五話 幽霊がでてきたら、誰だってパニックになる
「―――っ!?」
勢いよく振り向くと、そこには一人の男らしき人物がいた。
らしき、というのには無論、理由がある。
何せ、その人物の首から上が、切り落とされたかのような状態だったのだから。
そして、極めつけは。
(浮いてる!? っていうか、な、何か全体的透明な感じがして……はっ、もしかして、ゆ、ゆゆゆ、幽霊!? 勝手にお墓に入ってきたから祟りにきたとか!?)
半ばパニック状態になっている十護は、まともな思考ができていなかった。
……しかし。
『――――んー、なーんか違うなぁ。ありきたりっていうか、テンプレ過ぎっていうか……いや、テンプレは悪くない。悪くないよ? むしろ、定番というものは皆が好きだから定番と言われるのであって、需要はあるはずなんだ。けど、やっぱり個人的にはもっと……って』
幽霊は、何やら意味不明な言葉を続けていた。
……何というか、見た目が見た目だけに、その発言があまりにもシュールに見えるのは、十護の気のせい、ではないのだろう。
などとおもっいると、幽霊は、突然こちらの方をまじまじと見つめてきた。
『ん? んん? んんん~~~~?? その表情、その反応、そしてそのリアクション。これはもしかして……少年。俺が見えるのか?』
「え、あ、えっと、その……」
あわあわと、何と返答していいのか困惑している十護。
しかし、そんな彼のことなど知るかと言うかの如く。
『よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!』
何故か、幽霊は壮大なガッツポーズをしていた。
『ビンゴ、ビンゴ、ビンゴだぜ!! 初めて人間が入ってきたと思ったら、まさか俺が見えるとはな!! 幽霊なんだからどうせみえないだろうとちょっと遊んでたら、大当たりを引いたぜ!! いやぁ、ホントラッキー、超ラッキー!! もしかして、このまま誰にも会えず、誰とも喋れず、ずっとここにいるかもしれないと思ってたんだよ。いやほんと。あー、マジで良かったー』
ハイテンションな状態で、何やら喜んでいる幽霊。
そんな彼に対し、十護は思わず、問いを投げかける。
「あ、あの、すみません。貴方は、一体、誰ですか……?」
『おおっと悪い悪い。久々に人と話せてテンションが上がっちまったな』
ごっほん、と気を取り直しながら、幽霊は続けて言う。
『俺の名は、五代和馬っ。元冒険者の……まぁ、幽霊、みたないな感じの男だっ!!』
「五代……和馬……?」
目を見開き、驚愕の表情を浮かべる十護。
それもそうだろう。
五代和馬。
それは、最初に『ハンドレッドワン』に到達した、史上最強の冒険者『神風』の名前だったのだから。
そして、同時に、頭の中で聞きなれた声が響くのであった。
――――――――条件を満たしました。スキル『憑依・霊視』を解放します
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スキル『憑依・霊視』
解放条件:ダンジョン内にいる霊体との邂逅
憑依効果:霊体を見ることができる。
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