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41話 星《ポイント》を与えることしか出来ない令嬢は魔女に名前をよんでほしい

この作品は空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』参加作品です。


他にも多数素敵な企画参加作品がありますのでよければお読みください。


あとがき下に空野様の活動報告へとべるリンクがあります。

「ねえ、ヨミ!」

「なに?」

「あんた、楽しそうだね! キラキラしてるよ!」

「そ、そう?」

「ああ。リイダになれないって泣いてた頃から今までずっと黙々と言霊(スペルスピリ)よんでる子だったからさ。人様にはいっぱい感謝されてたみたいだけど、自分を顧みない感じがしててね。正直心配だったのよ」

「そっか……多分ね、別の世界に逃げたかったんだと思う。」

「別の世界?」

「物語の世界に。でもね、物語の世界は、きっと現実にも力をくれるって思ったの。そして、私は現実の、私の世界の主人公にならなきゃって、その為に言霊(スペルスピリ)の力を借りようって思ったの」

「そっか」


ちらりと見たヨミの顔は輝いていた。

ツムギは笑って、再び口を開く。


「別世界か……別世界ではね、【ライタ=ニ=ナロウ】みたいな世界が、えーと、なんだ、まあいいや、魔法の世界の中で存在するって言ったら信じる?」

「ん? どういうこと?」

「私はね、凄い力を神様から貰ってさ、異世界転生チートIEEEEEE! ほぼ神! ってなってたのね。でも、元の世界に戻る魔法だけはなくてさー。じゃあ、もう作っちゃえって思ったの。そんで、そこから戻る魔法も生まれたらなーとか考えたりして」

「なに? なんの話?」

「最初は凄くうまくいってたのよ、まあ、オマージュだからね! そりゃあ盛り上がるんだけど! けど、ダメだった。あんなことが起きるなんて……私はやっぱり神様じゃあないんだなあって思ったわけよ!」

「あんなこと……虚言霊(キョムルスピリ)のこと?!」

「だからね、私は一人で研究し続けることにしたの、元に戻れる方法を。けどね、やっぱりさみしいじゃない!? 一人って? 我慢の限界って時にさ、孤児院なんか行っちゃったりしてさ、あんたを貰ったのよ。ごめんね、なんか嫌な理由だよね」

「……私はさ、お母さんの子になれて良かったよ! ……言霊(スペルスピリ)ばっかりよんでても怒られなかったし」

「……あは! そうね! でも、普通のお母さんとしては良くないよね!」

「まあね」

「「あははははははは!」」

「……でさ、アレがまた現れる予感はしてたのよ。でもね、私はもう無理なのよ。だから、他の誰かに託すことにした。勿論出来るだけの手助けはするつもりだったし実際してたのよ。魔女として人助けしたり、ゴッツアンに化けて食糧問題を解決したり」

「そういや、なんでゴッツアン?」

「ああ、あたしね、元の名前が、ツムギ=ゴトーなのよ。で、ゴッツアン。でさ、話し戻すけど、私は文芸部に入った時からずっと誰かに寄り添う物語が書きたかったの。誰かの背中を押す物語が。だからね、自分じゃない誰かが世界を救うのは運命だったんだろうなあって思ってる。」

「ブンゲイブ?」

「それに、作った奴が物語を思い切り捻じ曲げてハッピーエンドの主人公に収まるって、私は好きじゃないのよね。だから、」


ツムギの真っ黒い瞳には、ヨミの姿が映る。


「私の子になんとかしてもらおうって思ったんだ」


ヨミの真っ黒い瞳にツムギが映る。


「急に母親ぶるのはズルくない?」

「や、まあ、その、悪いとは思ってるよ」

「……もいっこだけ聞いていい? なんで、私がお母さんの子になれたの?」

「……あんたが言霊(スペルスピリ)を、誰かの物語をキラキラした瞳でよんでくれてたから。きっと、素敵な展開に導いてくれるのはこういう子なんだろうなあって思ったのよ。【光を導く者】っていうくらいだし?」

「光を導く者?」

「リイダの意味よ。あれ? これ昔の呼び名だっけ? 物語を現実世界の素敵な、キラキラした力に帰ることの出来る人って意味かな」

「成程……」


地面に降り立つそこは【ライタ=ニ=ナロウ】。

ヨミの早い動きを捉えられなくなった虚言霊(キョムルスピリ)は結局、【ライタ=ニ=ナロウ】、古代語で【星降る光の街】と言われる街に向かっていた。

周りの半言霊人間や黒い言霊はハインリヒ達がなんとかしてくれたのだろう。

見えるのは虚言霊(キョムルスピリ)だけだ。


「じゃ、なんとかしてくるわ」

「……うん。よし! じゃあ、最後にもうちょい母親らしいことするか」

「へ?」


ぽん、とヨミの頭にツムギの手が置かれる。


そして、手が輝きだすと星がツムギの手からヨミへと……


「いや、私、言霊(スペルスピリ)じゃないんですけど……星贈っても意味ないよ」


ひとつ


「いや、あんたもやってたし。意味なくないよ。きっと」


ふたつ


「あー、うん……まあ、そうかも。意味なくないかもね」


みっつ


「でしょ? なんか母親っぽくない?」


よっつ


「あー、うん、なんか母親っぽいかも」


いつつ


「いってらっしゃいな、自慢の我が子」


ヨミは何も言わず駆け出した。

ツムギは寂しそうな、それでいて、幸せそうな目で彼女を見つめていた。


「ヨミ! がんばって!」


お読みくださりありがとうございます。


連続更新ですみません。あまり邪魔にならないよう1,2時間の間隔を空けて更新しようと思います。個人的に一か月で完結までと考えていたので今日で完結、もしくは、終盤まで……!


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


また、☆評価やブックマークをしていただけるとありがたいです。


よければ、今後ともお付き合いください。


そして、空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』には他にも様々なジャンルでポイントの大切さを訴えた素敵な作品がありますので、下のリンクから企画内容をお読みいただき、是非他の作品も読んでみて下さい!

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