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35話 星《ポイント》を与えることしか出来ない令嬢は自作の物語がこわくてよめない

この作品は空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』参加作品です。


他にも多数素敵な企画参加作品がありますのでよければお読みください。


あとがき下に空野様の活動報告へとべるリンクがあります。

あるところにひとりのおんなのこがいました。


おんなのこはひとつのことだまをうみだしました。


ことだまとはまほうのほんからうまれたせいれいのことです。


このせいれいとはすぺるすぴりのことです。


すぺるすぴりとはいろいろたすけてくれるせいれいのことです。


いろいろとはいえのこと、いくさのこと、しごとのこととかです。


いえのこととは、ごはんのじゅんびとかおせんたくとかそういうのです。


いくさのことはたたかうことです。まほうとかです。


しごとのことはおみせやさんとかへいしのひととかほしのゆうしゃのこととかです。


ほしのゆうしゃのしごとはいちばんたいへんです。


わるいものたちをいっぱいやっつけなければいけません。


わるいものとはわるいひとたちのなかにいるわるいくろいのです。


ほしのゆうしゃはほしのまほうでくろいのをこらしめます。


きらきらきら、きらきらきら。


ほしのまほうはわるいのをこらしめます。


くろいのをもったいろんなひとをたすけてあげます。


たすけてくれたひとたちはおれいをいってくれます。


「ありがとうございます、ほしのゆうしゃさま」


ほしのゆうしゃはもっといろいろたすけてあげます。


きらきらきら、きらきらきら。


ほしのゆうしゃはせかいをきらきらでいっぱいにしてくれます。


めでたしめでたし。





彼女はつくりたての言霊(スペルスピリ)を満足そうに眺めていた。

魔導書の儀式を受けてすぐ、彼女は母親の見よう見まねで言霊(スペルスピリ)を生み出した。


母親はそれを褒めてくれたし、周りにもこんなに早くから生み出すことが出来るなんてと驚かれたりした。


それからも夢中になって毎日のように生み出し続けたが、ある日それは終わりを告げる。


それは、純粋な残酷な言葉だった。


「つまんない」


彼女の友達が心から言った言葉だった。


彼女の言霊(スペルスピリ)が『つまらない』と。


見るべき価値がないのだと。


彼女は自分の物語を広い世界で否定された。


彼女にとって、その言葉は大きな呪いとなり、彼女を蝕み始めた。

自分の言霊(スペルスピリ)をよんでもらうことが怖くなった。

うみだすことがこわくなった。

何もえがけなくなった。

目の前はまっしろで、まっくろだった。


彼女はいつしか言霊(スペルスピリ)を生み出す【光を紡ぐ者(ライタ)】のという輝く夢を捨てた。


目の前はまっくろだった。


彼女の濡羽色の髪と同じように。




ヨミは真っ黒な目の前をただぼーっと見つめる彼女を見ていた。


「ねえ、あなたはわた……」


「ねえ、わたし? わたしね、せかいがきらいだよ」


ヨミの身体の中で虫が這いずり回るように気持ちの悪い何かが暴れる。

声が聞こえる。

嗤う声、見下す声、蔑む声、悪口、陰口、否定、批判。

それらが文字となって体中に貼り付けられ、内側から突き刺し続ける。


「きらいだよ、わたしをきらうせかいなんて。きらいだよ、わたしをくろくするせかいなんて」


少女は、深い真っ黒な目で見ていた。


「せかいなんてきえればいい」


少女は、ヨミは、そう言った。


そして、手が伸び……


「ヨミ様! しっかり!」


ああ、同じようなことがあったな。


ヨミはエシルの顔を見ながらそう思った。

そして、


ごめん、エシル。私は言霊の女神なんて言われているけれど、






私には、なにもできないんだ。



震えながら絞り出した声は音にならず溶けて消えた。


お読みくださりありがとうございます。


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


また、☆評価やブックマークをしていただけるとありがたいです。


よければ、今後ともお付き合いください。


そして、空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』には他にも様々なジャンルでポイントの大切さを訴えた素敵な作品がありますので、下のリンクから企画内容をお読みいただき、是非他の作品も読んでみて下さい!

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