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第122話 遺跡迷路、ネフスフィア、ヌミスフィア。

悪逆非道のダンジョンマスター心得その11

敵を味方を、自分を愛しましょう。分かっている、それは大切だ。だが、俺の敵はどこにいるっ。

 特訓を終えたローズは、教官補佐として楽しげに猛威をふるっていた、エリンカノンケナンの3人を引き連れ、今後の俺の強化計画を練っていた。

 図面を広げ、あーでもないこーでもないと頭を悩ませ。


 特訓に図面って必要なのかしら。


 そしてそれを食い止めるために生成されたはずのコロシアム前半組は、それに全く感心を見せず、各々好きなことをしていた。

 ヘルメスはビーチサッカーに混ざり、フィオリカは海の家一号店の店員を、ヒストリカは高い椅子に座って海の監視員、ライフセーバーのようなことを。

 ハナヲは水着を替え、ビーチバレーに。そしてノノヲはライブを開催している。


 好きなことをしすぎではないだろうか。

 ライフセーバーは、もしかするとみんなのためを思ってやってるのかもしれないけどさ。いやでもまず俺のことを思えよ。


「はあー、全くこのダンジョンのネームドモンスターときたら……」

 誰も思い通りになりゃしねえ。


 普通は、上級竜などの一部のダンジョンモンスター以外、誰しもが、ダンジョンマスターの言うことには服従するものなのだ。ダンジョンマスターの持つ、絶対強制の命令を使わずとも、そうなるのが自然。 なのでむしろダンジョンマスター自身が、あまり行き過ぎた結果にならないよう、命令や指示の内容を吟味し、そして自制と自重を重んじなければならないほどである。


 なのに、ここはどうだろうか。

 俺じゃなく、ダンジョンモンスターに自制や自重が必要なんじゃないだろうか。


「やっぱサーフィンにはもっと高い波がいるよなあ。100m級のビックウェーブだぜーっ」

「やめなさーい」


「夜になったら花火が欲しいですね。城に爆薬を仕掛けてきましょう」

「やめなさーい」


「……水路、通って……。本物の海……、世界を股にかけ……財宝を略奪する……」

「やめなさーい」


「完成です。主様の性能はこれで10倍になりますっ」

「やめなさーい」


「疲れたの。わっちは部屋に戻るとする」

「やめなさーい。夜になったら爆破されるよー」


「お腹空いたなあ。人数増えたし、1人2人いなくなっても分からないよね?」

「やめなさーい。逃げてー」


「ウェ……オェ……、緊張で悪い酔いした……」

「やめ――、大丈夫?」


 本当にもう、自由かっ。


 貴女達が自由だからね、後輩達も自由になってしまってるじゃないかっ。

 見ろ後輩達をっ。


「キャプテンオルテ姉さん、出航の準備は整いました。全世界を、鬱のどん底に陥れてやりましょう」

「キャプテンオルテ姉さん、やりますわよ。世界の煌びやかな宝は、全てわたくしのものですわ」


「はい、カキ氷。たっぷりのレモンシロップに、小豆を散りばめた特製のカキ氷。皆で美味しく食べてね?」

「あ、ああ。し、しかしこれ……、黄色の下地に茶色の点々、いや、気のせいだな。うん」

「ぜ、全然そんなことないだろ、おお。そんな、おお」

「そ、そうだよね……。きっと美味しいからの組み合わせなんだよね。いただきまーす――、う……、微妙……」

「ち、違う違う、その……、さっき待たせた時に、そんな首を長くして待ってなくても、って言ったのは、違って、違う意味で……」


「ふっふっふー。誰にイタズラしよっかなー、後輩ですからねー。逆らえないですよねー。イタズラし放題」

「もーアリス、後輩には優しくするのが先輩ですよ。大人な私はそう思います。ただ、今日くらいは、そういうのも良いかもしれませんが」

「なによ、やる気じゃない。ア、アタシは別にそんなこと興味ないけど? でもアンタ達がやるって言うんなら、仕方ないから付き合ってあげるわっ。誰にする? ねぇ誰にするっ?」

「夏と言えば海。だけどぉ、肝試しもそうじゃなぁい? だから大人なわたし達がぁ、仕方ないから驚かす役をやってあげましょうよ」

「うむ。ナイス根性っ。皆の根性を鍛える、いい機会だっ」

「流石は優しさのエリンや。良いコト言うた。さ、善は急げや、準備すんでー」


「ろーしてみんらー、おっぱいが大きいんらーっ。確かにボクは16歳らし、小さくても仕方らいけろ、れも、ろーしてみんらーっ」

「まあまあ……。もう一杯、そして早く寝な。もう片方の膝、空いてるぜ」

「くぅ、すぅ、まだ……遊ぶ……、くぅ、すぅ」

「水着コンテストの会場はこんなもんかしら。照明と、あとは投票用紙の確認と、それから……」

「えー、テステス。マイクのテスト中、聞こえてるかー。弱い者は死ぬだけだ。聞こえてるかー。聞こえてないのか、接触かなあ? ……しかし、舞台上でマイクを持ってると、歌いたくなるな。聞こえてないなら……、フンフンフントゥトゥルルル、フーウウー」

「全部聞こえてるよー、おーいソヴレーノちゃーん。……あんな羞恥をそそる行為を、目の前でやられるなんて、タキノちゃん、一生の不覚。羨ましい、羨ましいですにゃー」


「ツバキ、見て、海を割るの。魚がピチピチして楽しいね」

「魚がピチピチしたの楽しいね。見て、海を割ったの、チヒロ」


 全員、自由を謳歌してしまっているよっ。

 ティアもホリィも、ミロクもククリもリリトもトトナもナナミも、アリスもイーファスもヴェルティスもエリンもカノンもケナンもコーリーもサハリーもシェリーもスノもソヴレーノもタキノもチヒロもツバキも、さきほど生成された三期組も、全員。


 それは果たしてダンジョンモンスターの正しい姿なのだろうか。

 否だ。全くもって否であるっ。


 先輩を見習うのは良いことだと思うが、その先輩が果たしてダンジョンモンスターとして正しいのかどうかを、その目で判断してからにして欲しい。

 ……ダンジョンモンスターとしての正しい姿を、ここじゃあ学ぶ機会がないのかもしれないけど。


 このダンジョンにおいては、数々の勲章の効果により、俺への忠誠など、様々なものが欠けた状態で生成される。

 ゆえに、ダンジョンモンスターとしての振る舞い、特に、ダンジョンマスターの相棒たるネームドモンスターとしての振る舞いも、生成された直後は知らないのかもしれない。

 ならば思うだろう。この素晴らしいダンジョンマスターのために、一体どうすれば良いのかと。そう思ったなら、学ぼうとするだろう。この素晴らしいダンジョンマスターのためにネームドモンスターとして、どう振る舞うのか、その正しい振る舞いを、先輩達を見て。


 二期組を生成した際にも、三期組を生成した際にも、俺の傍には初期組の誰かがいた。

 そして生成直後から、初期組と関わった。二期組は直近の後輩として、三期組は少し遠い部下として。だからこそ、学ぶとすれば、その時の初期組を見てなのだ。

 きっとその時に、ネームドモンスターとはかくあるべき、と結論を出したのだろう。初期組の振舞いこそが、正しいと信じて。


「なんてこったい。つまりは、俺を守るためにと近くにいさせた初期組が、悪影響を及ぼしていた、ってことじゃないか。なんたる不覚。だが、反乱の危険性がある以上、俺を守るためには、初期組を近くに配置せざるを得ない。……二期組も三期組も、こうなることは最初から決まっていたということか……」

 俺は愕然とした。


 この自由過ぎるメンバーに囲まれることは、不可避だったと。運命で決まっていることだったということに。

 それは運命のイタズラというには、あまりにむごたらしい事実だった。


 が、しかし。

「待てよ、そうなると……」

 一筋の希望が、俺の脳裏を掠めた。


「もしかすると生成時に、初期組と対話する機会を与えなければ、ダンジョンモンスターとして、ネームドモンスターとして、正しい姿を学ばせることができるのではないだろうか?」

 そんな可能性が見えたのだ。


「生成された直後の、方向性やこれからの指針に迷っている最中に、初期組と出会うからおかしなことになるんだ。その期間に出会わせず、学び取る機会を設けなければ、俺の言葉によってのみ、方向性やこれからの指針を決めることになる。……そうすれば、きっと正しいダンジョンモンスターに、そしてダンジョンの柱たるネームドモンスターになってくれるのでは?」

 そう口にした瞬間、俺の脳裏には、夢のような光景が広がった。


 それは、口にすれば儚く散ってしまいそうな、淡い輝きではあったが、一度見れば二度と忘れられぬような眩さを秘めていた。

 そうだ、あれが、俺の求めるダンジョン。

 今思いついた方法は、あそこに繋がっているかもしれない。その道は、か細く頼りないものかもしれない。初期組達がこの場にいなければ、即座に歯向かわれ俺自身が危険な目に合う可能性とてある。むしろそちらの方が確率としては高いのだろう。

 だが、繋がるのなら、挑まずにはいられない。そんな輝きが、向こう側に見えたのだ。


「よし。今回の生成は、誰も傍に置かず、1人でやってみよう」

 俺は決めた。


 幸い、今は誰もこちらを見ていない。

「いえーい」

「爆薬の量はこれで十分ですね」

「……出航だ。帆、上げろ……」


「これで100倍になるぞーっ」

「ふわああ眠い」

「お腹いっぱい」

「スッキリしたぞ酒を寄越せーっ」

 誰しもが遊びに夢中だ。


 いやなんかちょっとおかしかったし、誰も見てくれないのもそれはそれで寂しいが。

 まあ、チャンスはチャンスだ。

「行くぞ――ってあれ? でも視線は感じるなあ。誰も見てないのに……。どこからだ? ……上、かな? まあ良いさ、行くぞっ」


 さて生成するのは、遺跡迷路の階層ボス、2体。

 50階層と45階層のボスだ。


 ダンジョン最初のネームドモンスターのボス、ということで、それに相応しい特徴を持たせたい。相応しいとはもちろん、侵入者を、より高い階層へ誘えること。


 45階層周辺を、稼ぎの場とする人間や亜人の侵入者は、基本的にLv100ちょっとである。

 冒険者の等級でいうのなら、C級くらい。実力によってそれ以下のLvだったり、それ以下の等級だったりもするだろうが、平均はそこ。つまり、もう一人前の猛者達である。

 一人前の猛者とは、幾多の経験を積み重ね、色々なことを学び、そして、一般以上の稼ぎを手にし、老後も、息子や娘に世話にならずとも安泰のような、このままで十分暮らしていける者達のことだ。


 魔物の侵入者にしても同様。魔物にとって階層は、高ければ高いほど、住み心地が良く、狩り場や生活の場として最適な空間になっている。

 ゆえに、ある程度高い階層へ侵入するのだが、それ以上進まなくなるラインがある。それが、この辺りの階層。もちろん、ダンジョンにおいて生成Pが600Pや1000Pを越えるような種族であれば、もっともっと進むのだが、多くの魔物はこの辺りより先には進まない。ここで止まってしまうのだ。


 人間も亜人も魔物も、誰しもがここで止まる。そしてそれを是としている。

 だが、それではダンジョンの経営は立ちゆかない。安定して死なずにダンジョンモンスターを狩られ続けるなど、財政破綻の足音が聞こえてくるような所業だ。

 そのため、100階層を越えるダンジョンは、そういった安定した生活を送れる者にも、命を賭けるほどの冒険を決意させなければならないわけだ。


 それは言葉で言うほど楽なことではない。しかしやらなければならない。

 侵入者に、自分はもっと強くなれる、まだまだいける、家族にもっと楽な暮らしを、俺は私は特別である、そんなことを思わせて誘い込むためには、さて、どうするか。


 まあ……、お金、かな。

 倒したら、大金が手に入る。なんといっても、一番最初はそれが良いだろう。実際の生活という意味でも、強い武器防具が買えるという意味でも。


 というわけで、遺跡迷路のボスを倒せば、大金が得られるようにしておく。


 まずは50階層。

 ボスの種族は、金に関わる魔物。

 それでいて、飛べる魔物。


 遺跡迷路は、迷路の壁を越えることが重要な攻略方法であり、それを阻止するための空中専門の部隊が存在する。このボスは、そんな魔物達の取りまとめにする予定。

 なので、空を飛べる種族というのが必須。今現在、遺跡迷路にいない種族が良いな。このボスの種族を決めてから、同系等の下位種族をノーマルモンスターとして空に配置すると、あの魔物、一際強いぞ、と思わせ、その種族の上位種が階層ボスになっている、というダンジョンの定番ができるから。


「だからそれに、遺跡、飛べる、迷路、金。カネってよりも、キンって意味の方が良いかな? これらを組み合わせて……」


『 グリフォン

   ユニーク

   性別:女 ・・・0P

   造形:人型 不純そう 綺麗系 ロングヘアー 険しさを他者にも伝播させる 甘え下手 胸大きい 翼収納自在 爪伸縮自在 ・・・1200P

   性格:邪智奸佞 他人に厳しく自分に厳しく 押しに弱く甘え下手 意外と潔癖正統派 清純 真面目な秀才 ・・・1100P

   特徴:未来を夢見る女 金の女帝 金の創造 黄金比 美的センス 左右非対称 黄金律 空路の支配者 金運 貯蓄癖 ランダム魔眼 ・・・3300P

   適性:槍術 水魔法 錬金 HP吸収 MP吸収 ・・・350P

   能力値:全能力成長率上昇 ・・・3000P 』


 種族はグリフォン。ニルはハーピィで鳥人だし、スノはニワトリだし、我が家には普通の鳥がいないので普通の鳥でも良かったが、まあ、金への関わりが深いということで。

 造形はボスとしてのカッコよさを演出しながら、良い子になるように。

 性格も対照的に。

 特徴は、空と金。

 適性と能力値はいつも通り。


 倒せば大量の金が手に入る。

 しかし階層ボスなので、倒せるのは一度きり。再び大金が欲しいのなら、コロシアムに進むしかない。

 そうやって誘い込むのだ。


 金の魔力に一度でも取りつかれてしまえば、最早抗う術はない。

 だが、もちろん、それはまず、ここのボスに挑ませなければ味わわせることすらできない。

 なので、45階層のボスも、同じ。


 45階層のボスは、金の前なので、銀。


 銀に関わる魔物……、吸血鬼? はむしろ関わりたくないから逆か。

 うーん、よく分からないので、遺跡迷路らしい種族にしよう。


 ゴーレムとか、ミノタウロスとか。パッと浮かぶのはそういうのか。

 しかしそれらは既にエリアボスとして採用してしまっている。なんてこったい。ゴーレムに関しては、裏ボスで採用予定だ、被ってしまう。コモン魔物と被るのは全然アリだが、他のボスと被るっていうのは、ちょっと嫌だからなあ。


「じゃあ、そうだな、遺跡が似合うって選択肢から、広場にある崩れた建物が似合うって選択肢に変えよう。崩れた建物が似合う種族……、決めた」


『 バジリスク

   ユニーク

   性別:女 ・・・0P

   造形:人型 清純そう 可愛い系 ロングヘアー 朗らかさを他者にも伝播させる 甘え上手 胸大きい 鱗収納自在 舌伸縮自在 ・・・1200P

   性格:天真爛漫 他人に優しく自分に優しく 押しが強く甘え上手 意外と清濁併せ持つ 不純 不真面目な天才 ・・・1100P

   特徴:過去を夢見る女 銀の女帝 銀の創造 白銀比 美的センス 左右対称 お願い上手 迷路の支配者 金運 浪費癖 ランダム魔眼 ・・・3300P

   適性:剣術 魔力操作 建築 HP吸収 MP吸収 ・・・400P

   能力値:全能力成長率上昇 ・・・3000P 』


 種族はバジリスク。我が家にヘビはいるが、バジリスクは邪族なので被らない。そして朽ちた遺跡も、どこか似合う。

 性別はまあ、そうね。

 造形は、グリフォンとは対照的に。ただし近しい仲間でスタイルに差がありすぎると、仲が悪くなる切欠になってしまうので、胸は大きく。

 性格も、可愛い感じに。ただボスなので、可愛いだけではいけない。

 特徴は、迷路と銀。

 適性と能力値はいつも通り。


 銀を手にし、金を手にし。

 侵入者は果たしてどうするのか。


 もう侵入者達は、止まることなどできないだろう。ただしそれは、お金の魅力にとりつかれたからではなく、成功してしまったから。自分に眠る可能性や、今までの努力が身を結ぶことを知ってしまったから。

 これからはきっと、死ぬその日まで少しでも上を目指しダンジョンを突き進むことになるのだ。


「完璧だ」

 この子達はダンジョンのボスとして、そして、正しい在り方のネームドモンスターとして、ダンジョンを盛り上げていってくれるに違いない。

「良い階層ボスになった。まさに我がダンジョン、最初の階層に相応しい」

 俺は深く深く頷いた。


『これで生成を開始します。よろしいですか?』

「もちろん生成をばっ」


 そう言った瞬間、俺の前に茶色の毛の塊と、黒い鱗の塊が現れる。

 そこから現れたのは、2人の美少女。


 茶色の長い髪の毛で、小麦色の肌の美少女。

 黒色の長い髪の毛で、白い肌の美少女。


「グリフォンの君がネフスフィア。バジリスクの君がヌミスフィア」

 俺がそう名付けたことで、彼女達2人の目には知性が宿った。


「2人共、これから、ダンジョンの先鋒として、よろしく頼むぞ」


「はい魔神様。ネフスフィアの名を賜りました。わたしにお任せ下さい」

「はい、魔神様。ヌミスフィアの名、賜りました。わたし、頑張りまーす」

 俺の言葉に、2人は恭しく頭を下げる。


 良いぞっ。良いぞっ。

 恐れていた、生成された瞬間に俺に攻撃するような事案も起こらなかった。ならこれで、俺が正しい在り方を教えれば……。


「さあ、2人共、まずはお小遣いをあげよう」

 くっくっく、忠誠心をさらに上げるためになあっ。


『 名前:ネフスフィア

  種別:ネームドモンスター

  種族:グリフォン

  性別:女

  人間換算年齢:19

  Lv:0

  人間換算ステータス:142

  職業:遺跡迷路50階層の守護者

  称号:金錬の空宮姫

  固有能力:空路の創造者 ・空中に迷路を生み出し自在に操る。

      :未来の栄光 ・HPMPなどのステータスを最大値より上昇させる。

      :黄金倫理 ・金を操作でき、持つ性質や状態をも自在に変化させられる。

      :幸運暴走 ・幸運の力を増幅させ、何らかを引き起こす。

      :金界の魔眼 ・左、視界内の対象物を、特性を残したまま金に変質させる。

      :純粋因果 ・純粋に交わる。

  種族特性:黄金の守り手 ・黄金と関わる際ステータス上昇。行動に補正。

      :グリフォンの翼 ・空を自在に飛ぶことができる。嵐を無効化する。

      :獰猛な巨躯 ・物理攻撃ダメージ上昇。物理防御ダメージ減少。

      :鷲の目 ・視界の一部を拡大する。

  特殊技能:エナジードレイン ・生命力と魔力に干渉するたび吸収する。

      :アシッドカウンター ・残り生命力残り魔力が少ない程強力な一撃を繰り出せる。

  存在コスト:3000

  再生P:10000P 』


「お小遣いですか。ありがとうございます魔神様。一層気を引き締め任務に従事したいと考えております」


 片側が特に長いロングストレートで、髪色は茶色。右目もそれと同じ色合いだが、左目は完全な金色で、太陽の光を輝かしく反射する。

 身長は平均くらい。少し痩せ気味だが、スタイルは良い。

 固有能力どころか、種族特性までも、金にちなんだ力を手に入れている。倒せば金が手に入ることが、誰しもに正しく伝わるだろう。


 そして、純粋因果か。

 やんちゃで遊んでそうに見えるが、純粋な子なんだなあ。


 まあ、確かに、ネフスフィアは純粋そうだ。見た目こそ、険しい表情をしていて気難しく、少し性に奔放な印象も受けるが、どこか、コーリーと同じ雰囲気を感じる。

「どうだヌミス良いだろう? まあヌミスも貰えるのだけれどな」

 こう……悪い男に騙されたり、女生徒に……。


『 名前:ヌミスフィア

  種別:ネームドモンスター

  種族:バジリスク

  性別:女

  人間換算年齢:19

  Lv:0

  人間換算ステータス:135

  職業:遺跡迷路45階層の守護者

  称号:銀錬の迷宮姫

  固有能力:迷路の創造者 ・地上に迷路を生み出し自由に操る。

      :過去の栄光 ・HPMPなどのステータスを最大値まで戻す。

      :白銀倫理 ・銀を操作でき、持つ性質や状態をも自在に変化させられる。

      :幸運暴走 ・幸運の力を増幅させ、何らかを引き起こす。

      :銀界の魔眼 ・右、視界内の対象物を、特性を残したまま銀に変質させる。

      :明朗因果 ・明朗に交わる。

  種族特性:呪傷の象徴 ・自身を見た対象に呪いの傷を与える。以後見る度に重ねて付与する。

      :バジリスクの猛毒 ・通った道筋に毒を残すことが可能。

      :バジリスクの鱗 ・ダメージを減少させ、毒を無効化する。

      :石化の魔眼 ・視界内の対象を石化させる。

  特殊技能:エナジードレイン ・生命力と魔力に干渉するたび吸収する。

      :サウザンキャスト ・魔力を重ねて使用する。

      :ラビリンスケージ ・迷宮の檻を作りだす。

  存在コスト:3000

  再生P:10000P 』


「わーい、ありがとうございます、魔神様。感謝、感激、雨あられ、って感じです。絶対に頑張りますから、どうぞどうぞ、よろしくお願いしまーす」


 ロングストレートの髪は紫がかった黒色で、左目もそれと同じ色。しかし右目は完全な銀色で、太陽の光を眩く反射する。

 身長は平均くらい。少しぽっちゃり気味だが、スタイルは良い。

 固有能力を見る限り、銀にちなんだ力を手に入れたようだ。これで、倒した後に銀が残っても、なんら不思議ではない。


 しかし、明朗因果か。

 まあ、確かに、ヌミスフィアは明朗という印象を受ける。裏表なく、常に素のままで過ごしていて、その素はとても明るく朗らかそうだ。


「ネフちゃん、わたしも、貰ったよー。なに、買おっかなあー。あ、でもそっか、まず、あれがいるよね」

「そうだな。まずはあれだな。確か届くようになったのだものな。11階層さまさまだ」

「ねー」


 2人の仲も良好。スタイルを同じ設定にして良かった。きっと不平等だからと切り落とされることもないだろう。2人とも、とても良い子に見える。

 そしてだからこそ、俺の言うことも素直に聞いて、受け入れてくれるに違いない。

「2人とも、良いかい? よくお聞き」

 俺は2人を見て、にこやかに話しかけた。


「ダンジョンモンスターというのはね、ダンジョンマスターに対して、尊敬の念を常に持ち、その一挙手一投足に感服し、声をかけられれば光栄に思い、そしてダンジョンマスターの役に立つことこそが本懐と考えるものなんだ。ダンジョンマスターの喜びこそ我が喜び、と。決して、階層外で戦ったり、ダンジョン外で戦ったり、ダンジョンマスターを覗き魔扱いしたり、手を繋ぎたいと言ったから繋いだのに、誰かが来た途端、助けてと言ったり、耳かきを手に膝をポンポンするからそこに頭を乗せたのに、誰かが来た途端、泣いて俺を指差したり、自分から膝に座ってきたのに、誰かが来た途端、変態呼ばわりしたり、そんなことをして良い存在じゃないんだ」

 俺の説く常識は、きっと彼女達2人の魂に浸透していく。


「良いかい? これから君達に守らなければならない常識を、ネームドモンスターの在り方を教えよう。お風呂はね、女湯に入るんだよ? あまりくっついてもいけない、俺だって男だからね。それから部屋の外を薄着で歩いちゃいけないよ。下着なんてもっての他だ。あと、暗くなったら帰ってきなさい、心配だからね。変な人に付いて行くのもダメだよ。喧嘩をしてダンジョンを壊すのは良いが、相手の悪口を言っちゃいけないよ。そして……、そして……、もし……、どこか、どこかへ嫁ぐときがきたら……、きたら……、きたらね、うぅ、きたらね、うぅう、ふぐう。いつか、ここを出て、誰かのお嫁さんになる時がきたらね、幸せに……、しあわ……うぅう、幸せに……、なるんだよぉ……」

 ダメだ、涙が……。

 その時のことを考えてしまっただけで、こんな気持ちになってしまうなんて。俺は、ダンジョンマスター失格だなあ。生成されたばかりの子なんだから、そんなこと、当分先の話だろうに。


「ってこれダンジョンマスターじゃなくて、お父さんじゃねえかっ」

 なんでやねーんっ。俺もダンジョンマスターの在り方と違う感じになっちゃってるよ。


「今のなしね、えーっと。おほん。ネフスフィア、ヌミスフィア。君達は我がダンジョンのネームドモンスターとして――」

「すみません魔神様。今電話中なので少し待って頂いても宜しいですか?」

「すぐ、終わりますから、すみませーん」

「え? あ、うん」


 ネフスフィアとヌミスフィアは、なぜか携帯電話を片手に、どこかへ電話していた。2人で1つの携帯電話を使っており、一緒に耳にあてている。

 しかし携帯電話? お小遣いで生成したのかな? それは別に良いが……、なぜ、今、電話している?


「「もしもし、ネフスフィア、ヌミスフィア、只今、着任、致しました。ご挨拶が、遅れてしまいましたことを、まずはお詫び申し上げます。あ、いえいえ、はい。いえ、ご機嫌、麗しゅう存じます。若輩の身ではありますが御身のご指導をうけられることを誇りに思って誠心誠意、日々研鑽に努めます。はい、はい。ありがとうございます。それでは、失礼致します。はい、はい。それでは」」

 2人は携帯から耳を離した。どうやら電話は終わったようだ。


「もう大丈夫?」

 俺は恐る恐る問いかけた。


「はい。お待たせしました。お話を途中で遮ってしまい誠に申し訳ございません」

 すると、ネフスフィアは深々と頭を下げた。なんと恭しい、これが本来の対応だっ。初期組を離れた場所に置く作戦は成功だったらしい。


 ネフスフィアは言葉を続ける。

「次こそはしかとお話を聞かせて――」

「あ、ネフちゃん、ネフちゃん。だめだよー」

 しかしそれを、ヌミスフィアが遮った。


「魔神様は、もっと、ぞんざいな扱いの方が、喜ぶって、言われたじゃなーい。昔から、Pを全部、食べ物にされても、これはこれで、幸せだなあー、って思ってた、って」

 ……おい、それはどこ情報だ?


「昔、ダンジョンバトルが終わって、この城ができる前の、その間とか、その後の戦争が始まる前とかも、全然ないのに、凄く幸せそうだった、って」

 城ができる前って、二期組が生成される前のダンジョンバトルのことか? どうしてその頃のことを知っている。

 どこからのリークだそれはっ。

 電話相手は誰だ? 初期組はみんな遊んでるはずだぞ?


「なるほどなそうだったそうだった。では魔神様お話はそこそこにもう遊びに行っても宜しいでしょうか」

「遊びに、行きたいでーす」

 ネフスフィアとヌミスフィアはそう言った。


「いや、あの、常識を……。ネームドモンスターとしての在り方を……」

「宜しいでしょうか」

「宜しい、ですかー?」


「……、うん。行ってらっしゃい。気をつけて遊ぶんだよ……」


「ありがとうございます。それでは」

「はあーい。ありがとうございまーす。それじゃあネフちゃん、行こう。遊び、行こう」

 許可を出すと、余程嬉しかったのか、2人は即座に遊びに出かけた。


「いやまずわたしは食い道楽からが良い。ヌミス1人で遊んで来い」

「え、なんで? 行こう、行こうよ、一緒に、遊ぼうよ」

「いいって。わたしは海の家に――」

「あれやろう? ビーチバリボー、あれやろうよ」


「なんだバリボーって。発音良いなっ。だが遠慮する。1人で混ざってくればいいだろう。1人余るが入れてもらえるさ」

「いやっ。ネフちゃんと、遊ぶのー。行こう、行こう、行こう、行こう」

「行かない行かない行かない行かない。服を引っ張るな。揺するな。ここで脱がそうとするなっ。おいやめろ脱がすなっ」

「行くのー、行きますー。これはもう決定事項、変えられないのー」


 ネフスフィアは、着ていたシャツを裏返すように脱がされ、ピアスをしたヘソはおろか、下着までもがあらわになりそうになる。それは途中で阻止できたが、しかしヌミスフィアは諦めない。服を引っ張り、隙あらば脱がす構えだ。


「はあー。分かった分かった。わたしの負けだ遊ぶから……」

「それじゃあ、着替えよっ。わたしが打ち込むから、ネフちゃんは、回転レシーブでそれをとってね」

「え? 参加するんじゃないのか。なんだその特訓嫌なんだが」

「駄目駄目、もう決定。やるのー」


 ネフスフィアはヌミスフィアに腕を組まれ、並んで仲良く更衣室に入って行った。

 出てきたときに着ていた水着は、なぜかかなりのハイレグ水着。

「おい皆こんな水着じゃないじゃないか。騙したなっ」

「ボール、っと。はい、じゃあ、いきます。えーいっ」


 階層的にはネフスフィアの方が上だが、押しに弱いのと甘え上手なのとで、ヌミスフィアの方が引っ張って行く形になるようだ。

 つまり、ネフスフィアはきっと今後も振り回されるのだろう。俺が設定した性格のせいだ。すまない。


 でも、良いじゃないか。

 そのくらい良いじゃないか。


 俺なんてダンジョンマスターなのに、ダンジョンモンスターにこれだけ振り回されてるんだぜ?


 階層ボスの生成が終了し、このダンジョンには23人のネームドモンスターが増えた。

 三期組は総勢47体なので、大体半分。あと24体増えることになる。


「倍、かあ……」

 倍増えたら、一体どうなるんだろう。

 自由さは、一体どれだけ加速するんだろう。


 倍に増えたら、俺の胃痛は、倍で済むんだろうか。

 そんなことを考え、俺の口からは、1つの言葉が自然と出てきた。


「なんてこったいっ」


 ……いや、いつも言ってるな。なんてこったいって。

「なんてこったいっていつも言っちゃう生活ってなんだよ……。なんてこったい……」

お読み頂きありがとうございます。


またブックマークや感想を頂きまして、ありがとうございます。

そして、誤字報告を凄まじくして下さった方も、ありがとうございます。


見直しをサボった結果、凄まじい数の誤字があるまま投稿してしまいました。まずはそれをお詫び致します、本当に申し訳ございません。

その凄まじい数の誤字を全て、直して下さった方や、分かり辛い誤字を直して下さった方、本当に感謝の言葉もございません。今回からは、また、厳しく見直しチェックを行います。お手数をおかけせずに済むよう、頑張ります。本当にありがとうございます、すみません。


本当にすみません。

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