第55話 アリス、イーファス、ヴェルティスに2000Pずつ。
ダンジョンあるあるその18
勝つ者よりも負ける者よりも前へ進む者こそが攻略者。
勝ち続けた者は負ければ全て失う。負け続けた者は勝つまでに全てを失う。しかし前へ進み続けた者は何かを失ってもそれを取り戻し、本当に大事なものだけを守りながら攻略していくこと。
五獣を生成し、14人となった我がダンジョンの精鋭達。
倍の人数となったことで宴会も賑やかになってきたようだ。
マキナはバーベキューを始め、セラは2本目のDVDに突入し、オルテは一体何本目か分からない飴を舐めている。
ローズは肉や野菜を串に刺し、キキョウは戻ってきたがコタツを生成し眠り、ニルはミカンを恐ろしい勢いで食べ進め、ユキは炭に火を点けるため扇ぎつつ魔法で焼いた肉を頬張る。
ティアとホリィは酔いが抜けたのか、歌い始めた。わざわざカラオケ機器とタンバリンを生成して。もしかしたらまだ酔っているのかもしれない。
そしてミロク、ククリ、リリト、トトナ、ナナミの五獣5人はと言うと、見ているとホッコリするような和気藹々さで――。
「そ、その、私が笑ったのは違うことで……」
「俺も思い出し笑いだよ、ほら、ほら、えっと、……ご、ごめんなさい」
「ひっく、ひっく、ワタシ、がぁ、言ったからあ、ええええーん、うええええーん」
「泣くなトトナ、泣いたら、泣いたらぁ……、うぅ、うええええーんごめんなさああい」
「泣いていても分からないよ。何でさっき待っててねって言ったら、首を長くして、ってボソっと言ったの? なんで? 誰の事? お姉ちゃんに教えて? ほら、それに面白いことなら大きな声で言わないと。もう1回言って皆で笑ってみたら? ねえ」
「ごめんなさい、うええええーん」
「ごめんなさあい、うえええーんうええーん」
「うええええーん、ミー姉ええー」
「うえええええーん」
……。
……。
……。
どうした四獣、そして五獣……。
……うん、まあ、あの、賑やかになってきたようでなにより。はい、ごめんなさい。
さあ、次は干支だ。
子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥。十二支、干支。
このダンジョン最初のネームドモンスターのボスにして29階層から40階層の守護者であり、鎖の封印を司る門番達。
そして、ネームドモンスターとかそういうのを抜きにしても、我がダンジョン初のボス。
本来なら1階層か5階層、遅くても10階層で初めてのボスを迎えるものだと思うが、まあそんなこともあるさ。
なんならボスどころか初めてのダンジョンモンスターでもあるのだが、まあそんなこともあるさ。
普通と大きく違っても良いじゃない。
巷ではよく言うだろう、オンリーワンが大切、個性を大切にしようと。
頑張った結果ナンバーワンになれなくてもオンリーワンになれれば良いじゃない。本当に頑張ったのさ、俺は。Pが足りねえんだ、節約しても借金しても足りねえんだ。
そんな俺の悲しき心も相まってか、干支にはオンリーワンな我がダンジョンに相応しいオンリーワンの強さを求めている。
多分求めなければ1階層までの全てを魔物で埋め尽くすことも可能だったが、その辺りは仕方ない。仕方ねえんだ。
というわけで干支はオンリーワン、万能を求めた四獣と違いそれぞれが特化した強さを持つことになる。
例えば、逃げるに特化していたり、道の迷いに特化していたり、悪天候に特化していたり、宴に特化していたり。
もちろん侵入者はその特化した強さを避けるように立ち回るだろう。だが俺の華麗なるダンジョンのギミックや構造の生成技術により、必ず真正面からぶつからなければならない。
それはあたかも侵入者に課せられる試練のよう。
そう、これは侵入者を成長させる試練なのだ。
逃げる相手を捕まえられる力を、道に迷わない力を、悪天候で生き延びる力を、宴は……。
そんな12の力を身につけさせ、干支階層以降、五獣階層以降、そして2つの門以降に存在する、この城、険しすぎるこの城の困難を乗り越えられるような実力を持たせる。
干支とはそんな階層なのだ。
全く、良い仕事をするダンジョンマスターもいたものだな。
ギミックや構造をちゃんと考えておかなければ。
ただし生成する上で、気をつけなければいけないことがある。
それは、強さだけでなく性格までもが強烈な個性を持たないようにすることだ。
その部分のオンリーワンはもう間に合っています。
四獣の子達はミロクに頂点が抑えられている分まだそう感じないが、それでも残る10人で個性の渋滞は既に発生してしまっている。全然処理しきれてない。
「目指せ没個性」
俺は固く心に誓った。
「没個性? それって食べられるのー?」
と、噂をすればなんとやら。強烈な個性の持ち主がやってきてしまった。
「食べられないよー」
「本当は? 食べられるんでしょー?」
疑り深い目で俺を見るニル。その目は、もし嘘をついていた場合食ってやろうか、まさにそう言っているように見える。
「本当さ、食べられないよ」
だから俺は正直に答える。没個性は食べ物ではないと。
ニルの意に沿った答えではないかもしれないが、心配はいらない。ニルの魔眼を覚えているだろうか、未だ戦闘に役立つ姿を見ていないが、嘘を見破り真実を見抜く、真実の魔眼というものを持っている。
ニルに嘘は通じない、しかしだからこそ本当のことを言えば必ず分かってくれる。俺が食べられる心配などどこにもない。
「ガジガジガジ」
「まあ、でしょうね」
そういうことだ。改めて没個性を目指す大切さを知れて良かったよ。
「ニル、やめなさい。あるじ様は食べ物じゃないでしょう、ほら、おやめなさい」
「ガジガジ。んー、塩気が足りない……もみこまないと。あるじ様今日一緒にお風呂入ろー、ちゃんと水着きるからー。背中流すよー」
これ以上増えては俺の体がもたない。物理的に。
俺は食べ切るまでに時間のかかる乾き物をたくさん生成し、魔物の生成リストに目を移す。
では干支。
「まずはネズミ、子」
干支の中でも最初に位置する29階層の守護者。
個性は、逃げること。そして増えること。
だから侵入者に課される試練は当然、逃げて増えて逃げて増えてさらに逃げるボスをひたすらに追いかけ続けるというもの。
ボスが逃げる設定は難しいものだが、それは普通のダンジョンマスターの話。俺ならば朝飯前だ。
「? ご飯の気配」
「……」
ボスが逃げる設定は難しいものだが、それは普通のダンジョンマスターの話。俺ならば目を瞑っていてもできる。
29階層守護者を捕まえられるようになれば、きっとどんな魔物でも捕まえられるようになるだろう。
最初に相応しい試練さ。
『 パーティーハイラット
ユニーク
性別:指定無し
造形:亜人型 12歳 愛くるしい 鼠状態小さい 自在変化 千変万化 ・・・1350P
性格:ずる賢く腹黒で狡猾 たまに墓穴を掘る 責任感強い ・・・500P
特徴:12人の使徒 12の功業 十二単一層目 増殖 分身 逃走上手 隠遁の猛者 猛反撃 カウンター 夜半強化 ランダム魔眼 ・・・4000P
適性:射撃 杖術 水魔法 召喚魔法 毒耐性 索敵 罠発見 隠密 直感 思考 学習 酪農 演技 HP吸収 ・・・2750P
能力値:全能力成長率上昇 ・・・1800P 』
11000P。
安い。安過ぎる。
パーティーハイラットは元々の生成Pが600Pの魔物。
このダンジョンにおいては最少Pの種族だ。
しかし600Pとは森の主クラスの強力な種族であり、元々の強さ自体は申し分なくこのように大量に設定項目を付けてもPが高くならないなんともお得な種族だ。
1500Pの四獣の後だから余計にそう感じるのか、凄まじいフリーダムさ。素晴らしいっ。
性格や特徴は、相反するものや相乗効果が起こる同系のものをつけると、単体でつけた場合よりもP消費が大きくなる。
今回は、増殖と分身、逃走上手に隠遁の猛者、猛反撃とカウンター、そして12系等がそれに当たるため、随分かかるはずなのだが、それでも4000Pで収まっている。
そりゃあ600Pの魔物に4000Pは多いさ、同種族の魔物が6体も生成できてしまう。しかしまあ、これだけ付けたのに少ないよ。
ミロクは4800Pもかかってるからね。いやあ、安い安い。
安い。
安いです。
次っ。
「次はウシ、丑」
干支の中で2番目に位置し10の倍数のボスでもある30階層の守護者。
個性は、トラップ。&知略。
逃げる敵をひたすらに追いかけた次は、慎重に追いかけることを覚えましょう。もし29階層と同じように追いかけてしまえば手痛い罠が待っている、そんな試練。
攻撃も強力で耐久力にも秀でた牛系等の魔物が襲い来る、そんな中でも焦らずゆっくりトラップにかからないよう進まなければいけないここでは、精神力も鍛えられる。
30階層守護者に辿りつけるようになれば、きっとどんな極悪ダンジョンでも攻略できるようになるだろう。
2番目に相応しい試練さ。
『 クレバーハイカウ
ユニーク
性別:指定無し
造形:亜人型 12歳 眼鏡 知的 自在変化 千変万化 ・・・1350P
性格:保守的で我慢強い 計算高く知的 たまにポカをする 自立心強い ・・・500P
特徴:12人の使徒 12の功業 十二単二層目 罠職人 スペシャルトラッパー 堅守 襲撃者 心理学者 徹底防衛 鶏鳴強化 ランダム魔眼 ・・・4000P
適性:盾術 土魔法 回復魔法 混乱耐性 支配耐性 起床耐性 罠発見 罠工作 視覚 採取 HP吸収 MP吸収 ・・・2750P
能力値:全能力成長率上昇 ・・・1800P 』
またもや11000P。干支は全部このPでいきますか。
しかし、12人の使徒と12の功業が高い。特に12の功業がえらく高い。これがなければ600Pかそれ以上安く生成できる。すなわち同種族の魔物をもう1体生成できる。
が、俺は付ける。
何の迷いもなく。
なぜならなんかカッコ良いからだ。
「おかわり」
「あいよ」
次っ。
「次はトラ、寅」
干支の中で3番目に位置する31階層の守護者。
個性は戦術。&情報収集。
罠を慎重にくぐりぬけ堅固な防御陣をくぐり抜けた後は、そこで培った戦術をさらに上回る戦術を味わう試練。
戦い方を研究され尽くされ戦術面では絶対的な不利を被っても、踏ん張って立ち回り覆さなければいけないここでは、まさに地力が鍛えられる。
31階層で戦い抜けるようになれば、きっとどんな状況化でも戦い抜けるようになるだろう。
3番目に相応しい試練さ。
『 タイガージェネラル
ユニーク
性別:指定無し
造形:亜人型 12歳 将来有望 八重歯 自在変化 千変万化 ・・・1350P
性格:厳しくて真面目 規律を重んじ伝統を大切にする たまに凹む 自尊心が強い ・・・500P
特徴:12人の使徒 12の功業 十二単三層目 指揮官 司令塔 威厳 陣形 組織的 部下に好かれる 士気向上の御旗 平坦強化 ランダム魔眼 ・・・4000P
適性:剣術 魔力操作 火魔法 回復魔法 麻痺耐性 騎乗 思考 建設 料理 清掃 HP吸収 MP吸収 ・・・2750P
能力値:全能力成長率上昇 ・・・1800P 』
11000P、完璧だ。
まさかこんな低Pで魔物が1体生成できてしまうとは。俺も生成が大分上手くなったようだ。
「なあニル」
「うん」
「……いやツッコミツッコミ。11000Pって上級竜も生成できるでしょ、とか」
「え? 分かった。んー、あるじ様11000Pって食費1週間分になるでしょー」
「はっはっは、バレたか、参ったなあ。……食いすぎじゃないですか?」
その内半分くらいは多分貴女の食費ですよね。
まあ良い、そこら辺にはもうツッコミを入れても仕方がない。
叶わない望みを持ち続けることはとても辛いことなのだから。とは言えダンジョン外へ殺戮に行かせないことは諦めちゃいない。
そこだけは絶対に叶えてやる。それにそこを防げばPも稼げなくなり、食費も節約しなければならなくなる。全て解決だ。
「やるぞ、俺はやるぞっ」
「あるじ様ー、あるじ様ー」
「やる――、なんだニル、俺は今気合を入れるのに忙しいんだ」
「お腹空いたから、早く生成してー」
「また乾物か? あんまり同じものばかり食べてたら栄養が……え?」
指差した先は……。
「ニル、今から生成するのは食べ物じゃない、新しい仲間よっ」
「分かってるよー」
「そ、そうか。それなら良いんだ。いやあ、ははは、新しい仲間が加わるのはいっつもドキドキするなあ。ドキドキ」
「うん。そうだねー。ジュルリ」
何かが違う。
でも何が違うかは分からない。
もしかしたらドキドキした時の表現の音はジュルリが正解なのかもしれない。俺には分からない。ツッコミなんて入れられないよ。
『これで生成を開始します。よろしいですか?』
まあ、ともかく生成してみよう。
まとめて12体生成することもできるのだが、3体ずつに分ける。そうすれば被害は4分の1だから。
「生成っ」
俺がそう言うと、目の前に灰色、茶色、黄色の靄が現れる。
どれも毛っぽい、触ったらふわふわしていそうな靄だ。
そしてその中から現れる3人の美少女。
「子の君はアリス。丑の君はイーファス。寅の君はヴェルティス」
俺は出てきた3人の美少女達に颯爽と名前を授ける。
「アリスですか。可愛い名前ありがとうございます王様っ」
ねずみ色のパーカーを着てフードを深々と被る小さな美少女、アリスが可愛らしい笑顔でそう応える。良い子じゃないか、設定した性格は腹黒狡猾だがとてもそうは見えない。
「イーファス、強そうな名前ですね。王様、期待に応えて頑張ります」
眼鏡をかけている角の生えた小さな美少女、イーファスがペコリと丁寧に頭を下げそう応える。良い子じゃないか、設定した性格は計算高いがとてもそうは見えない。
「ヴェルティス、良い名ね。あ、い、言っとくけど別に喜んでなんかないんだからね。王様から拝命されて可愛い名前だったからって喜んでるわけじゃないんだからっ。思ったよりマシだったくらいなんだからねっ、ふ、ふんっ」
ツインテールで八重歯の小さな美少女、ヴェルティスが若干頬を赤くしそっぽを向きながらそう応える。良い子じゃないか、設定した性格は……ツンデレじゃないか、どこがどう作用したんだ。
「うん、こちらこそよろしく」
「よろしくー、ジュルリ」
「ジュルリはやめなさいっ、おやめっ」
食料ではない新たな仲間、アリスとイーファスとヴェルティスは3人共小さい。ヴェルティスは一番大きく150cmを上回るがイーファスは140cm後半、アリスは140cmギリあるかないか。
自分より小さそうな子がきたことで、四獣の白虎、リリトがチラチラと嬉しそうに見ている。
どっちが大きいんだろう、多分リリトの方が小さい。
そんなアリスだが、ねずみ色のパーカーとデニム生地の半ズボン。パーカーはダブダブで体のラインは不明だが、そこは間違いなくリリトが勝っている。一勝一敗。
亜人型設定なのでおそらくフードに隠れた頭にはネズミ耳がある。尻尾はちょろんと出ているし。
フードから見える髪の毛は灰色、かなりのクセっ毛で、短いが色々な方向にくるんくるんと回転していた。
『 名前:アリス
種別:ネームドモンスター
種族:パーティーハイラット
性別:女
人間換算年齢:12
Lv:0
人間換算ステータスLv:106
職業:第一の鎖の番人
称号:捕獲不能の逃走者
固有能力:無限増殖 ・自身の分身を作りだすことができる。増やす程にステータスやスキル等が低下。一定値以下になると行使不能。
:窮鼠猫を噛む ・追い詰められると与えるダメージが上昇。
:夜半の大行進 ・23時から1時の間、全ての行動に対し補正が入る。
:鼠化 ・鼠の姿になることができる。大きくなればなるほどステータス低下。
:催眠の魔眼 ・右、視界内の生物の意識を封じ、その体を操ることができる。
種族特性:大繁殖 ・1度に何匹も子を生むことができ、妊娠期間も短い。
:一致団結 ・仲間の数が多くなればなるほどステータス上昇。
:共通思考 ・仲間と思考を共有できる。
特殊技能:スタミナドレイン ・体力を干渉するたびに吸収できる。
:プレイングデット ・演技で誘いこむことができる。
:クリティカルショット ・狙いすました魔法攻撃を急所に必中させる。
:ブレイバーブレイン ・危機的状況でも冷静に思考できる。
存在コスト:1800
再生P:11000P 』
左目は髪の毛と同じ灰色だが、右目は薄い水色。
くりんとした可愛らしい目で睫毛が長く、くるくるの髪の毛は実にサラサラ、庇護欲を多いにそそる。生意気そうなところなど微塵もなく、誰からも愛されるそんな美少女。
しかしきっと誰も捕まえられない。
腹黒狡猾ずる賢く、無限に増殖し逃走が上手く、追い詰められると強い力を発揮し、さらに催眠も得意ときた。なんてこったい。
特殊技能は、種族的に弱いため他の子達なら載らないものも羅列されているが、それでもこの種族にとっては大技と呼べるものを大量に習得している。
「初めましてニル先輩。これからよろしくお願いします」
「うんよろしくー。……増殖って今できる?」
「おやめっ」
イーファスは眼鏡っ娘。我がダンジョン初のメガネっ娘となる。まあたまにセラやユキがかけてたりするけど。
縁の太いメガネをかけた頭の横、こめかみから太いウシの角が生えており、耳の位置は人と同じだが形が違ってウシっぽい。いや牛だからウシっぽいじゃなくてウシか。メガネがきちんとかかって良かった。
格好はデニム生地のオーバーオール。白いTシャツにオーバーオールなのは動きやすそうだが……、知的かどうかは分からない。
罠を設置するなら良い格好なのか? まあ、似合ってると思います。
『 名前:イーファス
種別:ネームドモンスター
種族:クレバーハイカウ
性別:女
人間換算年齢:12
Lv:0
人間換算ステータスLv:110
職業:第二の鎖の番人
称号:難攻不落の仕掛け人
固有能力:罠を極めし者 ・罠に関する全ての事柄に対し補正。
:不抜の心得 ・陣を布いた防衛においてのみ未来を予測できる。
:鶏鳴の絶対防御 ・1時から3時の間、夜明けまで全ての行動に対し補正が入る。
:牛化 ・牛の姿になることができる。
:起因の魔眼 ・左右、対象の行動のきっかけを作ることができる。
種族特性:牛の指揮官 ・牛系の魔物を率いることが可能。知能が足りない配下に知能を持たせることができる。
:栄養満点の母乳 ・栄養満点の母乳を出せる。
:類まれな消化器 ・大概のものを消化できる。
特殊技能:スタミナドレイン ・体力を干渉するたびに吸収できる。
:トラップパーティー ・自身の設置する罠の効果位置の情報を読み取れる。
:インペイションレス ・心を落ち着かせることができる。
存在コスト:1800
再生P:11000P 』
眼鏡の奥にあるのは、両目共に綺麗な橙色の知的な瞳。
肩にかからない程度の短めの髪は硬そうな髪質ながらしっとりしている。身長や顔の幼さと相まって知的さが逆に可愛らしく見えるそんな美少女。
しかしきっと誰よりも周到。
計算高く、我慢強く、罠で全てを嵌め殺す。多数の罠により自身の防御能力を高め、そして多数の罠により相手の攻撃能力を低くする。
成す術がなくなればそこからは一方通行。消耗戦上等というダンジョンでは最も厄介な敵。
「初めましてニル先輩。これから大変にお世話になります」
「うんよろしくー。……うーん、ちょっと一旦ロースに、あ、間違えた。牛になってみてー」
「おやめっ」
ヴェルティスは八重歯輝くツインテールのトラ耳美少女。さらには縞模様の尻尾がお尻からは立ち上がる。
デニム生地のジャケットを着てひらひらのスカートを履いた格好と、3者3様の格好だが靴は3人共おそろいのスニーカー。
指揮官に相応しい格好かと問われれば答えに詰まるが、可愛いかと問われたなら間違いなく可愛いと答えられる。
『 名前:ヴェルティス
種別:ネームドモンスター
種族:タイガージェネラル
性別:女
人間換算年齢:12
Lv:0
人間換算ステータスLv:115
職業:第三の鎖の番人
称号:不撓不屈の総指令
固有能力:敵無し大将軍 ・味方の士気上昇、ステータス上昇。移動速度上昇。
:流麗なる戦術 ・作戦行動時全ての行動成功率上昇。
:平坦の覇道 ・3時から5時の間、全ての行動に対し補正が入る。
:虎化 ・虎の姿になることができる。
:情報の魔眼 ・左、周囲の情報を読み取る。
種族特性:虎将軍 ・虎系の味方の魔物を統率することが可能。
:密林の覇者 ・密林での行動時、ステータス上昇。
:立体機動 ・障害物の踏破に補正。
特殊技能:スタミナドレイン ・体力を干渉するたびに吸収できる。
:フレイムクラッシャー ・剣を巨大化させ炎をまとまわせる。
:エネルギーブースト ・ステータスを上昇させる。
:クリアクリーン ・生活空間を綺麗にする。
存在コスト:1800
再生P:11000P 』
黄色の髪の毛にところどころ茶色のメッシュを入れているヴェルティスの瞳は、右目が濃い黄色で左目が黄色に近い黄緑。
ツインテールの髪は細く長く幼さを強調し、八重歯とツンデレな言動や顔を赤らめたりする表情は、そうだな、お小遣いをあげたくなるそんな美少女。
しかしきっと将来は美人になる。
厳しく真面目で伝統を大切にする彼女はきっと将来良いお母さんになるだろう。
良かった良かった。光景を想像しただけで思わず目がウルウルとしてくるや。
ともかくそんな29階層から31階層の番人。干支年少組。
「初めましてニル先輩。不束者ですがどうぞよろしくお願い致し――、何見てんのよ」
「おやめ――、え、俺?」
流れ的にもう一度言おうとしたところ、先にヴェルティスに睨まれてしまった。
「ヴェル、王様に向かってそんな口の聞き方をしちゃいけませんよ」
「イー。ごめん」
しかしまあ、良いさ。
なぜなら、きちんとそれに注意する真面目さと俺に対する尊敬。そしてきちんと謝る素直さと俺に対する尊敬が見てとれたからだ。
「のろまのくせに人に注意して」
「……、何か言った? アリス」
あれ、なんか始まったな。
「え、ワタシですか? いいえ何も」
「そうでしたか。では空耳ですね、まさか小賢しいだけのネズミにそんなこと言える度胸なんてないもんね」
「……。はははーそうですよー。耳の穴を掃除できないウシだから空耳が聞こえたんじゃない?」
なんか始まったな。
「あはははは」
「あはははは」
「え? 何? ちょっとあんたらどうしたのよ。怖いわよ」
1人流れについていけていないヴェルティス。
腹黒と計算高いのに囲まれている素直だけど素直になれないツンデレ。癒されるわー。
「む、ちょっとだから何見てんのよっ」
「……。ほうらクッキーをあげよう」
「ホントっ? あ、べ、別に欲しいわけじゃないんだからね? 王様から頂けるからとか、美味しそうだとか、全然そんなこと思ってないんだからね、勘違いしないでよね? で、でもしょうがないから貰ってあげるわ、感謝しなさいよ」
癒されるわー。
「はい、2人共。クッキー。別に一緒に食べたいわけじゃないからね。ただ……、そうっ、可哀相だったからよ。恵んであげるっ」
癒されるわー。
「ワタシいらなーい」
「私もいらなーい」
「えっ……。そ、そう、まあ、別にあたしだってあげたかったわけじゃないし、全然、全然……」
ああ、癒しのヴェルティスが凹んでしまった。
目に涙を貯めている。
「じゃあわたしが全部食べるー。全部ちょーだーいっ」
「ニ、ニル先輩」
どうにかして慰められないかを考えていると、そこへニルが突貫。
クッキー缶を奪い去る。
「おいしーっ、ありがとーヴェルー。良い子良い子」
そして逆さまにして全てを口の中へ。
早い、一瞬の技だった。
なんという……。これが俺の業か。
「な、なくなっちゃった。……別に食べたかったわけじゃないもん。序列6位のニル先輩に食べてもらって幸せだもん、本当だもん。全然、2人と一緒に食べたかったわけじゃないもん……」
目に貯める涙をさらに増やしたヴェルティス。
「……ヴェル……」
「……ヴェル……」
「ぐすっ、ぐすっ」
アリスとイーファスはその様子を見て、お互いに目を見合わせる。2人も負けず劣らず悲しそうな表情、しかしその表情を何か決意を固めたものへと変え、2人一緒に俺を見てきた。
「「王様っ」」
「はいっ」
「えっと、その……クッキーをくれないと、くれないと……。イー、どうしよう」
「え、アリスが自分で言ったのになんでっ。え、えっと、ええっとお」
……。
……。
「……そこまで言われては仕方ない。もう1つクッキーを生成しようじゃないか」
俺は生成リストを操作し先ほどよりも大きな、3人で食べられるクッキー缶を生成し、2人に手渡した。途端に2人の顔が華やぐ。
そしてトコトコとヴェルティスの前へ。
「ヴェルっ。……ヴェル、あのね? これ、一緒に食べよ?」
「さっきはごめんね? 一緒に食べよう?」
「あんたら……。うんっ、あ、で、でも別に一緒に食べたいわけじゃないんだからねっ。クッキーが美味しそうだから……、う、嘘っ、ホントは一緒に食べたかったのっ」
「知ってるよーだ」
「知ってる知ってるー」
「な、なによーっ」
癒されるわー。
だが、癒されてばかりではいられない。
俺にはやらねばならないことがあるのだ。そんな3人の子達の笑顔を守るため、ダンジョンマスターにはやらなければいけないことがある。
「ならわたしも食べ――」
「行かせるかーっ、うおおおおーっ」
ダンジョンマスタータックルが今ここに炸裂。
「クッキーありがとうございます王様っ」
「お礼はいいっ。早く行くんだーっ」
この子力すんごいから。タックルしたのに1mmも動かせてないから。
「クッキーありがとうございました王様っ」
「お礼はいいっ。早く逃げるんだーっ」
この子力すんごいから。捕まえてる両手がもうほどかれてるから。
「別に全然感謝なんてしてないんだからね、でも形式上は言っておくわ。あ、ありがとぅ、王様」
「逃げるんだあーっ」
この子力すんご――。
「あるじ様、邪魔したの? 今。わたしの食事、邪魔したの? 邪魔したんだ、へえ」
見られてるう。
「ここは俺に任せて、さあ早く逃げるんだーっ」
「王様、クッキーのP代ちゃんと返しますからね」
「分かった、分かってる。凄く分かった。もうお小遣いをあげるから早く行くんだーっ」
「ほ、本当ですか? 借りばかりが溜まっていってしまいますね。ありがとうございます」
「早く行ってくれえ。2000P、1人2000Pあげよう。だから早く逃げるんだーっ」
「王様。べ、別に見直したとかじゃないけど、ちょっとはやるじゃない」
「俺を早く逃がしてくれえーっ」
「邪魔、するんだあ。ガジガジガジーッ」
「ぐああああああーっ」
お読み頂きありがとうございます。
更新速度が徐々に低下してきております。ひとえに私のモチベーション不足です。頑張ります。
ちなみに、『宇宙人のおっさんと、少年の僕と、加速装置の夏物語』というタイトルで執筆していた作品が完結致しました。
ジャンルは「文芸ヒューマンドラマ」ですが、お暇な時にでも読んで頂けると嬉しいです。
そんなこんなでまた頑張ります。ありがとうございます。




