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第59話 チヒロ、ツバキに4000Pずつ。

ダンジョンあるあるその22

100体のユニークモンスターがいれば1体は反抗的。

いくら性格を思案して生成しようとも必ずそういったユニークモンスターが出てしまうこと。


「くくくははははは、その程度の力でこの俺に挑もうとは片腹痛い」

「そんなっ、ワタシの力が通じないだなんてっ」


「貴様の絶望が手に取るように分かる、なんと甘美な味だろうか。くくく、では礼にさらなる絶望をプレゼントしよう、見よ、これが俺の第二形態だあーっ」

「な、なんだとーっ」


 俺の体は膨れ上がる。眼前の勇者を遥かに見下ろす大きさにまで巨大化し、強さも同様に強大なものとなった。

 万一にも負ける要素はなく、未来にある選択肢はどのような蹂躙をするかのみ。


「さあ勇者よっ、悲劇と呼ぶにも生ぬるい、何も叶えることのできない虚無の中で愚かに散っていくが良いっ」

「う、うわあああー」


 俺が腕を一振りして巻き起こった旋風のみで、勇者ユキはその場にいることすら許されなくなる。

 これが力、圧倒的なまでの力。


「そして主君に仇なす愚かな者共も同罪だっ。破滅と共に後悔するのだーっ」


「うわああマスターごめんなさーい」

「ご主人様申し訳ありませんでしたっ」

「オー……ごめ……」


「主様、こんなにお強いなんて」

「主殿には勝てん」

「あるじ様凄すぎるよう」


 俺の前に平伏す7人。これが俺の真の実力だっ、思い知ったか。


「あっはっはっは、マキナ、セラ、オルテ、ローズ、キキョウ、ニル、そしてユキよ。これからは俺を尊敬し優しくするように。はっはっはっはっ、あーっはっはっはっは――むにゃむにゃ」


「ご主人様起きて下さい。ご主人様」

「――むにゃむ、はっ」


 俺はかけられた声と揺すられた体に反応し、瞬時に頭を上げキョロキョロと周囲を見回した。

 覚醒していく頭。


 どうやら俺に声をかけたのも体を揺すってきたのもセラのようだ。


「ここは……」

 俺はセラに尋ねる。


「玉座の間ですよご主人様。どうやら夢を見ていたようですね」

 するとそんな答えが返ってきた。


 夢?

 俺は記憶を辿るが、確かにあれは夢だったような気がする。ダンジョンマスターが夢を見るのは難しいことだが、最近稀に成功する。


 まさか玉座の間でうたたねしてしまって見るとは思わなかったが、そうなのだろう。


「ああ、そのようだな。本当に、……長い夢を見ていたようだ」

 俺は夢の内容を思い返すと、セラに身振り手振りを交えて話し始めた。


「笑っちゃうような夢なんだけどさあ、俺を尊敬しているはずのみんなが、Pを10日で1割って暴利で貸し付けてくるんだよ」

「なんとも面白い夢ですね。ご主人様のことを皆敬愛しておりますのに」


「本当にね。それからみんな玉座の間にリビングを作って宴会を始めちゃうしさあ」

「玉座の間でですか、それは驚きです」


「それでダンジョンモンスターを生成するとさ、その度に思惑と違う子が生成されるんだよ。初めは即死級鬱のティア、それから俺を一切尊敬してないホリィ」

「そんな子が」


「あと優しいと思ってたら怒るとやば過ぎる子だったミロクを頂点とした五獣に、オンリーワンがゆえに最後ドMが来た干支と。夢の中で上手く動けないってのは多いみたいだけど、俺の場合は上手く生成できないってのが来たね。ダンジョンマスターらしい夢だよ。あっはっはっは」

「ふふふ」

 そんな面白可笑しい話にセラはにこやかに笑ってくれた。


 ああ、全部夢で良かった。

 俺は改めて玉座の間を見回す。


 絨毯、コタツ、大量の料理や酒、ソファー、大画面のテレビ、カラオケ。

 ……、あれえ? なんだか見覚えのあるリビングがあるなあ。


「もう死ぬしか、こんなお腹一杯に食べてしまうだなんてもう死ぬしかない。でも反乱を解けばまた食べられるようになるからお腹一杯じゃない、まだ食べられちゃう。まだ死ねない、なんて無力……」

「中々豪華な城ですか絢爛とまではいきません。色々と生成して彩らなければいけませんわ。そのためにもPを稼ぐことが重要ですわね、頑張りますわーっ」


 ……、あれえ? なんだか見覚えのあるやつらがいるなあ。


「はい皆。お姉ちゃんが美味しい料理作ったよっ。ジラフ肉のシュハスコ、たくさん食べてねっ」

「ありがとう姉さん。――え?」

「ジラ……、え?」

「これは、これは……、どういうやつ? どういうやつだと思う?」

「どうと言われても。もしかして笑って良いやつな――」


「どう思う? うふふ、さあ皆手を合わせて、いただきます」

「「「「……。いただきます……」」」」


 ……、あれえ? なんだか見覚えのある関係性があるなあ。


「えーっと、子のアリス。……、ねえ自己紹介なんていらないでしょ? 全員知ってるんだしっ」

「こういうのはちゃんとしとかないと駄目なの。アリスには分からないんだろうけどっ」

「ちょっとやめなさいよあんたら、いい加減仲直りしなさいって」


「そうよ? 早く仲直りしないとお姉さんがまた悪戯しちゃうぞ?」

「根性を見せる時は今だっ」

「せやせや。あーでもさっきアリスはイーファスの悪口言うてたなあ、なんて言ったかは流石に言えんけども」


「こらこら、こじらせようとしちゃ駄目だよ。アリス達も意地張ってないで、一緒に遊んでて楽しかったことはないのかい? あるでしょ?」

「ぐぅぐぅ」

「ぐぅぐぅ」


「あら寝ちゃってるわ2人。とりあえず他のみんな注文してってー、その場で言うだけで良いから」

「うぷっ。み、水を1杯」

「タキノちゃんには拳を1発お願いしまーす」


 ……、あれえ? なんだか見覚えのあるドMがいるなあ。


「ご主人様、ちなみにこちら、お忘れのようでしたのでどうぞ」

「これはなんだい?」

「3万Pの借用書、7枚になります」

 ……そうか、あれは夢じゃなかったのか。


「そしてこちらが新たなメイド2人を生成するために必要なP分の借用書になります。私から2万5000Pとなっておりますのでお確かめ下さい」

 ……そうか、あれも夢じゃなかったのか。


「じゃ、じゃあ俺の、俺の第二形態はっ?」

 借金も生成も夢じゃなかったって言うんなら、そっちだって現実のはずだっ。あの圧倒的な力の限りを尽くす第二形態が俺には――。


「ご主人様に巨大化するなどと言う第二形態はもちろんございません。あれはユキに殴り飛ばされたことにより失神したご主人様が見た願望、夢です」

「そ、そんな……」

 この手の中に残るのは絶望だけだと言うのか。


「しかし夢の中とは言え我々に攻撃した挙句、謝罪の言葉を吐かせるとは。ご主人様にはさらなる絶望をプレゼントしてさしあげねばなりませんね」

「そ、そんな……」

 この手の中に……というか夢の中まで知ってるのかい?


「ご主人様のことならなんでも知っております」

「そ、そんな……」

 この手の……、なんてこったいっ。



「ふう死ぬかと思った」

 巧みな交渉術により、生きる、というその3文字だけを守り通した俺は、この第二次ダンジョン拡大期の仕上げにとりかかる。


 生成するのはメイド。


 ボス魔物ではあるが階層守護者ではない初めてのダンジョンモンスター。


 普通のダンジョンにもそういった役割のダンジョンモンスターは多数存在する。例えば宝を守る番人やショートカットコースに居座る魔物など。

 倒さなくても先へ進めるが、倒せば宝が得られたり、切り抜ければ近道ができたり、そんな恩恵をもたらすのが階層守護者ではないボス魔物だ。


 ただし稀に戦うことを目的としていないボス魔物も存在する。

 役割は案内することであったり、何かしらを販売することであったり。まあいわゆる管理人だ。


 俺がこれから生成する2体に持たせる役割はメイドなのでこっちに近い。


 弱くても問題ないためコモン魔物やノーマルモンスターでもできなくはないのだが、コストに余裕があるのなら後々のことを考えボス魔物で生成するダンジョンマスターは多い。

 特に俺なんかはコストが無制限になっているのでボス魔物で生成しない理由はない。


 なのでボス魔物。


 メイドにはこの天空城砦やダンジョン全体の維持管理を任せる。

 清掃や換気、洗濯が必要であれば洗濯もし、それから調理することがあれば調理をして貰う、ということだ。


 ただダンジョンである以上、汚れ等は吸収できるし空調は常に完璧なので掃除も換気も洗濯も必要なく、料理も生成するだけで良いので調理もいらない。


 Pを使用する維持管理も全自動で行う設定にできるし、食事なんかも好みがなければ決まった時間に自動的に生成されるようにできる。

 正直に言って、いなくても何一つ問題は発生しない。


 しかし、時には人の温かみも必要だと俺は考える。


 全てが自動化された世界での生活だなんてそんなもの、生きているとは言えない気がするからだ。


 たまには床を掃いて、ガラスを拭いて。排水溝のような汚く面倒な所も極々たまには手で掃除しよう。

 そして天気が良い日には窓を開けて外の空気を取り入れ、天気が悪い日には急いで洗濯物を取り込もう。

 無駄なのかもしれないがご飯を炊いて、食材を盛りつけて料理を作ろう。栄養摂取ではない食事をしよう。


 毎日をわいわいわいわい、笑って悲しんで面倒臭がって文句を言って暮らそう。


 非効率なのは確かだ。

 けれども、そうやって暮らせたならそれは幸せだと言えると思う。


 悪くない拘りなんじゃないかな?


 だが、そんな拘りのせいでセラにはたくさんの苦労をかけてしまった。掃除も換気も洗濯も調理も、全てメイドの、セラの役割だからだ。


 もちろん他のみんなも手伝ってくれるが、大半はセラ。

 朝早く起きて俺を含めたみんなを起こし、朝食の支度、換気に洗濯、ダンジョンの清掃。昼食を準備し洗濯物を取り込み夕食を作ってベットメイク。

 業務を挙げればキリがない。


 本来する必要もない俺のただの拘りで、可愛いセラに苦労をかけるだなんてそんなことはダメだ。

 セラに甘えてオンブにダッコで、このままじゃいけない。


 だからメイドがもっと必要なのだ。


 俺はメイドを生成する。このダンジョンにとってとても重要な役職メイド。

 このダンジョンにとって欠かせない、セラの負担を軽減するために。


 チラ、と俺はセラを見る。

 玉座に座るとセラは自然に左隣に来るが、今の俺は床で倒れ伏した状態から顔を上げただけ。セラは目の前にいて、目が合う。


「よろしくお願いします」

 するとセラはにこやかな笑顔でそう言い、頭を下げてきた。

「ああ、任せといてくれ」


 俺はそれにそう応え立ち上がり、玉座に腰掛けた。

 セラはやはり俺の左隣の定位置へ。

 チラ、と俺はそんなセラを見る。


「よろしくお願いします」

 するとタイミング良くこちらを見てくれたセラと目が合い、またそんな風に頭を下げてきた。

「ああ、任せておいてくれ」

 俺は再びそう応える。


 ……。

 ……。

 俺はメイドを生成する。全てはセラの負担を軽減するために、セラのために。可愛い可愛い愛するセラのために。


 チラ、とセラを見る。

「何度見てきても下がりませんよ?」

「……下がりませんか?」

「しつこい場合、増えることはありますよ?」

「……増えることはあるんですね?」


 俺はこれ以上利子を増やさないために生成を開始した。

 泣いてなんかいない。


「メイドメイド」

 実はメイド2体の構想は既にできあがっている。

 生成リストを開いてズラーっとならぶたくさんの種族。マキナ生成前とは大違いだ。


 その中で俺は最近増えた種族を探している。

 ダンジョンが大きくなったことで増えた種族も多いがそちらではなく、特別な勲章を授かることで増えた種族をだ。


 例えば上級竜もそうだったが、いくらダンジョンが強くなろうが特別な勲章を手に入れなければ生成が叶わない種族は基本的に強く凄い。


 あえてメイドにする必要はないと思うけど、まあそこら辺はね、趣味さ。


 種族を設定してユニークにして。

 性別はもちろん女性。


 造形は清らかに。癒されるそんな見た目。


 性格も清らかに。癒され、安心をモットーとしたそんな性格。


 特徴も清らかに。戦う力なんていらない、とにかく俺に安寧を。


 適性も清らかに。メイドとしてのスキルに一番重要なのは、主人を癒すそんな力だ。


 能力値はいつも通り。高いなあ。


『 下位天使

   ユニーク

   性別:女性 ・・・0P

   造形:美人 白と黒の翼 清らかで癒される 聖女のスタイル ・・・0P

   性格:優しく清らか 大人しく謙虚 奥ゆかしい 礼儀礼節正しくしっかり者 ひと滲みのイタズラ心 ・・・500P

   特徴:天誅 全身が武器 癒しの微笑み 天使キラー 気配り上手 メイド 双子姉 結ばれた魂 以心伝心の気持ち ランダム魔眼 ・・・3500P

   適性:体術 学習 交渉 運搬 料理 服飾 洗浄 手加減 HP吸収 MP吸収 ・・・1000P

   能力値:全能力成長率上昇 ・・・6000P 』


『 下位悪魔

   ユニーク

   性別:女性 ・・・0P

   造形:美人 白と黒の翼 清らかで癒される 聖女のスタイル ・・・0P

   性格:優しく清らか 大人しく謙虚 奥ゆかしい 礼儀礼節正しくしっかり者 ひと滲みのイタズラ心 ・・・500P

   特徴:天誅 全身が武器 癒しの微笑み 悪魔キラー 気配り上手 メイド 双子妹 結ばれた魂 以心伝心の気持ち ランダム魔眼 ・・・3500P

   適性:体術 学習 気品 礼儀 料理 服飾 洗浄 手加減 HP吸収 MP吸収 ・・・1000P

   能力値:全能力成長率上昇 ・・・6000P 』


 計13000P×2。


 高い……。


 ティアホリィミロクを上回ることはないものの、四獣や干支を上回るPになってしまったメイド。

 元々の種族の生成Pが2000Pという馬鹿げた種族だったため、ほんの少し設定を付けただけでこんな風になってしまった。


 高P種族になると単価が高くなるんだよねえ本当に。それぞれ種族にあった特徴をメインに付けているにも関わらずバンバン上がっていったよ。しかもなぜだか双子設定が高く、1つだけで1500P近くかかっている。


 だが後悔はない。


 なんてったって今俺の手元には2万5000Pもあるのだ。ダンジョンモンスターの生成が65%になることを思えば4万P近くを保有していることになる。余裕だぜっ。


 まあ抑えるに越したことはありませんけども。

 幸い高P種族なので無料分も多く、造形に関してはあれだけ付けたにも関わらず0Pで収められている。


 特徴や適性に関しては戦闘面を抑え、体術適性や全身が武器、天使キラーや悪魔キラーのみにし、その代わり清らかさや大人しさ、気配りする心や癒してくれる微笑を付けた。

 ダンジョンを改めて見回し、強さよりも優しさが、そして優しさよりも安らぎがこのダンジョンに必要だったのだと気付いたからだ。


 もちろんダンジョンであり、ダンジョンマスターが虐げられている以上、強さも優しさもマストと言えるほどには重要である。


 だがこれまで強さを重視してどうなった?

 優しさを重視してどうなった?


 その結果を知らないわけではないだろう。そして目を逸らしている場合でもないだろう。

 ゆえに、俺は安らぎを求めた。


 これまでにどれほど失敗していようと関係ない。

 ダンジョンマスターは1度の失敗で死ぬ職業? だからどうした、その失敗が負を生み出す前にそれをひっくり返せるような大成功すれば良いだけだろう。その失敗が成功に変わるような手を打てば良いだけだろう。


 他のどんなダンジョンマスターにできなくとも、俺にだけはできる。

 なぜなら俺は人間種族のダンジョンマスター。


「くくく、そう俺は――」

「早く生成して下さい。学ぶことのできる人間種族じゃなくしますよ」


「生成っ。生成っ、生成っ。早くっ、早く生成っ」

『これで生――』

「生成っ」


 人間種族じゃなくするってなんだよっ。イメージつかないけど恐怖のイメージだけは凄いパワーワードですよ。


 俺の声に応じ、目の前には2つの光が出現する。

 似て非なるものとはこういうもののことを言うのだろうか、白に黒が混ざった光と、黒に白が混ざった光。


 そしてその光の中から、メイド服に身を包んだ一卵性のソックリな双子の美少女が現れた。


「下位天使の君はチヒロ、下位悪魔の君はツバキ」


 元々知性の高い種族でユニークモンスターであっても十分な会話は可能だが、名を与えられネームドモンスターになったことで更なる知性を、そして魂を得た2人。


 パチパチと瞬きをして自分の体を見つめると、今度は2人見つめ合い、なぜかポロポロと泣き出した。


「チヒロです。よろしくお願い致します、旦那様」

「ツバキです。よろしくお願い致します、旦那様」


 頬を涙で濡らしながら震える声で言った2人。直後崩れ落ち、抱き合ってワンワン泣いている。


「……。俺何か悪いことしたかなあ」

「ご主人様、情報をご覧下さい」


 涙を流ししゃくりをあげる2人をどうすることもできず、俺は2人の情報を見た。


 そして。

「謎は全て解けたっ」


『 名前:チヒロ

  種別:ネームドモンスター

  種族:下位天使

  性別:女

  人間換算年齢:13

  Lv:0

  人間換算ステータスLv:165

  職業:メイド長直属メイド

  称号:癒しの姉

  固有能力:禁忌の血脈 ・悪律魔法使用可能。ステータス上昇、天使へのダメージ上昇、天使からのダメージ減少。習得スキル制限解除。

      :癒しの聖女の奉仕術 ・世話、奉仕、回復に補正。見る者に癒しを与える。

      :姉妹愛 ・姉妹間で全ての情報を共有できる。

      :心の安らぎ ・支配領域内において隠し事を全て暴く。

      :安寧の魔眼 ・左、視界内の対象に安寧を与える。

  種族特性:精神体 ・肉体へのダメージを無効化し、精神へのダメージを減少させる。

      :天律魔法 ・天律魔法使用可能。悪魔へのダメージ上昇。

      :下位天使の翼 ・空中での移動に補正。包みこんだ者を癒し虜にする。

      :下位天使の瞳 ・障害物を無効化し見通す。見た者の情報を得られる。

      :神への報告 ・重要事項であれば命を賭けて神に伝えることが可能。

      :人を守る概念 ・対象の未来の情報を得られ、歪められる。

  特殊技能:オーラドレイン ・生命力と魔力を干渉の度に吸収する。

      :ビューティフルハウス ・家を新品にできる。

  存在コスト:6000

  再生P:13000P 』


『 名前:ツバキ

  種別:ネームドモンスター

  種族:下位悪魔

  性別:女

  人間換算年齢:13

  Lv:0

  人間換算ステータスLv:165

  職業:メイド長直属メイド

  称号:癒しの妹

  固有能力:禁忌の血脈 ・天律魔法使用可能。ステータス上昇、悪魔へのダメージ上昇、悪魔からのダメージ減少。習得スキル制限解除。

      :癒しの聖女の奉仕術 ・世話、奉仕、回復に補正。見る者に癒しを与える。

      :姉妹愛 ・姉妹間で全ての情報を共有できる。

      :心の安らぎ ・支配領域内において隠し事を全て暴く。

      :安心の魔眼 ・右、視界内の対象に安心を与える。

  種族特性:精神体 ・肉体へのダメージを無効化し、精神へのダメージを減少させる。

      :悪律魔法 ・悪律魔法使用可能。天使へのダメージ上昇。

      :下位悪魔の翼 ・空中での移動に補正。包みこんだ者を癒し虜にする。

      :下位悪魔の瞳 ・障害物を無効化し見通す。見た者の情報を得られる。

      :神への報告 ・重要事項であれば命を賭けて神に伝えることが可能。

      :人を攻める概念 ・対象の未来の情報を得られ、歪められる。

  特殊技能:オーラドレイン ・生命力と魔力を干渉の度に吸収する。

      :ビューティフルハウス ・家を新品にできる。

  存在コスト:6000

  再生P:13000P 』


 俺はなんて十字架を背負わせてしまったんだ。禁忌ってあなた。


 これはあれだろうね、双子設定だからだろうね。

 天使と悪魔の双子、つまり両親は天使と悪魔だということ。本来結ばれるはずのない種族同士、生まれるはずのない子供が生まれた。それが彼女達。

 完全にやっちまっている。


 天使や悪魔はこちらの世界に実在しており、それゆえに元々の気質が存在する。彼等は規律を重んじるのだ。

 彼女達もまた規律を重んじるのだろう。存在意義すら揺るがしかねないこの十字架はあまりに重過ぎた。


「ごめんよ……ごめんよ……」

 謝って許されるかどうかは分からないが、俺は彼女達にひたすら謝った。

 俺のこの趣味が、Pを付けまくる趣味がなければこんなことにはならなかったのに。おかしいと思ったんだ、双子設定が凄く高かったんだもの。


「いいえ旦那様、悲しくて泣いているのではありません」

「はい嬉しくて泣いていました、旦那様」


「そ、そうなのかい?」


「はい」

「はい」


 頷き、また抱き合って涙を流す2人。頭を撫でで撫でられて。


 姉のチヒロは金髪碧眼。肌は白色で頭の上には白い輪っか。背中には白い翼と黒い翼。

 妹のツバキは銀髪碧眼。肌は褐色で頭の上には黒い輪っか。背中には黒い翼と白い翼。


 髪型は2人共長い髪を編みながら後ろに持って行きポニーテールを作る形。1人ではできなさそうなので2人で作るのだろう。


 双子だけあって顔はソックリで、肌の色と髪の色が違うだけであとは全て同一。顔の1つ1つのパーツ、それから体型も声も仕草も性格も。

 そういう風に生成したと言えばしたのだが、なんだかそれ以上に双子っぽい。


 本当にソックリだ。……泣いている顔も。


 いや、うん、嬉しくて泣いてるって言ったし、俺は悪くないはずだ。

 俺は……。


「可哀相にこんなに泣かされてしまって。一体誰がこんなひどいことを? よしよしもう大丈夫ですよ」

 するとセラは服が汚れるのも厭わず膝を付いて、抱き合う2人を抱きしめた。


 ……。


「セラさん……、うううぅぅ」

「うううぅぅ、……セラさん」


 ……。


「残り8011P……。このまま飯や料理に消えるくらいなら、そうだな。チヒロ、ツバキ、お小遣いをあげよう。なんと1人1人に2500Pだっ」

「金で解決しようだなんて、どこまでも下種ですねご主人様は」

「誤解だっ、いや確かにこれで許してもらおうとしてたんで仰る通りなんですがねっ」


「この……ゴミめ……」

 やめろ、やめてくれセラ……。そ、そんな目で俺を見ないでくれ。


「それに8000Pならば1人1人に4000P渡せるにも関わらず、たった2500Pとは。なんてみみっちいい男」

 抱きしめていたていた手を緩め、2人の頭を撫でた後こちらへ、ツカツカと音を響かせ歩いてくるセラ。


「だってっだって全部あげちゃったら俺は利子も払えなくなっちゃうじゃないかっ。複利なんだ、せめて、せめて利子だけは払わせてくれっ」

 その姿はまさに恐怖そのもの。そう恐怖が形を成して俺に迫ってきていたっ。


「まさか転生先でツバキと会えるだなんて、やっと、ツバキ……。うううぅ」

「チヒロ……、やっと、まさか転生先でチヒロと会えただなんて。うううぅ」


「ご主人様、弁明はそれだけですか?」

「違うんです、俺にそんなつもりは。そう彼女達のために、俺は彼女達を愛しているんです、だからできることをしようとっ、強くしてあげようとっ。信じて、信じて下さいっ、裁判長っ」

「判決を言い渡します」

「慈悲をっ、慈悲を――」

「私刑」

「リンチの方だっ」


 ごめんよチヒロツバキ。君達にそんな十字架を背負わせてしまって。

 君達の涙を拭ってあげたい。でも俺にはそんな資格も、そしてそんな時間も残されていません。


「会いたいって、触れたいって、ずっと。でも、もうこれからいつでも会えるんだね」

「寂しかった、苦しかった。ずっと。でも、もうこれからいつでも幸せなんだね」


「涙を拭ってあげたい? 典型的な勘違いセクハラ野郎ですね、罪状を追加致します」

「しまったっさらなる罪をっ。し、私刑の上はなんなんだっ、まさか死刑なのかっ? 死刑なのかっ?」

 身構える俺、笑うセラ。


「本当にありがとうございます旦那様。種族も混血なのも前世と同じですから、気になさらないで下さい。……、旦那様? 聞いておられないようですね、旦那様?」

「旦那様? ……、聞いておられないようですね。旦那様? 種族も混血なのも前世と同じでしたから、気になさらないで下さい。本当にありがとうございました旦那様」


「判決、処刑っ」

「もう執行されるのっ?」

「惜しい人を亡くしました」

「既に執行されているっ? くそう、最早一刻の猶予もないというのか。ならば致し方ない、今こそ目覚めるんだ俺。行くぞーセラー、これが俺の第二形態だあーっ」

 うおおおおおおーっ。


「……」

「……」

「……」

「急に冷めないで……とても恥ずかしいよ。あと、冷静な処刑は怖い……」


 無表情のままに迫り来る恐怖、巨大化しない俺の体。


 もうダメだ。そんな時、チヒロとツバキが助けてくれた。


 自分達は悲しんでいないから大丈夫です、と。


 なんて嬉しい、そして優しいんだ。

 俺の心の安らぎで在ってくれ、そんな願いを込められ生成された彼女達は、例え俺が憎き相手だとしても願い通りに守ってくれた。


 それは、俺が一体どれほど待ち望んだことか。

 ああ、彼女達に俺は何を返せるだろう。


 そう考えていると彼女達は、俺をさらに弁明するためか、こう言葉を続けた。


「わたし達はセクハラの罪を問うてくれるだけで十分です、セラさん」

「セラさん、わたし達はセクハラの罪を問うてくれただけで十分です」


 そして俺はセクハラで罰せられた。


 お小遣い2500Pの他に1500P、計8000Pが失われ、俺の保持するPは、0Pになってしまう。


 最早宴会を継続することなどできない。

 宴会は全てダンジョン強化費兼俺のお小遣いから出るのだ、そこが0Pになってしまえば何も注文することは叶わない。もし叶うとしてもそれは各自のサイフから、そのはずだった。


 だがチヒロとツバキはとても優しい。

 みなに頭を下げて回ったのだ。


 自分達のせいでPがなくなってしまい申し訳ないと。

 俺の心はひどく苦しくなる。


 するとチヒロとツバキは俺を楽にするためだろうか、こう言葉を続けた。


「今はみなさんが立て替える、という形で後日清算にはできないでしょうか」

「後日生産する形で、今はみなさんが立て替えたことにはできないでしょうか」


 そして俺には借金が追加されていく。


 チヒロとツバキは満面の笑みで、みんなが了承してくれました、と俺に伝えてきた。

 俺がありがとうと言うと、華やかだった笑顔をさらに輝かせ、このくらいいつでも頼んで下さい、と俺に言う。


 俺は大きく頷き、宴会に混ざってきなさい、と2人を送り出す。


 そうして宴会は継続される。


 俺は混沌と呼べるその様子を、玉座に座り眺め続けた。


「なんてこったい」

お読み頂きまして誠にありがとうございます。

アクセスして下さっている数を見ると励みになります。


また評価して下さった方やブックマークして下さった方もありがとうございます。とても嬉しく思っております。


どこかに取り上げられたわけでもなく、宣伝もしていないこの作品を見つけ、読み続けて下さっていることを本当に感謝しております。これからも頑張ります、ありがとうございました。

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