一話 憑依〇体!!(オイまてこら
ゴールデンウィークって怖いよね。新作がどんどん頭に浮かぶんだから。
そんな感じでできた作品です。
楽しんでもらえたら幸いです。
今から三十年前、日本の地方都市に【ダンジョン】が出現した。
言葉だけを見れば色々とツッコミを入れたくなるが、しかしこれは変えようがない事実。
そして現在。
そんな【ダンジョン】の十六階層にある、巨大な洞窟内のかなり開けた場所でのこと。
『あー、うん。これはー……やばいかな?』
一人の男の幽霊(首無し)が、そんな言葉をさらりと口にした。
「やばいかな? じゃないですよ!! 完っ全にやばいっ、やばいです、これは本格的にやばい状況ですよっ先生!!」
一方で、一人の少年……らしき人物が情けない声を上げる。
しかし、それも当然。現在、彼は無数の犬型の魔物・レッドドッグに囲まれていた。
そんな少年に対し、先生と呼ばれた幽霊は落ち着いた口調で答える。
『十護少年。人間には、夢をかなえるためには、乗り越えなければならない試練というのが存在する。特に、この【ダンジョン】ではそれがつきもの。今のこの状況も、その一つだ。だが、安心しろ。人間はその試練を必ず超えられる。からくりとかサーカス的な某作品の黒幕も言ってるだろう? 自分を信じて夢を追い続けていれば、夢はいつか必ず叶う、と!!』
「アウトォォォ!! それ、完全にアウトですから!! そしてそのネタが分かる人はかなり限定されますから!! っていうか、それってこの状況で言うべきことですかねっ!?」
全力のツッコミ。そして、その言葉は的を射ていた。
通常、レッドドッグは群れを成して行動している。その数はまちまちではあるが、平均して、七、八匹程度。
それが、だ。
今、目の前にいる数は、軽く百は超えていた。
『いや、ほら、あれだ。この危機的状況で、ちょっとでも少年の活力になる話をと思ってだな……』
「それよりもっと役立つ情報くれませんか!? っというか、冗談抜きで本当にピンチなんですけどっ!! っというか、まさかこれも予定通りとか言わないですよね!?」
『ふふふ、そのまさかだよっ……と、格好つけたいが、これは偶然だいやマジで。今の次期なら、多少数は多いかなー、でも、それを逆手にとって十護少年がレベルアップするには最適だよなー、とは思っていたが、ここまでとは……うん、びっくりだ』
「びっくりだじゃなぁぁぁあああい!!」
最早半泣き……いや、全泣き状態の十護。
状況をまず整理しよう。
―――――
佐倉 十護 十八歳 男 レベル:22
攻撃力:E
守備力:F
俊敏性:C
幸 運:F
魔 力:無
スキル:《憑依・依代》《憑依・習得》《探知(小)》《身体強化(小)》《跳躍》《破刃剣》
―――――
これが、十護のステータスである。
そして、対するレッドドッグはレベルが20を超えていれば、難なく倒せる敵である。
十護のレベル的に、レッドドッグを一体、二体を相手するのは問題ない。十体くらいも、何とかいけるだろう。
だが、それが五十どころか、百を軽く超える数となれば、話は別。
『確かに、この数は流石にまずいな。レベルアップ云々と言っている場合じゃないか』
途端、口調を真剣なものへと変化させる幽霊。
そして。
『代わろう、少年。俺がやろう』
その言葉と同時、幽霊は十護の中に飛び込んでいった。
それは比喩でもなんでもない。本当に、十護の体の中へと入っていたのだった。
そして、次の瞬間。
十護の顔つきが、先ほどまでとは全く別なものへと変化する。
「俺、惨状!! ……あ、じゃなかった。参上!!」
『だからダメですってそういう発言はっ!! 誰にとは言いませんけど、消されますよ!?』
「細かいことを気にするな少年。それにしても、少年の体は相変わらず軽いな……っと、余計なことを言ってる場合じゃないか。時間も少ないしな。なので、最初からクライマックスでいかせてもらうぞっ!!」
『言ってる傍からまたパロってるし!! しかもそのネタ古いですし、分かる人多分少ないですよっ!! っていうか、他人の決め台詞使って恥ずかしくないんですか!?』
「いいんだよ、こういうのはノリと勢いが肝心なんだから」
軽い口調で、そんな言葉を呟きつつ、背負っていた鞘から日本刀を抜く。
そこにあったのは、とんでもなく鮮やかな名刀―――には程遠いボロ刀。刀身は削れに削れ、至るところが刃こぼれしている。錆はないものの、しかしどう取り繕っても、切れ味がいいとは言えない代物。
そんな刀を、振りかざしした、その数秒後。
「必殺スキル―――《破刃剣》ッ!!」
言葉とともに放たれる、強烈な一撃。
振り下ろされた瞬間、巨大な斬撃が、目前にいた百体以上のレッドドッグを切り刻んでいく。
そうして。
数秒もしない内に、あっという間にレッドドッグは粉微塵となり、塵へとかえった。
その様子を見て、一言。
「ふぅ……またつまらぬものを斬ってしまった」
『だから先生。他人の決め台詞だと、ただただ寒いだけですって』
どこまでも格好がつかない幽霊に対し、十護は静かにツッコミをいれるのであった。
さて。
ここまでの流れで、妙な点があると思われる。
どうして、レベル20前後しかない十護が、百以上もいるレッドドッグを一撃で倒せたのか。
その答えは今現在の、彼のステータスが物語っている。
―――――
五代 和馬 (没)二十五歳 男 レベル:101
攻撃力:SSS
守備力:SSS
俊敏性:SSS
幸 運:SSS
魔 力:SSS
―――――
そうつまり。
今の彼は、佐倉十護ではないのであった。
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