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37話 星《ポイント》を与えることしか出来ない令嬢は自分の物語はやはりよめない

この作品は空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』参加作品です。


他にも多数素敵な企画参加作品がありますのでよければお読みください。


あとがき下に空野様の活動報告へとべるリンクがあります。

ここが【ライタ=ニ=ナロウ】であり、中心にある【ライト=ヲ=ヨモウ】の建物の前であることはヨミにはすぐわかった。

彼女にとって、これほど幸せな場所はなかったからだ。


ライタファザルにあった母親とスクリムがいた小さな家も好きだった。

ただ、あの国にはいい思い出よりも悪い思い出が多かった。

この街にはいい思い出しかなかった。


今、その大好きな街が、今日終わるかもしれない。


こちらに向かっているとヨミは確信していた。


逃げ惑う人々にはもう既に知らせが届いているのだろう。




わたしのせいだ。



何故ヨミに向かっているのかは分からない。



けれど、自分に向かってきている限り、自分のせいだろう。


「逃げなきゃ」


逃げるしか出来ない。

逃げてこちらへ来ないようにしか。

けれど、もし逃げて捕まって、そのあとは?

虚言霊(キョムルスピリ)はそこですべてを終わらせてくれるのだろうか。

分からない。

分からない以上、出来るだけの情報を引き出して食われよう。

それしか自分には出来ない。

あの、虚言霊(キョムルスピリ)を倒せるほどの凄い言霊(スペルスピリ)なんて私には生み出せない。

ヨミは、自身の【名刻(ブクマ)】だらけの、そして、星もない言霊(スペルスピリ)達しかいない魔導書を強く抱きしめる。


震える足を叩き、立ち上がる。そして、【ライタ=ニ=ナロウ】から出ようと駆け出す。


足に力が入らない。


躓き転ぶヨミ。

抱えていた魔導書が零れ落ち、開く。

魔導書からゆらりと言霊スペルスピリが現れる。


薄く消えそうな青の言霊スペルスピリが揺れている。


『ほしのゆうしゃ』


こどもの幼い拙い物語が流れる。


「あんたに……!」


夢物語だ。

現実は残酷だ。

光を紡ぐ者にはなれなかった。

光り輝く言霊スペルスピリなんて作れなかった。

母親のような【光を紡ぐ者(ライタ)】になれなかった。

ただ言霊スペルスピリに選ばれただけの婚約者となってしまった。

そして、捨てられた。

そのおかげで素敵な人たちと出会えたのに。

私のせいで世界が終わるかもしれない。

何も出来ない。

ただ読むこと、星を贈るしか出来ない。

何も出来ないお前。

自分では輝くことの出来ないお前。

弱いお前、この言霊スペルスピリは私だ。


「あんたに! あんたに何が出来るのよ! ヨミ=フェアリテイルゥウ!」


目の前の言霊スペルスピリを睨みつけ叫ぶヨミ。

喉からは血の香りが溢れ、目からは涙、鼻水も垂れている。


言霊スペルスピリは何も答えない。

ただただ、悲しそうに揺れている。


「うっ……う……あ、ああああぁぁあ」


涙が止まらない。

その瞬間、ちいさく、とてもちいさくひかる。


目の前の言霊スペルスピリが、光っている。




☆1。




「あ、いたー!」


ぐちゃぐちゃの顔のままヨミは、声の方向に顔だけ動かす。

少女だ。

幼い少女。その後ろには、母親だろうか。慌てて追いかけている。


「その、言霊(スペルスピリ)に……」

「あたしが、ほしをあげたの!」


少女は嬉しそうに少しだけだが輝く言霊(スペルスピリ)をキラキラした目で見ていた。

お読みくださりありがとうございます。


連続更新ですみません。あまり邪魔にならないよう1,2時間の間隔を空けて更新しようと思います。

個人的に一か月で完結までと考えていたので今日で完結、もしくは、終盤まで……!


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


また、☆評価やブックマークをしていただけるとありがたいです。


よければ、今後ともお付き合いください。


そして、空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』には他にも様々なジャンルでポイントの大切さを訴えた素敵な作品がありますので、下のリンクから企画内容をお読みいただき、是非他の作品も読んでみて下さい!

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