第70話 ククリもリリトもトトナもナナミも。
悪逆非道のダンジョンあるあるその10
Pを貯められず、確保できぬまま蹂躙される。
Pはまとめて使った方が効率的であるため、少しでも多く貯めようとした結果、ことあるごとにPを奪われ、ネームドモンスターの力がダンジョンの規模を越え、アッサリと蹂躙されてしまうこと。
上級竜事件よりも、さらに大きな事件に見舞われた、午後のこと。
マキナやミロク達6人は、戦いのミーティングをするとのことで、俺は1人風呂に入っていた。
……、なんだか、ようやく俺は一息つくことができた気がする。
今日だけの話ではなく、ダンジョン開闢1周年からの話。ずっと、色々なことがあり過ぎた。
カウントダウンパーティー。一周年記念パーティー。誕生日パーティー。誕生日パーティー。誕生日パーティー。誕生日パーティー。誕生日パーティー。誕生日パーティー。
誕生日じゃないけど、1人だけ祝ってもらえないのが嫌だからと、雪の降る季節であった誕生日を、春と言い張った子の誕生日パーティー。貴女の誕生日パーティーは冬にも1回したし、登用日パーティーも夏にあるじゃない。
まあ、本当に、色々なことがあったよ。
濃密な時間だった。
「ふう」
と、1つため息をついて、俺は風呂から上がり、脱衣所へ入る。
しかし、それにしても、うちの子達は性格がそれぞれ独特で、個性が強い。強過ぎると言っても良い。
初期組だけじゃなく、2期組も含めて。
確かに、その設定とは、俺が設定したものではある。
生成時に、性格を決めるための設定をしたのは、誰であろう、この俺だ。
造形だって特徴だって適性だって、個性には関係してくるが、それを設定したのも、誰であろう、この俺だ。
だから、彼女達の個性とは、俺が望んだもの。
ミロクが怒った時に怖いのも、俺が望んで設定したもの。
……でも、そんなに強くなるとは思わないじゃない。想定していた、10倍くらいの威力で発揮されていますよ。
なんてこったい。
それに、生成されてから1年も経つと、設定した項目以外の性格や個性も、段々と出てくるようになってきた。
ニルが、後輩達を導けるようになったように。ローズが、俺を欺くようになったように。キキョウが、多少は動くようになったように。
ユキが、女らしさを気にするようになったように。マキナが、お花を好きになったように。
成長と言うのだろうが、こんなもの、もう手に負えるはずがない。
そもそも本来、設定した数々の項目は、性別、造形、性格、などなどそれら全て、戦闘にのみ反映されるものである。
それらが関わるものをいくら挙げたとしても、それらは全てダンジョンにおける戦闘のため、に帰結する。
なぜなら、ダンジョン自体が戦闘を行う場なのだから。
だと言うのに、ここでは私生活にとてもよく活かされる。
良かれ、悪かれ、とても。
「おやダンマス様、奇遇ですね」
すると、体を拭いている丁度その時、五獣の1人、ククリが入ってきた。
「ミーティングは終わったの?」
「ええ。いましがた。姉上達は女風呂の方です」
先ほどの水着でも、正装のチャイナドレスでもなく、普段着の黒いジャージを着ているククリはそう言って、そして、よく使っているロッカーで、脱ぎ始める。
「ちょっとくらいは躊躇しようよ。一応男風呂だよ?」
「むしろ、ダンマス様がいい加減に慣れて下さらないと」
49階層、北の領域の守護者、ククリは、玄帝種族といういわゆる玄武であるが、人間型で生成されているため、見た目はカメでもヘビでもなく、泰然としたスリムな21歳の次女である。
黒髪は短めながら、ゆるふわと表現できるような髪型で、瞳は左右共に銀色。ただ、右の瞳に比べ、左の瞳は少々黒味がかっている。
チャイナドレス姿であっても、今のジャージ姿であっても、常に黒を基調としているため落着きがあり、性格も実直で頑固。それらからなる、武道の精神を思わせるたたずまいは、妹達を束ね、長女との交渉を行うに相応しい次女である。
身長は180cm弱と、モデルもかくやと言えるほどの高身長。手足も長く、腰の位置も高い。
体重は……不明だが、本人はよく、大事なのは体重の数字じゃなく身長との割合だろ、と説得して回っているので、割合で見れば軽いのだろう。
確かに、体型はかなりスリムだ。
皮下脂肪もほとんどないのか、上半身は、背中などを中心に、うっすらと筋肉の筋が透けているし、腰も限りなく細い。
下半身は、太腿だけ肉付きの良さを少し感じるものの、ふくらはぎや足首などはとても細い。
ネームドモンスターの中で、一番のモデル体型と言えるのは、おそらくククリだろう。
本人も、そんな自覚があるのか、スタイルに関してはかなりの自信を持っていて、ファッション関連のイベントには、必ず出場している。
最近、それを取りまとめた写真集も発売した。
なお、売り上げは16部。
イーファスが1部、俺が5部、ミロクが10部である。
次回は、水着写真集を出す方向で動いているらしい。
もしかすると、売れなかったらどんどん脱いでいくつもりなのだろうか。
俺はあえて何も言うまいが、純粋にスリムな体型に憧れ、写真集に書かれたコラムも読破していたイーファスのためにも、続編を待ち望むばかりである。
とまあ、ともかくククリは、そんな、スリムなスタイルを売りにしていて、たまに抜けていることはあるものの、実直で真面目な、次女だ。
いや、抜けているのはたまにじゃないか。
抜けているよりも、残念の方があっていそうだし。
ククリは、ジャージの上を脱ぐと、脱いだ服の脇部分を鼻に近づけ、くんくんと嗅いだ。
「まだ、大丈夫」
そして、カゴに、たたまず適当に放り込む。
そして、ジャージの下も脱ぐと、脱いだズボンの丁度股間部分を鼻に近づけ、くんくんと嗅いだ。
「あと1段階いける。まだ、大丈夫」
そして、カゴに、たたまず適当に放り込む。
なんとまあ、残念な。
確かにジャージというのは、何日も着まわすものだと思うけれど、そうやって確かめながら洗濯するか否かを見極めるのは、年頃の娘としてはどうか……。
「それに、また着るんならちゃんとたたみなさい」
「たたむ? はんっ、ダンマス様。また着るのにたたむなどと、それは無駄というものだと愚考します」
「そ、そうですか」
「ダンマス様までミーね――、姉上と同じようなことを。下着や靴下とて、別に替えなくても死にはしないと言うのに。まあ、下着や靴下は、男風呂で着替えれば、替えていなくても分かりませんからね。あたしの作戦勝ちですよ」
なんとまあ、残念な。
ククリはとてもズボラであり、私生活は本当にだらしない。部屋も、足の踏み場すらない状態なのだとか。
ズボラであるなどの設定は、した記憶もないので、これはネームドモンスターとしてこの城で暮らしていく中で、後天的に身についた個性。
生成してから半年。これもまた1つの成長、と言えるのだろうか。……言いたくないなあ。
あえて良く言うのなら、図太い精神力とか、注意されてもへこたれない強い精神力だとか、そんな風にも言えるのかもしれないが、やはりズボラはズボラである。
戦いや武術に関しては、一切の妥協を許さないほど真摯であるのに、私生活がこれとは、一体どういうことか。
全く、俺を見習いなさい。
俺はネームドモンスターの君達と違って、新陳代謝すらしないから、服が汚れたり臭くなったりしないのに、ジャージだって頻繁に洗ってるよ。
このジャージも、まだ着て2日目。でも明日には洗濯するのさっ。
「くんくん、ダンマス様のジャージは、もう洗濯した方が良いようですね」
ククリはそう言って、下着の上下を脱ぐと、カゴの中にぺいっと投げ入れて、風呂へと入って行った。
……。
俺はそれを見送ると、ジャージを脱いで、洗濯機をかけた。
そして、新しいジャージに身を包み脱衣所から出た俺は、何か冷たい飲み物でも飲もうかと、キッチンへ向かう。
わざわざキッチンに行かなくても、生成すれば良いのだが、こういった、コツコツとした節約が、将来の俺を楽にするのだ。
「確か、この前、大量に生成した水があったはず」
そしてキッチンに辿り着くと、そこにはリリトがいた。
正装のチャイナドレスではなく、普段着の白いジャージを着ているリリトだ。
「おすダンマス様。奇遇だな」
29脚、それぞれのお気に入りの椅子が置かれた食卓で、自身のお気に入りの椅子に座ったリリトは、プリンを食べていた。
「ああ、水を飲みにね。そっちはおやつか」
「3時だからよ。それに頭使いましたからね」
「分かる」
「へへ」
「もしかして、俺の分のプリンってあったりする?」
「ん?」
49階層、西の領域の守護者、リリトは、白帝種族といういわゆる白虎であるが、人間型で生成されているため、見た目はトラではなく、傲岸不遜な態度の小さな19歳の三女である。
白髪の髪を左右でお団子にした髪型で、瞳は左右共に金色。ただ、右の瞳が少々濃い金色である。
チャイナドレス姿であってもなくても、いつも白を基調としているため清楚だが、性格は実直な人情派。ヤンキーのような一面も持ちあわせるが、義理を重んじるその心は、5人姉妹の真ん中に相応しい三女である。
身長は136cmと、10歳の子供と変わらない背丈。
体重は……不明だが、身長が低い分、体重はとても軽い。
ただ体型はずいぶん大人だ。
確かに骨格自体が細いため、お尻は大きくなり辛いし、腰のくびれもでき辛いが、胸は非常に大きい。
身長と胸の比率のようなものを数字として出せるなら、リリトは間違いなく、ネームドモンスターの中で、1番高い数字になるだろう。
本人もそれは自慢なのか、肩が凝るアピールをよくしていた。そのせいか、最近は、アピールをしていない時でも、肩をぐるぐると回す動作が癖になっている。
また、その弊害としてもう1つ。サイズの合う下着や洋服がないせいで、自作していたところ、裁縫がとても上手になってしまったらしい。
こんなの俺のキャラじゃねえっ、と叫んでいた。確かに、白いパンツにするプリントを、何にしようかなと悩み、般若を選ぶやつは、裁縫が得意なキャラではないと思う。
とまあ、ともかくリリトは、子供のような見た目ながら、硬派なヤンキーであり、家庭的であり、なぜ自分が肩を回すのかも忘れてしまった三女だ。
いや、家庭的なのは、裁縫だけじゃないか。
リリトはリリトで、そんな設定をした記憶もないが、後天的に、様々な家庭的な能力を身につけていた。
リリトはプリンを置いて立ち上がると、冷蔵庫を空け、俺が取る予定だった水と、そして、自分が作ったプリンを出してくれた。
そう、そのプリンとは、リリト自身が作ったもの。
お菓子作りが好き、という設定はしていないが、今やその実力は、オルテが審査員を務めた甘味コンテストで優勝するほど。
「ほれ。昨日ヴェルティスと作ってたら、作りすぎちまったからな。」
リリトはそのプリンを俺に放り投げて渡すと、自分が座っていた椅子を、俺の椅子の隣にまで移動させ、座ってまた食べ始める。
一口食べるごとに、とても幸せそうな表情をするリリトに釣られ、俺もまた、その隣で、一口食べては美味しさを笑顔で表現した。
「美味いっすか?」
二口目を食べたその瞬間にそう聞かれたので、その問いに声で答えることはできなかったが、俺の力強い頷きは、リリトを満足させたようだ。
生クリームが冷蔵庫に余っていたようで、それを追加でかけてくれた。
美味い。
それから、リリトが明日のお菓子のフルーツタルトを作るというので、しばし見学。
キッチンに対して、ちょっと背が足りないため、たまに踏み台を使わなければいけないリリトだったが、エプロン姿は様になっていた。
フルーツの盛り付けで、金剛力士を描く辺り、エプロンが様になるキャラクターは本意ではないのかもしれないが、これは間違いなく成長だろう。良い成長だ。
「みんながリリトみたいな、可愛らしい成長をしてくれたら良いのに」
「うっぜ。俺は食いたいからやってるだけで、そんなんじゃねーですし。……ダンマス様はいつまで見てんだよ、邪魔だよ出てけって、邪ー魔っ」
俺がそんなことを言ったところ、御機嫌を損ねてしまったのか、キッチンから追いだされてしまった。
バンッ、と閉じられた扉。
「プリンもう1個やるよ。じゃあな」
しかし扉は1度だけ少し開けられ、プリンをもう1個貰った。
そして、新しいプリンを食べながらキッチンから遠ざかる俺は、今度は城内をプラプラと散策してみる。
こうやって、たまに見回るのは、ダンジョンの主として、部下の指揮を高めるのにとても有効だ。
また、このダンジョンでは、ちょっと見回りをサボると、俺の知らない施設ができていることも多い。……自分家なのに、知らない間に改築されてるってどうよ。
「――はっ、またこんなところに俺の知らない部屋がっ」
そして、今日もまた、見知らぬ部屋を発見する。
「ん……どちら? あれ? ダンマス様だ、珍しい」
すると、その部屋の中には、トトナがいた。
その部屋の中には、赤いジャージを着たトトナが目立たなくなるほど、いくつもの物が置いてある。
ぬいぐるみとクレーンが入っているガラスケース、大量のメダルと液晶パネルや装置が入っているガラスケース、それから電子筐体。
まさか、ここは……。
「ゲーセンにようこそ。1プレイ1トトナコインです」
「やっぱりゲーセンっ。そしてトトナコインって何っ」
「こちらのスマホで交換できますよ。仮想通貨なので」
「ツッコミどころが多いっ」
49階層、南の領域の守護者、トトナは、炎帝種族といういわゆる朱雀であるが、人間型で生成されているため、見た目はトリでも燃えてもなく、暗めの17歳の四女である。
所々に朱色が混じる、ミドルストレートの赤い髪。瞳は両方金色だが、左の瞳は少し濃い。
赤を基調としたチャイナドレスは、必要以上に明るいが、性格は真逆。引っ込み思案で、意思の主張などもっての外。けれども健気で温厚で、5人姉妹の下から2番目としては相応しい四女である。
身長は、150cm弱と、少し低め。
体重は……不明だが、身長から見れば平均的。
体型は、それら平凡な身長体重もあってか、可もなく不可もなく。そして、手足がスラリとしていないからか、どこか田舎臭い。
強いて言えば、健康的ですね、という褒め言葉が思いあたるが、体型は、性格の自己主張の薄さが、顔や体にも出た、そう言えるのかもしれない。
とは言え、スタイルが悪いわけではない。
長身でスラリとしていなくても、低身長で胸が大きくなくても、非常に魅力的な自身の姉のように、トトナもまた、魅力的。
男性も女性も、心落ち着くような、和む健康的で健全なスタイルである。
とまあ、ともかくトトナは、そんな、健気で温厚で実直でありながら、自己表現が上手くなく、1人で暗い部屋にずっといるのも苦ではないという、暗い四女だ。
しかし、これは、和めない。
決して、健康的で健全なスタイルではない。
「待ちは卑怯だぞっ。正々堂々戦えっ、トトナっ」
「これがこのキャラの戦い方なので。はい、アッパー。終わりです」
体力ゲージが0になり、KOされてしまった俺のキャラクター。
トトナの卑劣な待ち戦法により、1度も攻撃することなくやられてしまった。
「ふふふ、良いだろうトトナよ。俺には異世界の全ての知識がある、コマンドも、フレームも、俺は全て把握している。それを使っても、良いんだな?」
「どうぞどうぞ。2ラウンド目開始ですよ」
俺は、異常とも言える知識量をフルに活用し、巧みなレバー捌きをもって、しゃがんでいるそいつを倒すため、襲いかかった。
しかし、何をしようとも、その牙城を崩すことはできなかった。
どうしてこんなヒドイことを……。
というか、いつの間にゲームセンターを作ったんだ。
トトナはトトナで、また変な成長を遂げている。
ゲーム好きなんて設定はなかったのに、ゲーム好きになって。
「2人プレイですか? 良いですよ」
卑劣なんていう設定はなかったのに、卑劣になって。
「あ、すみません回復アイテムとっちゃった。あ、またとっちゃった。ダンマス様死にそうですね」
引っ込み思案設定をしたのに、自己主張をして。
「ほら、1人だとちゃんと全クリできますよっ。それにハイスコア更新ですよ、NNM、と。全クリするにはですね、やっぱりあのボスをいかに上手く倒すかが重要だとあちきは思うわけですよ。そこ如何によっては、全然その後の難易度が違うくらい。まあ、それでもハイスコアが出せるかどうかってのは、腕次第なんですけど。ダンマス様もやってみて下さいよ、今度は手伝いますから、ほらほら、コイン入れてあげますから」
いや、これは良い成長か。
ゲームの攻略方法や、どこが面白いのかを、ひたすら楽しそうに語り続けるトトナ。
俺はうんうんと頷いてアドバイス通りに頑張るも、やはり成長しないダンジョンマスターなので毎回同じような形で負けるが、それでも楽しそうに、トトナは語り続けた。
合間に、晩ご飯を挟んだが、晩ご飯後も俺がゲームセンターに顔を出すと、また同じように。
「さて、そろそろ寝る時間だな」
「あ、もう? えへへ、でもね、あちきは今日はね、オールするって決めてるんですよ」
「ええー、寝なさいよ」
「全機種ハイスコア更新です。おやすみなさーい」
数時間後、俺はまさかの決意を述べられ、スマホを貰ってゲームセンターから出て、眠るために部屋に戻った。
そして、ベットの上で、スマホを見てみる。
「いや、スマホて……」
そうは思ったが、まあ、便利そうなので良いか。
「オススメはこの動画アプリって言ってたよな。見てみるか」
俺は、スマホ内のアプリをタッチした。
すると、ライブ配信中、という動画があったため、それを見ることにする。
『あ、ご新規さんいらっしゃーい。ナナミのムフフの部屋へようこそ』
……そこには、青いジャージを着たナナミが映っていた。
どうやら、これはナナミのライブ配信らしい。
『この動画では、15歳、未成熟な私が、皆さんの要望に応えて色々なことをしていきます。ただ、15歳ですので、ムフフなことは駄目ですよ? ダンマス様』
「俺名指しされるの?」
『はい』
「返事もされるのっ?」
『さーて今日は何をしようかなあー。熱々のおでんでも食べようかなー。いただきまーす』
ナナミは動画の中で、おでんを食べ始めた。
……やることは昭和だし、貴女青帝なんだから、熱々おでん食べても熱ってならないし、何がやりたいんだ。
あと夜にこんなのやられると腹が減るよ。
49階層、東の領域の守護者、ナナミは、青帝種族といういわゆる青龍であるが、人間型で生成されているため、見た目はドラゴンでなく、目立ちたがり屋の15歳の四女である。
おさげに近いツインテールの青い髪。瞳は両方銀色だが、右の瞳は少し濃い。
青を基調としたチャイナドレスは、ミステリアスな雰囲気をかもし出すが、性格は目立ちたがり屋。雅さや正義漢はあるものの、やはり目立ちたがる性格は、5人姉妹の一番下としては相応しい五女である。
身長は、169cmと、かなり高め。
体重は……不明だが、身長から見れば軽めの部類だろう。
身体は全体的に引き締まっていて、特に腰のくびれは見事なもの。
体型は年齢に似合わず、大人びていると言って良く、胸の大きさも腰つきも、ヘソの形もお尻の形も、15歳とは思えない。
そういったことから、自分自身に自信があるのか、非常に目立ちたがりで、突飛なことをやりたがる。
とまあ、ともかくナナミは、そんな、スタイル抜群で目立ちたがりで、器用に生きる、末っ子らしい五女だ。
『まずまず、美味しかった』
ナナミは、とても普通におでんを食べ終わった。
ただの夜食っ。
『ご不満がありそうですね? ダンマス様。投げ銭が欲しいんですけど、なんでしてくれないんですか?』
「名指しが多いな……。いや、別に、というか欲しいって言うものじゃなくない?」
『下さいな。支払いはナナミコインです』
「新たな仮想通貨が……。ええ……」
俺は、促されるがまま、ナナミコインを投入した。
途端、ナナミの顔が華やぐ。
『ありがとうございますっ。お礼に、ナナミのムフフタイムが始まるよ』
そして、何かが始まった。
放送している場所のナナミの私室の電気が、少しムーディーに変わり、ナナミは、青いジャージの胸元のファスナーを、ほんの少し下ろしていく。
また、ズボンをほんの少しだけズリ下ろした。上のジャージで隠れているので全く見えないが、確かに。
『ムフフタイムはもう終わりとなりました。次のムフフタイムをお楽しみに。さあ、ダンマス様、下さい』
……俺は、促されるがまま、ナナミコインを投入した。
『ありがとうございますっ。お礼に、ナナミのムフフタイムが始まるよ』
ナナミには、目立ちたがり屋、という設定はしているが、どうやらその目立ちたがり屋は変な方向に成長しているようだ。
まだ15歳という若い身空で、こんなことに手を染めるとは。
なんと嘆かわしいことか。
俺は、促されるがまま、ナナミコインを投入した。
『重畳重畳。ムフフタイムフィーバーが始まるよ。さあ、ファスナーが、ああ、下りる、上がる、下りる、下りる、上がる、下り……る? 上が……らない?』
ナナミはベットの上に膝立ちをして、焦らすようにファスナーを上げ下げしている。
ネームドモンスターとは、ダンジョンマスターたる俺にとって、娘のような存在である。
最近はその個性の発達によって、予測できないことも多いが、しかし、俺の庇護下にある、可愛い配下達である。
だからこそ、俺は知らねばならない。
彼女達の、その成長を。個性がどのように成長したのか。また、個性以外に成長したところがあるのかどうか。
俺は、促されていないが、ナナミコインを投入した。
『なんとなんと。まさか私の無敵の防御を、一気に突破しようとするとは、天晴れですね。仕方ないなあー』
スマホの中のナナミは、それを見て不敵に笑うと、少し頬を染めながら、覚悟を決めたかのように座り直す。
そして、カメラの位置をベットを上から映すように変え、自らはベットに横たわった。
『さあ、ナナミのムフフタイム、最終章。始まりま――、あ、違う、違うの、待って、今入らないでっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ』
しかし、向こうで何かトラブルが起こったようだ。
ドアノブが凄い勢いでガチャガチャと音を立てている。一体……。
『ナナちゃん? お姉ちゃんと約束したでしょう? もしかして、約束を破ったのかなあ? どうなの? お姉ちゃんとの約束、破ったの? ねえ?』
『――ひぃっ。ごごごごごごご、ごめんなさああいミー姉ええっ、うえええええん』
……なるほどね。
俺は、スマホから流れてくるナナミの泣き声を聞き、慌てない冷静な心で、アプリを切断しようとした。
――だが。
『それと……、ダンジョンマスター様』
間に合わなかった。
「――ひぃっ」
『わたしの可愛いナナちゃんを。お覚悟は、できていますね?』
「違う、違うんだ。お、俺はっ」
俺は急いでドアノブに駆け寄って、懸命に抑えた。
けれども……。
「……ダンジョンマスター様、ねえ?」
「ごごごごごごごめんなさあああいっ」
お読み頂きましてありがとうございます。
評価Pが凄く減っていてビックリしました。お気に触った表現がありましたら、申し訳ございません。
皆様からの御指摘や御指導は常に心待ちにしております。
より良い作品になるよう、お手を貸して頂けたなら幸いです。
今後ともよろしくお願いします。




