第18話 あらためまして6人勢揃い。……あれ?
ダンジョンマスター格言その18
ダンジョンマスター生は、他殺で終わる。だからこそ、長いダンジョンマスター生はその誰かのためにあるのだ。素晴らしいダンジョンマスターとは、育むことのできるダンジョンマスター、その最期の最後まで。
穏やかな日々、それは夢の話。
夢、それは俺には見られない物。
俺には見られない物、それは目の前の現実。涙でね。
戦争まで、あと10日。今まで色々あったよ。
そしてその色々の大半は、俺を困らせること。
せっかくお風呂作ったのに、男子禁制になってるし、全く。
まあ我が家がそんなことをしている間に、軍は既に集結した。このダンジョンから1番近い都市は、そこそこ大きな都市だそうで、5000名の軍隊全部がそこへ集結。
英気を養っている最中、だとかなんとか。
5000かー。
「ふっふっふ」
俺は不敵に笑う。相手にとって不足はない、と言わんばかりに。
確かに、ここに来たばかりの俺なら、5000名の軍隊に怯えるばかりだっただろうが、今は違う。
俺には頼もしい、6人の相棒達がいるのだ。
確かに俺を困らせることにかけては天下一品。明らかにわざとやっている節もある彼女達。
しかし、困らせられるということは、それだけ影響力を持つということだ。この場合の影響力とはすなわち強さ。
そこらの魔物なんて相手にしないほど、高い実力。
この6人が揃えば、5000名の軍隊とて恐るるに足らず。
そんないかれたメンバーを紹介しよう。あ、いかれたって言っちゃった、いかした、いかした、ね。
つい本音が……。
『 名前:マキナ
種別:ネームドモンスター
種族:上級風竜
性別:女
人間換算年齢:18
Lv:14
人間換算ステータスLv:388
職業:ダンジョン最終階層ラストボス
称号:ダンジョンの守護者
固有能力:竜王の血脈 ・竜因魔法、竜魔法の威力上昇。状況に応じてステータス上昇。支配の完全無効。結果に補正。
:無限の蓄積 ・思考能力を増加させ、他者の経験を踏襲する。
:時の魔眼 ・右、自身と周囲の時を支配する。
:予知の魔眼 ・左、未来を見る。
種族特性:風竜因魔法 ・風の竜因魔法使用可能。
:竜魔法 ・竜魔法使用可能。
:上級竜の膂力 ・防御能力を無視してダメージを与える。
:上級竜の鎧 ・あらゆる攻撃や変化に高い耐性を有する。
:上級竜の翼 ・質量、重力、慣性を無視し移動可能。
:上級竜の再生力 ・身体の破損欠損を即座に再生できる。HPMP自然回復上昇。
:人化 ・人間形態に変化可能。
特殊技能:オーラドレイン ・生命力と魔力を干渉の度に吸収する。
:カタストロフブラスト ・空気と空間を歪ませ存在を無視して座標を破壊する。
:リーシングクロック ・時間を止める。
存在コスト:30000
再生P:60000P 』
人間換算ステータスが、Lv400近くまで上昇したマキナだが、Lv400の人間と同じと考えるなかれ。
上級竜の体は人間の何倍も強い。例え、Lv400の人間と戦ったとしても、勝利は間違いない。
まあ、そんな弱い体なのにLv400まで上げられる人間って、マジもんの化け物だから勝てない気もするけど、ともかくマキナは超強い。
固有能力も種族特性も、最強に分類される物を持ち、特殊技能はなんと3つ。
得意技のカタストロフブラストは、一体どれくらいの魔物を葬り去っているか分からない、一体何度、家を破壊したのか分からない。なんてことを……。
『 名前:セラ
種別:ネームドモンスター
種族:吸血鬼公爵
性別:女
人間換算年齢:22
Lv:30
人間換算ステータスLv:275
職業:ダンジョン最終ボス代理兼メイド
称号:ダンジョンマスターのパートナー
固有能力:真祖返り ・吸血鬼の特性を趣向の範囲に収められる。
:完全無欠の奉仕術 ・一つの欠けもない奉仕が可能になる。
:血脈掌握 ・支配下に置いた血液と同系の血液を魅了する。
:石化の魔眼 ・左、視界内の対象を石化する。
:ダンジョンの知識 ・ダンジョンについての知識を得る。ダンジョンについての権限を得る。
種族特性:吸血 ・吸血した相手を支配する。定期的に血を飲まなければいけなくなる。
:闇の支配者 ・夜にステータス上昇、太陽が出ている間ステータス低下。
:公爵の威厳 ・誰の支配下にもない侯爵以下の吸血鬼と、侯爵以下の支配下の吸血鬼を支配する。
:蝙蝠分裂 ・蝙蝠に化けられる。数は自由、化けている最中はステータス低下。
:吸血鬼の再生力 ・損傷や欠損を再生する。
:魅了の魔眼 ・目が合った者を虜にする。
特殊技能:ライフドレイン ・体力を干渉の度に吸収する。
:マナドレイン ・魔力を干渉の度に吸収する。
:フォールサイト ・未来の事象を予見する。
:スピリットブレイク ・恐怖により精神体へダメージを与える。
:メルトダウン ・自身を見た者を魅了状態にする。
存在コスト:4500
再生P:30000P 』
人間換算ステータスが、Lv300近くまで上昇したセラだが、着目すべきは固有能力や種族特性、特殊技能など。
補助的なものが多く、破壊に特化したものこそないが、このくらいの強者が、補助的なものを中心にしたときの強さは計り知れない。
セラの情報収集能力には舌を巻く、舌を巻きすぎて死ぬんじゃないかと思えるほどに舌を巻く、もうちょっとお手柔らにお願いしたいところだが、巻かれた舌では声も出せない。
しかしやはり、セラの1番の強さは、その察知能力だろう。恐ろしいほどに高いそれは、俺の行く先々を封殺する。
何ごとにおいても先回りされ、あの手この手で誘導され操られ、その結果、このダンジョンには大国をコロコロ転がせそうな程の情報がゴロゴロ転がっている。一体どうしてこんなのことに。どうして……。
『 名前:オルテ
種別:ネームドモンスター
種族:ハイダークエルフ
性別:女
人間換算年齢:16
Lv:50
人間換算ステータスLv:234
職業:ダンジョンの暗殺者
称号:右党のシリアルキラー
固有能力:無音の暗殺者 ・暗殺行動時全ての成功率が上昇する。
:必中必殺の射手 ・遠距離から放つ射撃攻撃に対し補正。
:殺戮制御 ・攻撃威力上昇。蘇生不能付与確率上昇。
:千里の魔眼 ・左右、障害物明度関係なく全方位を遠くまで見通す。
種族特性:森魔法 ・森魔法使用可能。
:森の恵み ・森からの恵みを受けることができる。
:森地同化 ・森や大地と同化できる。
:太古の知恵 ・脈々と受け継がれてきた知恵を授かる。
:半精神体化 ・体の少しを精神体へと変換できる。
特殊技能:エナジードレイン ・生命力と魔力に干渉するたび吸収する。
:カラミティアロー ・地脈に干渉し物理現象を曲げ、具象世界に干渉する。
存在コスト:3000
再生P:20000P 』
人間換算ステータスも、Lv200を越えたオルテ、しかしただのLv200と実力はまるで違う。特に特化された、攻撃能力において。
中範囲攻撃威力においてのトップはマキナだが、単体攻撃威力においてのトップは、オルテだ。固有能力の中には、攻撃力を上昇させるものや、命中力を上昇させ弱点へと中てる物が豊富。
そして特殊技能、カラミティアローの威力と効果は凄まじい。例え、防御系の固有能力や種族特性を持っていたとしても、意味を成させず狙った獲物を破壊する、誰がどこにいようとも。ダンジョン外にいたとしてもなあっ。
しかしオルテよ飴を食いすぎだ。一体どれだけ食べれば気がすむんだ、俺は君の何なんだ。
昨日も飴、今日も飴、きっと明日も飴のちキャンディー。一体いつになったら晴れるんだ。もう飴なんて見たくもないわ、でも飴を生成するしかない、少しでも気を引き殺戮を止め心を晴らすため、飴を出し続ける他ないのだ。やめてくれ……。
『 名前:ローズ
種別:ネームドモンスター
種族:ワーフェンリル
性別:女
人間換算年齢:21
Lv:47
人間換算ステータスLv:233
職業:ダンジョンの軍団総指揮
称号:忠義を誓う大将軍
固有能力:大将軍の威風 ・味方士気、ステータス上昇。味方に一時的な、自身に永続的な戦場の加護を与える。
:鮮血色の彩り ・敵対者士気、ステータス減少。吸血鬼に対し補正。
:同じ手は食わぬ ・1度受けた行動による効果を、次回から減少させる。
:軍狼召喚 ・狼の軍勢を召喚できる。
:空虚の魔眼 ・右、全ての性質から1つだけ吸収可能、吸収した内容の魔眼になる。吸収量により使用回数が決まる。
種族特性:縦の絶対服従 ・自分より弱い配下を服従させることが可能。狼種に近ければ近い程さらに服従させる。
:狼化 ・完全な狼に変化できる。
:月下の騎士 ・月が満ちているほど色濃いほどに強くなる。
:俊敏 ・移動や反応が早くなり、直感も増す。
特殊技能:ライフドレイン ・生命力を干渉する度に吸収する。
:ランサートラッシュ ・槍攻撃に追加ダメージを付与する。
:ウォーズコントロール ・戦場の流れを制御する。
存在コスト:3000
再生P:18000P 』
人間換算ステータスが、Lv200を越えたローズ。だが高い身体能力を持つローズは、そのLvから想像できる強さとかけ離れた実力を有している。
ランサートラッシュ等の、強力無比な攻撃を携えた戦闘能力は非常に高い。しかしローズの神髄は、指揮能力にある。
固有能力で多数の狼を従え、自らの指揮能力上昇と相手の指揮能力減少により、圧倒するのがローズの戦い、それはもう蹂躙の一言に尽きる。
また、ローズはそんな優秀な指揮官だからか、教え育てることも大の得意としている。しかしローズよ、俺は育たないんだ。
ダンジョンマスターは成長できないんだ、いくらスパルタ特訓をしても無理よ。お風呂を覗いたのはワザとじゃないんだ。根性は鍛えなおせないよ。許して……。
『 名前:キキョウ
種別:ネームドモンスター
種族:金華妖狐
性別:女
人間換算年齢:19
Lv:40
人間換算ステータスLv:227
職業:ダンジョンの研究者
称号:魔道を極めし姫
固有能力:言語翻訳 ・全言語を理解できる。
:魔道を極めし者 ・魔法を使用する際の魔力減少、魔法効果上昇、魔法解析力上昇。
:幻想回帰 ・解析した事象を幻想化、解析した幻想を事象化する。
:高貴なる矜持 ・回復力上昇。状態異常状態変化に耐性。
:解析眼 ・左、対象を解析、看破する。
種族特性:七命七魂 ・生命力と魔力を7度回復する。
:朧変化 ・姿形を自在に変化させられる。狐型ならステータス変化なし。
:領域化 ・周囲を自らの領域に変えることができる。
:金妖の大過 ・敵対者のステータス減少。戦意減少。金に囚われる者に対しさらに補正。
特殊技能:マナドレイン ・魔力を干渉する度に吸収する。
:マジックバースト ・魔法領域を拡大する。
:クアドロマジック ・四重に魔法を重ねられる。
存在コスト:3300
再生P:18000P 』
人間換算ステータスが、Lv200を越えたキキョウ。だが実は、Pの割にキキョウのステータスは高くない、むろん身体能力などは人間を上回るため、人間よりかは優秀だが、同Pの魔物と比べればステータスも身体能力も劣る。
なぜなら種族特性がその分強力で、魔法を主体とした戦闘を行うからだ。他の種族が平等に分配する力を、種族特性と魔法にのみ割り振ったキキョウは、その分野に関して圧倒的な実力を誇る。
特に、特殊技能、マジックバーストからのクアドロマジックで、魔法を発動した場合、広範囲攻撃威力において、ダンジョンでもトップに躍り出る。
そんな突き詰めたキキョウだからか、研究熱心であり、放っておけば1日中でも研究活動を行うのだが、それ以外への興味が薄い。
放っておけば1日中寝ているくらいだ。でもキキョウ、お風呂場で寝るのは良くないよ。声かけたじゃん俺。その後も、お前から寄ってきたのに肘が触れただけで、触られたぞーであえであえー、ってみんなを呼ぶのは酷い。酷い……。
『 名前:ニル
種別:ネームドモンスター
種族:ハイピュイア
性別:女
人間換算年齢:15
Lv:53
人間換算ステータスLv:224
職業:ダンジョンの残飯処理班
称号:大食い女王
固有能力:ド天然 ・予想し辛くなる。
:神性 ・神威魔法使用可能、精神体変化可能。
:真実の魔眼 ・右、真実を見抜く。
:暴食因果 ・暴食に交わる。
種族特性:食欲旺盛 ・何でも食べられ何でも栄養に変えられる。大量に食べることができる。
:ハイピュイアの翼 ・空を自由に飛ぶことができる。
:ハイピュイアの足 ・どこにでも掴まれ、何でも掴める。
:空間制御 ・上下左右の空を支配し、支配領域内の空に住む住人の行動を制御する。
特殊技能:エネルギードレイン ・生命力と魔力を干渉するたびに吸収する。
:ニアスペース ・亜空間移動を行う。
:バニッシュフード ・食料を一瞬で消失させ、食す。
存在コスト:2700
再生P:18000P 死亡 』
人間換算ステータスが、Lv200を越えたニル。大元の生成Pが1番少ないため、1番Lvが高いのに1番人間換算ステータスの低いニルだが、ニルの強さはその特異性にある。
固有能力の大半が、一体どういう風に使えば良いのか分からない能力だなんて、滅多にあることじゃないだろう。使い方を本人は分かっているのかしら、本能で分かるはずだが……、まあニルは本能のままに生きているから分かっているかもしれない。
そんな本能を活かすのは、固有能力や種族適性だけでなく、特殊技能も。バニッシュフードという異端の技は、ニルを象徴する。
食べ物のみを広範囲に渡り消失させるという恐るべき技は、ニルが扱うことで、食べ物と認識できる全てが消失する。神威魔法が使われればダンジョンマスターやダンジョンコアも、その範囲に入るという恐ろしさ。
そう、ニルは俺を食べ物だとやはり思っている。背中を流すとたまに言ってくるのだが、食材を洗う行為にしか思えない。ニルよ、君はいつも素材丸まま食べてるじゃない、洗ってないじゃない。なぜ俺だけ美味しく食べようとする。塩を揉みこまないで下さい。下味……。
6人共強くなった。
凄く強くなった。
こんな6人が揃っているからこそ、俺は5000名の軍隊も怖くない。
「……あれ?」
……揃った?
え、何か、何か変なもんが増えてやしないかい? ニル……死んでない?
「マキナーっ」
「違う、わざとじゃないっ」
果たしてこのダンジョンは、戦争に全戦力たる6人を揃えることができるのだろうか。
「ご主人様、もうPがありません」
「なんだってーっ」
どうやら6人を揃えることはできないようだ。なんだってーっ。
「みんな無茶するから結構溜まってなかったっけ?」
「ご主人様が、お風呂を生成されたので」
……生成しちゃったかあ。
「アタシのせいじゃねーじゃん。へっ。しゃーねーなーマスター、おら、一言、あれを言えば許してやるよ」
「そうですね、私もそうしましょう。ではご主人様、その一言を」
……。
……。
「ワクワク、早く言えよー」
「仰って下さい」
「言え」
「是非お聞かせ下さい」
「ニルも草葉の影で喜んでおるぞ。わーいとな」
……。
……。
「み、みなのもの、Pを、Pを稼いできて下さい、ダンジョン外から……連れて……きてでも」
「うっしゃー」
「行って参ります」
「飴、10」
「漲ってきましたよ」
「仕方ないのう」
意気揚々と、ダンジョンから飛び出す、ダンジョンの絶対守護者、ネームドモンスター。
ダンジョンマスターからの命令で、彼女達はPを稼ぐために、フィールドを駆け巡る。
彼女達は、これから色々なことをするだろう。
でも、決して彼女達が悪いのではない。
全ては、命令を下したダンジョンマスターが根源だ。
そう、悪逆非道なのは、ダンジョンマスターただ1人。
俺は今日もこの道を歩く。
ああ、今日も今日とて明日が見えない。
あらためまして第一章完結となります。
6人の紹介文のようなもの、としては長いですが。
どうぞ飽きずに第二章からもお付き下さい。
ご期待に沿える話かどうかは分かりませんが、波乱万丈な話です、よろしくお願いします。




