのがオマージェだった。

あの美しい緩やかなウェーブがかかった金髪は手入れもされずにボサボサに、そして、男を魅了するような体型は見る影もなくやせ細っている。


「なんでここに? ここは……」

「物語の世界、ですよね……多分、いえ、話はこの言霊(スペルスピリ)から聞いてください」


オマージェは自身の魔導書から言霊(スペルスピリ)を呼び出す。

ヨミはぱっと見た光文字に目を見開き、オマージェを見る。


「すぐにでもまた奴らが嗅ぎつけてここに来ます、行ってください。お願いします」


オマージェが飛び出そうとするのを捕まえる。


「何を!?」


振り返ったオマージェが見たのは、オマージェが渡した言霊(スペルスピリ)と、オマージェ自身に(ポイント)を贈るヨミの姿だった。


「あなた自身の物語がもっと読みたかった」


ヨミが苦しそうに呟くと、オマージェもまた顔を泣き笑いに歪ませて


「ええ、私も……ありがとうございます。導いて下さい、あなたが」


オマージェは飛び出すと、与えられた星を掲げ


「ここに! 星をひとつ頂いたとびっきりの女がいますわよ! 醜く汚れた女でもあなたたちにはご馳走でしょう! さあ、おいでなさいな!」

「オマージェ……!」

「私の事は良いから! さあ、早く」


オマージェの言葉は最後まで聞けないまま、オマージェは飲み込まれていった。


「……」


オマージェの言霊(スペルスピリ)は、弱弱しく輝きながらふよふよとどこかへ飛んでいく。

ヨミはその姿を見つめながら付いていく。


いつの間にか街は形を失い、黒い文字と言葉にに変わっていく。

そして、文字が暴れまわり、時に言葉となり、時に黒い物質となり、ヨミを襲った。

けれど、暴れる黒い文字達も、呪詛のような黒い言葉達もヨミには届かなかった。


ヨミに今届いているのはオマージェの言霊(スペルスピリ)だけだった。


『ヨミ様へ。多くは語りません。この【闇の夢】は、いえ、これを生み出した者の気持ちが私には少し分かる気がします。だから、私はこの世界に来れて、今も正気でいるのでしょう。』


「下らない、つまらない」


黒い言葉が囁く。


『私は、分かってはいました。自分の作る言霊(スペルスピリ)が誰かの模倣であり、盗んだに等しいほどであることを。けれど、やめられなかった。私は、(ポイント)が、欲しかった。人に認められたかった』


「才能なし、努力しても無駄無駄」


『あなたが国を出ていってから、私は、自身の言霊(スペルスピリ)を馬鹿にされ、騒動を起こしてしまいました。そして、誰も信じられなくなった時、気付いたのです。自分さえも信じることが出来なくなっていることに』


「やめろやめろやめろ」


『私は、私に嘘を吐き続けていた。誰かに認めてもらいたいが為、ただそれだけに、その時思ったんです。何のために星を手に入れたかったのか。今となっては嘘に聞こえるかもしれませんが、ヨミ、あなたに認めてもらいたかった』


「楽しい? ねえ、たのしい?」


『あなたがキラキラした目で言霊(スペルスピリ)に夢中になって、(ポイント)をおくって、けど、それは正直で、しっかり真正面から向き合ってくれていて』


「悲しい? ねえ、かなしい?」


『あなたをそんな顔にさせたくて、あなたが星をいっぱいおくった言霊(スペルスピリ)そっくりのものを作った。けれど、あなたは星をくれなかった。今、思えば当たり前のことだけど、あの時は何故か憎しみが勝ってしまった』


「おこってる? ねえ、怒ってる?」


『そして、いつしかあなたを憎み、星をおくる行為そのものが間違っていると思い始めた。くれない人間達が愚かだと思ってしまっていた』


「ねえねえねえねえ!」


『そして、グラト王子のリイダ排斥の考えに同意し、そして、あなたから婚約者を奪った』


「ねえ! ねえってば!」


『私は間違っていました。ずっとずっと間違っていた。もっと真っ直ぐにえがけばよかった。もっと努力すればよかった。もっとあなたに正直に向き合いたかった』


「ねえ……」


『ヨミ様、私は、星贈りの、言霊の女神の、貴女の星を贈る姿に五つ星を贈りたい。そして、これからもあなたなりに導いてあげて欲しい、迷えるライタを。多分、この物語の主は……私にそっくりだから』


「ねえ、あなたも(ポイント)くれないの?」


目の前には女が一人。

銀の長い髪に、真っ白な肌。

高貴な立場なのだろうか幾重にも重ねられた布で作られた服を着ている。


「キラキラしてたら、あげるわよ」


ヨミは真っ黒な輝く瞳で彼女を真正面から見つめた。

お読みくださりありがとうございます。


連続更新ですみません。あまり邪魔にならないよう1,2時間の間隔を空けて更新しようと思います。個人的に一か月で完結までと考えていたので今日で完結、もしくは、終盤まで……!


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


また、☆評価やブックマークをしていただけるとありがたいです。


よければ、今後ともお付き合いください。


そして、空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』には他にも様々なジャンルでポイントの大切さを訴えた素敵な作品がありますので、下のリンクから企画内容をお読みいただき、是非他の作品も読んでみて下さい!

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