八話 ウル〇ラマンって絶対三分以上活動してるよね?
「ガ、ァァァァアアアアアアっ!!」
響き渡る咆哮。
恐らく、多くの者が震え、身体を固めてしまうそれを前にして、しかし五代はというと。
「うるせぇ」
その一言と共に、五代はそのままグレンデルの腕を掴む。
もう一度言うが、グレンデルは五メートルを超える巨躯だ。今の五代は十護の体であり、その差は倍以上。
だというのに、だ。
五代は次の瞬間、軽々とグレンデルを放りなげたのであった。
「ガ、ァ……!?」
驚愕。まさにその一言につきる表情をグレンデルは浮かべていた。
当然だろう。何せ、自分よりも遥かに小さな男に、自分の体を投げ飛ばされたのだから。
そんなグレンデルとは裏腹に、五代は自分の置かれている状況を考えていた。
(整理してみるか)
五代は少年こと、十護を助けようとしたところ、転んでしまい、その体に触れたとたん、彼の体に乗り移って……いや、完全に取り憑いてしまっていた。
……うん。言葉にしても、未だに理解が及ばない。
「状況はよく分からんが、これが、少年の力ってわけか」
言いながら、五代はスキルを確認する。
――――――
スキル《憑依・依代》
解放条件:ダンジョン内にいる幽体との肉体的接触
憑依効果:一時的に幽体を憑依させる
憑依時間:一分
――――――
「一分っ!? ちょ、それは短すぎだろ!! 某光の国の巨人でも三分は変身できるってのに……!!」
などと愚痴を零す。いや、実際のところは絶対三分以上活動しているのだろうが……。
などと言っている場合ではない。
やはり、というべきか。この状況は十護のスキルによるものらしい。そして、それは制限時間つきであり、こうしている間にも時間は刻々と過ぎていることから、もう無駄なことをしている場合はない。
「まぁでも―――お前程度相手なら、十秒あれば、十分か」
相手はレベルが90あっても手こずる最上級の魔物。それは事実であり、この魔物に殺された冒険者は少なくないだろう。
だがしかし。
それでも、五代は余裕の言葉を漏らす。
それは油断しているわけでも、自分の力を過大評価しているわけでもない。
何故なら、彼は目の前にいる魔物を、何度も撃破してきたのだから。
「また、お前を使うぜ、『村雲』」
言いながら、五代は突き刺さっているボロ刀を引き抜いた。
「ガァァァァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
雄たけびと同時に、グレンデルは一瞬にして、五代との距離を詰める。その巨体から考えられない程の速度。十護が反応できずに吹き飛ばれたのも、グレンデルの異常な速さのせいだろう。
そうして、再びグレンデルの拳が、目前に迫ってくる。
だがしかし、五代は一切慌てることなく、冷静に柄を強く握った。
そして。
「いくぜ―――必殺スキル《破刃剣》」
一振り。
そのたった一動作によって、彼の目前は吹き飛んだのであった。
読んでいただき、ありがとうございます!
面白い、もっと続きを読みたいと僅かでも思ってくださった場合、ブックマークや下にある五個の☆を★にしてもらえると、作者が元気になります!
どうぞよろしくお願いします!