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引きこもり賢者、一念発起のスローライフ 聖竜の力でらくらく魔境開拓!  作者: みなかみしょう
第十七章「聖竜領の春と新しい家」

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363.領内にいる限り、護衛というか散歩になってしまうな、これは。

 結論から言うと、マイア不在の間、俺がサンドラの護衛をすることになった。特に異論はない。そんな予感はしていたので。


「ごめんなさい、アルマス。わたしは領内なら一人でもいいと言ったんだけれど、リーラがどうしてもって言うから」

「問題ない。こういう護衛の経験がないわけでないしな。むしろ、リーラがずっと護衛をしたがらなかったのか?」

「ええ。でも、メイド長の仕事もあるでしょう? 学校の件もあるから、そちらも優先して貰わないとね。……ものすごく悔しそうに「それなら、アルマス様にお願いしましょう」って言ったの」


 そうか。リーラも成長しているな。戦力的に俺がサンドラの護衛をするのは問題ないだろう。畑の世話などが多少はあるが……まあ、魔物避けのポプリとかハーブ類のあれこれは帰った後にのんびりやればいい。あんまり増産しない方が価値が出ると言うしな。


 時刻は朝。今日も晴天だ。朝の風に冷たいものがまじり始め、冬の到来を予感させられる。


「一応、事務所で今日のスケジュールは確認してあるが……」

「ええ、まずは南部へ行くわ」


 通常、リーラがいるならば、秘書も兼務しているような感じになる。そこはサンドラのことだ。秘書がいなくても問題ない。マイアが護衛の日などは「サンドラ様! 次はなんでしたか!」と聞かれている姿を何度か目撃している。


「例の牛舎からの肥料の話だな」

「それと、冬に向けての備えもね。牛飼い達が来た場所に比べれば、この辺りは寒いのがちょっと心配だわ。土地の方は大分良いらしいのだけれど」

「環境が変わることの影響は大きいだろうからな。気にかけておいて損はない」


 食堂でトゥルーズの用意したバスケットを受け取って、俺達はレール馬車で南部に向かった。なんだかんだで、戻ってくるのは昼過ぎになるだろうな。聖竜領は人口の割に土地が広い。元々誰も住んでいなかったからだが。


「アイノさんに護衛はお願いできないかしら?」

「少し心配だが、大丈夫だろう。最悪、聖竜様経由で俺に連絡が来るのもいい」

「そう、検討しておくわ」


 そんな話をしながら、俺達は南部に向かうレール馬車に乗り込んだ。


 聖竜領南部。広大な草原と湖の地域。俺達が釣り場にしている中間地点からすぐの場所は、貴族向けの保養地として整備が進みつつある。馬車は途中でレールのない道に変わり、草原の中に立つ小さな集落に到着した。


 集落と言ってもあるのは作業小屋、牛飼い達の家、牛舎といった具合で実は村ですらないのだが。

 俺達の姿を見て、牛舎から一人の女性が飛び出してきた。代表役に収まっている、イーリスだ。


「……以前より、水場が増えていないか?」

「ハリアとフリーバが作ったみたいなの。問題は起きてない?」

「はい! 牛たちのために水場が欲しいと相談したら作ってくれました! 水路もできそうなので、畑もやろうかと思います! 来年は牧草も育てたいですしね!」

「牧草か。ちゃんと専用の草じゃないといけないんだな」


 周りに広がる草原はまだ青々としている。そうか、冬になれば殆ど枯れてしまうわけか。


「本当はもっと早くから着手して、今のうちに刈り取って備蓄して置くべきだったわね。今年は、クアリア方面から飼料を買うから安心して。そのための予算もあるからね」

「色々とありがとうございます。あとは、バターやチーズも作り始めています。次の春にはご期待くださいね!」

「それは楽しみだな」


 きっと、トゥルーズが色々なものを作ってくれることだろう。今から楽しみだ。


「これから冬が来るけれど、他に必要なものはあるかしら? アルマスには暖房の魔法をかけてもらうことになるのだけれど」

「問題ない。実質孤立しているここにとっては必須だろう」


 冬の寒さの中、人の行き来が減るのは辛いものだ。暖房魔法で一つは解決できるなら、それにこしたことはない。


「先日、お屋敷の方に提出した分が思いつく限りです。暖房は助かりますね。あとはそうだ、雪が降るんですね……。私も含めて、殆ど見たことがないので……」

「この辺りは人の背丈まで積もるということはないから大丈夫だ。大雪になることは滅多にない。もし、沢山積もったら俺がハリア達と助けに来るよ」

「ありがとうございます。そうだ。今日集めたばかりのミルクがあるんですがいかがですか? 以前、サンドラ様に頂いた保管用の容器に入れると長持ちするんですよ」

「保管用?」

「以前、金属製の容器に冷蔵の魔法をかけて貰ったものよ。トゥルーズの所から一つもらったの」


 そういうことか。厨房向けには色々と魔法をかけた品を渡しているからな。俺はもう覚えていないものばかりだが。


「ミルクの保存が出来るのは大きいわね。馬車で送ってもらおうかしら」

「馬車といえば、牛ふ……排泄物はどう運ぶのでしょうか? いつも走っている立派なレール馬車では申し訳なくて」

「そこは専用のものを用意しておくから安心して」

「ですか。あっ、すみません。立ち話をさせてしまって」


 気づけば、軒先でひたすら話し続けてしまっていた。しかし、割とせっかちなサンドラは気にした風でもない。


「大丈夫よ。みんなが元気そうで安心したわ。そうだ、収穫祭なのだけれど。こちらの方は誰が出席するのかしら?」


 牛飼い達は牛の世話がある。全員出席というわけにはいかない。服の用意もあるので、その確認というわけだ。


「……それが、家族全員、「お前が出ろ」ということで私だけで。環境が変わったこともあって、しばらく牛の世話に集中したいみたいです」

「わかったわ。実は、そう言われるんじゃないかと思っていたの」


 別にイーリスの親たちがサンドラのことを嫌っているわけではない。朝から晩まで必死に牛の世話をしている良い人達だ。話ができるときは友好的ではある。ちょっと、牛への愛情が強すぎるきらいはあるのだが。


「と、とりあえず中に入りませんか? 温めたミルクと、自家製バターのクッキーくらいしかありませんが」

「十分すぎる理由だな」


 俺がそういうと、サンドラも頷く。

 実際、その後出されたミルクもクッキーも大変美味しかった。

 領内にいる限り、護衛というか散歩になってしまうな、これは。

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