22話 星《ポイント》を与えることしか出来ない令嬢は女神なんてよんでほしくない
この作品は空野奏多様の企画『ブルジョワポイント評価企画』参加作品です。
他にも多数素敵な企画参加作品がありますのでよければお読みください。
あとがき下に空野様の活動報告へとべるリンクがあります
「どうしてこうなった……」
ヨミは、目の前の光景をただただ憂鬱そうに眺める。
「ヨミさまーーー!」
「い、今、目があっただ!」
「おい! お前、砂に……!」
「尊いーーーー! ヨミ様尊いー!」
「ヨミ様、いや、神様―! 女神様―!」
「聖女様―!」
「姫様―!!」
「「「「「「ヨミさまー!!!」」」」」
【ライタ=ニ=ナロウ】の人々がバルコニーで立ち尽くすヨミを見て熱狂していた。
今日はこの街の中心に存在する【ライト=ヲ=ヨモウ】の完成を祝う式典が行われていた。
ライト=ヲ=ヨモウもまた、古代言霊を解読し、研究し、そこから作り始めるという流れの予定だったので、かなりの時間を要すると、王子であるハインリヒは考えていた。
しかし、ヨミが突如、古代語がよめるようになったということで、驚くほど早い完成を迎えることとなった。
そもそも、ライト=ヲ=ヨモウに関しては、ヨミが夢の中、正確には言霊の中で入った施設であった為、あっという間に全容が明らかになった。
しかし、ヨミは言霊の中に、物語に入ることが出来るようになったことは誰にも教えていなかった。
そして、ひとりでこの力について調べ続けた。
ヨミはこの物語に入る力に〈没入〉と仮の名前を付けた。
そして、〈没入〉の能力を調べていくうちに分かったことがいくつか。
ひとつは、没入できる物語と出来ない物語があること。
没入できたとしても以前のように物語に介入できるわけではなく、遠い視点で見ているだけであること。
魔力を異常に使うため、他の作業も考えれば、一週間に一度が限界であること。
なので、古代語を読める能力と偽った〈没入〉の能力は多用出来ず、古代言霊の解読は少しずつ進むことになった。
ただし、一方でもう解読できているライト=ヲ=ヨモウに関しては一気に物事が進んでいった。
古代遺跡で発見された入り口の三羽の鳥は、【星海の渡り鳥】であるマグパィ、【語り鳥】パラキィ、【帰り鳥】ドオヴィである。
そして、それぞれに与えられた役割が言霊に関する施設であるライト=ヲ=ヨモウの機能になぞらえていることを伝えると、アティファは目を輝かせ、己の言霊に刻み、その機能を新しいライト=ヲ=ヨモウにも付けることを提案してきた。
ハインリヒは何故かマグパィに祈りを捧げ、「美味しいパィが作れますように」とつぶやいていた。
また、古代遺跡で発見された謎の大きな柱が、根幹となる機構であると分かり、行われた復旧作業では、ヨミの義弟スクリムが活躍した。
「この柱の劣化を、どこかに移してしまえばいいんだろう? 出来ると思う。ただ、条件が二つあって、一つは大丈夫だけど、もう一つ。『これの価値と同じと思われるものと劣化を交換しないといけない』」
「分かった。宝物庫にあるデカい宝石どもを持ってこさせよう」
ハインリヒがマグパィにパィの祈りを捧げながらそう言ってくる。
「いいの?」
「それで、この柱の機能が取り戻せるなら安いものだ」
そして、ヨミが一生あっても使いきれないほどの価値の宝石がもってこられる。
スクリムは、その宝石と遺跡の柱の間に立つ。
「義姉さん、義姉さんにとって、この柱が元に戻ることは素晴らしい事なんだよね?」
と、急に笑顔で尋ねてくる。
「へ? あ、うん、勿論! お願いね! スクリム」
慌てて答えるヨミの姿に満足そうにスクリムは頷くと、魔導書を開く。
「おいで、【恐怖】の言霊『月が綺麗なので聖女は裏返る』。恩恵を我に」
ボロボロの柱に向かって、掌を向ける。
そして、その掌を裏返し、魔法を行使する。
「〈うらがえる〉」
スクリムの背後にあった宝石が見る見るうちにボロボロになり砂のように崩れ果てていく。
そして、目の前にある柱は、ヨミが物語の中でみたように美しく真っ白に輝いていた。
「これが……ヨミの言っておった『知恵の若樹』か……!」
「すごい……!」
呆気にとられるアティファとラファ。
一方、ヨミは遠い遠い昔の世界で見たその美しい姿に再び出会えたことに目を潤ませた。
「おっと、大丈夫か。義弟よ」
「誰が誰の義弟だよ」
ふらつくスクリムの元に気付けばハインリヒが近づいており、支えている。
そして、その腕を嫌そうにスクリムは睨む。
「しかし、劣化も移せるとは恐ろしい魔法だな」
「まあ、これだけのことが出来るのは条件がそろっているからだよ。じゃないと、こんな滅茶苦茶な魔法成立するもんか。あと、魔力も馬鹿みたいに食うか」
「条件?」
「言ったろ、同等の価値があるもの。いわば等価交換が一つ。もうひとつは、」
スクリムが目を潤ませたヨミを見つめながら呟く。
「義姉さんが、望んでいるかどうか」
「流石【姉狂い】」
「褒めるなよ」
「褒めてはない、ことも、ないか」
ハインリヒとスクリムはその言葉で笑い始める。
が、すぐさま、スクリムがハインリヒを突き飛ばしてしまう。
「おい! いきなりはなしだろう!」
「そんなことを言ってる場合じゃない! 見ろ!」
スクリムが大声で叫び、柱の上部を指さす。
それに気付いたヨミは出かけた涙が引っ込み、代わりに大量の汗を流し始める。
(げ……忘れてた……)
そこには……四角くくぼんだ場所に、ヨミとそっくりな姿をした女神の像が床に髪を垂らしながら下を見つめている姿があった。
「義姉さんだ……胸の部分は残念ながら似てないけど義姉さんだ! やはり、義姉さんは女神様だったんだ!」
「おおおおお! 本当じゃ! やはり、わしの女神、ヨミは古代の人々にとっても女神じゃったんじゃな!」
「確かに……我々魔族を受け入れてくれたヨミは聖女や女神の類と言えるな」
「おーおー、すごいな。やったな。女神様―」
棒読みでにやつくハインリヒ以外の面々は感動に打ち震えながらヨミをたたえる。
当のヨミは慌てて訂正させる。
「違うのよ! アレには『ヒナ神』という名前が……」
「ヒナ神? 先生! ヒナ神というのは、我々魔族にとっては『言霊の神』として崇められている神で、我々に罰を下したのもヒナ神だと……!」
「言霊の神じゃと! やはり、あのヨミの異常なまでの言霊への情熱は、生まれ変わりだからか!」
「義姉さんはやはり女神だったんだ……胸の部分が似てないあのヒナ神よりも、義姉さんは素晴らしい女神様なんだ!」
ヨミはもはや苦笑いを浮かべるしかなかった。
そして、そのまま苦笑いを続けたまま、言霊を司る施設【ライト=ヲ=ヨモウ】の完成を迎え、その式典の日となった。
それまでに、噂が噂を呼び、結局、ヨミは『言霊の女神』として街中から、崇め奉られることになった。
ヨミは、ただただ苦笑いを浮かべながら小さく手を振った。
そして、その手を振った影響で、失神する者が後を絶たなかった。
そして、その数日後、その噂は国内国外に広まり、様々な出来事を引き寄せることになる。
【思想】の言霊
『ライト=ヲ=ヨモウの歩き方』
ライト=ヲ=ヨモウの歩き方制作委員会及びヨミ様の会、作。
☆4つ
ライト=ヲ=ヨモウの様子を物語調も交えながら教えてくれる。
ただ、ヒナ神の説明に、生まれ変わったのがヨミさま(『胸は似てない』会長談)ってかくのと、『創設者ヨミ様とは』という部分で十話使うのは本当にやめてほしい。ただ、案内としては素晴らしい、だから、あそこだけ削って欲しい。アレなければ5つつけるのにByヨミ
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