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引きこもり賢者、一念発起のスローライフ 聖竜の力でらくらく魔境開拓!  作者: みなかみしょう
第十七章「聖竜領の春と新しい家」

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367.経験によって実力が理想に追いつきつつある

 聖竜領に戻ってきたら収穫が始まった。

 既に麦の収穫は終えているとはいえ、季節は秋。各種野菜を畑で収穫し、冬に備えねばならない。


 比較的時間の融通が利く最近の俺は、積極的にこの作業に参加することにしていた。忙しい時と極端だなとは思う。一時期に比べれば大分マシだが。


「なにもサンドラまで手伝うことないだろう? 少しは休んだらどうだ?」

「いいのよ。事務所で作業ばかりしていると体がなまってしかたないし。積極的に畑の手伝いはしておきたいの」


 キャベツを収穫しながらサンドラが言う。小さなナイフを器用に使って、上手にとっている。不器用な彼女がこれだけ手慣れているというのは、これまでの積み重ねの賜物だ。


「正直に申しますと帝都行きの件で少々ふくよかになりまして。戻ってきたら今度はずっと事務仕事でしたので」


 大量のキャベツが入った籠を背負ったリーラが真顔で言う。


「帝都の食事は豪華だったからな。移動は馬車が基本だったし、やむえんか」

「リーラ、わざわざ教えなくていいわ。気晴らしと運動を兼ねているのも事実だし、仕事を手伝いたいのも本音。これでいい?」

「勿論だ。領主が来ると農家達もやる気になるようだしな」


 実際、俺とサンドラが姿を現すと、農家達の動きが変わった。少々の畏れがあるのは仕方ないことだろうが、ちょっと悲しいな。この後、領主の奢りで食事が出るので、それ目当てに動きが良くなっているだけだと思いたい。


「お嬢様、そろそろです」

「そう。残念ね。せめて半日くらいは続けていたいのだけれど」


 しばらくすると、サンドラが体を起こし、軽く伸びをしてから作業を終えた。


「忙しい身だ。それに、いきなり運動しすぎて体調を崩されても困る」

「半日なら平気よ。一日は自信がないけれどね」


 手袋を外してリーラに渡しながら苦笑しつつ言う。自分のことをよくわかっているようだ。


「そうだアルマス。近い内に東都から第二副帝の夫妻が来るわ。移動手段は空路。ハリアかフリーバと一緒にお願いできるかしら?」

「承知した。サンドラは同行しなくていいのか?」

「わたしはこちらで出迎えの準備。わざわざ手紙でそう指定してきたわ」

「本音は航空便に乗りたいだけだろうからな……」


 第二副帝クロード。彼の好奇心が抑えきれなくなったのだろう。妻の方が大変そうだが。クアリアで娘の様子見をしたいというのもあるか。


「承知した。日時を教えてくれ。最近は工事の予定が詰まっているわけでもないから、大丈夫だぞ」


 今、聖竜領内の工事は割とロイ先生だけで何とかなっている。魔力を注ぎ込むのは俺の仕事だが、遠距離魔法陣があるので対処可能だ。


「お願いね。詳しくは追って伝えるわ。農家のみんなによろしく……いえ、これはわたしが直接声をかけておくべきね」

「そうだな。それがいい」


 軽く笑みを浮かべると、サンドラはリーラを伴って、農家の代表者に軽く挨拶してから去って行った。

 領主が板についてきたな。元々しっかりしていたが、経験によって実力が理想に追いつきつつある。相変わらず小柄だが、頼もしく見える背中を感慨深く見送った。


○○○


 聖竜領の畑には水路が張り巡らされている。

 ロイ先生のゴーレム魔法を駆使して作られたそれは立派なもので、農家にはとても感謝されている。

 とはいえ、日頃の維持管理は必要だ。


 収穫作業の手伝いを一通り終えた俺は、水路沿いにそんな光景に遭遇した。


「二人とも水路の修繕か?」

「おお、アルマス様。お元気そうで何よりです!」

「ちょっと泥が入っちまってるた所を掃除したら、壊れてたのを見つけた所でさぁ!」


 修理しているのは元護衛の二人、ゼッテルとビリエルだった。筋肉質な二人は相変わらず元気そうだ。

 ちょうど二人して、水路の修繕を終えたばかりらしく。泥まみれだ。しかし、嫌な印象はまるで感じない。


「水路の維持管理は大変そうだな」

「ですが、大事なことですからね」

「こればかりはやらなきゃいかんですから」


 二人揃って、真面目な顔をして言う。もう立派な大工というか、聖竜領の職人だな。


「二人とも、エルフの村にも行っているんだろう? そちらはどうだ?」


 割と最初の頃からエルフ村で大工をしている二人だから問題はないと思うが、一応聞いておく。エルフ達は俺のご近所さんだ。小さな情報でもあった方がいい。


「大分慣れましたね。一緒に楽器を演奏したり、家具を作ったり」

「エルフの皆さんも、最初の頃にあった警戒心みたいのは減ってるきがしますぜ。研究所の人達が穏やかなのも良かったんでしょう」


 どうやら問題なさそうだ。何かあればルゼから相談もくるだろうし、平気だろう。


「心配なのは親方ですね。こんなに長く酒を我慢しているのは初めて見る」

「ああ、全くだ。寝てる時でも酒瓶を手放さない人だったってのにな……」


 そんなだから禁止されると思うんだが、という言葉が出かかったが何とか止まった。実際、スティーナは頑張っている。解禁された時が怖いな。節度を保てるだろうか。


「ま、スティーナのことは彼女を信じるとしよう」

「ですね。親方はやるときはやる女ですから大丈夫ですって」

「そうだアルマス様。この水路に水車をつける計画があるってサンドラ様が話してたんですが、どう思いますか?」

「魔法に頼らない動力は大事だから、是非とも導入すべきだと思うが……」


 その後、その場で三人と収穫祭や仕事のことで軽く雑談になった。この分だと、水車作りは彼らの仕事だな。


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