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40話 星《ポイント》を与えることしか出来ない令嬢は完結してない物語の続きがよみたい

この作品は空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』参加作品です。


他にも多数素敵な企画参加作品がありますのでよければお読みください。


あとがき下に空野様の活動報告へとべるリンクがあります。

「待って! こっちの方に凄い言霊(スペルスピリ)がいるかも! マグパィが鳴いてる!」


ヨミが呼び止めると、黒と白の美しいカササギであるマグパィが急降下していく。


「分かった! しかし、【ライタ=ニ=ナロウ】の守り神まで働かせるとは、流石、言霊の女神様~!」

「やめて、ほんとそれ、今は非常事態だからカササギのくちばしも借りたいのよ!」



 

少し前のこと。

【ライタ=ニ=ナロウ】でヨミは唸っていた。

ヨミの作戦では、優秀なライタを集め、リイダと協力し、戦ってもらう。

しかし、その為には人手が足りない。


「どうしたのよ? ヨミ」

「もっと、もっと、人手が欲しいのよ! 優秀な言霊(スペルスピリ)探せる人とかみんなに言霊(スペルスピリ)の有益な情報を届けられるひ、と……」


ゆっくりと見上げる【ライト=ヲ=ヨモウ】の建物の前には三羽の鳥の像。


「ねえ、お母さん」

「何だ娘よ」

「あの、鳥の像達って守り神様なんだよね」

「ああ、そうらしいね」

「あれ、動かせたりしない?」

「ああ、出来るね」

「出来るの!?」

「あんたが言霊の神なら、私は魔法の神といったところかな」

「魔法の神―! お願いします!」

「お安い御用よ!」


ツムギが手をかざすと、鳥の像だったものが生きた鳥に変わる。


『こ、これは、一体』

『ここは……下の世界!? 何故ここに?』


「あのー、神様達~、驚いているところすみません~、ちょっと働いてもらえますか~?」


ヨミの脅迫的な話術によって、守り神である三羽の鳥はフルスピードで飛び回させられた。


【星海の渡り鳥】マグパィは多くの人間に見られた言霊(スペルスピリ)をヨミに紹介し、

語り(レビュー)鳥】パラキィはヨミが送ったライタの言霊(スペルスピリ)の素晴らしさをリイダに語り、

帰り(コメント)鳥】ドオヴィは本来の役割ではないが、メッセンジャーとしてメッセージを送り届けた。




急降下しながらもツムギは構わず話しかける。


「それにしても、いいの? 今まで送ったライタにあんたが星三つけたのもあったけど」

「いいの、大事なのは星の多さじゃなくて、今回はどこに強みがあるかだから!」

「なるほどねえ……着くよ!」


ツムギたちが降り立った場所では一人の老人がいた。

黒と灰の混じった髪の毛、金色の瞳。

どこか高貴な雰囲気を漂わせるその人は、驚くでもなくヨミ達を見つめていた。


「ヨミ=フェアリテイルだね……」

「ええ、あの……あなたは……」

「何をしているかは知っている。まさか私を見つけ出すとは……けれど、私は力になれないよ。私には、戦う気力がない」

「『ロウファ』さんですよね……『逃賊エロス』の」


老人は目を見開くと伏せ、小さく笑う。


「ははは……そう、その通りだ。盗賊物語を描きながら魔族に魔導書を奪われた愚か者だよ」

「魔導書は取り返しました」

「は?」

「力を貸してくれませんか?」

「……もう最前線を退いて随分と経つんだ」

「あなたの物語はまだ終わってません」

「途中で止まっているね」

「よませてもらえませんか? 物語の続きを」

「生んだ我が子を奪われるこんな愚か者が」


戦いの中で魔導書を奪われたことは、戦士にとっては耐えがたい屈辱だったのだろう。

そして、それが魂を込めて生み出した物語だったとすればなおのこと。

ヨミは全く目をそらさず、彼を見つめた。


「『逃賊エロス』は【滑稽(コメディ)】の言霊(スペルスピリ)。けれど、毎回どこかに何か教訓めいたものがありました。伝えたい思いがあったんですよね」

「……本当にしっかり読んでくれているんだね。私には、子供がいなくてね。甥っ子が可愛くて、彼が笑ってくれるような物語を、そして、彼が立派になれるようちょっとしたメッセージも込めて書いていたんだ」

「立派になってますよ。ちょっと性格歪んでますけど」

「直さなきゃいけないかな」

「ええ、是非」

「じゃあ、行くよ。物語の続きを」

「お願いします」


ヨミは、老人の手をとった。

ヨミから星の光が零れる。

老人は笑った。

人間にとって送っても意味がないはずの(ポイント)の光を贈ることがこんなに意味のあることだなんて、と。


ツムギが〈転送〉の魔法を使う。

老人は、光に包まれると目を閉じ、思い出していた。

我が子のように可愛がった甥のことを。

あれだけ慕ってくれた彼に何も言わずに去ってしまった。

責められるかもしれない。

そして、うまく言葉を伝えられないかもしれない。

力になれないかもしれない。

それでも、前に進もう。

さあ、物語の続きを……大丈夫、あの星贈りの女神さまが勇気をくれたから。


光がおさまる。

目の前には、黒髪金色の瞳の凛々しい青年が立っていた。

身体は震え、目には涙が浮かんでいた。


「おじ、上……!」

「王になる人間が、泣き虫だとおじさんは心配だな、ハインリヒ。行こう、これからの話をする為に、戦場へ」

お読みくださりありがとうございます。


連続更新ですみません。あまり邪魔にならないよう1,2時間の間隔を空けて更新しようと思います。

個人的に一か月で完結までと考えていたので今日で完結、もしくは、終盤まで……!


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


また、☆評価やブックマークをしていただけるとありがたいです。


よければ、今後ともお付き合いください。


そして、空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』には他にも様々なジャンルでポイントの大切さを訴えた素敵な作品がありますので、下のリンクから企画内容をお読みいただき、是非他の作品も読んでみて下さい!

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