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第43話 ダンジョンマスターの血と涙で食う飯で腹が膨れるのかっ、そうかおかわりか、分かった。

ダンジョンあるあるその6

浅い階層に凝り過ぎ、深い階層の案を見失う。

降って湧いたようなアイデアを序盤で使ってしまうと、それを越えなければいけない斬新さと効果が求められる高階層を全く思い付かないこと。

 俺を含め全てのダンジョンマスターは、この世界に存在する全ての物を生成できる。

 知っている必要こそあるものの、その全てを。


 そして、この世界に今は存在しない物でも過去に存在したならば、現状で作りだせるならば、俺達はそれを生成してみせる。


 しかしそれにはPが必要だ。

 生成しようとする物と同価値分のPを消費しなければ、俺達は何一つ生成できやしない。


 その同価値分のPとはどれだけになるのか、どう比べるのか。いや変換効率と言った方が分かりやすい、それが俺の現状に深く関わってくる。


 この世界の知識によるP変換は、1P銅貨1枚、10P銀貨1枚、100P金貨1枚、1000P白金貨1枚。

 同価値とは、それぞれの貨幣で購入できるものが生成可能、ということ。


 貨幣の価値は、貨幣を扱う種族にとって分かり易いように、神によって目安が定められている。


 銅貨1枚は、貧乏な生活を1日送るために必要な金額。


 2食分の粗末な食事と、質素な宿屋1泊分を購入するために必要な金額。

 いつの物か分からないパンや、何が入っているのか分かったもんじゃないスープ。雑魚寝なら壁や屋根は付いているが、個室であればただの布の仕切りが壁と屋根。

 それらを手に入れたなら余らない、それが銅貨1枚。


 銀貨1枚は、普通の生活を1日送るために必要な金額。


 3食分の普通の食事と、普通の家のローンか家賃の1日分。

 生活必需品も少しは取り揃えられ、節約すれば家族3人程度なら暮らしていくこともできなくはない。

 それが銀貨1枚。


 そして金貨1枚は、お金持ちの生活を1日送るために必要な金額。

 白金貨1枚は、王侯貴族の生活を1日送るために必要な金額。


 ダンジョンマスターからしてみても、Pが10倍になるごとにそういった生活の層も上がると分かるので、とても分かり易い目安だ。


 日本円換算で貨幣の価値を考えるんなら、普通の生活を送るために必要な銀貨1枚が、1万円かな? 年収365万円と考えればそんなものだろう。

 まあ普通の生活と言っても幅は広いから、もしかすると5000円だったり、2万円だったりするかもしれない。

 ユキ曰く食事がマズくてたまらないそうなので、聞いたらもっと安いだろ、と言ってくるだろうが、生活と物価を考えるとその辺りで妥当。


 さすがに銀貨1枚1000円や2000円にはならない。

 もしなったとしたら、銅貨1枚で暮らす人達が可哀相過ぎる。

 銀貨1枚が1万円でも、銅貨1枚は100円の価値しかないのだから。


 そう、硬貨の貨幣価値は、10枚で変わるのではなく100枚で変わる。


 銅貨が100枚合わさって、ようやく銀貨1枚。

 同じように銀貨が100枚合わさって、ようやく金貨1枚。そして金貨が100枚合わさって、ようやく白金貨1枚。


 だからこの世界の知識によるP変換は、1P銅貨1枚、10P銀貨1枚、100P金貨1枚、1000P白金貨1枚。

 そして、1万P白金貨100枚。


 全て銅貨換算にすると、1P1枚、10P100枚、100P1万枚、1000P100万枚。

 1万P1億枚、となる。


 変換効率とはそういう話。

 Pを多く使えば使う程、より効率的な生成が可能となり、ダンジョンマスターにとって大きな助けとなる。


 ちびちびちびちびと、色々な物を生成したりするダンジョンマスターはとてもじゃないが強くなれない。

 確かに運用していれば足りない物も見えてくるだろう、上手く活用できていない箇所があれば直したいだろう。

 侵入者が深くまで来れば少しでも魔物を追加したいだろう、侵入者が少なければアイテムを置いて誘惑したいだろう。


 だがそこをグッと我慢しPを貯め、一気に使用することで、修正や改善ではない、成長でもない、進化と言える飛躍を俺達ダンジョンマスターは果たし強くなるのだ。


 勲章だって授かれるからね。

 1万P以上貯めたなら魔物生成時P消費を軽減してくれる、節約上手。

 5万P以上貯めたならそれに加えP取得量を増加してくれる、貯金好き。

 10万P以上貯めたなら各生成物生成時にP使用制限を2倍にしてくれる、ドケチ。


 そして、各生成物生成時P使用制限解放、という効果を持つ、P依存者。

 ダンジョンの規模に比べ1000倍以上のPを貯めたダンジョンマスターに早く使えとの意味を込めて授けられる勲章である、P依存者。


 なんで知っているのかって?

 俺が知りたい。悪口ばかりなダンジョンマスター生はあの時から始まったんだもの。


 話を戻そう。

 そんなわけで、この世界の知識による変換は、Pを大量に消費する生成ほど効率的。

 だからみんな階層の内容を完璧に作り上げてから追加するんですよ。俺のようにただただ広くしようと階層を広げる馬鹿はいない。


 だから料理を食べさせ酒を飲ませる馬鹿もいない。


 料理や酒は基本的に安く、しかし毎日必要なもの。

 少Pをちょこちょこ、だなんてダンジョンにとって最も効率の悪い生成方法だ。そりゃあどのダンジョンマスターもしないよ。


 だが、俺ならできる。

 異世界の知識がある俺なら。


 異世界の知識による生成は、1P1万円、10P10万円、100P100万円、1000P1000万円。

 完全な等倍。


 だが、この世界の知識による生成を円に換算すると、1P100円、10P1万円、100P100万円、1000P1億円となるのだから、100P以下の生成に限っては随分効率的。

 特に1Pの生成では100倍の差がある。


 つまり異世界の知識は、少ないPでの生成において優れており、こうやって料理を生成しても、懐に大きく響かない。というわけだ。


 もし1P100円換算で料理を出してたら、恐ろしいことになるところだったよ。

 100倍も消費しちゃうってことだろ?


 100万Pも消費しちゃうところだったよ。あっはっはっは。

 全然足りないから破産じゃーん。あっはっはっは。


 ……。

 ……。

 ダンジョンバトル後、俺の手元には44万Pあった。お弁当で残ってた1Pもなくなったのでピッタリ44万Pだ。

 そして今は、43万P。あ、42万9000Pだった。あ、42万8000Pだった。あ、……。


 ……。

 ……。

 異世界の知識による生成は、1P1万円、10P10万円、100P100万円、1000P1000万円。

 そして1万P1億円。


 ……。

 ……。

「あわわわわわわ」


 食い過ぎだよ。飲み過ぎだよ。

 皿の塔なんて洒落たこと言っている場合じゃないよ。全然洒落てないけどさっ。


 しかしそう、それだけ飲み食いするならこの世界の知識での生成を行った方が安く生成できる。100P以上ならこっちの方が効率的なんだ。

 1億円分でも1000Pで生成可能。本来であれば1万Pなんて使わずに1000Pで収まった。


 だが。

 ……そこには越えられない壁がある。


 それは、美味しさ。


 俺を含め全てのダンジョンマスターは、この世界に存在する全ての物を生成できる。

 知っている必要こそあるものの、その全てを。

 そして、この世界に今は存在しない物でも過去に存在したならば、現状で作りだせるならば、俺達はそれを生成してみせる。


 しかし無い物は無理。

 神の使徒。世界に対し全てのわがままを許され、全てを叶える権利を手に入れた召喚勇者すら届かなかったんだからそれは無理だよ。


 我が同胞たるダンジョンマスター達の血と汗と涙の結晶、命の対価は、どんどんどんどん変換されていく。

 彼女達の笑顔のために。

 そう、これは変換効率の話。


 彼女達の笑顔を作るためなら、その程度のP安いよって話。


「……。そんなわけあるかーいっ」


「マスター、飲んでるかー、あー、あー、飲んでるかーっ」


 天井がないからかは分からないが上を見上げれば見える煌く綺麗な夜空に向け、そんなツッコミを入れていると、マキナが俺の頭をガッシリ掴む。

 そしてシェイク。

 あまりにも速過ぎて俺の認知機能を越えた視界は、まるでヘリコプターの羽のようなスローモーションで映し出される。へーこんな風になるんだー。


「マキナさん酔っ払ってんな」

「アタシは竜だぞー? 酔うはずないらろー」

 いやベロンベロンじゃねえか。

 竜でも酔う時は酔うらしい。そりゃあまあビール何樽も飲んで度数96%の酒も樽で飲んでたんだから当然と言えば当然か。

 これで酔わなかったらもうどうしたら止まるのか分からないところだったから、酔ってくれて良かった。


「酔ってない酔ってない酔ってないー、アタシは酔ってないー」

「分かった分かった。酔ってないよマキナは酔ってないよ」

 酔っ払いに酔ってるのかと聞けば、その7割は酔ってないよと言うだろうが、ここまで完全に酔っているのに否定するやつはいないだろう。


「ういーっ」

「う、ういー……」

 盛り上がっている。


「ご主人様、正座して下さい」

 シェイクが収まり、マキナがまた飲み始めた頃、突如として反省を要求される。


「え? なぜ?」

「良いから正座して下さいっ」

 俺は椅子に座るセラの前でなぜだか正座。Pを使いすぎたことを怒られるのだろうか、いや今の俺の状況は被害者なんじゃないだろうか。

 本当の被害者は散っていったダンジョンマスターせんぱい達だろうが。


「んー? 分身ですか? 小賢しいですね」

「……セラも酔ってるんかい」

 よく見れば赤い顔で、左右にフラフラと揺れていた。ベロンベロンじゃねえか。

 几帳面な性格のセラは飲んだ空き瓶を酔っていても綺麗に並べるのだが、それがズラリ。そりゃ酔うわ。

 にしても高いやつがこうまで並ぶと壮観だな、酔ってくれて良かった。


「なんで立つんですかご主人様ー、説教中ですよー」

「はいはい、っとおっと」

 俺が立ち上がったことで、椅子に座っていたセラもまた立ち上がる。だがセラはフラフラ、俺の方へ倒れてきた。

 それを抱き止めナイスキャッチ。


「セクハラです」

「すみません」

 判定が厳しい……。


「オー、見ろ」

 抱き止めたまま椅子に座らせ手を離すと、ツーンとした態度で目を合わせなくなったセラの代わりに、後ろからそう短く声をかけられる。


「ん?」

「バランスっ」

 オルテがツンツンしてきた指でそのまま示した方向を見ると、お酒の瓶が5個ほど縦に積まれていた。


「バランスっ」

「バランスだねえー」

 間違いなくベロンベロンです。

 甘い物大好き左党、極左のくせに、こういう場ではお酒もガンガン飲むオルテさん。ブランデーの高いやつとかたっかいやつとかを嗜む以上に飲み干してくる。

 酔ってくれて良かった。


「……飴」

「飴だよー。飴は食べるんですね」

 俺はいつも通りに飴を生成しオルテに渡す。

 オルテはとても嬉しそうにして――。


「……千里眼っ。……ぺっけぺけ」

「ぺ、ぺっけ……?」

 駄目だ酔っ払いが過ぎる。


「主様主様、空を見て下さい」

 うろたえているとそんな助け舟がやってきた。俺はオルテの奇行発表会から抜け出すことにやっと成功する。


「なんだいローズ」

「つ、つ……」

 ローズは夜空を指差している。俺もローズの隣に立ってその指が指し示す方向に顔を向けた。

 角度的に誰かが魔法で出した光源が思い切り目に入るので、めちゃくちゃ眩しい。


「月が、綺麗と思いませんか?」

「……月は後ろだ」

 やっぱりベロンベロン。

 東西が逆っ。ローズも焼酎ガブガブ飲んでたもんなあ。麦と芋どっちが美味いか1人でずっと飲み比べてた。

 産地を当てられるようになるには、一体どれくらい飲む必要があったんだろうか、酔ってくれて良かったよ。


「思いませんかっ?」

「お、思います。今日の月は綺麗だなあ」

 反対方向にある月を見ようと振り向いたらグイっと元に戻され、眩しい光源を綺麗と言うように圧をかけられた俺は、そう答えた。

 するとローズは顔を赤らめる。


「きゃーーーっ、主様の大胆ーっ、エッチーっ」

「ぐべっ」

 そしてぶたれる俺。走り去るローズ。……。


「みな酔い潰れておるのう」

 と、そんなカオスな空間の中、1人冷静な感想が俺の耳に届く。


「まともなやつがいたようだ。キキョウは酔ってないんだな」

「誰じゃと思っておる。酔っておらんに決まっておりょーりゃ」

 ベロンベロンだったよ。

 酔ってることを認めない2号だったよ。手に持っているウイスキーに口をつけるが何も出て来ないことに気付くも、次の瞬間にはまた口をつけているキキョウ。

 どんだけ飲みたいんだ、酔ってくれて良かったよ。


「狐は酒好きなんじゃー。お供えろー」

「お供えろて、そうなのか?」

 ソファーが欲しいと言われて生成した8人でも掛けられるL字型の大きなソファーを1人で専有し、足をバタバタとばたつかせる。


「知らんっ、わっちに聞くなっ。狐ではないぞ無礼者、まっちゃく、困っちゃもんりょりょー」

「ええー……」

 どこかに、どこかにまともなやつはいないのか……。


「もう食べられないよう」

 と、その時。聞いたことのなかった言葉が俺の耳に届いた。


「これはまともなのか……、おいニル? 酔っているのか? 酔っていないのか?」

「あるじ様。ごめんねあるじ様ー、もうあるじ様は入らないよー」

 ……、どっちだっ。普段からまともじゃないから分からないよ。あとあるじ様は元々入れるものじゃないよ。


「良い気持ちー、これが満腹。でももう食べられない悲しい気持ち、これが満腹」

「ニル、7×7は?」

 お腹を大きくして横になって、それでもまだナイフとフォークを手放さないニルに、俺はそう問いかける。


「ん? 49ー」

 ダメだ、ベロンベロンだっ。


「魔王ー、魔王ー、魔王ってばー」

 そして、俺は間違いなく酔っているやつに絡まれる。


「はい、なんでしょう」

「魔王はどうして魔王なのー?」

 すげえめんどくせえ。


「魔王は魔王は、どうして魔王なのー?」

「あー、なんでですかねー。僕も聞きたいくらいです」

「それはねー、実はー」

 ん? なんか知ってるのか?

 そういえば神様からの加護か何かがあるから、そういうことに詳しいのかもしれない。


「実はー、なんとー、――ぅう」

「――ユキさん?」


「ふぅー。魔王はどうして魔王なのー?」

 良かった、落ち着いたようだ。

「魔王はど――ぅ、ぅう」

「――ユキさんっ」


「ふぅー。魔お――ぅうヴ」

「落ち着け、落ち着くんだっ」

「……ふぅー」

「ふぅー」


 もうこいつら全員ベロンベロンだよもう。


「はい、お開き、お開きですよー。皆さん宴会はもう終わりです、お休みの時間ですよー」

 俺は100Pほどを新たに消費し、特大サイズの布団を生成する。

 100P……、お財布にも心にも痛い出費のはずなのに、とてもお安く見えてしまう不思議。


「えー、まだ飲むろー」

「ダメです。もう決定しました」

「しゃーねーなー。じゃあ寝るか。……あれ、枕、枕がないっ」


「いつも使ってる枕か? それはお前がブレスで破壊しただろ?」

「あれがないと寝れらい……。んーしゃーねえ、枕代理、代理、来い来い」


「……俺?」


「細っこい腕だなあ。こんなんじゃ力出ないぞー。んにゃ」

 右腕を掴まれ、強引に布団へ引きずり込まれる。

「おやすみー。……すぅすぅ」

 そしてマキナは俺の右腕を自分の枕にして眠る。寝つくの早っ。


「セクハラですね」

「無実です裁判長」

 というか腕全然引っこ抜けねえ、こいつどんな力で抑えてやがるっ、というか動かないってことは反乱してるじゃんっ。


「早く左腕。セクハラで訴えますよ?」

 セラさんはそう言って俺の左腕を掴み、無理矢理布団の上に置いて、そこを枕に眠った。

 すでに両腕を抑えられた俺、身動き一つできない。


「ぐふっ」

 そこに腹への強烈な一撃。

「オ、オルテ……」


「軽い」

「いや軽いとかじゃなく――」

「軽い」

「軽い……」


「うむ」

 腹の上に乗ったオルテはそのままそこで眠る。


「くそうコイツ、どけっ、どけーっ」

 ローズはセラをどかそうと引っ張る。しかしセラの指は俺にガッシリと食い込んでおり離れない。


「やめるんだローズ。セラは今反乱中だ、引っ張ると何かが剥がれるぞっ、主様の何かが剥がれてしまうぞっ」

「でしゅが、主様の隣をまたコイツが……。仕方ありません、ここで、はっ、主様の手ではありませんかっ」

 俺の左手首辺りに顔を乗せたローズ。そして両手でガッシリ俺の手を握る。


「主殿、わっちも眠る。撫でる許可をやろう、たんと撫でるが良い」

 キキョウは逆の右手首に頭を置いて眠る。

 いやどうやって撫でろと、手首を抑えられてしまっては手を必死に曲げてに頭に指先しか届かない。


「届かないんですけどー」

「不器用じゃのう、仕方あるまい」

 キキョウはそう言うとローズと同じように手を握って眠りに付く。


 なんなんだろう、人間枕。

 いや慕われているのは嬉しいんだけど、慕われているのは嬉しいんだけど……。


「おやすみあるじ様ー」

「あれ、ニル? どこだ?」

「足ー」

 なんか重みを感じると思ったら。

 マキナとセラは2人共俺の足首辺りに足を絡ませているし、オルテも腹に寝ているからかなり狭いはずだが……器用に入ったなあ。


「というかそこで良いのか?」

「ぐぅ」

 寝ている……。


 俺は体を動かそうと試みる。

 しかし指を絡められているから指1本。足を抑えられているから足1本動かせない。足の指だけは動かせるが、動かしすぎると食べ物に間違えられ足元で眠る子に食われそうで怖い。


 通常ダンジョンマスターの動きは阻害できない、つまりこの子達は今反乱している。

 ……。寝相悪くて腕バーンとかやっちゃったら俺死ぬんじゃないの?

 嫌だぜそんな死に方。もっとダンジョンマスターらしく華々しい死に方をさせてくれよ。同胞をあんな葬り方した罰かい?


 だとしたらなぜ、君達は毎度罰を与える側にいるんだっ。


「あー、私のベットがないっ」

「いやここお前のベット元々ない。まだ来てから1回も寝てないからね」

「寝るだなんてお前、いやらしい」

「この状態でそう言われると心にくるから止めてくれ」


「ベットーっベットーっ」

 俺のそんな否定を無視して駄駄をこねるユキ。酒を飲むとみんなキャラが崩壊している。


「生成する、するから」

「いや、新入りだから我慢する。よいしょっと」


「え?」

 ユキはそう言って俺に近づき、オルテが頭を置く肩の逆側、マキナ側の肩に頭を置いた。

 顔が近い。


「おい、頭上げろ、上げろー」

「はいはい」

 頭を上げると、ユキは俺の頭の下に腕を入れる。


「うむ、寝ろ。おやすみー」

 どういった経緯で満足したのか分からないが、とりあえず満足なようだ。

「……おやすみー」


 ……。

 ……。

 まあ良いんだ。全然。幸せだ。

 みんな可愛いし美人だし、柔らかいし。好かれていて悪い気はしない。ダンジョンマスター冥利にも尽きる。


 けれど、けれど一つだけ言いたいことがある。


 反乱していればダメージ、というか痛み、それから熱さや冷たさ、そんなものをダンジョンマスターに与えることができる。

 しかしそれでもダンジョンマスターに状態異常は効かない。

 

 毒が与える効果自体は食らってしまうが、毒によりもたらされる発熱だとか朦朧だとかそういうのは食らわない、ということだ。

 熱さは与えられても皮膚が爛れる火傷はしない。

 冷たさは与えられても凍傷になって壊死したりはしない。

 お酒を飲んでもその喉ごしを感じるだけで酔ったりはしない。


 常に最善の状態が保たれる。同じ状態が保たれる。


 だから、慣れないんだ。

 普通とは違う、普通は何らかの状態が続けばそれに慣れるんだよ。


 ダンジョンマスターなら、反乱され注がれた熱いお風呂に入ればずっと熱い。

 反乱され作られた氷に触れていればずっと冷たい。

 お酒の臭いにだってずっと慣れない。


 彼女達からはいつも良い香りがする。身嗜みは気をつけているらしい、俺にはずっとそんな良い香りが届く。

 しかし、今は――。


「お前ら酒くっさっ」


 お酒の臭いがえげつない。

 反乱していなければ、その臭いがしているということが分かるだけで、不快にはならない程度に収まるのだが、絶賛反乱中。

 一切慣れることのできない強烈な臭いが、これでもかと漂ってくる。


「マジで。マジで。特に……マキナか? お前口からアルコールの臭いしかしねえよっ」


 逃げられない。

 逃げたいのに動けない。

 足指すらもう動かせない。動かさなかったのにっ。


「……、クンクン、くっさっ」


 もう涙が出てくるよ。

 今日も今日とて明日――。


「――いやくさっ、ほんとにくさっ」

「「「「「「「うるさいっ」」」」」」」


「……す、すみません」

 ローズお前まで……。


 ああ、今日も今日とて明日が見えない。

第3章、ダンジョンバトル編完結となります。

ダンジョンマスターの悪逆非道っぷりをお楽しみ頂けているでしょうか。


質問感想、送って頂いた方ありがとうございました。

またブックマークや評価を下さった方もありがとうございました。

新しいものがあったり、増えていたりするのを見ると、やる気がたくさん湧いてきます。とても嬉しいです。


良いものであろうと悪いものであろうと、これからもそれらを励みに頑張らせていただきます。


よろしくお願い致します。


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