表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/139

第83話 49階層北の守護者、ククリ。

悪逆非道のダンジョンあるあるその23

1年間、誰も自分の意思で入ってこない。

実際は小さな虫魔物程度なら入ってくるためいないわけではないが、基本的には追い込み漁であったり無理矢理転移させられたりで、侵入者と呼ぶべき侵入者が常にいないこと。

 49階層、北。

 四獣階層の中で北に存在するそこは、玄武、ククリが守護者を務める、凍原。


 見渡す限りの、銀世界が広がって……、いや、視界などほとんどない猛吹雪。

 何も見えない真白の階層が広がっていた。


 49階層は、全体の形としてドーナツ型になっており、内側の円がダンジョン中心から500m、外側の円が13kmとなっている。つまり12.5kmの長さと、80km以上の円周を持つ巨大階層が49階層。

 四獣達はそこを、北、西、南、東、それら4区画に切り分け、扇状のその場所を、自らの守護階層としている。


 また、それら扇状の4つの区画は、区画自体の大きさも同じで、高低の起伏、山や湖などの地形、建造物、全てが同じ。重ねればピッタリ重なる同一形状である。


 48階層との境から8km続く巨大な平原も、奥行き3km幅10kmの巨大な湖も、剥き出しの地層が聳え立つ岩山も、地下深くまで続く亀裂とその絶壁から入る洞窟も、標高1000mにある50階層に繋がる標高1000mの山も。

 そして、階層のど真ん中にある、3方を湖に囲まれた祠も。


 侵入者達は今、山にいた。

 その坂道をくだっていた。


 49階層の守護者と戦うには、50階層に設けられた塔を登って、勾玉を入手し、49階層の祠に奉らなければいけない。

 そうすることで、初めて守護者が現れる。


 そのため侵入者達は、一旦その山を登り、今度は降りてきたのだ。

 つまり、50階層から勾玉を入手し、祠に向けて進んでいる段階なのだろう。守護者はまだ現れていない。今は準備段階だ。


 通常、現段階でも、凍原にいる厄介なダンジョンモンスター達に頻繁に襲われるはずなのだが、侵入者達は5万名パーティーであるため、その脅威度は非常に高く、襲ってくるダンジョンモンスターはいない。

 確かに予算不足で、あまりたくさんのダンジョンモンスターを生成できていないことも原因の1つにあるが、まあ、一先ずそれは置いておこう。


 そのため、侵入者が戦う相手とは、魔物ではなく、今のところ自然だけであった。

 凍原、猛吹雪、という、とうの昔にここが寒い階層だと分かってたゆえにそれ相応の対策をとって挑むことのできた、この自然だけった。


 人は、どの世界でもそう強い方ではないが、変わりに頭脳を働かせ、道具を使うことで生き残っている。

 地球でもそうだったし、科学文明の代わりに魔道具文明が発展している、この世界においてもその通りだ。

 寒いだとかそんなことは、魔道具1つで解決できる。

 だから、49階層北の凍原へ乗り込んだ1000名の侵入者達は、誰もが、本番はボスが出現してからだと思っていた。


 しかし、侵入者達は、既に苦戦を強いられている。


「今、そっちに行く。待っていろ」

「隊長っ。分かりましたっ」

 猛吹雪で耳がかじかんでいても、なお聞こえるような大きな声が響いた。


 声の主は、隊長と呼ばれた壮年の女と、若い女。

 その2人は、少々下り坂ではあるものの平坦な道に、6人ほどの同じような格好をした騎士と一塊でいた。この8人はチームとして、動き、そして今――。


「くそっ、何も見えん。どこにいるーっ」

「ここ、ここですっ。隊長ーっ、隊長ーっ」


 ――お互いを見失っていた。


 たった、2,3m。お互い1歩進んで手を伸ばしたら、触れ合えるのではないか、という距離で。

 猛吹雪が引き起こす、いわゆるホワイトアウトと呼ばれる現象は、それほどに壮絶な効果を生み出す。

 お互いの視界にあるのは、常にただの白で、目印代わりにと、侵入者が一様に着けた色とりどりのマントは、どこにも見当たらない。


 幸い、吹雪と吹雪の一瞬の合間に、火の魔法を使ったことで、お互いの姿を確認しあえたため合流できたが、一時は生涯出会えないのではないかと、2人は肝を冷やした。


 彼女等は、パーティーを組んでいる。本来ならば、パーティーメンバーのいる方角は分かる。

 けれど、5万名のパーティーでは、それが分からない。


 本来なら、彼女等の持っている魔道具は、こんな環境をも、あたかも昼寝ができるかのような気候に変える力を持つ。

 体を温めて視界を確保するなんぞ、お茶の子さいさいというような。

 けれども、それが、ほとんどの効果を失っていた。


 むろん、それはダンジョンの効果。49階層全てを通しての特徴の1つ。


 49階層は、勾玉を持って入るまで、環境に慣れるための練習が可能である。

 魔法や魔道具が、思う存分効くその空間で、凍原を味わって戦う訓練を行い、十二分に慣れてから望んで下さい。そんな意図が込められている優しさ溢れる階層なのだ。

 けれど、彼女等は急ぐあまり、練習をすっ飛ばしてやってきた。


 ダンジョンは、ダンジョン側がリスクを持ったり、侵入者に対しメリットを提示すると、その分コスト上限を引き上げることや、低階層でもより強い設定にすることが可能だ。

 だから、練習期間を設けたならば、本番はより凶悪にできる。例えば、魔法や魔道具の一部効果を、最低限まで無効化するような。


 ダンジョンは、特に自然型ダンジョンは、峡谷であれば奈落の入口もかくやと言えるようになるほど、環境面を変化させることが可能だ。

 だから、凍原、吹雪、それらで環境面を特化させたなら、元々自然に対してあまりにも無力な人類が、生きていくことすらできなくなるような、そんな厳しい環境にも容易くできる。

 ダンジョンマスターが人間であるため限度はあるが、物理的に無理でないのなら、Pが嵩むだけのことでしかないのだから。肩もみや掃除、料理当番を変われば解決する問題でしかないのだから。


 誰しもが、凍原と吹雪の恐ろしさを、たった数分歩いただけで、噛み締めた。


 とはいえ、侵入者は、訓練された騎士達である。

 ここ、凍原の階層攻略のために集められた者達なのだから、雪山の雪中行軍すらも、何度となく経験しているのかもしれない。

 その際は、魔道具などもあっただろうが、しかし、経験があるのとないのとでは大違いだ。


 方向感覚の喪失、雪崩、クレバス、様々な問題は発生したが、脱落者を最小限で抑え乗り越え、ついに、祠に辿り着く。

 侵入者は、祠を取り囲むように陣を敷き、そして、祠の穴の中へ、勾玉を置いた。


 直後、祠全体が黒色の光を帯び、一際強く輝く。

 光が収まった頃には、祠の上に、騎士達が見慣れぬ美女、ククリが立っていた。


 吹雪がやんでいるせいか、その姿は、よく見える。


「初めまして、49階層北、凍原の支配者、ククリと申します」


 吹雪がやんでいるせいか、その声は、よく聞こえる。


 まるで、自然が、ククリの姿を、声を、妨げてはいけないと自らの意思で止めたかのように。


 ククリの声は、大きなものではないが、1000名誰しもに届いていた。

「あたしの武に立ち向かう度胸は、買いましょう。しかし、……そちらの方にいる方々、何をしておられるのです? そこら一帯は、元々湖。ボーっとしていると、死にますよ?」


 だから、ククリが指差した方向を、誰しもが見た。

 やんでいる吹雪のせいで、そこにいる者達のことが、よく見えた。

 そしてその者達からもまた、よく見えた。吹雪のせいで把握できなかった足元は、分厚い氷が張った上に雪が積っただけの偽の地面であることも、その湖の底から、何かが巨大なものが迫ってきているのも。


 その瞬間――、地面が大きく爆ぜる。


 巨大な、余りにも巨大なクジラが、湖の底から体を10数mも突きだし、上にいた者達をひと飲みにしたのだ。

 地上に突き出た体は斜めに落ち、そこにいた多くの人を巻き込んで、氷を叩き割って湖に落ちる。


 あれは、生成Pが900Pもするクジラ系等の魔物で、人々からは、船食い、という愛称で呼ばれている。

 途端吹き荒れた吹雪と相まって、その場は一瞬にしてパニックになった。


「祠は、3方を湖に囲まれていますから、そちら側にいる方々以外は、避難した方が良いでしょうね」

 だからか、ククリはまるで落ち着けるように、吹雪を止めて、侵入者達へそう言った。


 侵入者達は、一目散に駆けだす。

 湖から、認識不能の中で、あのクラスの魔物に攻撃されるのも、この魔法や魔道具が効かない猛吹雪と氷点下を遥かに下回る気温の中で、湖に落とされるのも、どちらも危険極まりないのだから。


 ククリのアドバイスが終わると、再び吹き荒れた吹雪。

 氷を叩き割って浮上するクジラの行動音と、断末魔のような絶叫が頻繁に聞こえる。それをなんとか防ごうと、陸地にいる騎士達は、湖へ向け、クジラを牽制を仕掛けるような攻撃を放った。

 もちろん味方に当てるような者はいない。しかし吹き荒れる吹雪の中では、魔力による探知も上手くいかず、クジラに当てられる者もまた、稀だった。

 そしてそんな密度の薄い攻撃では、900Pの魔物の中でも耐久力に秀でたクジラを、止めることなどできない。


 だが、次の瞬間。クジラはその動きを、そしてその命を止めることになる。


「あたしの階層で、あたしよりも先に目立つとは。雑魚の分際で生意気な。少し引っ込んでいろ」

 他ならぬ、ククリの手によって。


 180cmを越えるククリよりもさらに大きい、戦斧とも言える武器を持ち、湖に向かって歩き出したククリ。氷が割れて水面が露出した湖の上を、足場を凍らせることによって歩きながら、クジラへと近づき、そして、飛び出したその瞬間を狙って、湖の全てを凍結させた。

 クジラは、空中に飛び出した姿勢のまま、1mm足りとも動けない。

 そして、先ほど同様1歩1歩近づいてくるククリに対し、瞳を向ける程度の抵抗しかできないまま、斧で一撃の元、頭と胴を切り離され、ドロップアイテムと魔石へと変えられてしまった。


 5万名のパーティーに対しても逃げずに襲いかかれるような、900Pの巨大で強大な魔物が、そんな一瞬のやり取りで倒された。


 それが、良いデモンストレーションになったのだろうか。

 侵入者達がククリを見る目は、ククリを満足させるものになっていた。

「さあ、それでは、戦いを始めましょう」


 猛吹雪は再び吹き荒れる。

 何も見えない猛吹雪が。


 ククリには、感染していく死呪、という固有能力と、極みの境地、という固有能力がある。


 感染していく死呪は、体や武装に干渉した者、領域に入った者に、段階で進む呪刻を刻む効果があり、侵入者達は、命を蝕む呪いを受ける。

 極みの境地は、ステータスやスキル、行動結果に補正を加える効果があり、ククリの能力を向上させる。


 だから、ククリだけは強いままに、侵入者達は、呪いと寒さによって、どんどん弱っていった。


「誰かっ、誰かっ、隊長っ、どこですかっ。隊長っ」

 侵入者達は、何も見えない白銀色の景色の中で、必死で戦う。


「おや、探し人ですか? はてどこでしょう。吹雪を止めますから、探して見て下さい」


 そして、時折見える絶望色の景色に、心を折られる。

「……そ、んな……、隊長……、みんな……」


 心を折られた者は、力なく横たわり、眠るように凍りついていく。

 この永久凍土はきっと、そんなおびただしい数の屍でできているのだ。


 49階層北に挑んだ1000名は、エレベーターを起動させること叶わず、敗走した。


『 名前:ククリ

  種別:ネームドモンスター

  種族:玄帝

  性別:女

  人間換算年齢:21

  Lv:70

  人間換算ステータス:398

  職業:北の守護者

  称号:凍原の支配者

  固有能力:感染していく死呪 ・体や武装に干渉した者、領域に入った者に段階で進む呪刻を刻む。

      :極みの境地 ・ステータス上昇、スキル上昇、行動結果に補正。

      :絶対零度 ・対象の行動を完全に停止させる。

      :永久凍土 ・支配領域の地形や気候を永久凍土に変え、凍傷を付与する。

      :忘却の魔眼 ・左、視界内の対象の記憶の一部を一時的、もしくは永続的に喪失させる。

  種族特性:亀化 ・玄武の姿になることができる。

      :霊獣 ・肉体の半分を精神体に置き換えることができる。

      :玄帝の甲羅 ・物理攻撃と魔法攻撃のダメージや衝撃を減少させる。

      :玄帝の耐久力 ・異常に対する耐性を得る。

      :冬の霊獣 ・存在する地域を寒冷地にし、寒冷でのマイナスを無効化する。寒冷地でのステータス上昇。冬にステータス上昇。

      :北の四獣 ・他の四獣よりも北に存在する場合ステータス上昇。

  特殊技能:ライフドレイン ・生命力を干渉の度に吸収する。

      :マナドレイン ・魔力を干渉の度に吸収する。

      :クアドロヴァリエ ・自身の性質を変更する。

  存在コスト:4500

  再生P:12000P 』


「……、自分とこのダンジョンモンスター倒してはる……」


 俺は戦いが終わった映像を見て呟いた。


 戦いの内容についても、色々と言いたいことはあるのだが、まずは、自分のとこのダンジョンモンスターを倒していることについて問いたい。

 それは、もしかするとだが、味方なのではないだろうか、と。


 900Pの種族の魔物って、それ、49階層のエリアボス用に生成したダンジョンモンスターじゃない。

 湖、山、空、洞窟、それぞれに1体ずつ俺が生成した、ネームドモンスター以外での最強格のダンジョンモンスターじゃない。

 心強い味方じゃない。

 凄く頑張ってくれてたじゃない。

 そもそも湖のは、貴女にどんな魔物が欲しい? って聞いて、迫力が欲しいので大きいこの魔物が良いです、って言われて生成した子じゃない。


「それを自分より目立ってたからって理由で、倒しちゃったよ……」


 戦いの内容についても色々と言いたいことはあるのだが、やっぱりもう、それしか出て来ない。


「おーククリー、余裕だったじゃねえか。やるなっ」

「帰りましたマキナ先輩、ありがとうございます」


 すると、宴会じょ――、玉座の間に、ククリが帰ってきた。


 長くない黒髪の、泰然とした女性は、先ほどまで激しい戦いを繰り返していたとは思えないような風体と、爽快感のある顔をしている。


 ククリは、ゆるふわな髪をはずませながら、俺の元までやってくると、俺が何の映像を見ていたかを確認し、言う。


「ダンマス様、見ていて下さったんですか、そうですか。中々の活躍を見せられたとは思いますが、どうです?」

 そんな風に、自らの行いに疑念を持たず。


 そう言った後は、もう何も言わず、しかしどこにも行かず、カモンカモンとでも言うように両手で手招きしては、たまに他所を見て、しかしやはり冷静さも熱血さも忘れたようにはにかんで俺を見て。


 この様子には……見覚えがあった。

 先ほど風呂から上がってきた干支達が、侵入者に対し反乱して戦った後、俺に対してとった様子に、よく似ているのだ。


 きっと、こんな態度をとれば、怒られない。

 そんなことを学んだのだろう。


 だが、今回だけは、絶対に許してはいけない。


 反乱するのは、良いんだ。そのまま戦って欲しくはないが、反乱だけなら、俺に対してのルール違反だ。

 だから、傷つくのは全て、彼女達の父親たる俺だ……、創造主たる俺……、上司たる……、どれもダメなんですか? 相棒は? オッケー? ギリギリオッケーかあ、何なら余裕でオッケーが取れるんだろうか。ともかく、そう、相棒である俺だけだ。だから、俺は全てを許す。可愛らしいわがままのようなものだから。


 しかしダンジョンモンスターとは、彼女達の守護階層内で活動する、仲間。いや、つまりは庇護下にある、部下なのだ。

 ユニークモンスター以下のダンジョンモンスターは、ネームドモンスターが例え反乱していたとしても、絶対に攻撃しない。常に仲間だと認識し続けるのだ。それは攻撃しても同様。

 また、ユニークモンスター以下がネームドモンスターに攻撃したとしても、それはダンジョンの機能により、完全に無力化される。ダンジョンマスターがダンジョンモンスターの攻撃を受け付けないように。


 それだけ格に違いがあるのだ。にも関わらず。

 自分のために頑張ってくれる部下を自ら倒すだなんて、そんなことは、冗談でもやってはいけないこと。


 だから俺は、今度こそ叱らなくてはならない。何よりもククリ自身のために。


「ククリ……」

「はい、なんです? ダンジョン開闢84日目に、ネームドモンスター以外は捨て置く宣言をした、ダンマス様」


 しかし、そう思って呼びかけた、俺の声に反応したククリは……、ククリは……。


 疑う余地もないほど、自らの活躍を信じていた。

 ちょっと顔を赤くし、口元を緩めて、目をつむりウンウンと首を振っては、また目を開けて、頷く。

 だから、俺は、こう言った。


「最高の、戦いだったぜ。ありがとうククリ。元から褒めるつもりしかなかったに決まってるじゃないかあ」

 マスプロモンスターを大切にしよう、そんなことは、俺にどうこう言える問題ではなかった。なんという……、悪逆非道な行いをしてきたツケが、こんなところにっ。


「やはりそうでしたか。この日のために、頑張った甲斐がありますね。報われるというのは、なんとも気持ち良いものですね」

 ククリは、姉によく似た、あまり人に見せない屈託のない笑顔で、俺の感謝にそう応える。


 ……こんな、……こんな。

 こんな疑いもなく報告に来て、褒められると確信している子に、叱るなんてできるわけないじゃないっ。


「リリト、帰ってきたか。ククリももう帰ってんぞ」


「マキナ先輩、ただいまっす。見ていただけましたっ? おーいリリ姉ー、俺も帰ってきたぞー」


 こーして、あーして、と再現をしてくれているククリに、戦闘を終え、宴会場へと帰ってきたリリトが、大きく手を振りながらその場で呼びかける。

 するとククリは、そのリリトの顔をとそっくりな華やいだ顔をして、近づいて行った。


「どうだったんだ? って聞くまでもないか」

「当然だろー?」


「トトもナナも、順調そうだしな。ふうー、先に風呂でも行くか」

「お、良いね。俺も行きたかったんだ。……あ、流石に今着てるのは、洗えよな? ってそりゃ洗うか、ヘヘへ」


「……え?」

「え?」


 2人は、パーソナルスペースなどどこ吹く風、とでも言うような距離にまで近づいて、ニコニコ笑ってお喋りしながら、宴会場から出……玉座の間から出て行った。


 うんうん、勝って良かった。

 あんな笑顔が見れるんなら、本当に勝って良かったと思う。


 思う気持ちはあります。


 けれど、うん。


 俺は、目の前に出しているいくつかの映像の内、四獣階層の映像に目を移す。

 四獣階層への侵入もまた、多少の時間差で行われているため、ククリとリリとの2人は終わってしまったが、残る2人の所はまだまだ終わっていない。


 だから俺は――。


「次に見る子は、味方を倒していませんように。あとやっぱり反乱もやめて欲しいの」


 そう祈って、次の子の戦いを見守る。


 それが、まさか叶わない願いだとは、この時の俺には、知るよし……しかなかった。

お読み頂きありがとうございます。

ブックマークもして頂きましてありがとうございます。


以前、この話よりも前に入っていました話は、次の次に移しました。混乱させてしまうかもしれません、申し訳ございません。

細々とした変更は、相当に多いです。いつも申し訳ない気持ちでいっぱいです、が、やめられません。本当にすみません。生暖かい目で見守って頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=546221195&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ