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第46話 ダンジョンマスターは空に吼える。

ダンジョンあるあるその9

100年続くダンジョンバトル。

後で攻めようとお互いに攻める気が無かったり、攻めていても膠着状態に陥ると、侵入者へと対応も忙しいので簡単に100年過ぎてしまうこと。

 さて、地上階層だけではなく、空中階層、いや天空階層も紹介しよう。


 地上最終階層のボスを倒せば、エレベーターはさらに上昇。

 白い水晶のような大地に開けられた穴を3000m以上も昇り、ダンジョン中心、天空の大地の中央に出る。


 そこはとても開けた空間。

 上には空が見え、南には花が咲き乱れる庭園が5km以上も広がり、心地よい風が吹く。

 反対に北を見れば、高さ3000mの城が聳え立っており威圧感凄まじいが、それも1kmちょっと先。首を上に向けたなら、地上で雨が降っている時でも美しい青空を見ることができる。

 エレベーターの上昇中は光の見えない窮屈な時間が続くため、その際の開放感はひとしおなはず。きっと辿り着き辺りを見回せば、震えるような快感に見舞われることだろう。


 城は上から見ると三日月型。

 庭園は、その穴の直径約6kmの部分全てで作られており、51階層から58階層と60階層の計9つの階層で構成される。

 1つ1つ違う特徴と特色を持つそれら階層は、全てが調和し庭園を見事に彩る。

 しかし侵入者にとって重要なのは、城の入り口を開けるための階層守護者がいる60階層と、ここが庭園と呼ばれる所以になった際立って美しい51階層だ。


 天空の大地に辿り着いたエレベーターは、足元の花壇と腰程度までの高さのブロックに囲まれており、踏まないように出るには真南しかなく、そこが51階層。

 小さな白い小石が敷き詰められた道、その脇には花壇、降り注ぐ陽気を満喫できそうなベンチ。そして先ほどまでエレベーターがあった場所には噴水。

 真ん中の起動するための装置だけを残し、触れても入っても、それは形ある本物の噴水。

 流れ出る水は、清廉な小川となり51階層を縦横無尽に彩る。


 半径730mの半円状のそんな51階層。ここを庭園と呼ばずしてなんと呼べば良いのか。


 しかし、そんな幸せを満喫できる場所見えても、ここはダンジョンだ。

 我が城に挑まんとする愚かな侵入者共よ、51階層の真の力を見てさらに震えるが良いっ。


 元エレベーターがあった大地中央の噴水の水、それと流れる澄み渡った小川の水は、触れるだけで生命力や魔力を回復させ、怪我を治癒する聖なる水。

 咲き乱れる花は色とりどりに整列し見る者の心を癒す。そして実際にその香りは体力と精神力を、病気を癒す聖なる花。

 安らかで優しい空気と陽光と風は、そこにいるだけで穢れた心と穢れた体を抱きしめるように浄化し、呪いの全てを解き放つ聖なる空気。


 そう、51階層の真の機能とは、回復。


 名だたるラスボスがその器の大きさを示すように。最終決戦に向けて侵入者の覚悟を深めるように。俺も回復ギミックを取り入れた。

 ダンジョンマスターとは、敵であり、ラスボスであり、倒される者である。

 それこそ美学。普段の悪行とは違う、誇り高い悪の美学だ。


 魔物も一切おらず罠も一切ないここ、たかだか半径700mの半円でしかない51階層は、まさに庭園であり、ここまで来たものへの褒美であり、楽園であり、天国である。


「……嘘です、今は噴水も花壇もありません。空気も暖かくて酸素がちゃんとあるだけなんです。Pが全く足りなかったんです、ごめんなさい、ごめんなさいっ」

『お、反省してきたな』


 エレベーターより南側の階層は51階層を中心に、自然の芸術を楽しむ階層。

 では北側はどうか。

 エレベーターより北側の階層は60階層のみ。そこは彫像など、人が創り出す芸術を楽しむ階層であり、城へと入る扉が設けられている入り口である。落下する俺は60階層に目をやった。


 三日月の最も凹んだ部分に、城へと入る扉がある。高さ210m、幅130mという、馬鹿げたと言うにも馬鹿らしい重厚な扉。

 60階層は、その両開きの扉の真ん中を基点とする、半円の形。分かり易く言うならそこの基点にコンパスの針を置き、エレベーター中心まである1180mの距離で庭園に描いた弧の内側が60階層。

 そこにはレンガ調の石で造られた幾何学模様の地面と柱、美しい彫像が立ち並んでいる。


 ここは庭園で唯一魔物が出現する階層。

 しかし、魔物の姿はどこにも見当たらない。ただただ感嘆のため息しか出ない空間だ。だから侵入者は思うだろう、51階層から59階層に魔物は出なかったのだから、ここにも出ないと。

 そして城内へ入るため、扉に手をかける。


 その瞬間、彫像が動きだす。彫像に扮した、いやそもそもが彫像であるガーゴイル。

 城へ入るために戦わなければならないボス。


「……ガーゴイルもいませんっ。彫像もありませんっ。全て私の不徳の致すところでありますっ」

『ええ全く』


 52階層は、エレベーターや51階層と中心を同じくする同心円。60階層と同じ大きさの半径1180mだが、51階層や60階層と被る部分も大きいため、そこを除いた部分が52階層。

 特徴は水路。5本の橋を除き全てが噴水から流れ出る水で埋められた清流の階層。


 53階層は、庭園の中心。6kmちょっと、正確には直径6180mの庭園の中心100mほどが53階層にあたる。

 特徴は入り口。

 エレベーターから1910m南下した位置には、一つの小さな転移陣ポツンと佇む。

 そここそが招かれた客人であったり、一度ここまで到達した侵入者が使えるショートカットコース。俺達が使う出入り口でもある。


「……水も、ショートカットの転移陣もありません。地上にもここにもっ。Pが全く足りませんでしたっ」

『……うむ』


 54階層は、51階層から58階層、60階層の9つの階層の中でも最も巨大で、最も南に位置する。そこには建造物がちょこちょこと。

 中でも代表的な建造物は3つ。


 ローズの武器庫。

『武器が1つもないのは私に作れと仰っておられるのですね? 主様のご期待、必ずや応えてみせます』


 キキョウの研究所。

『設備が何も無いただの箱を研究所とは言わんぞ』


 ニルの食料庫。

『食べ物が壁と屋根と床しかないよー』


 そんな54階層から北ヘ移っていくと、順に55階層、56階層、57階層、58階層と切り替わる。

 庭園はこんな風にできている。


 しかし忘れてはいけないのが59階層。庭園内にはないが、庭園をさらに美しく、開放感溢れる景観にしているのは紛れもなく59階層なのだから。

 もちろん、59階層は庭園から見える位置に存在し、繋がっている。

 60階層以降に59階層を作るだなんて、そんなことダンジョンマスターのプライドにかけて許されないからね。

 ではどこにあるのか。


 エレベーターで上がってきたなら、侵入者の誰もがとても開けた空間だと思ってしまう。庭園のベンチに座っていても、心を朗らかに過ごせるはずだ。

 だが例え庭園が直径6kmあっても、三日月型の城は南までガッツリ大地を覆っている。空いている隙間は南端200mのみで、それ以外は高さ1000mの巨大な城が経ち塞がる。


 とてもじゃないが、普通は圧迫感が先立つ。解放的な気分にはなれない。

 目線の高さに空は映らないなんて、地上に普通に立っているのと同じ。いや自然豊かなこの世界では地平線などいくらでも見えるからそれ以下だ。

 だが、現実としてこの庭園は誰もがとても開けた空間に感じ、圧倒的な開放感を得る。


 その理由が59階層。

 城の下部に存在する、高さ500mのアーチの下にある59階層だ。


 城の高さは3段階。1000m、2000m、3000m。その内1000mの部分は下半分500mを使ったアーチが連続して並び、2000mの部分も場所によってはそのサイズのアーチがある。

 それらは、庭園内に空の景色を映しだす。人の手による荘厳な建造物の中に決して映ることのないその景色は、誰もが言葉を失うものだろう

 ましてやそんなものがいくつもいくつも、そしてどこまでもあるのだ。


 だからエレベーターから出てきたなら、真北にある3000mの高さの城部分以外の方向全てに空が見え、圧倒的な開放感を得る。

 これを上回るには無人島で素っ裸にでもなるしかないくらいの開放感だ。

 空からじゃあこの素晴らしさは分からない。

 ただいま地面。


「ごめん、ごめんよみんな。これが凄く高かったんだ……。アーチなんて作らなきゃ装備も設備も食べ物も生成できたんです……」

「おおよしよし。泣くな泣くな」

「ユ、ユキ……」

「泣いてもPは戻ってこないからな」

「うぅぅ」


 城内は71階層から100階層。

 直径10kmの大地いっぱいに建つ高さ3kmの巨大な城は、幾層の階と幾層の階層に分かれている。端から端まで行こうと思えばとても大変だ。

 侵入者相手なら高階層ゆえの大変さを持たさなければならないため丁度良いが、俺達はここで暮らすのだから、とても不便だ。


 ゆえに求められたのが、俺達にとって便利にしながらも侵入者には便利にさせない、そんな技。ダンジョンマスターの腕の見せどころ。


 城内には転移陣をふんだんに使用している。

 廊下はいくつもあるが、廊下の端には転移陣が必ず設置されており、廊下と繋がっていない部屋も数多い。

 そして階段は1つもなく、1階から最上階へまでの3000mの上昇をたった一息で終わらせられる。同様に三日月の南端東から南端西までもが一瞬だ。


 これにより俺達にはとてつもなく便利な城となり、そして勝手が分からぬ侵入者達にとってはこれ以上ない程大変な城となった。

 このダンジョンのコアの波動が普通の強さだったなら到底辿りつけないだろう。

 残念ながら超が付くほど強いので、それを確かめる術はない。

 どうして……。


「それは自業自得じゃねーか?」

「俺だけのせいかな……」

「我々はご主人様の命に従うことこそが喜びです、つまりは」

「俺だけのせいか……」

「……オルテに毎日飴100、……オルテに毎日飴100」

「オルテに毎日飴100個か……」


 60階層の扉を開ければそこは71階層。

 60階層の半円のもう半分の大きさがある広い空間。

 真っ白、と評しても良い程に白い空間で床も壁も天井も全てが白い。距離感もなにもかもを崩してくるようなその半径1180mの空間には、3つの物以外何も存在していない。


 1つ目は城側へと開く入ってきた扉。

 2つ目は侵入者自身。

 そして3つ目が、転移陣。


 その空間の中央に存在している転移陣。

 ここに転移して俺達はこの城から出かけるわけだが、侵入者もまたここから転移し城の冒険を始める。

 だが、残念なことに60階層の守護者を倒しただけでは、この転移陣を使う資格を手に入れることはできない。

 あくまで60階層は扉を開けるだけ。資格を得るには、攻略しなければいけない階層がある。71階層よりも前に61階層から70階層を攻略させる、ダンジョンマスターとして当たり前のこと。


 と言うわけで、再び60階層へと戻り、エレベーターがあった噴水を見てみる。

 すると、腰程度の高さに積まれた、エレベーターや噴水に行けないようにしているそのブロックが、開閉できるようになっていることが分かる。

 多分めちゃくちゃ分かる。

 60階層の守護者を倒した時点でビックリするくらいに強くなる。扉に入り転移陣を確認する前に、こちらに目が向くかもしれない。


 ダンジョンコアの波動が強過ぎる俺にはもう、そんな遊び心も許されない。

 どうして……。


「ローズに装備をプレゼント。ローズに装備をプレゼント」

「ローズに装備をプレゼントか……」

「キキョウに設備を生成する。キキョウに設備を生成する」

「キキョウに設備を生成するか……」

「ニルにご飯ー。ニルにご飯ー」

「ニルにご飯か……」


「ユキにはそうだな。飯はもちろん、部屋の家具とかも揃えて、あと新しい刀もいるな。ああ、和室もくれ。それから刀の道場を作るからその建物も」

「ユキには……って、注文が多いなっ」

 どうしてこの子達はダンジョンマスターを洗脳しようとしてくるんだっ。怖いよっ。


 ブロックを開けたならば、そこには階段がある。地下、大地の結晶の中へと降りる階段が。

 次のステージは白の坑道、水晶迷宮。

 直径10km高さ最大3kmの巨大な大地に張り巡らされた地下道、61階層から70階層であるここを攻略しなければ、転移陣を使うことはできない。


 もちろん70階層にはボスがいる。

 美しい景観と天国のようだった環境の庭園から、これまた美しい景観の水晶迷宮へ乗り込んだ侵入者達。

 もしかしたら甘く考えている者もいるかもしれない。ボスだけが強く、コモン魔物は大したことがない、もしくは少ない、いない、と。だが安易に進むことなかれ、この水晶迷宮はまさに地獄だ。


 尋常ならざるほど濃い魔素。ここには魔素溜まりが至る所に設置され、魔境など鼻で笑えるほどの量の魔力が常に漂っている。

 だから、生まれ続けてしまう。ダンジョンにとっても忌むべき敵、本来は交配でしか誕生することのない、魔物達が。本能向き出しの殺すことしか知らぬ魔物達が。


 えーなんと言ったら良いか、我が家のLv上げゾーンになっております。なんかすみません。

 丁度良いので防衛に使おうと思ってます。なんかすみません。

 だからまあ、やっぱりダンジョンモンスターはいないです。なんかすみません。


 そんなこんなで70階層のボスを倒せば、ようやく城内の旅へ。

 本物の地獄の旅へ。


 71階層から93階層までボスはいないという謎なラストダンジョンだが、94階層から100階層には毎階層強力過ぎるボスが待ち受ける。


 94階層にはニル、95階層にはキキョウ、96階層にはローズ。

 97階層にオルテ、98階層にセラ。

 そして99階層、召喚勇者ユキ、100階層、上級風竜マキナ。


 たった1人で朝飯前にとダンジョンを破壊し、そして戯れにダンジョンマスターを洗脳しようとする7名が待ち受ける最強の布陣だっ。

 侵入者よ、早くここまで登って来いっ。

 暇だと何しでかすか分からないからっ。


「と、いうことでまあ、ダンジョンの紹介は終了です。みなさん今後ともよろしくお願い致します。一緒にダンジョンを盛り上げていきましょう」


 俺は深々と頭を下げる。謝罪と誠意を見せるために。


「えー、分かったよ。しゃーねーなー」

「本当ですね。仕方のないご主人様です」

「……良かろう」


 先ほどまで俺を高所から落とし恐怖を味わわせるだけ味わわせ、洗脳しようとした悪鬼羅刹な彼女達。しかしそう、ちゃんと謝ればなんだかんだ許してくれる。


「主様が気になさる必要はありませんよ」

「仕方ないのう」

「だねー」

「全く」


 それぞれの笑顔で、仕方ないなあと出来の悪い夫や父を見るような、優しい目で。

 ダンジョンマスターの格言にもあるじゃないか、愛せばそれが返ってくると。きっと俺の愛が伝わっているんだろう。

 嬉しいことさ。

「よーしじゃあみんな、これからこのダンジョンを盛り上げていくために、たくさん案を出してくれ。必要な物があるならダンジョンマスターは頑張っちゃうぞ」


「そっかそっか。なら今は四獣がリストにいないのが問題だからな、倒してきてやるよ。ダンジョンに引きずり込んで倒せば生成できるようになんだろ、そういう勲章あるし。居場所ももう分かるようになったからな」

 ……。マキナは果たして何を言っているのか。ダンジョン外に出て殺戮を宣言しているのか? 引き摺りこむとか最悪な行いだぞ。


「罠がないのは痛いので、私の方で作っておいてさしあげましょう。城内だけではなく地上階層にも。Lv150を下回る者は入りませんのでそれらが即死するようなもので」

 ……。セラは果たして何を言っているのか。ダンジョンとして認めちゃいけない階層に見合わない即死罠を仕掛け回るというのか? Lv150は61階層から70階層が適性だぞ。


「……ここの花壇の花。……植える、任せろ」

 ……。オルテは果たして何を言っているのか。かつての君のガーデニングがもたらした地獄を忘れたのか? 51階層は天国だぞ。


「武器防具……、炉が入りますね。王国の炉の性能はいかほどのものか、奪えるようなら奪ってしまいます、ご期待下さいっ」

 ……。ローズは果たして何を言っているのか。国を襲撃すると聞こえるんですが? 誰も入ってこない時に周囲へ魔物を派遣し呼び込むのはありだが襲撃して強奪は聞い――。


「実験器具は異世界のものじゃからのう。先立つものがいる、というわけで主殿。面倒じゃが稼いできてやろう、対価を払えとは言わん、いつものアレを言うだけで勘弁してやろう。安いもんじゃ」

 たこと、いやツッコミが追いつかねえよ。思考が読めるんならもうちょっと待て。……え?


「食べ物も必要だからねー。わたしも稼ぐし、P溜まるまではお外で食べてくるよー。あるじ様ー、言って言ってー」

「食べ物は重要だな。それからダンジョンなんだから宣伝もいるか、やっておいてやろう。全くサービス満点だなワタシ達は。だから、分かってるな? ダンジョンマスターは頑張っちゃうんだろ?」

 ……。


「P使ったのヒドイと思うけどよ、それを言ってくれたなら許してやるよ」

「ええ。Pがなくなっていた時は思わず涙が流れそうでしたが、全て水に流しましょう」

「……うむ」

「主様に忠誠を誓ったこの身ですが、今一度誓わせて下さい」

「Pがあるならば良かったんじゃが」

「Pがないなんてダンジョンとしてダメだよー。ねー?」

「だよなー」


 ……。

「ワクワク、早く言えよー」

「仰って下さい」

「言え」


 ……。

「是非お聞かせ下さい」

「ニルも嬉しかろう?」

「うん。わーい」


 ……。

「おい、早く」


 ……。

 ……。

 ……。


「み、みなのもの、Pを、Pを稼いできて下さい、ダンジョン外から……連れて……きてでも」


「うっしゃー四獣四獣。霊獣、土地神クラスー」

「行って参ります。他のダンジョンで罠の勉強もして参ります」

「飴、100」

「漲ってきましたよー、技術の粋を手に入れて見せましょう」

「仕方ないのう。広域で転移させて効率的にダンジョンへ運ぶかの」

「いっぱい食べるよーっ」

「さあて、1回王国に顔出しに行って来るかな。ついでにムカついてた奴らぶっ飛ばしてくる」


 彼女達は横一列に並び歩いて行く。楽しそうに、アレが欲しいコレが欲しい、ああしようこうしようと、まるで近所へ買い物に行くように。


 早く、早く来てくれ侵入者。

 そして、彼女達を止めてくれーっ。


「ていうかだから全員で行かないでーっ」


 もう俺の声は誰にも届かない。全員ダンジョンから出ちゃったから。

 しかしもう魔物の攻撃は俺に届く。ほにゃららしないと階層へ進めない機能が今は働いていないから。


「どうして……」


 しかし、しかしだ、俺がこれまで何度裏切られてきたと思う。

 それに策を講じないわけがないだろう。俺は頭脳に定評のある人間種族のダンジョンマスターだぞ。

 そう、この城さえあれば。この城さえあれば、俺が魔物に遭遇することなどありはしないのだ。


「扉が重すぎて開かない……、城に、入れない……」


 どうやらこの階層まで来れる者達のステータスでも重いと感じてしまう抵抗を持たせた城の扉を俺は開けられないようだ。

 しかし、しかしだ、俺がこれまで何度裏切られてきたと思う。

 こんな場合も予測済みさ。


「こんなときのために53階層に転移陣を生成しておいたんだ。外からでも城へ入れるようにね」

 ……。そういえばPが足りなくてケチってたのってどこだっけ……。53階層じゃないよな、53階層はしっかり生成したよな。俺は頭脳重視の人間種族のダンジョンマスターだぞ?


 ……。

「なんてこったい」

久しぶりの更新となりました。

にも関わらず呼んで下さる方々、本当にありがとうございます。


これからも頑張ります。

季節の変わり目で体調を崩される方もおられるかと思います。御自愛下さい。

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