第136話 天空神殿の神様。
悪逆非道のダンジョンマスター心得その25
世界の均衡を保つために、全てを捧げよ。ネームドモンスターの機嫌を保つために、ちょっとそっちは待って下さい。
「相変わらず細かいですよリーダーっ」
背の小さな、少女にも見える女性が、呆れたように言った。
「うるさいな分かっているよ」
それに応えたのは、少女よりも10歳ほど年上の落ち着きある女性。短い髪を切り揃え、大剣を背負ったその姿は威厳に満ちており、立場もそれに相応しくこの6名パーティーのリーダーを務めている。
「でも気になるだろ? 気になるじゃないか。き、気になるんだよぉ」
しかしなぜだか続けて発したその言葉は言い訳じみていて、責められている空気に耐えかねているようであった。
「いいじゃないですか11階層なんてどうでも」
「そうっすねー。なにが悲しくてこんな稼ぎの良いダンジョンでこんな低階層……って感じっす。口には出さないっすけど」
「出してるわよ。まあ、同感」
「赤字じゃね? 宿代考えたら」
「A級目指してって言ってたというのに……、やれやれだ」
パーティーメンバー達は口々に言う。女三人寄れば姦しいと言うが、現在ここにいる女性はリーダーを除いても5名。姦しさは相当なもので、やいのやいのと口々にリーダーは責められ続ける。
このB級パーティーも他の冒険者同様、ダンジョンの魔石の噂を聞きつけやってきたのだが、他の同級の冒険者達のように遺跡迷路やコロシアムへ行くことはせず、1階層から10階層の自然階層、12階層から20階層の廃墟階層を旅することにした。
三次移送便で44階層に入ったため、旅の開始は7月頭。
ダンジョンモンスター達の魔石は魔石等級上昇で、ドロップアイテムはステータス上昇で、それぞれ高価になっているとはいえ、B級の普段の暮らしや装備、アイテムの消耗などを考えれば、日々の旅は全くの赤字。
またステータス上昇や地形効果、禁止事項、ギミックなどによって、魔物は強化され上手く立ち回るようにもなってはいるが、それでも圧倒的に強さが足りない。退屈で、腕も鈍る。
そのためリーダー以外はすぐにでもやめて、適性階層へ行きたいと思っていたのだが……。
「いやでもな、お前達。考えてみろ、考えてみるんだ。ダンジョンにあるべき階層がないなんてことがあるか? ないだろう? でも事実として11階層はない。つまり、隠されているんだ。……なあ? 気になるだろう?」
「え、別にならないですけど」
「ならないと言えば嘘になるっすけど、そこまでじゃないっす」
「……。このダンジョンは普通の攻略ルートが通じないよな? 誰も彼もが口を揃えて、あの塔の鎖を登って行くことが正解ルートと言うし、大め――遺跡迷路に入れば壁を乗り越えて進めと言う。特殊なんだ、攻略の仕方が。分かるだろう? なら、11階層に特殊な何かがあっても、不思議じゃないだろう?」
「何かがある可能性は大きいんじゃない? 11階層にふさわしいのが」
「所詮G級、F級辺りに嬉しいなにかじゃん」
「……。遺跡迷路の遺跡内部の話を聞いたか? ダンジョン並の複雑さと難易度、宝があった。そして中には41階層から50階層ではあり得ない100階層クラスの魔物が蔓延る場所もあるそうじゃないか。そんなところには一体何が眠っているのやら。なあ?」
「なあと言われても。なあ?」
「……。……。ええい行くのだっ。行くぞ皆っ、11階層を探すんだ。なぜなら私は――」
「そういうのがモヤモヤして、見つけないと気が済まないっ、んでしょう? 分かってますよ」
「耳タコっす」
「ごめんねみんなー」
「ザレさん……。エマさんはホント、ザレさんがいて良かったじゃん」
「はあ。今日も行くとするか」
リーダーの、おおー、という掛け声に、パーティーメンバーはやる気なく応えると、再び歩き始めた。
なんだかんだでチームワークのある良いパーティーだ。冒険者になる前からの長い付き合いで、冒険者になってからもわずか数ヶ月でB級までやってきたのだから、当然と言えば当然の話。
しかしこれは、進み始めてから一週間頃の彼女達の様子。
それから時は進み、彼女達の旅は、戦いの腕こそ鈍るものの、とある腕は異常なまでに上がっていくという過酷なものになっていた。
彼女達は11階層を探すため、10階層と12階層の境目をずーっと進み、ダンジョンをグルリと一周するべく歩いている。
それゆえ彼女達から見て、左側に見えるのは1階層から10階層。そこには魔境をそのまま活用した自然が広がり、右側に見えるのは12階層から20階層。ダンジョンが生成した廃墟や建築物が時折あるものの、ほとんどは左側同様、魔境をそのまま活用した自然が広がる。
つまりは、魔境真っ只中ということだ。
魔境とは、平たく言えば人間や亜人では生きていけない危険地帯。人間や亜人が入ることすら許されない、人跡未踏の地帯のことを言う。
もちろんダンジョンにするにあたって、街道沿いや水路沿い、拠点付近から近い場所は改良したので、険しい地形には橋やトンネルが設けられていたり、危険物もなくなっていたりと、1階層から20階層らしい安全な場所にちゃんとなっている。
しかし街道や拠点から遠く離れた場所などに関しては、あまり手が入っていない。
すなわち彼女達がいる場所とはやはり、魔境真っ只中ということだ。
低階層ながら、命を軽々と脅かしてくるものばかりがそこにはあった。
「うわあー綺麗な花ですよーっ。って、なんですかこの臭い……」
「嗅いだことあるっすねーこれー。昔懐かしいような……」
「あなたが懐かしいってことはやばいものじゃ……、って全員毒になってるじゃないっ。キュア、ポイズンリジェクトっ。くっ――臓腑を冒涜す大我の穢れ今はら――、ってこの症状、多分こっちじゃないっ、ええっとええっとなんだっけなんだっけ、なんでこんな古い教科書にしか載ってないようなのに……、そうだっ、生命の源泉父祖の連綿、魂を紡ぐ血の追憶、殺ぎし者を払いいざなむっ。月桂樹、セ、28番」
「お、おおおー。って感心してる場合じゃないじゃん、そこの花収納収納収納っ、って重っ。これめっちゃワリ食うじゃんっ、やばーっ」
「戦いであれば、せめて役に立てるのだが、これは専門外だ……」
ひと嗅ぎで周囲の生物を死に至らしめる花。
「ん? ここ急に地面がバリバリになってま――え――? きゃあああぁぁぁ――」
「セコさんが落ち――っつつつ捕まるっすーっ」
「ナ、ナイスロープ……」
「あぶなー。なにこのエグイ空洞……、底からヤバイ水流の音すんじゃん。地面割れるまで全然聞こえなかったわ。浮力よきたれ、フロート」
「高い……怖い……」
地下水脈と音を遮断するガラス状の地面。
「お腹が……、お腹が……」
「……昨日飲んだ湧き水、ちゃんと解毒したっすよね……」
「し、したわよ……。した……けど……」
「あああ……。あああ……」
「何をみんな耐えているんだ。そんな我慢する必要なんてない、さっさと楽になろう。あっちの川で、ほら、綺麗に洗えたから。さあ、おいで、おいで、こちらの世界へおいでぇ」
クマさん刺繍のパンツを広げながら誘ってくる悪魔。
この辺りになれば、最早歩く度に危険なものにぶち当たると言っても良い。
だがこれらですら魔境においては、まだまだ序の口。6名はその序の口の中で、最も危険なゾーンにさしかかった。
「私の中の乙女は死にました。魔境ってこんな危なかったんですねえ。……、なんですか、この登り坂、いえ、坂っていうか、断崖絶壁……」
「これ……火竜の山っすね。ゲホッ、灰が……キツ。あのー、リーダー。10階層と12階層の境目って、ここ真直ぐなんすけど、これは流石に違うっすよねー」
「もちろん違うわよね? さあ迂回しましょー、33階層にはトンネルがあるって聞くわ」
「土に鉱石が埋まり過ぎてて、魔法も構成壊れるんで、超超無理無理。さあ行くじゃーん?」
「カチカチ、武器も刺さらん。登るなら凹凸を掴むのみ。登っても死の灰が常にある。迂回するか」
「……。……。……。……。なぜなら私は――」
「そういうのがモヤモヤして、見つけないと気が済まないっ、んでしょう? あーもー」
「これをっすかー。じゃあ自分先登ってロープを……、いやこれをっすかっ?」
「はあああー。まあ、あの、これ、食べるとすっごいパワーでるから。灰は……自分で……」
「あたし肉体派じゃないじゃん。無理させ過ぎるじゃん? 行くけどさー」
「道具を貸そう。それから落ちたときのためにここに跳び蓮を植えておく、頂上から落ちても受け止めてくれるだろう。これ、高いのに……、うう、高い、怖い……」
ダンジョンの南側は、魔境が44階層の町の手前、5km地点までしかなかった。だから現在の1階層から20階層なんぞは、王国が既に開拓したような場所であり、見渡す限りの田畑を抱えるような大きな町も存在する。
南東側は、帝国領。王国のある南側よりも魔境と呼ばれた場所は長いものの、それでも17階層くらいまでしかない。だから10階層と12階層の境目を行くなら、栄えた町や街道、平原を歩くことになる。
ただ、東側からはもう魔境だ。東の中でも南よりなら帝国領だが、しかし魔境は随分長く1階層を軽くオーバー。ダンジョン内は全てが魔境。
北東側も魔境。
北側も魔きょ――、いや海だった。湾になってる凹みの一番深い部分。
北西側は再度魔境。
西側も問答無用で魔境。
しかし彼女達がいるのはそのどれでもない。
44階層の町から南下し、境目に辿り着いた彼女達は、10階層を左に、12階層を右に見ながら進んでいる。つまり進行方向は南西。
南西側には魔王国がある。……が、やはり魔境だ。
魔王国側は魔境が長く、切れ目が5階層辺りになる。町は全てそれ以降。
道に関しても、戦争前にこちらで作った街道含め、一直線にダンジョン中心へ進むような道のみ。33階層部分は交通に便利な通路になっているが、そこ以外はただの魔境。従って横断は無謀だ。
それに南と南西の境目には、中級火竜なんて化け物が好んで住んでいた山がある。
山頂はダンジョン外なので、標高2000mが最高だが……、それでもヤバイところばかり。トンネルは通してあるし、尾根に登るための山道も設置したが、それは33階層と3階層だ。
B級パーティー6名は、配置したダンジョンモンスターすら予期せず死にまくる環境で、何度も何度も命を落としかけ、何度も何度も大変な目に合いながら、環境に適応する腕前をメキメキ上げながら11階層を探す冒険を続けた。
火山を越えるのにかかった時間はなんと2ヶ月。一度装備を整えに町に帰還したこともあってか、季節はダンジョンに到着した7月から、10月に移り変わっていた。
「はあ、ようやく火山が終わった……。サーさんの浪費癖と準備癖がこんなところで役に立つとは思いませんでしたね」
「まさか対火山用の魔道具も確保してたとは驚いたっす。町には売ってなかったっすからね。……まあ、それでも死にかけたっすけど」
「流石にね。これでまだ3合目くらいって言うんだから、山頂は地獄よ。やっぱ先代の剣聖って凄かったのね、修行で登って中級火竜の片目を切ったんでしょ?」
「ああお爺ちゃん。若い頃はやばかったらしいじゃん。60過ぎてレベル下がってても250? けどあたし剣使わないし詳しくないっしょ」
「ようやく平地……もう離れたくない……。あと私のアイテムとお金が……、帰ったらまたジャガイモが主食……」
「サイフォン……、か、返す、帰ったら返すからっ。さ、さあみんな、火山は越えた。死の灰ももう来ない。今日は思う存分休もうっ」
リーダーはパンパンと手を叩いて、元気良く言った。メンバーからジーッと見られた時には、目を逸らしたが。
旅を始めてから3ヶ月ちょっと、チームワークは……、醜い言い争いも何度か起きたものの一応セーフ。
「さてどこで休むか」
リーダーはキョロキョロと野宿できそうな場所を探す。
彼女達のいる場所から44階層の拠点までは、もう随分離れてしまった。異常な環境に遮られているせいもあって、転移先を登録しているが帰れない。
そしてもちろん、元々魔境だったこの周辺に村や町は存在しない。村や町が存在しなければ整備された場所も存在しないので、安全な場所も存在しない。
そのためこれまでの旅もこれから先の旅も、体を休めることができない、とても過酷な旅となる。わけではなかった。
「お、廃墟の大群発見しましたっ」
「大群っすか? ああ、大きいってことっすねっ。良かったーこれで休めるっす」
12階層から20階層は廃墟階層。
ダンジョンが生成した廃墟がある。
廃墟には確かに、急に崩落するトラップがあったり、魔物が中に潜んでいたりといった仕掛けが施されている。ただしそれらはダンジョン的に作ったものなので、12階層から20階層を稼ぎ場とする対F級用。B級である彼女達には通じない。
そしてもちろん新たに作った場所には、自然由来の罠は残っていない。
その廃墟がなければ、火山でも彼女達は生き延びることができなかっただろう。それらを作った心優しいダンジョンマスターに感謝して欲しい。
「この辺りに町なんぞなかったろうから、これもやはりダンジョンが作ったものなのだろうな。アンデッドのいない廃墟なんぞ聞いたこともない、一体何のために作っているのか。ここのダンジョンマスターの考えはよく分からん」
感謝して欲しい。
「今まで見た中で一番大きな廃墟の都市ね。首都とかって設定なのかしら。10階層にもまたがってるわ」
「崩れてないっぽい建物の方が休めるじゃんね? パッと見、正面の建物じゃね? 屋根半分ないっぽいけど。あ、でもあれ……」
「教会……違う、神殿、か。ふっ、朽ちた神殿とは、何か意図があって作ったなら、これは中々のアンチテーゼなのかもしれんな」
「やめておく、か?」
「いや泊まろう。私達には最早関係のないことだ……。むむっ? 温泉が湧いているっ? 妙に整っているからこれはダンジョン側が作ったものか。気が利いているじゃないかっ、罠かどうか調べてから入ろう。罠でも入ろう。――あ、入る前には私にチェックを受けろよ? 私は食番街に着いてすぐに温泉講習を受けた生粋の温泉好きだからな」
6名は場が明るく朗らかになるくらい、大きな声で笑う。
その様子からは無理矢理さが少々感じられたが、それには誰も何も言わない。昔からの知り合いで、苦しさや悔しさを共にくぐり抜けていた者達ゆえのチームワークだった。
そうして6名は一旦朽ちた神殿に入り、中にいたパンサーラビットという名前の、美味しすぎるゆえにヒョウ系魔物につけ狙われるウサギを倒し、そのドロップアイテムである肉を確保。
無防備になるのもお構いなしに一緒に温泉に浸かり、しばらく溜まりっぱなしだった汗や垢、疲れを全て洗い流す。風呂から上がったら今度は、先ほどの肉や周辺で採れた葉物を使って食事を作り、久しぶりの休息を堪能した。
眠る際にも、朽ちた神殿の中で、簡単な結界だけを作って全員で横になった。
この辺りの魔物ならそれで近寄ることができなくなる。盗賊なら分からないが、力量のある盗賊はもっと高い階層で待ち受けるだろうし、そもそもこんなところにいるなんて、そんな馬鹿な盗賊はいないだろうと全員が判断した。
「あああー、疲れたー。眠いー私はもう寝ますー」
「アタシもっすー。もうダメっすー」
「はいはい、おやすみ」
パーティーの中でも比較的歳若い2名は、早々にダウン。
「あたしも駄目じゃん。もう……ぐうぐう」
「かー……かー……、かー……かー……」
「お、ね、寝たのか? いつの間に」
続いて、パーティーの中堅どころの2名もダウンする。
残ったのはリーダーと、リーダーと同年代のサブリーダーの、一番付き合いが長い年長者2名。
彼女達も眠たかったが、しかし眠る前に少し会話をすることにした。
「神殿……だな」
「……そうね。崩れちゃってるけど、でもなにか、静かというか落ち着くというか。神聖な気配ってのが漂ってる気がするわ。もちろん私は修道女でも聖騎士隊でもないので分かりませんけど」
「私も教会とは無関係の人間だから、分からんなあー」
「あらディーナ。隊長がそんなこと言って良いの?」
「隊長じゃない、リーダーだ。ふっ、……その言葉遊びにもどれだけ意味があったんだか。付き合わせて悪いな」
仰向けのまま、上を見上げた。
そこには、天井ではなく、空があった。朽ちた神殿の屋根は半分ほどが崩落しているために、夜空が見えるのだ。ただあいにく今日は薄い曇がかかっているので、満点の星空とは言えない。まん丸に見えるはずの月すらも、雲に隠れその形が分からなくなってしまっていた。
「後悔はない?」
「ない。あのままいたら私は生きる意味すら失っていただろう。今は……生きてきた意味は失ったが、生きる意味が残っている。……お前こそ後悔はないのか? あのままあそこにいれば安泰だったというのに」
「ないない。あんな家と縁が切れて、むしろせいせいしたわ。これからは自分のために生きるの。彼氏作って、結婚して、彼氏作って、子供生んで、彼氏作って」
「彼氏作りすぎだろう……」
「ふふ。――あ、後悔してること、私は一つだけあったわ」
「……」
「この11階層探しツアー、もっとしっかり止めておけば良かったって凄い後悔してる」
「――んなっ」
リーダーのその声と同時に、ふき出すような笑い声が4つも起こった。
「お、お前達……」
寝ていると思ったパーティーメンバーは起きていて、耳を潜めて聞いていたのだ。
それに気づいて、残った2名も徐々に笑顔になっていき、大きな声で笑いだした。
月が雲の影から顔を出し、彼女達を明るく照らす。結界なんぞがなくとも、彼女達を襲う魔物も盗賊も、きっとどこにもいないだろう。それだけそこには、彼女達にしか分からない喜びが、安堵が、幸せがあった。
そしてもちろん、愛と、勇気も。
「ははは――、ん? な、なんだこれはっ」
リーダーが突如としてそんな慌てた声をあげた。
「え? なにっ?」
「これは――っす」
「全員武器をっ」
メンバーもその声の原因に気づき、すぐさま立ち上がると、各々の武器を手にとった。
槍を、短剣を、片手剣を、杖を、鞭を、大剣を。
視線は一様に下。
床はひび割れ、ところどころが崩れ、瓦礫に埋もれているところもあるが、そこには、魔法陣がキラキラと浮かび上がっていた。直径は3m。6名をスッポリと覆うほど大きい。
「これ……転移陣じゃん」
「転移陣? 擦れているが……、む、光が消える」
ただその転移陣はすぐにその光を失った。今はもう、陣どころか汚れにすら見えないくらいで、よく見ればうっすらと分かる程度しか残っていない。
リーダーは、ふと空を見上げる。
「月が隠れている。……そうか月の魔力残滓可視化の力。それが反射して発光したのか」
そして答えに至った。
転移陣の上からどいた6名は会議を始める。
「これは知らないと分かりませんよ。トレリ、これ罠なの?」
「罠だったら感知できるっす。所詮この階層なんで。だからこれは……、ただの移動用っすかね? でも移動用でも分かるような」
「多分……ほらココ。破損してるからよ。機能してない。充填と発散の部分かしら。機能させるなら直さなきゃってやつね、……でも術式が古い上に、少し特殊……、私は無理ね。ジュジュは?」
「2,3日あればできそうじゃん。一応時空は専門じゃん」
「道程が困難、感知できない、月が出ている、修復しなければいけない、修復技術の要求が高い。10階層にしては条件が厳し過ぎる。……これはリーダー」
「ああ。安全な場所でとはいえ、ジュリアレアが数日かけなければならないようなものならば、70階層80階層クラスということも十分ありうる。目当ての11階層である可能性は低い。それゆえ本来ならば無視するか、そうでなくとも一旦帰還し改めて準備をしてくるべきだろう。だが……しかし……私はそういう――」
「そういうのがモヤモヤして、見つけないと気が済まないっ、んでしょう? 分かってますよ」
「耳タコっす」
「それに、もう1回あの道を通ってくるのもゴメンだし」
「んじゃ解析始めるじゃん」
「寝ないのか? 相変わらず研究者体質だ」
「お、お前達……」
その先には何があるか分からない。もしかすると厳しい戦いが待っているのかもしれない。それを考慮に入れつつも、誰も不満を持たず、不安も抱かなかった。
冒険者になる以前から同じ部隊で活動していたチームワークは、未だ健在。
彼女達は転移陣の使用を決定して行動を始める。
そして4日後。
修理完了から1日の完全休息を設け、昼間でも太陽が雲で隠れたままのその日、転移陣の上に立つ。
「全ての補助は使った、アイテムも配布済み。対策は万全だ、安心しろ。その証明として、私は対策に何か穴があると――」
「そういうのがモヤモヤして、見つけないと気が済まないっ、んでしょう?」
「耳タコっす」
「くっ、最近全然言えていないのに……。――行くぞっ」
6名は丁度10階層と12階層の境界線上から、一瞬にして消え去った。
気がつくとそこは、小さな小さな浮島だった。
ほんの少しのこじんまりとした庭と、たった一つの建物だけがある孤島。
庭には緑色の綺麗な芝生の絨毯が敷かれていて、フカフカと柔らかい。外を見れば様々な花が咲いていて、秋にも関わらず薔薇や桜が景色を彩っている。
振り返って建物の方を見れば、足元には数段の階段があり、その先には身長の何倍もの高さの石柱が、青空と交互になるよう等間隔で横一列に並んでいる。その柱を上に追っていけば、同じ石造りの大きな屋根が載っていた。
豪勢ではないが質素ではない、彫刻のような美しい模様。
それが神殿であることは、特に彼女達には一目で分かった。
「……」
しかし彼女達6名は違和感を胸に、もう一度振り返って庭を見た。
そして何一つ話すことなく恐る恐る孤島の端まで進んで行き、膝辺りまで伸びる薔薇やコスモスの上から、さらに向こうを覗きこんだ。
上は青い大空。
前も青い大空。
下は……、青い大空、ではなく、曇り空だった。
彼女達は、高度6000mにある、11階層、天空神殿に辿り着いた。
「――はっ」
数十秒が過ぎ、リーダーは動きを止めた。
「ふう、ちょっとテンションがおかしなことになっていたな。おい、正気に戻るんだっ」
「はあ、はあ、つい叫び過ぎてしまいました。溢れるテンションが抑えられず」
「まあ魔物の気配は一切ないんで良かったっす。いやあ……、ああ、だめっす、抑えてないとまたテンションが上がりそうっす」
「きゃあああー凄い凄い凄いー、きゃあああーっ」
「まだ戻ってきてないじゃんっ。落ち着くじゃんザレっち副隊長ーっ」
「高い……高い……でも凄い……、でも高い……、高い……凄い……、凄い……高い……」
「ええい早く戻れっ」
リーダーは未だ戻って来ない1名と、恐がって地面に全身をつける1名を叩き正気に戻すと、11階層であることと魔物や罠がないことを確認する。
「そうか、ここが11階層だったか。では神殿に入るぞ」
「ええー怒られますよっ」
「そうっすよ、怒られるっす」
「誰にだ誰に。確かにここまで立派だとその気持ちも分かるが……、入らないなら私1人で入るぞ」
進み始めたリーダーの後ろに隠れるように、若い2名が続き、その後ろから残る3名もついて入る。
神殿には入口や出口どころか壁も存在しない。
だが入った瞬間、確実に空気が変わったことを全員が察した。その感覚は言葉にできないもの、あえて言葉にするなら、神気と呼べるものがあったのだ。前職において、それと密接に関わりがあった6名は、それを肌で強く感じ取った。
神殿の端には水路があり、チョロチョロと流れる水音が響く。その音は耳に心地良く、心を解きほぐしてくれる。
青空の明かりの他にはロウソクの明かりが神殿内には灯されている。ロウソクの火は時折揺れ、見ているだけで心を落ち着かせてくれる。
非常に簡素だ、しかしだからこそ美しい。
「綺麗……」
「ヤベー」
「中心の建物の前に何かある……、これは……、そうか、ここはマリアンヌ様の神殿だったか」
彼女達はマリアンヌの像がある神殿中央に辿り着く。
神像を見慣れた彼女達にとって、その像はお世辞にも優れたものではなかった。技術的な話ももちろんだが、派手好きで知られるマリアンヌが好む豪華絢爛さや目新しさはない。むしろそれとはほど遠い質素さと懐古が見て取れる。
だが、不思議と好感を持った。
「愛されているのだろうな、こちらのマリアンヌ様は。あそこにあったものとは違う……、ここに置かれるに相応しい像だ」
涙が零れるような感動はなかった。
昔を思いだすような感慨もなかった。
しかし誰もが、自然と片膝をつき、繋ぎ合わせた両腕を額に当てて目を瞑った。
願いはない。感謝もしていない。ゆえに祈りではない。彼女達はその資格を自ら捨てたのだ。だから残ったありったけの信仰心にかけて、そんなことは絶対にしない。
これはただの所作である。意味は何一つとして込められていない、ただの。
だからそれには――。
思わず神様が出てきてしまうほどの、尊さがあったのだろう。
「頭を上げなさい」
神殿に声が響いた。
それはとても小さな声であるはずなのに、青空が四方に見える開放されたこの神殿全体に行き渡り、一切反響することなく消えていった。
その違和感に、彼女達の心臓は跳ね、言葉通りに顔を上げた。
「――」
そこには、言葉を失うほど美しい少女が立っていた。
「久しぶり、って言った方が良い? でもあたし的にはあんまり久しぶり感はないかな。だって、ずっと届いてたから」
少女が優しく微笑んだその顔を、6名はよく知っていた。
かつてはその微笑が模られた像を毎日のように見て、心に毎日のように思い描き……。
「マリアンヌ様……」
リーダーが、いや、隊長が小さな小さな声で呟く。
「ブイっ。今ね、顕現してネームドモンスターやってるのっ。はいコレっ」
驚く6名を他所に、マリアンヌは懐から取り出した腕輪を配り始めた。
「あ、ありがたく。……これは?」
「踏破の腕輪よっ。皆が思ってる通りのね」
「えっ?」
「ここに来た人にね、プレゼントする予定なの。死ななくなるやつだから、皆、これからは戦いで死んじゃ駄目よ? ね? あ、指輪の方もあるんだけど……。でも冒険者なら指輪はいらないわよね。戦わない人にはこっちって考えてるんだけど」
「踏破の腕輪と指輪と言えば、ダンジョンを滅ぼす神器ではっ? え、あ、ではマリアンヌ様は天城ダンジョンを滅ぼしに降臨なされたのでしょうか?」
「違うわよー。逆逆。ふふふ、愛と勇気の女神マリアンヌにして、ダンジョン143階層守護者、マリアンヌとはあたしのことでございっ。待ってるわよディーちゃん達」
「守護――、ボスでございますかっ?」
「この神殿良いでしょー? 作ってもらったの。たまには来てね?」
「え、ええ、そ、それはもう。え、だ、大神殿の方には、その」
「あそこは嫌ーい。分かるでしょ?」
「ええ、それは、非常に……」
「最初に見つけてくれたのがディーちゃん達で良かったわ。相変わらずちっちゃいことを気にしてくれるようね、信じてたわ、その凝り性っ」
マリアンヌはグーサインを作り、ウインクをした。
その明るく奔放な姿はマリアンヌそのもの。
そしてその次に見せる、神聖溢れる雰囲気もまた、マリアンヌそのもの。
「でも、辞めちゃったのね」
「……」
「聖乙女隊。あたし応援してたのに……」
「……マ、マリアン――」
「でもその愛と勇気に乾杯っ。あたしは愛と勇気の女神マリアンヌ、愛と勇気のためなら何をしたって構わないわっ。それに貴女達からビシバシ伝わってくるものっ、あたしへの愛がっ。イエイ」
マリアンヌの足元が光になって消えていく。それは徐々に徐々に上の方へと伝播する。
「セコちゃん」
「は、はいっ」
「トレちゃん」
「はいっすっ」
「ザレちゃん」
「はいっ」
「ジュジュちゃん」
「はいじゃんっ」
「サっちゃん」
「は、はいマリアンヌ様っ」
「そして、ディーちゃん」
「はい……」
「この神殿のことちゃんと広めてね、それじゃあ、じゃあーねー、バイバーイ」
そうして女神マリアンヌは、言いたいことだけ言い終えると手を大きく振って、まだ混乱の最中にある6名を置いて去って行った。
神の気配がなくなったことが、彼女達には神殿のシンとした雰囲気で伝わった。
しかし彼女達は数十分間、誰も話せず、立ち上がることもできなかった。驚いたこともあるだろう、情報と感情の処理が追いついていないこともあるだろう、だがそれだけでないことは、彼女達が一様に腕輪を大切に抱きしめる様子を見れば分かる。
6名は外が少し暗くなった頃に神殿から出ると、踏破の腕輪の力を使って44階層の町へ帰還。
マリアンヌの言葉通りに、神殿、踏破の腕輪、指輪のことをギルドに報告。慌ただしい夜が過ぎ、就寝できるようになったのは深夜。
B級である彼女達が本来とるべき宿は、非常に高級な宿で基本的に個室なのだが、なぜだか6名全員で雑魚寝をする安宿を選んだ。冒険したこの数ヶ月間、散々そうやって寝泊りしたから、一緒にいることに少しばかりうんざりしていたのだが、独りになるとこの信じ難い思い出が消えてしまいそうで。
そしてそれを消さないように、会話が始まった。
といっても、眠るまでそれぞれが数言くらいしか話さないような短い会話だったが。
「まさか……あんなハッキリお会いできるとは思ってもいませんでした……」
「失敗したっす。もっとちゃんとした格好で……体も臭いっすし。全然何も話せなかったっす、お伝えしたいことがいっぱいあったっす」
「伝わってるわよ。うん、伝わってる。だって愛がビシバシ伝わってくるって言ってたじゃない」
冒険者になってから、ずっと胸の奥にあったものがスーッと消えていくのをそれぞれが感じる。
「……報われたじゃん。そんなの求めてなかったじゃん、でも報われたじゃん。最高じゃん」
「見ていて下さったんだ。相変わらずリーダーが小さいことを気にする性格なのも知って下さっていたんだから。良かった……、ずっと恐くて……」
「ああ、そうだな。そうだな」
誰もが自然と、今も腕にはめている腕輪に手をやった。幸福が胸の内からあふれてくる。
「しかしまあ、……、11階層、探して良かったなあ」
リーダーは言う。
「良かっただろう?」
その問いに他の5名は、少しえぇーっと怪訝そうな顔をする。
「やっぱり気になることは気にした方が良いのだ。この性格を変える必要はない、マリアンヌ様からのお墨付きも頂いたからなっ」
聞こえた深いため息を無視して、リーダーは続けた。
「これからも私は気になったものはとことんまで調べ、必ず見つけ出す。なぜだか分かるか?」
またしても他の5名は、リーダーからの問いに怪訝そうな顔をする。
「なぜなら私はそういうのが――」
しかし今度はため息をつかずに柔らかく微笑んだ。
「そういうのが?」
「そういうのが? なにっす?」
「あら、言わせちゃうの?」
「まあ久しぶりに聞くのも悪くないじゃん」
「あれ以来になるのか? はは」
「お前達……。ふふふ。ああ、なぜなら私はそういうのが、モヤモヤして見つけないと気がすみゃにゃ――」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……。すまない。……ゴメン」
宿屋の一室に5つの笑い声が響く。それは少しの間を置いて6つに。
隣の部屋から、ゴンッ、という壁を殴る音でそれは一時なくなったが、しかし今度は小さく。7つの笑い声は、いつまでもいつまでも続いた。
「ん? 一人多くないか?」
「あ、ごめんあたしあたし」
「――マリアンヌ様っ。なぜここにっ?」
「さっきね、一つ言い忘れちゃって。ディーちゃん達って、あたしの神殿に繋がる廃墟、魔王国用に作った方に行ったじゃない? 王国用の入口もあるから、今度からそっちに行った方が近いわよ。ここから南に行って、10階層との境目についたらそこを左に曲がるの。歩いて1日かからないわ。危険なとこもないし。じゃーねー」
「……え?」
「……え?」
「……え?」
「……え?」
「……え?」
「……え?」
「……リーダー?」
「……リーダー?」
「……ディーナ?」
「……エマさん?」
「……リーダー?」
「……。すまない。……ゴメン」
宿屋の一室に1つの笑い声が響く。それは少しの間を置いて……なくなった。
「11階層が踏破系アイテムを回収する場所じゃなくて、渡す場所に……、いや、今ツッコミを入れるべきはそっちじゃないか」
今言うべきは。
「マリアンヌ、最後のは、言わなくて良かったんじゃないかなあ?」
そっちだよ。
俺は玉座の間に戻ってきたマリアンヌに言った。
「もっと近くにあるとか。あれだけ苦労したのに今言うなんてちょっと」
「だって、あんな遠くには中々通えないじゃないっ。あたしのところに来る子が少なくなっちゃう」
「凄い自分本位だ。いやね、凄い大変そうだったよ? 何度死にかけたか」
「神託で向かってって言ったのが7月で、だから8月中には着くんだろうなーって思ってたら、もう10月になっちゃったものね。あの子昔からおっちょこちょいなところあってねー、そうそう昔、すっごい面白いことがあってー」
マリアンヌは思い出を語り始めた。中々苦労してきた人間らしい。だが、今回の旅路もそれに勝るとも劣らない苦労だったと思う。
11階層の入口にもなる廃墟は、それぞれの方角に1つずつ用意した。北、北東、東、というように計8つ。だから南西のあの廃墟は魔王国用で、作った通路からわずか数日で辿り着く距離と、G級F級でも行けるような難易度。魔法陣をそういう侵入者が発見して、上位者に伝える、という形になると予想していた。
間違っても44階層の王国から行くようなやつじゃない。あの火山を越えていってなんて無茶にもほどがある。どうしてそうまでして……。人間とは時に実に不可解な生き物だ。
でも、だとしても、いや、だからこそ……。
「言わなくて良かったんじゃないかなあ。だって特にほら、リーダーの? ディーちゃんだっけ? あの元聖――」
「あたしの前で別の女のおおおおおーっ」
「ああああああマリアンヌは可愛いねえええええーっ」
「そうっ? 今日はね、ちょっと髪型変えてみたのー。分かっちゃった? 流石ダンちゃん、あたし愛されてるわ。嬉しいっ。あたしもダンちゃんのこと愛してるからっ」
そっちから話題出したのにアウトなのか……。
厳しい。あと怖いよ。
俺にはどうにもできないや。……すまん、ゴメン。
褒めたことで、マリアンヌはルンルン気分。
近寄ってきたかと思うと、玉座に座る俺の膝に頭を埋めて、たまに上目遣いで見上げてくるいつもの体勢に。さっきまで包丁をこっちに向けてたとは思えない変わり身だ。
他の子とはまた違うベクトルのヤバさがあるね。
ああ、でも他の子もそういうところちょっとあるんだよなあ、特に初期組は俺が二期組や三期組と仲良く話していると、俺かその子のどちらかを誘拐する。じゃあ一緒か。
『 名前:マリアンヌ
種別:ネームドモンスター
種族:偽神
性別:女
人間換算年齢:14
Lv:60
人間換算ステータス:701
職業:天空神殿の神様
称号:顕現せし愛と勇気の神
固有能力:???? ・????????
:???? ・????????
:???? ・????????
:聖戦の帳 ・他の神から見られないようにできる。
:赤糸の魔眼 ・左右、視界内に赤い糸を表示し、操作する。
:慈悲因果 ・慈悲に交わる。
種族特性:???? ・????????
:???? ・????????
:???? ・????????
:???? ・????????
:???? ・????????
:偽りの神格 ・神威魔法発動可能。
特殊技能:オーラドレイン ・生命力と魔力を吸収する。
:ミソロジープレイ ・神の力をさらに送り込み、位階を上げる。
:レットシークレット ・隠しておきたい事柄を隠す。
:???? ・????????
存在コスト:30000
再生P:210000P 』
「ともあれだ、11階層は踏破系アイテムを回収する用の施設だったはずなんだが、用途を変えたのか?」
「大丈夫よ安心してっ。上手いことやるからっ」
「上手いことって……。踏破系アイテムは一応、悪い事をした滅ぶべきダンジョンに排出される神の罰みたいなものだからね、上手いこと使っちゃったらそれはそれで神に逆らった――って、そうか」
「あたしが神よっ」
「そうだった……」
よく包丁を持ちだして刺そうとしてくるけど、愛と勇気の女神だった。
「えへへ」
「なぜ照れる」
「ともかく安心よっ。見ててねっ?」
マリアンヌは言う。
踏破系アイテムの運用。
頭が痛くなるような話で、問題も山積みだと思うけど……まあ、そこまで言うのなら任せてみよう。別にただちに影響があるようなものじゃないからね。いずれ必ず踏破されるってだけで、今も包丁を握りしめてる子より危険は少ないからね。
「じゃあ、よろしく頼むぞ」
「あたりきよっ」
マリアンヌは自信満々に答え、明るい声で笑った。同時に、俺も笑った。
女三人寄れば姦しいと言うが、女1人男1人でも随分賑やかになるものだ。2つの笑い声は途切れることなくいつまでもいつまでも続いた。
だから……、一旦包丁はしまおうか。
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