第22話 26階層の守護者、ローズ。
悪逆非道のダンジョンマスター格言その4
鞭を与えるだけなら誰でもできる、飴を与えるだけなら誰でもできる。ダンジョンマスターしかできないことを考えれば、自ずと道は開ける。飴を……。
月と星が照らす夜。
おやすみの時間。
魔物と戦うことを生業にしている者や、貴重な植物等を採取することを生業にしている者など、人以外の生息域で活動する者にとって、夜営は、切っても切り離せない事情である。
人は1日の内、数時間眠りにつかなければ満足に活動できない。
屍のように歩くことしか求められていないのであれば、眠らずの活動でも問題ないのだろうが、1つの間違いで死に至る、人の領域外での活動では、常に最善の対応と行動が求められる。
屍のような者など、どう表現してみても餌にしかならない。運が良くないなら死ぬだけだ。
その一団の人数が、1名でも6名でも5000名でも同じ。一団の中で一人一人が果たさなければならない義務や責任が必ずある。
睡眠は、それらを果たし餌とならないために、必ず必要なこと。
基本的に人は、夜に睡眠を取る。
しかし、夜は1日の中で最も気を抜くことができない時間帯である。
なぜなら、夜は暗いから。
当たり前だろ、と思うが、それは俺が人間種族だから。
魔物の中には、夜を主に活動する種族も多い。
朝や昼よりか活動している魔物は少ないものの、しかし、目を瞑れば、至るところにその気配と息吹を感じることができるだろう。
夜営は、そんな魔物達から、無防備に休養を取る味方を守らなければならない、過酷な任務である。
眠っている味方は咄嗟に反応できないのだから、攻撃を受ければ即死も十分にありうる。
とは言え、夜営はそう難しいものではない。
実際、夜営中に襲われることこそ少なくないものの、そう頻繁にあるわけではない。
人も魔物とは、あまり戦いたくない、と、そう思っているかもしれないが、魔物だってとりたてて、人と戦いたいわけではないのだ。
好戦的な魔物も、人が大の好物な魔物も、確かにそれなりの数いるが、夜営をそんな魔物の住処の近くで張るだなんて馬鹿をしない限り、かち合うことはまずないと言って良い。
だから、夜営はそれなりに簡単なのである。
戦力的な面から言っても、やはり同様。
夜営の見張り、または休憩は、パーティー内で、交代交代に行う。
6名パーティーであれば4名が眠り、2名が起きる。数時間経てば起きていた2名は眠り、眠っていた4名の内2名が起きる。
今回のような5000名であれば、人数は決まっていないことが多いが、6名パーティーのような割合よりもずっと低く、200名から300名ほどであることが多い。
それだけで十分だ。
強力な魔物というのは、自身のテリトリーを有している。
そのテリトリーを侵さなければ襲いかかってくることも少なく、そこがテリトリーなのかどうかは、それなりに経験を積んだ者からすれば、一見して分かるもの。
入って来るなよ、と示している内側がテリトリーなのだから当然。
人側が、わざわざ夜に移動し、暗さでそれを見逃したなら、対敵もあり得るが、普通、人は暗い中で移動をしない。
さらに言えば、朝や昼などの明るい時間にそれを発見していれば、暗くなる前にテリトリーから出るなどの工夫も行う。
またテリトリーに関しては、ダンジョンだとさらに顕著になる。
コモン魔物は、ほぼ必ずマスプロモンスターであり、その種族の習性に応じた行動しかせず、ボス魔物であるなら自身の場所から決して出られないからだ。
例え徘徊型のボス魔物だとしても、コスト的に入れないエリアがあったり、入ってくるにしても方向が限定されていたりと、警戒は非常に楽。
また、階層に多数配置されるコモン魔物の中にいる、生成Pが高く一際強い魔物についても同様。
見かけたなら、現在Lvでは逃げるを優先するような魔物だが、コストの関係上立ち入れないエリアも多く、そもそも探さなければ滅多に出会うこともないので、夜営中に出会うことは、ほぼあり得ない。
そのため、夜営と言うのは、フィールドでもダンジョンでも、大して強くもない魔物が、火の光や食事の匂いに釣られて、ひょっこり顔を出してしまったりする程度。
5000名の大規模な軍隊のように、カバーする範囲が広くなったとしても、200名から300名が周囲にいれば何の問題も無い。
通常人数の6名パーティーのように、カバーする範囲が狭いのなら1名でも十分だ。
2名にしている理由は、魔物ではなく、自らの眠気と戦うためや、同種である人、つまり夜盗に狙われた場合に備えているからである。
夜営は確かに、切っても切り離せない重要なもので、1度でも失敗すれば、また失敗するのではないかと不安にかられ、不眠に陥らせてしまう繊細なものだが、難易度はそう高くない。
魔物を探したり、貴重な植物等を探したりなどで移動する、朝や昼の方が危険度は高いと言えるだろう。
とは言え、だからと言って油断することは、決してない。
それなりに戦った経験がある者達の中で、夜に彷徨う魔物に対して油断している者など、どこにもいない。
なぜなら、人間も亜人も、特に夜という暗闇では、魔物に比べて無力だからだ。
暗いから休む。
暗いから進まない。
それは人の理屈。
人間は、その筋力も体躯も並である、ただひたすらに並である。そして五感も並、いや鈍いとすら言えるかもしれない。
目は暗闇で、何の役にも立たない。
耳は静寂の中ですら、蠢く音を識別できない。
鼻はいくら使おうとも、嗅ぎ分けなど不可能。
亜人は、種族によって大きく能力を変える。種族によっては、筋力が優れていたり体躯に優れていたり、他のことに優れていたりする。そして五感においても、優れた機能を持つ種族はいる。
目は暗闇でも、何かを捉えられる。
耳は喧騒の中ですら、誰かの音と識別できる。
鼻はふとした瞬間でも、嗅ぎ分けを行える。
なぜなら、彼等は人間と同じ体に加えて、魔物の特徴を持つからだ。
目が極端に良い鷹人種は、タカ系等の魔物の目と、似た様な性質の目を持っている。
耳が極端に良い兎人種は、ウサギ系等の魔物の耳と、似た様な性質の目を持っている。
鼻が極端に良い犬人種は、イヌ系等の魔物の鼻と、似た様な性質の鼻を持っている。
だから彼等は、例え暗闇の中だとしても、朝や昼などの明るい時間帯と、そう変わらない活動を可能とする。
目なら見える、耳なら目が見えずとも聞こえる、鼻なら目が見えずとも嗅げる、というように。
しかし、だからこそ夜は魔物の世界なのだ。
亜人の彼等が持つ目も耳も鼻も、魔物達に似た様な性質を持っているに過ぎない、ただの劣化型に過ぎない。
魔物達は亜人以上の目を持ち、耳を持ち、鼻を持ち、毎日毎日暮らしている。毎日毎日生き延びている。
それを存分に使いこなし、夜など意に介さず、襲いかかってくる。必ず命がけで。
魔物に比べ、人はあまりに弱い。
如実に分かってしまうからこそ、夜営では誰も気を抜かない。戦闘こそ少ないとは言え、圧倒的不利な状況を生き抜くべく、できうる限りの最大限の努力をして、彼等はここまで生きてきた。
気を抜かず、わずかな異変も見逃さず、出てきた魔物に対処する。
起きている人数で対処しきれないのなら、即座に全員を起こし対処する。
対策は万全。
何重にも施した策で、ダンジョンにいる部隊は、その身を守っていた。
それが、ただの思い上がりだと、誰が思えるだろうか。
完璧にも思えるほどの対策を施し、夜をまたごうとする侵入者達。
その努力が、経験が。魔物からすれば、舐めたものだと一笑に付される、そんな程度のことでしかないと、誰が思えたのだろうか。
決して届かない生物としての能力の差を、今日、彼等は、その心臓に刻む。
ウオオオオオオーン。
どこかで咆哮があがる。夜の静寂に、その声はよく響いた。
そう、奇襲にとって最も不必要な開幕のオオカミ煙が、今、上がった。
「何ごとだ――っ」
テントから響くそんな声をかき消すように、ガルルルッと、オオカミが唸り、警戒を一気に高めた軍勢へ、オオカミ達が雪崩れ込む。
400名の集団の内、夜営に起きていた15名は、遠吠えを聞いた瞬間に武装を森へ向け、しかしアッサリとオオカミに蹂躙された。
篝火に照らされた黒いオオカミ。
オオカミからは、彼等の位置が丸分かりだった、臭いを嗅げば良いだけなのだから当然。
彼等からは、オオカミの位置が分からなかった、篝火は自分達の近くしか照らせないのだから当然。
オオカミの数は30体ほど。
そのオオカミ達は、夜番に起きている者を襲い、その脇をすり抜け、眠っている者達にも襲いかかる。
地面に布を敷いて眠っていた者に、テントに入って休んでいた者に。
「な、なん――ぎゃあああー」
「あああー腕がー」
「助け、助けてーっ」
遠吠えの次には、そんな叫び声が続く。
だがむろん、それは長く続かない。
1匹のオオカミが、ギャイイーン、とそんな情けない声をあげながら、テントから、まるで何かに吹き飛ばされたかのように追いだされ、その場で息絶える。
「武器を取れーっ、密集隊形だーっ」
確かに、人は魔物に、生物として劣るのだろう。
それが、人の活動し易い環境と異なれば異なるほど、生物としての差は開き続けるに違いない。
しかし、それでも彼等は生きてきた。
この星で繁栄してきた。自らを上回る強大な魔物を倒し強くなってきた。幾度も幾度も。Lvを上げるとはそういうことだ。
そう、この場に何名もいる高Lvの者達は、か弱きその身で、自分より優れた生物である魔物を、幾度も幾度も打ち倒してきた、まさに天敵とも言えるような存在であった。
市民からなる義勇兵や、参加の褒賞金目当てで派遣された奴隷兵などは、夜の暗闇、見えない敵の姿と聞こえる遠吠えに、軽いパニックを起こしていたが、騎士達は素早く戦場を把握し立ち回る。
襲いかかるオオカミ達を軽く蹴散らし、味方を一箇所にまとめ、弱い場所や遊撃には、騎士達高Lvの猛者が入り、どこからオオカミがやってきても対応できるよう構えさせた。
最早、オオカミ達がどうやっても敵わない強さを、最初の遠吠えからわずか数十秒で発揮してみせたのだ。
それは、彼等の今までの努力が成させたことであり、今までの経験が成させたことでもある。
今ここで、それらが実を結んだのだ。
だから、それらの努力が、ただの思い上がりだったと思うのは、これからの話。
「良く練られた陣形ですね、しかし」
篝火に照らされる戦場で、男達の号令や気合の声の中、静かに凛と響き渡ったそんな声。すると突如としてオオカミ達は動きを変える。
さきほどまでの、目の前にいる敵にただ襲いかかるだけという野生的な動きから、まるで度重なる訓練を受けたかのような戦士の動きへ。
陣形を作らせた者は、猛者である。
より効果的な陣形をと思い、野生的なオオカミに対して強い陣形を構築した。しかし今度は、その陣形の弱点を突くような動きを敵がしてきたのだ、陣形を変えなければいけない。
「前衛部隊一歩前へ、後列間を空けろっ、――くっ」
だが、篝火に照らされているだけの戦場で、練度の低い者達を巧みに動かすことは、例え数千を率いたことのある指揮官でも難しい。
対応は遅れる。
その遅れは、致命的だ。
なぜなら彼等が相対しているオオカミ達の指揮官は、ローズである。
大将軍の威風、指揮能力を向上させる固有能力を保持する、ダンジョン唯一の指揮力で戦う魔物。
ローズはその固有能力と、自らの強力無比な種族により、自分より劣るオオカミ達を完全に服従させ、手足のように操ることができる。
まるで、1個体のように連動するオオカミの軍勢。
オオカミは流れるように襲いかかった。
1対1なら、高Lvの者達はオオカミに負けはしないだろう。今も隊列を1人飛び出し、オオカミをたった一撃で仕留めることに成功した。
このままオオカミを次々に狙えば、短時間でもう数体倒せるに違いない。
しかしそれはできない、なぜならその時間は、仲間達の死によってのみ作られるのだから。
オオカミを倒した1人は再び隊列に戻り、仲間達に襲いかかるオオカミをひきはがす。追撃をと試みるが別のオオカミが挟撃を行える位置にいることに気付き、手間取ることを予想したのか引き下がる。
そんな騎士は、非常に視野が広く、また良く戦場の動きを読んでいると言わざるを得ない。
Lvも180と高く、指揮官としても一兵士としても、相当な実力者であることは容易に伺える。
だからこそだろうか、悲しきかな、騎士の動きは理解されない。
オオカミを1体倒せば、それは目に見える戦果だ。
しかしその騎士はオオカミを追わない。
仲間を1人助けることは、目に見える戦果だ。
しかしその騎士は襲われる前に助ける。
ローズはオオカミ達を動かす。騎士がほんの少し後手に回るように、騎士の仕事が、目に見えないものばかりになるように。
10分も経った頃だろうか、その騎士の指揮に、乱れが生じ始めた。
暗闇の中で練度の低い部隊の指揮、完璧であろうはずがない、どんどんどんどん、何もかもが瓦解していく。
その騎士は、立て直そうと、自らの力で戦場を切り開き、自らの言葉で味方を鼓舞した。
指示はまさに的確、人が不利なこの暗闇でもその騎士だけは、見事に渡り合えるだろう。
しかしそれらをあざ笑うかのように、止めの一撃が加えられた。
「では、始めましょう。明かりを消します準備はよろしいですか?」
凛と響く声。その言葉の意味を、400名の集団が理解した瞬間、全ての火と、照らすために出した魔法の光が消える。
訪れる真の暗闇。
戦況は一気に加速した。
真の暗闇とて、さきほどのように火を灯し、光を照らせば、周囲が見える程度には視界を確保できる。だがそれをするということは、一手、戦闘とは関係ない行動を行うということだ。
対してローズやオオカミ達はそんなことをする必要がない。臭いで敵の位置はどこまでも追える、どんな行動をしていようとも分かる、むしろ鼻を使わずとも、月夜での活動を主とするワーフェンリルにとって、見晴らしは昼間と変わらない。
練度に差がある以上、その一手を捻出すれば、その間に致命的な打撃を受ける。
しかしまずそこをどうにかしなければ、どうあがいても不利な状況。
これが、人と魔物の差。
毛皮が丈夫だとか鱗が硬いだとか、牙や爪が鋭いだとか大きいだとか、そんな問題が些事に思える五感の差。生物としての差だ。
部隊同士、指揮官同士の戦いは、ここでローズに軍配が上がる。
最早400名の集団は、ただの烏合の衆に成り下がった。
しかし、だからこそ、ここでローズは前へ出る。
吹き出るような魔力の奔流。今まで戦闘に一切加わらなかったローズが、その時初めて戦線に立つ。
その圧力は、部隊に想像を絶する、壊滅的な恐怖をもたらした。
400名の侵入者達の内、練度が低い者達は練度の高い騎士達への信頼を失くした。何もしてくれないと、自分の身は自分で守らなければいけないと。
そこへ何も見えない暗闇、そして絶対に身を守ることなんてできない敵が現れたのだ、鍛え挙げていない者が一身で受けるには、あまりにも重すぎる重圧だったのだろう、もう誰も動けない。
だが高Lvの騎士達は動く。
ピンチをチャンスに変えるため。
数にして60名程、恐怖に耐え、なお逆転の方法を考え付く練度の高い猛者達が躍動する。
部隊は崩壊した、しかし、だからこそ彼等は、少数人数で新たに編成を組み直す。そんなことを可能とするのが、軍に所属する騎士達の中で精鋭と呼ばれる彼等である。
ローズが前へ出たのも当然、現状のまま見ていればオオカミ達は即座に数を減らしただろう。
先ほどまで守るために奮闘し、この暗闇の中で足手まといを抱えながら、曲がりなりにも急襲を防いだ猛者が、今度は味方の犠牲をいとわずに、攻めるために奮闘するのだから。
騎士達により作られた部隊は少数に別れ、暗闇の中でも仲間と共に、オオカミを切り伏せた。
義勇兵や奴隷兵に被害が出ようがお構いなし。
やれる、いける、そんなことを誰かが思った。
そんなことを誰もが思った。
それが思い上がりだと、騎士達は、その心臓に刻む。
何も見えない。
しかし、槍が空気を切る音、ファンッ、という音と、ザンッ、という聞き慣れない、しかし何度も聞いた音が、騎士の誰かの耳に届く。
誰かはそちらを見る、しかしやはり何も見えない。
分かったのは、次が自分の番ということだけ。
夜は、魔物の世界である。
いや、この星は魔物の世界である。
人はそんな中で、武器や防具、数など、有利な条件を数多く揃えての話だが、魔物と戦い渡り合ってきた。逸話では、いつも竜を倒している。死んだ者は多いが、しかし、今生きている者達の中で、死んだ者はいない。
だからこそ、それが思い上がりだと誰もが学べていなかった。
暗闇に静寂が訪れる。
「明かりを消して申し訳ございませんでしたね、今点けましょう」
ローズはそう言って、いくつかの巨大な火の球を放ち、設けられたテントや棒柵に、ゴウゴウと燃え盛る炎を灯した。
「26階層守護者、忠義を誓う大将軍、ローズと申します。またお邪魔することもあるかもしれませんが、その時は、もう少し粘って下さると嬉しいですね」
騎士達の視界に映ったのは美しい女性、真っ赤な髪の毛を、まるで辺りでゴウゴウと燃える炎のように揺らす。
騎士達の視界に映ったのは美しい女性、真っ赤な髪の毛を、まるで辺りに流れる赤い鮮血のように揺らす。
ローズは槍を振り、くるりとその場から立ち去って行った。止める者は誰もいない。
「くそう、くそう、くそおおおおおー」
暗闇の中、残された者達の目には燃え盛る炎と、血を流し倒れ伏した仲間だけが見えた。
「くそう、くそう、くそおおおおおー」
「どうかなさいましたかご主人様」
「3回目だよーっ、どうしてローズお前までえーっ。そこは26階層やないんや、8階層なんやーっ」
『 名前:ローズ
種別:ネームドモンスター
種族:ワーフェンリル
性別:女
人間換算年齢:21
Lv:53
人間換算ステータスLv:247
職業:ダンジョンの軍団総指揮
称号:忠義を誓う大将軍
固有能力:大将軍の威風 ・味方士気、ステータス上昇。敵対者ステータス低下。味方に一時的な、自身に永続的な戦場の加護を与える。
:鮮血色の彩り ・敵対者士気、ステータス低下。吸血鬼に対し補正。
:同じ手は食わぬ ・1度受けた行動による効果を、次回から減少させる。
:軍オオカミ召喚 ・オオカミの軍勢を召喚できる。
:忠節の絆 ・忠誠を誓う心が強い程ステータス上昇。
:空虚の魔眼 ・右、全ての性質から1つだけ吸収可能、吸収した内容の魔眼になる。吸収量により使用回数が決まる。
種族特性:縦の絶対服従 ・自分より弱い配下を服従させることが可能。オオカミ種に近ければ近い程さらに服従させる。
:オオカミ化 ・完全なオオカミに変化できる。
:月下の騎士 ・月が満ちているほど色濃いほどにステータス上昇。
:俊敏 ・移動や反応が早くなり、直感も増す。
特殊技能:ヴァイタルドレイン ・生命力を干渉するたびに吸収する。
:ランサートラッシュ ・槍攻撃に炎ダメージを付与する。
:ウォーズコントロール ・戦場の流れを制御する。
存在コスト:3000
再生P:18000P 』
すごく強い。
その強さを是非26階層で発揮して欲しかったっ。
「はあ、そんなことがありましたか」
「あったよっ、貴女はもうちょっとローズに興味持ってっ」
ローズはご丁寧に、夜襲や伏兵を警戒させるだけでなく、戦術を使えることや指揮官クラスもいざとなれば、義勇兵や奴隷兵を見捨てることを教えた。
凄い活躍、大活躍。
だけどそこは階層が違うんです。
「主様っ、主様っ。お休みになられたのでは? もしや私の戦いを見るためにっ、ありがとうございますっ」
ローズ御帰還。
「どうでしたか、私の戦いはっ」
「……ひゃ、120点さあ」
「――主様っ」
キラキラした目で見られちゃあ、そう言うしかないよね。
「ありがとうございますっ。主様のおかげです、明日の訓練、楽しみにしていて下さいっ。とびっきり良い訓練に致しましょう」
例え、自分の首を締めるだけだとしても。
俺のしわくちゃな笑顔とグーサインに、ローズは満足そうに頷き、尻尾を振りながら去って行った。
3戦全敗。
6人いるネームドモンスター達の半分にあたる3人が、守護階層の外で戦うというダンジョンとして非常に良くない結果が今の状態。
全軍と戦うなんてことをしていないのが、不幸中の幸いだろう。
まあ、勝てるところに挑んでいるだけなのかもしれないが。もしそうだったら胃が痛くなるどころじゃ済まないので、考えないようにしよう。
しかし、しかしだ、次からはもう大丈夫さ。
特にオルテは大丈夫。
オルテの29階層の時の役割は、遠くからの狙撃で、Lv200を越えるような最強な人達を倒すことにある。
29階層ではニルもキキョウもローズも色々な作戦を用いて戦うが、それも全てオルテのその攻撃を決めさせるため。すなわちオルテの技は秘匿すべきものなのだ。
29階層にボスがいないことは周知されているから、そこまで来た時には、残るボスが上級風竜だけだと侵入者も分かっている。
マキナは初日から凄く宣伝してたからね。
オルテの技が秘匿されいるのなら、遠距離攻撃に対しての警戒は、マキナのブレスやキキョウの魔法のような広域や複数への攻撃だけになり、単体への、それも武器への防御が甘くなる。
だから、オルテが今出て行くことはない。
むしろ自分の階層である27階層でも、本来の戦い方と違う戦法を用いて、相手を油断させて欲しいと思うくらいだ。
一先ず安心。
「が、しかし、それだけで俺は安心するほど馬鹿じゃない」
俺が、今まで何度裏切られてきたか分かるか?
本当に何度も何度も裏切られてきた。
なんでこんなに裏切られてきてるんだろう。え、本当に何で俺こんなに裏切られてるの? ま、まあ良い、考えないようにしよう、もう俺の悲しみゲージはいっぱいだからね。
「オルテー、飴だよー飴をあげるよー」
俺は、Pを使って飴を生成し、オルテに声をかける。
用意する飴は10本? 100本?
そんなちゃちな数じゃない。1000本、いやどーんと1万本だーっ、種類もペロペロキャンディーからソフトキャンディー、綺麗な綺麗な飴細工までたくさんあるよっ。
オルテは飴を舐めて食べる派。これだけの数の飴があれば、1日2日、いやいや3日4日なんぞ余裕で越えさせられる。そうすればきっと人の軍は27階層、それどころか29階層までだって行けるはずさ。
そう、俺は知略に優れた人間種族のダンジョンマスター。
自分のところのダンジョンモンスターを操るための方法の、1つや2つ用意してるぜっ。
「オルテー飴だよーっ」
……。
「オルテー?」
……。
遅いな、いつもなら呼べばすぐに来るのに。
「オルテー? どこにいるのオルテー」
『……ココ』
と、返答があった。しかし……、なぜ直接じゃないんだ?
「……そこ、どこ?」
『……軍の近く、朝一で襲撃……、準備中』
「……」
『その飴、帰ったら貰う……御褒美、流石オー分かってる。……応援よろ』
「……うん頑張れー……」
……。
わーい日出だー、綺麗だなー。
滲んでいても、綺麗だなー。
夜分遅くの更新失礼しました。
戦争編はいかがでしょう、第一章に比べてまた少し変わっていると思います。
これからもたまにこういう話が入ります。好みに合わない、なんて方は、終わるまで少々お待ち下さい。
基本的にはほのぼのしています。
感想や質問あれば、是非下さい。
それでは。




